2011年10月23日日曜日

映画『軽蔑』

2011年 監督:廣木隆一
at ギンレイホール


軽蔑 ディレクターズ・カット [DVD]

原作中上健次。
なぜ今映画化なんだろうな。
原作は未読。

冒頭鈴木杏がポールダンスをしている。
どうやらトップレスのポールダンサーの役らしい。
といっても脱ぐわけないからそんな役はどっちらけだなと思っていたら・・・まさかねぇ。あの花ちゃんが。
鈴木杏がそこまで気合を入れたこの映画、そこそこ面白かった。

新宿歌舞伎町でふらふらしているギャンブル好きのカズ(高良健吾)は、借金を帳消しにしてもらう条件でポールダンスバーを襲撃する。
元々このバーに出入りして、そこのトップダンサーの真知子(鈴木杏)に惚れていたカズは、この襲撃に乗じて真知子を連れ出し、二人はカズの故郷へと向った。
「五分五分だからね」という関係を築こうとした二人だが、地元の名家の跡取りであるカズとポールダンサーという家柄の違い、そしてカズの過去から今に至る放蕩の数々が二人を追い詰めていく。

映画全体として長回しが多い。
長回しは好きな方だけど、こうも何も起こらない長い空白の時間を多用されると疲れる。

高良健吾と鈴木杏の二人が好演している。
なんだけど、主演よりも印象に残る脇役が二人いる。
一人はカズの祖父の元愛人で、カフェ「アルマン」を経営している千代子という婆さん。
おっとりしているけど狂気を秘めた目が只者じゃない雰囲気をかもし出しているこの女優さん、エンドロールで名前見てやっと気付いたけど、なんと緑魔子ちゃんだったんだね。
もう一人はそのアルマンの常連らしいがカズをこよなく愛する千代子によって邪険に席をどかされるスーツ姿の銀行員(忍成修吾)。
店でこんな扱い受けたらショックすぎるのだが、この銀行員は全く動じない。
その上真知子に対して。。。
ただのエキストラだと思っていたのに全く人物が謎すぎて恐怖すら感じる。

カズの母親役で出ている根岸季衣は10年ぶりくらいに見た気がするが、フィルモグラフィーを見ると普通に活躍していたんだな。

バックに二人のスタイル抜群金髪女性を従えて小柄な鈴木杏が堂々とセンターでダンスする姿は公開処刑のようだ。
ストーリーや演出に全体的にえっと思うところも多いが、魅力的な役者さん達が結構出ているのでそこそこ楽しめる。

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後ろの席のたぶんおっさんが10分に1回くらいこつこつ席を蹴ってきていらっとした。

映画『東京公園』

2011年 監督:青山真治
at ギンレイホール




予告編を見ると三流トレンディドラマの映画化かと思ったりもするが、監督は青山真治。
青山真治は『Helpless』しか見ていないのでそんなに知っているわけじゃないけど、『Helpless』が最高に面白かっただけに期待半分不安半分。
(ああ、そういえばテレビドラマ『私立探偵 濱マイク』も見てたや)

カメラマン志望の志田光司(三浦春馬)は日々公園に出かけていき、写真を撮っている。
子供を連れた綺麗な奥さん(井川遥)に心惹かれて、思わず隠し撮りのように撮影していると、歯科医師の初島隆史(高橋洋)に見咎められる。
後日初島に呼び出された光司は、各地の公園に出没するあの奥さんの写真を撮って欲しいと依頼される。
と、別にそこからミステリーな展開になっていくわけではないのであしからず。
光司は親友のヒロ(染谷将太)と一緒に住んでいる。
ヒロは過去になんらかの理由で亡くなっているらしい。
と、しれっと明かされて、つまり幽霊なわけだが、別にここからホラーな展開になっていくわけではない。
光司には父親の再婚によって小学生の時に突然できた9歳歳の離れた姉(小西真奈美)がいる。
その姉の紹介でバイトしているバーのマスターはダンディなゲイ(宇梶剛士)。
そして幼馴染の友達の富永美優(榮倉奈々)はしょっちゅう光司の家に遊びに来る。
恋愛物だとすると、綺麗な奥さん含めてこの4人の誰かということだが。。。

