2019年12月30日月曜日

映画『モンスターズ/地球外生命体』

2010年 監督:ギャレス・エドワーズ
製作国:イギリス
テレビ録画




タイトルからして8割方B級映画だろうと予測して録画して、冒頭字幕でこの世界観の軽い説明をしちゃっているのを見たときにこれはやはりB級映画だと確信した。
と思ったんだけど、実際はコーショーさすら漂うなかなか面白いロードムービーだった。

メキシコの半分が巨大な地球外生命体の住処となっている世界。
新聞社社長の娘が裕福な自分を嫌ってなんか知らんがメキシコのこの危険地帯の近くに滞在してなんか知らんが怪我する。
新聞社のカメラマンはこの娘をアメリカに連れ戻す任務を受けてやってくるが、死んだ宇宙人しか見たことない男はまたとないチャンスとしてこの地に留まって取材を行いたいと思うのだがパワハラにより断念して娘とアメリカに渋々帰ろうとする、って話。

令嬢役のホイットニー・エイブルが令嬢っぽくないけど金髪ショートカットで綺麗な人だった。
カメラマン役のスクート・マクネイリーはなかなか面白い。
小悪党っぽい顔つきだけど弱そうでいて時にワイルドな感じでもあり胸毛ボーボーでもある。
モーテルで大失態をするところはパンツ一丁と胸毛の滑稽さも合わさって結構笑える。

宇宙人のいる危険地帯に定期的に爆撃を行うアメリカ軍を地元民とかが非難している、ってストレートな風刺。

調べると低予算映画として結構有名な映画だった模様。
ギャレス・エドワーズはこの映画をきっかけに『GODZILLA ゴジラ』の監督に抜擢されている。

2019年12月29日日曜日

映画『永遠に僕のもの』

2018年 監督:ルイス・オルテガ
製作国:アルゼンチン / スペイン
at ギンレイホール




1971年ブエノスアイレス。
真面目な両親の元で育った17歳のカルリートス(ロレンソ・フェロ)はそこいらの女の子より可愛い美少年だった。
で、強盗の常習犯だった。
その手口は大胆不敵で、犯罪を犯している最中とは思えないくらいの余裕ぶり。
その美貌ゆえに何をしても許されるかのよう。
やがて学校で濃いイケメンのラモン(チノ・ダリン)と出会い、コンビで犯罪を重ねていく。
カルリートスが銃を手に入れてからはもうやばい。
ラモンに射殺魔と言われるくらいなんの躊躇もなく撃つ。殺す。

カルリートスはラモンに気がある(でいいんだよな)。
だからコンビを組んでいるのだけど、ラモンもその父親もただの小悪党なのね。
ラモンに至っては芸能活動しようとまでしだすし。(歌っているシーンが笑える)
ラモン達が小物である分、カルリートスの異様さが際立ってくる。
小物というか常識人なのか。カルリートスはネジが飛んでいる。
善悪の区別はなく、果てしなく自由。
比べるものじゃないけど紳士な銀行強盗とか笑えてくる。

面白かった。

主演のロレンソ・フェロは今後どのような役柄を演じていくのだろうか。
母親役にセシリア・ロス。

予告編でも流れているけど「朝日のあたる家」がぴったりだなぁ。

映画『さらば愛しきアウトロー』

2018年 監督:デヴィッド・ロウリー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ロバート・レッドフォードの俳優引退作。
74歳のフォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)は銀行強盗を生業としている。
そしてその手口は紳士的で誰一人傷つけない。
楽に生きるなんてどうでもいい、楽しく生きたい。
を体現するかのような人生。
銀行強盗であって脱獄王でもあったりする。

映画始まってそこそこ経ってからタイトルバックが流れるんだけど、一瞬エンドロールかな、と思ってしまった。
そこまでが濃密だったとかじゃなくて、これから始まる本編も別に大した展開しなさそうという諦めからのエンドロール希望だったような気がする。

誰一人傷つけない、って金盗んだ時点で結構な人が傷ついているからね。
しかも楽しく生きたいという薄っぺらい理由で。
自由きままな"かっこいい"アウトローのタッカーであるが、娘からの視点が挿入されると一気にただのダメ人間になる。
このダメ人間視点をもっと広げて欲しかったのだけど、タッカーはそんな茶々に全く揺るがずにかっこいいまま描かれていく。
普通に考えてアウトローというか病気でしょ。万引常習犯と変わらないというか、より迷惑だし。

と、ストーリーはなんだかよくわからなかったけど、ロバート・レッドフォードの皺だらけのダンディさと時の流れを眺め、普通に付き合えそうなシシー・スペイセクの眩い魅力に見とれていると93分耐えられる。


公式ページ見ていたら蓮實重彦がコメント寄せているのね。
デヴィッド・ロウリーをかなり推しているらしい。

2019年12月27日金曜日

映画『アマンダと僕』

2018年 監督:ミカエル・アース
製作国:フランス
at ギンレイホール




アマンダのような主役級の少女って大抵可愛らしく芸達者なこまっしゃくれたガキが採用されてうんざりするけど、見てよこの子イゾール・ミュルトリエ、色黒でむちむちしていて眉毛薄くて、全然かわいくないでしょ。
それだけでもう名作だよね。
しかも見終わる頃にはイゾール・ミュルトリエが可愛くてしょうがなくなる。

ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)はアパートの管理人やら枝の剪定やらの便利屋をして生活している。
仲のいい姉サンドリーヌ(オフェリア・コルプ)はシングルマザーで、7歳の娘アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)と暮らしており、ダヴィッドもたまに姪であるアマンダの学校の送り迎えをしたりする。
そして姉の突然の死。
ここ、どうして亡くなるのかは知らないで見ていたので、自転車が古いとかそういうセリフや窓辺に佇むとかのシーン一つ一つにびくびくしていた。
一人取り残されたアマンダを養育できる可能性がある人たちの最有力候補はダヴィッドだが、まだ20代なかばくらいだし、育てる自信がない。
一旦はダヴィッド達の叔母であるモード(マリアンヌ・バスレール)と交互にアマンダの面倒を見ることにするが。。

古い友人に会ったとき、姉の死を伝えないで別れたものの思いとどまってちゃんと伝えるシーンが、二人の会話を聞こえないようにしていて、セリフを想像すると泣けてくる。

「エルヴィスは建物を出た」がラストに繋がり、気丈だったアマンダに涙が止まらない。
今回のギンレイは泣かせにくる。

レナ役のステイシー・マーティンがなかなか気になる。
少し独特な顔立ちだけど、爽やかな美人さん。
IVANに似ている気もする。

映画『Girl/ガール』

2018年 監督:ルーカス・ドン
製作国:ベルギー
at ギンレイホール




ああ、予告編見返すだけで涙出てくる。
バレリーナを目指すララ(ヴィクトール・ポルスター)は、トランスジェンダーの女の子。
どっからどう見ても女の子で、長身でスタイルよくてかわいい。
なのにぺったんこの胸や股の下はやっぱり男であった。

ララは努力が認められて難関のバレエ学校に入学が決まる。
トランスジェンダーを最初から公表しているのだが、クラスメイトの理解度のよさが素晴らしい。
とはいえ嫉妬やらなにやらがうずまくバレエ学校でかつ15,6歳のガキどもでしょ。そんな単純いはいかない。

女の子でありたいのに自分の身体は女の子と決定的に違うところにいる。
足の指を血だらけにしながらも必死にバレエの練習に明け暮れる姿が繰り返し繰り返し描かれると、祈りを捧げているような敬虔で神々しいシーンに見えてくる。
同時に細いのに筋肉質な腕など、男が垣間見えるたびに切なくもなってくる。
女の子になりたい。
崩壊寸前のララの心はバレエにさらにのめり込ませていくが、バレエや学友もララを追い詰めていく。
ララがふりまく笑顔が切ない。

ララが抱えてきた辛さや悲しみがラストで爆発する。
メリッ、ううぅー
痛みもそうだけど、何より切なすぎて涙が止まらない。
よき理解者である(ありたいと思う)父親が駆けつけるシーンもいいよな。

ララ役のヴィクトール・ポルスターは男性でバレエスクールに通うトップダンサーらしい。シスジェンダー。

2019年12月1日日曜日

映画『COLD WAR あの歌、2つの心』

2018年 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
製作国:ポーランド / イギリス / フランス
at ギンレイホール




オヨヨ~。
この歌つい最近どっかで聞いたことある!って思ったらこの映画の予告編で見たんだった。
ポーランド民謡の『2つの心』。
テーマソングともいうべき歌で、歌詞やアレンジを変えて何度も出てくる。

1949年共産主義政権下のポーランドで、音楽舞踏団を結成したピアニストのヴィクトル(トマシュ・コット)は、そのオーディションに現れた歌手志望のズーラ(ヨアンナ・クーリク)と恋に落ちる。
亡命、別れ、再会、別れ、再会、さようならが民族音楽、ジャズ等の多彩な音楽に彩られながら情熱的に描かれていく。
1シーン1シーンぎゅっと洗練されている感じで、88分しかないけどなかなか充実していた。
ズーラ役ヨアンナ・クーリクの目が魅力的。

映画『ワイルドライフ』

2018年 監督:ポール・ダノ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




家族でモンタナ州の田舎町に引っ越してきた14歳のジョー(エド・オクセンボールド)。
年若い父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)と母ジャネット(キャリー・マリガン)は仲睦まじく、幸せを絵に書いたような家族になっている。
しかしジェリーが職場を首になったところから雲行きが怪しくなり。。

いい映画だけどのめり込むほどではないと思っていたけど、ラストシーンで一気に昇華される。
どことなくぎこちない笑顔の二人とか、その二人に挟まれたジョー君の表情とか、もう久しぶりに泣いた。

ジョー君役のエド・オクセンボールドはのぺっとした顔をしていて、阿呆っぽく見えなくもないけど、実際はかなりクレバーなんだろうな。
あまり感情を表出しない役柄だけど、戸惑いの少し目が泳いだ感じとか、時折両親よりも大人に見えるような意志の強さとか、うまい。

キャリー・マリガンもよくて、いい妻から悪女かよわい女強い女いい女等々をすぅーっと演じている。

なかなかいい映画だった。