2009年6月7日日曜日

映画『PARIS(パリ)』

2008年 監督:セドリック・クラピッシュ
at ギンレイホール


PARIS-パリ- (通常版) [DVD]

オープニングクレジットが音楽に乗せて始まったと思ったらすぐ終了して作品の途中のような静かなシーンが始まる、と思ったらまた音楽が再開してオープニングクレジットが流れる、と思ったら・・・の繰り返し。
※作品の途中のようなシーンというのは後で気づくが実際作品の途中のシーンがこのオープニングで挿入されていた。
疾走途中に息を止めると突如静かな日常に移行し、呼吸を再開すると再び疾走するような不思議なオープニング。
動と静っていうのが生と死で、常に隣り合わせで裏表ってこと?それにしてもこんな表現方法は初めて見た。

セドリック・クラピッシュは『スパニッシュ・アパートメント』しか見ていないのだけど、後半のジェットコースターのような驚異のスピード感に衝撃を受け、この作品もノリのいい作品なのかなと思っていたけど、意外や静かな群像劇。

元ムーラン・ルージュのダンサー、ピエール(ロマン・デュリス)は心臓病を患ってしまう。
助かるためには心臓移植しかないのだけど、その手術も成功率は4割程度。
間近に迫った死に直面しながらドナーが現れるのを待つ日々。
ピエールの姉のエリーズ(ジュリエット・ビノシュ)はソーシャルワーカーで3人の子供を育てるシングルマザー。
弟ピエールから病気のことを聞き、案じたエリーズはピエールのマンションで子供たちと一緒に同居を始める。
ピエールが毎日すること、自宅のマンションのベランダからパリの街並みを見下ろし、行きかう人々の人生を想像して楽しむこと。

登場人物はいっぱいいる。
歴史学者のロラン(ファブリス・ルキーニ)は大学の講義で世にも美しい生徒を見かける。
初老に差し掛かろうかという年齢で大学生に恋したロランは匿名の賛美メールを彼女に送信し続ける。
ロランの弟で建築家のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は偏屈な兄ロランから羨望の意で「お前は普通だ!」と言われ、悪夢まで見てしまう。この悪夢が笑える。

市場で働くジャン(アルベール・デュポンテル)とカロリーヌは元夫婦だが離婚している。
ピエールの姉のエリーズとジャンはお互い気になっているみたいなんだけど、ジャンは心のどこかでまだ元妻のカロリーヌのことを想っている。

カメルーンに住むブノワは、パリで清掃員として働く兄夫婦を頼りにパリに行く決意をする。
水泳指導員で働いていたときに知り合ったパリにいるというマルジョレーヌ(オドレ・マルネ)という女性と再会する期待を持って。

ピエールが通うパン屋の店主(カリン・ヴィアール)はいつも店員の悪口ばかり言っている。
まあ嫌な感じのおばさんです。

主要な人物はそんな感じかな。パン屋は主要じゃないか。

ピエールに死が迫っていることから、なんとなく他の登場人物の上にも死を覆いかぶせて見てしまう。
ああ、なんかこんなシーン映してるのおかしいなと思ったら予想通り一人死に、続けてこいつも電話なんかしちゃってなんか危なそうと思ったら残念なことになり、ピエールも子供たちを躍らせているシーンでソファに座ったまま静かに逝っちゃいそうだと思ったらそこはスルーされ、続くシーンでもああ、まずいと思ったらそこもスルーでしかも死んだと思っていたあいつが生きているという衝撃を意識外の死角からさらっと挿入するところに衝撃を受ける。
生きているって素敵だね、っていうのを声を大にして言うだけじゃなくて、同時にこういう絶妙な演出の裏切りとつながりでさらっと表現もしてしまうところがセドリック・クラピッシュ恐るべし。
ということで一番のお気に入りはブノワが絵葉書の写真と風景を見比べているシーン。

『モンテーニュ通りのカフェ』が心温まるハッピーな群像劇だとしたら、これは心温まりかつどこか空虚で切なく、そして人生や人や街がどうしようもなく愛しくなってくる群像劇かな。


僕のお気に入りの俳優ロマン・デュリスは坊主頭に髭面でかなり怪しい。
外出着のコートは凄くスタイリッシュでかっこいいのだけど、マフィアとも違う危険な怪しさが漂う。
パーティの時の部屋着はVネックで胸毛が出ていてかなり怪しかったな。

ジュリエット・ビノシュはなんであんなに美しいのかね。
もう結構な年だし、元々美形というわけでもないのだけど、美しいんだよな。
ぼさぼさな髪が可愛らしくもある。

ファブリス・ルキーニは変質者っぽいところがいいよな。
踊れるファブリス・ルキーニ。

ついさっき見た映画にも出ていて忘れもしないアルベール・デュポンテル。
こっちの方が新しい作品なのに髪が増えた気がする。

ファッションモデル役のオドレ・マルネは絶対どこかで見たことあると思って調べていたのだけど、女優というか90年代後半にトップモデルだった人らしい。
モデルは興味ないから見たことあるわけないのだけど、映画では『ぼくの大切なともだち』に出ていたらしい。
それで印象に残っているのかな。
もしくは全然違う女優と見間違えているだけなのか。

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