全部見終わってからあの予告編をもう一度みると分かるけど、もう完全に騙された。予告編の編集は悪意すら感じるぜ全く。
異常も日常も同じレベルに羅列されて渦巻き、いびつで異常だけど限りなく日常に近いこの世界を「恋愛物」と一つに括っちゃったら乱暴だ、と思いつつも「恋愛物」で括って落ち着いちゃうくらいの懐の深さもあるんだよなぁ。
じゃあこの映画は何なのと言うと、テーマとしては劇中島田雅彦が言うセリフがぴったりくるかもしれない。
「東京の中心には巨大な公園がある。東京はその公園をとりまくさらに巨大な公園だ。憩い、騒ぎ、誰かと出会ったりもする。僕たちのための公園、それが東京だ」

一つ一つのカットはいたってシンプルなんだけど非常に面白い。
印象に残るのをぱっと思い出すと、人のほとんどいない海浜公園に吹き荒ぶ風の音とか、序盤で光司と初島が公園で別れた後の歩き去る二人の後姿とか、会話する二人をそれぞれ正面から捉えた切り返しとか、マスターと光司がほぼ同時にグラスを置く仕草とか。
(・・・なんか小津っぽいが、正面のバストショットは視線がずれないし同時の所作もぴったり一致するわけではない。小津映画はほとんど見ていないし理解力も乏しいのでぼろが出る前にやめておこう。)

この映画の中の人間関係にしろ、映画そのものにしろ、「見つめる」というのも一つのテーマになっている模様。
もう何十年も前からたくさんの人に論じつくされていると思うけど、無言でカメラを人に向けるほど無遠慮かつ無愛想な事は無い。
撮影者の顔はカメラでほとんど隠れるので、見つめ返されて傷を負う事無しにひたすら一方的に相手を凝視するのだから。
後半凄いシーンがある。
カメラを向けて迫るのがどんな暴力よりも破壊的で、どんな視線よりも相手をえぐる凝視になる。
・・・小西真奈美が美しい。

小西真奈美が美しいといえば、将来に漠然と不安を抱く受動的な大学生(大学生なんて皆そんなもんだ)の光司を取り巻く女性達(女優達)が皆素敵で豪華。
独特な顔立ちだが最も美しい瞬間を見せた姉(小西真奈美)。
出番は少ないものの、全てを見通していながら少しも揺らがない包容力を持った奥さん(いくつになっても綺麗な井川遥)。
そして深い悲しみを秘めながら天真爛漫で素直な笑顔を見せる富永(榮倉奈々)。
・・・榮倉奈々が可愛い。

ラストもまた凄いんだな。
あのべたべたしない恐ろしく平穏な日常はぞくぞくする。

基本的に面白かったのだけど、不満点を言えば、長い(119分)のと、気心の知れた間柄でおどけた感じに時折敬語が入るのが感覚的に80年代くらいの若者な気がしてむずがゆかった点。


最近一段と視力が落ちて、久しぶりに真ん中よりちょっと後ろの席に座ったら眼鏡かけていても細かいところがよく見えない。
そのショックと、自然と前傾姿勢になったせいで左肩が異様に凝ってしまい、いらつきが溜まっていったため、映画が長いのは面白ければなんら問題ないはずなのにちょっとつらかった。

2011年10月15日土曜日

映画『デリー6』

2009年 監督:ラーケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー
BSプレミアム 録画


ミュージカルのないインド映画。
結構金かかっているのかな。凝ったCGも使用されているし。
世界一の映画大国だけあって映画作りすぎてスタッフの技術力が無駄にゴージャスになっているのかもしれない。

インド人のローシャンはNY育ち。
がんで余命短い祖母の「最期は故郷のオールドデリーで過ごしたい」という願いを叶えるために、二人でインドにやってくる。
初めて見るインドは驚きに溢れていた。
道路を埋め尽くす車に人や馬や牛、わらわら湧いてくる親族や知り合い、人懐こく押し売りのように(?)近づいてくる人々。

この、インド人だけど異邦人であるローシャンが見た不思議なインド、っていうのを基本スタンスにして約100分。
この映画は141分の大作なので100分といったら7割くらいか。。
その間大きなストーリー展開はないものの、警官の横暴、賄賂、ヒンドゥー、ムスリムの宗教の混在、対立、低カーストへの差別、物乞い、親の意思による強制結婚、恋愛、歌、CGの幻想シーン、とこれでもかといろんな要素が詰め込まれている。
そして、ラスト、まさかあのすかしたかっこつけの色男があんなことになるとは。
いろいろ詰め込まれた低熱テンションのカオスが、最後にうまいこと爆発して綺麗に収束する感じ。

