2011年11月17日木曜日

映画『トゥルー・ヌーン』

2009年 監督:ノシール・サイードフ
製作国:タジキスタン
BSプレミアム 録画




上サフェドビ村の娘ニルファは、下サフェドビ村のアジズとの結婚を控えていた。
ニルファは気象観測所でロシアからやってきた主任キリル(ユーリー・ナザロフ)の元で助手をしている。
ロシアもロシア人もよく思っていない住人達だが、キリルはその人柄と知識で一部の住人から大きな信頼を得ている。
最近ロシアと手紙も無線も繋がらなくなり、ロシアにいる家族と連絡が取れない状況に気落ちしていたキリルは、娘のように可愛がり次期主任に推薦しようとしているニルファの結婚を素直に喜んでいた。
そんな人々の人生が息づく長閑な村で、ある日突然軍隊により鉄条網による国境線が引かれ、何世代にも渡って普通に行き来していた上サフェドビ村と下サフェドビ村は分断されてしまう。

いいやつばかりじゃないけど~
わるいやつばかりでもない~
素朴な生活と生命力の前では、いいやつとかやなやつとかいう概念などちっぽけだ。
彼らの生活を脅かすのはもっと強大な力、国とか軍隊のように人で構成されていながらも人間性を失った無機的なものになる。
素朴な住人達を見ていると、ハッピーエンドであってくれと願うのだが。。

雄大だと思われる自然は殊更強調して撮影されることもなく、セリフも少なめで全てが慎ましい。
慎ましいながらも、セリフやシーンの展開で時折並々ならぬ緊張感が走るので引き込まれていく。

本物の村人だと思われるエキストラの力強い無表情さが印象に残る。
主役のキリルの表情豊かな大きな優しさを頂点とすると、エキストラの無表情さとの隔たりに多少違和感があるが、キリルはロシアから来た外国人であるわけだし、主な登場人物達、ピルナザールの素直な感情表現やニルファの美しく優しい微笑み等が両者の中間地点で中和してくれる。

音楽を結構多用していて、ちょっとうるさいかなと思っていたけど、エンドロールの音楽はちょっとたまげた。
劇中バイクのシーンでも使われていた音楽だが、ラストのあの展開の後でこの音楽がまた流れるのは衝撃だ。
音楽を使いすぎているのは映画の音楽にあまりこだわりの無い監督だからなのだろうと思っていたけど、実はその逆で常人には計り知れないセンスの持ち主なのかもしれない。


タジキスタンで18年ぶりに製作された映画らしい。
ということは間違いなくタジキスタン映画は初めてだな。
中央アジアの映画は全て面白い!と声を大にして叫びたい衝動を常日頃抑えてきてよかったよかった。
タジキスタン映画観たことないのかよ!と突っ込まれて危うく恥かくとこだったぜ。

ああ、でも調べてみるとフドイナザーロフはタジキスタン出身で、名作『少年、機関車に乗る』はタジキスタン/ロシアの合作、『コシュ・バ・コシュ/恋はロープウェイに乗って』もタジキスタン/スイス/日本の合作になっている。(ちなみに『ルナ・パパ』はドイツ/オーストリア/日本)
そして、この映画の監督ノシール・サイードフはフドイナザーロフの助監督をしていたらしい。

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