2003年12月21日日曜日

映画『フリーダ』

2002年 監督:ジュリー・テイモア
at ギンレイホール


フリーダ【廉価2500円版】

どんな映画かすらよく知らないで見た。抜群に面白い。今年度のNO.1。

冒頭、鹿や孔雀やらが中庭にいる変な南国風の家から、四人の男によりベッドが運び出されている。
引越しか?
トラックにでかいベッドを積み込んだところでカメラがベッドを真上から映す。
するとそのベッドには女性が一人仰向けに寝ておりカメラと視線が合う。
しかもこの女性、眉が見事につながっているじゃないか。
それだけでぐっと引き込まれるのだけど、この女性がベッドの上で横に体を向けた瞬間、一気にこの女性が女学生の時代までさかのぼり、ギターかなんかの軽快なリズムと共に初々しい女性が元気に走っているシーンになる。もちろん眉はつながっている。
これでもう涙出そうになった。

女性はフリーダカーロという。実在の女性画家。
フリーダとその夫になる壁画家のディエゴ・リベラの愛の軌跡。
不貞、嫉妬、名声、交友関係、大事故、痛み、苦悩の愛。
あまりにフリーダの人生が壮絶すぎて、といってもこれでもかと言うくらい悲惨さをアピールしていないところが演出の謙虚で、決して重苦しくならない。

フリーダの絵が度々挿入されるのだけど、ただ映すのではなくて、CGを創造的破壊的に使って映す。
例えば二人の結婚シーン。
フリーダは吸い込まれそうな深い緑のドレスに、優しさを帯びた赤いショールをまとって現れる。
緑と赤に魅入られていると、不意にディエゴとフリーダが二人で立っている絵画が映し出されている。ぽけーっと見とれていると、絵の(画面の)両脇から数組の男女がチークダンスを踊りながら入ってきて、気づくとディエゴとフリーダも絵じゃなくて役者になっている。
絵の世界に侵食しているのだけど心地よい刺激の食い方をしている。

フリーダを演じるサルマ・ハエック、そしてディエゴを演じるアルフレッド・モリナ。いい役者だ。
後半のアルフレッド・モリナの優しい表情、別人のような雰囲気など特に凄い。

僕はどう見ても美人じゃないよなぁと思う女優が(あくまで僕の好みの話)、映画の中で「美人」という設定になっていると気に食わない質なのだけど、(『KISSing ジェシカ』のヘザー・ジャーゲンセンとか)この映画に関しては、どう見ても眉がつながっているし美人じゃないフリーダが「美人」という設定なのはなんだか許せてしまう。

フリーダという壮絶に生きた女性がいるからあなた達ももっと頑張りなさいとか主張する映画じゃなくて、フリーダの駆け抜けた生の、生命の輝きをフリーダの絵とともにしっとり見つめ続ける映画。

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