面白いことは面白かったのだが、もう少しシンプルな熱気が欲しかった気もする。

今少し見返してみると結構歌だらけだな。
エィマサッカリーマサッカリー ンーマタッカリーマタッカリー。

2011年10月8日土曜日

映画『アイス・カチャンは恋の味』

2010年 監督:アニュウ
BSプレミアム 録画




「アイス・カチャンは恋の味」と10回唱えてみるといい。
歯磨いているときも仕事中もトイレで踏ん張っているときも、ふと「アイス・カチャンは恋の味」というフレーズが頭を過ぎることになるだろう。
○○は恋の味なんて使い古されたフレーズなのに、○○にアイス・カチャンというよく分からないが可愛らしい単語が入るととても素敵な響きになる。
アイス・カチャン。マレーシアのかき氷だそうだ。
タイトルバックで表示されたタイトルは「初恋紅豆氷 ICE KACANG PUPPY LOVE」だった。
初恋かき氷とでも訳すのかな。

自分の事を闘魚と名乗る男勝りのヒロインと、闘魚に想いを寄せる青年ボタック(=坊主の意味)の物語。
マレーシア映画。

映画の内容は、予想と違って結構POPなノリになっている。
香港系の騒々しい笑いと、ドラマ「トリック」のような僕の苦手なすかしたゆるい笑いとの中間のようなノリ。
ノリはPOPだけどあまり裕福でない層の人達の物語なので、妬み嫉み、DV、死、夜逃げ等、ちょいちょい暗い要素も織り込まれる。
ただ、少しも暗くなることは無く、全ては淡い初恋の痛みに収斂していくから見事だ。
闘魚とボダックの関係だけでなく、彼らの幼い頃からの仲間(ケンカ仲間)達も単純でストレートな想いを見せてくれる。
宝くじ胴元の息子マーとその妹、ボダックの妹、白馬の王子、マーの子分のやせのっぽ。
彼らの恋は基本的にコミカルに描かれるが、その幕引きは意外と切ない。

東京03の飯塚に似ていて、馬鹿みたいにぼーっとしたボダックを演じたアニュウは歌手らしい。
というか監督もしてんじゃん。
見終わってから知ると結構びっくりする。
他にも主要キャストは皆有名歌手らしい。
そして見ればわかると思うけど皆結構年いっている。
歌手としての活躍を知っている上で見たらさらに面白いのだろうな。
ゲイリー・ツァオなんかもうコメディアンだしアンジェリカ・リーに股間踏みつけられているし。
アンジェリカ・リーも魅力的だがフィッシュ・リョンが可愛い。

2011年10月2日日曜日

映画『127時間』

2010年 監督:ダニー・ボイル
at ギンレイホール




分割画面によるUNIQLO CARENDARのような早回しでスタイリッシュに始まる。
ロッククライミング大好きの青年アーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)は週末に一人でブルー・ジョン・キャニオンへやってきた。
広大な大自然を満喫するアーロンだったが、狭い断崖を軽快に降りている途中で落石の岩に腕を挟まれて動けなくなってしまう。
知恵を絞ってなんとか脱出しようとするが、岩は何をやってもびくともせず、砕くことも削ることもできない。
乏しい食料とわずかな水のみで着々と過ぎ去っていく時間の中、過去の出来事が後悔とともに過ぎっていく。

映倫G(どなたでもご覧になれます)。
予告編を見る限り、彼が最後にどうするのか見当は付く。
デジタルビデオカメラに残っている水着の女の子を映像を見て、自然に左手がするすると下に向うアレの事ではない。
そのアレじゃなくてもちろんあのアレの事だ。
隣の隣に座っていた女性の人は両手で顔を覆っていたと思ったら、そのまま屈みこんで完全拒否状態に。
最終的には席を立って出て行き、問題のシーンが終わった頃にとことこ席に戻ってきていた。
恐怖の映倫G(どなたでもご覧になれます)。
プールのシーンとかどうなってんだろう。特殊メイクでどうこうできる話じゃないからCGなのかなぁ。

映画の大半が岩に挟まれて身動きの取れない状態でのシーンなのに、ラストの予見もあってかスリリングで面白い。

実話らしい。

映画『ザ・ファイター』

2010年 監督:デヴィッド・O・ラッセル
at ギンレイホール


ザ・ファイター コレクターズ・エディション [Blu-ray]

