2010年 監督:リー・ホンチー
BSプレミアム 録画
1階建ての黄土色の建物だけが収まる殺風景な街角のショットから始まる。
建物の角はぴったり電柱と重なり、建物の奥かもしくは建物にはブルーの斜め縞のあるへんてこな塔も見える。
まるで1枚の水彩画のようだが、実写だ。
だだっ広い道路をおっさんが一人過ぎった後、二人の少年がフレームの両側からそれぞれ出てきて、ローテンションで他愛の無い言葉を交わしていると、さらにもう一人少年が入ってくる。
と、ここまでの間、バックには「ブオーシ アイ 八百坪」っていうど根性ガエルの「ピョコン ペタン ピッタンコ」のようなリズムの宣伝句がどこかのスピーカーから永遠に反復されている。
さらには曇った空から雷なのか花火なのかよく分からない轟きも聞こえてくる。
何週間か前、平日の仕事終わりにねっころがって見始めたのだけど、始まって30秒でくそ眠くなったのでその日は断念した。
このオープニングを見る限り、かなり好みだし面白そうだったので十分に睡眠を取っているときにじっくり見ようと。
で、今日は比較的たっぷり寝たので大丈夫だろうと思って見始めたら、3分くらいで限界が来て2時間ほど昼寝してからまた見始める。
昼寝までしたのに見ているとまた眠くなってくるので、しょうがないからねっころがるのをやめて胡坐かいて最後まで見た。
全体的に面白かったような微妙なような、不思議な感覚の後味がする。
舞台は内モンゴルで、終わろうとしている冬休みの情景が淡々と描かれていく。
何か事件が起こるわけでもなく、これといったストーリーがあるわけでもなく、主人公がいるわけでもなく、正しく「情景」が映されていく。
しかもありふれた日常のほのぼのする情景じゃなくて、日常のようでいながらなにもかもが異常にも見えるという情景。
登場人物は9割かた無言無表情で突っ立っているか、無言で座っているし、しかもまず笑わない。
アキ・カウリスマキのような、無言でもここは笑いどころと分かるはっきりしたユーモアがあるわけではないので、鬱屈した閉塞感無気力感が漂う。
(数少ないセリフや無言ってだけで結構笑えるところもあるが)
長回しも多いがほとんど静止していてびっくりするくらい動きが少ない。
さらに音楽や音が異常さを加速させる。
冒頭の繰り返される宣伝句(「国際ブランドメーカー直売」と言っているらしい)も不思議だし、外のシーンで鳴り響く音もよく分からない。
花火の音のように聞こえるが、説明は一切ない。
そして夜のシーン等で何度か挿入される歌がまた変。
女性の鼻歌のようだが、途中で寝息のように「ん?」「ぅん?」と男の声とともに掛け合いが入る。ちょっと怖い。
眠いとかなんとか文句ばっかり書いているみたいだが、別にそんなに批判しているわけじゃない。
ストーリーやセリフだけでなく、映画で一番重要な動きすらも(静止の多用により)抑止することで、却って一挙手一同の些細な変化に神経がいって面白い。
普通ならつまらなくなるところ、静止がちゃんと絵になっているから退屈はしない。眠くはなるが。
ラストも衝撃的なくらいびしっと決まっている。
監督は芸術家肌の若い人なんだろうな。
ベテランは一部を除いてまずこういう自分の作家性を盲信した作品を撮らないだろうし、興行成功が確実に望めない映画は撮らないだろう。
2011年11月3日木曜日
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