マサチューセッツ州ローウェルには、あのシュガー・レイ・レナード(・・有名ボクサーらしい)からダウンを奪って地元で伝説的英雄になったディッキー・エクランド(クリスチャン・ベール)がいた。
ディッキーは今では弟ミッキー・ウォード(マーク・ウォールバーグ)のトレーナーをしている。
兄はアウトボクサーで弟はインファイター。
そして性格も正反対。
底抜けに陽気だが破滅的な兄ディッキーは完全な麻薬中毒で、過去の栄光にすがりついて順調に転落中の男。
一方真面目な弟ミッキーは実力はあるらしいが、トレーナーなのに練習時間にやってこない兄や金の亡者に成り下がっている母親に振り回されて負け続きになっている。
母親や兄のお気楽さにより10Kgも体格差のある相手と闘わされて殺されかけてから、ミッキーは自分のボクサーとしてのこれからについて真剣に考え始める。

もっととことん暗くして家族の物語になったら面白そうだけど、一応サクセスストーリーになっている。
実話らしいのでしょうがない。まるで映画みたいに成功しちゃったんだから。

ラストに実際の兄弟の映像が流れるのだけど、兄がクリスチャン・ベールが演じたまんまの陽気さで面白かった。

ボクシングシーンはまじにやっている。
製作にも携わっているマーク・ウォールバーグは3年もの間トレーニングを続けて準備していたという入れ込みよう。
ダーレン・アロノフスキー監督が降板してデヴィッド・O・ラッセルに代わったり、兄ディッキー役のブラッド・ピットが降板したり、と結構紆余曲折を経て製作された映画らしい。

マーク・ウォールバーグは昔から猿顔だったけど、年を取るごとに悪化している気がする。
もうゴリラにしか見えない。

2011年10月1日土曜日

10月INFO

10月3日(月)午後1:03~2:48  BSプレミアム
「アイス・カチャンは恋の味」2010年・ マレーシア
〔監督・脚本〕アニュウ
10月4日(火)午後1:02~3:24  BSプレミアム
「デリー6」2009年・ インド
〔監督・脚本〕ラーケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー
10月5日(水)午後1:03~2:35  BSプレミアム
「冬休みの情景」2010年・ 中国
〔監督・脚本〕リー・ホンチー
10月6日(木)午後1:05~2:28  BSプレミアム
「ピノイ・サンデー」2009年・ 台湾/日本/フィリピン/フランス
〔監督・脚本〕ウィ・ディン・ホー
10月7日(金)午後1:05~2:49  BSプレミアム
「キャプテン アブ・ラーイド」2007年・ ヨルダン
〔監督・脚本〕アミン・マタルカ
10月9日(日)午後10:02~午前0:08  BSプレミアム
「お引越し」1993年・ 日本 
〔監督〕相米慎二
10月11日(火)午後1:05~2:29  BSプレミアム
「トゥルー・ヌーン」2009年・ タジキスタン
〔監督〕ノシール・サイードフ
10月12日(水)午後1:05~2:53  BSプレミアム
「シャングリラ」2008年・ 中国
〔監督・脚本〕ティン・ナイチョン
10月13日(木)午後1:00~3:14  BSプレミアム
「胡同(フートン)のひまわり」2005年・ 中国
〔監督・脚本〕チャン・ヤン
10月16日(日)午後10:02~11:41  BSプレミアム
「おかあさん」1952年・ 日本
〔監督〕成瀬巳喜男
10月23日(日)午後10:02~11:56  BSプレミアム
「秋刀魚の味」1962年・ 日本 
〔監督・脚本〕小津安二郎

NHKアジア・フィルム・フェスティバルの2009年と2010年の上映作を何本かやる。
フィルムフェスティバルの作品に外れは無いので全部観なくては!
さらに、相米慎二や成瀬巳喜男、小津などもありかなり盛りだくさん。
自分が録画しようとしているやつだけ書いたので、他にもマジッド・マジディの「運動靴と赤い金魚」とか「ミリキタニの猫」等もある。
10月やべ~。

そして何気なく11月の放映予定も見ていたら、10月の興奮をも吹き飛ばしてしまうような衝撃のラインナップでちびりそうになった。
待望のタルコフスキー(一本)だけでも興奮するのに、さらにはビクトル・エリセ(二本)もある。
そして昔アナログで録画したけどデジタルテレビでは見る気になれずに保留にしていた山中貞夫(一本)。
小林正樹(一本)にチャップリン(一本)まである。
滅多に放映しない作品ばかり。
11月は仕事なんかしている場合じゃない。