2009年 監督:ミヒャエル・ハネケ
at ギンレイホール
モノクロだし1950年代くらいの映画のデジタルリマスターなのかと思ったら2009年作。
ミヒャエル・ハネケか。
一本も見た事無いや。
長年関係を持ってきた情婦に対して「お前は口が臭い」とか「若い女を想像してお前を抱くのに疲れた」とか、さんざん衝撃の暴言を吐いた後、「黙って死んでくれ」って言う映画。
「黙って」というところに実は隠された意味があると後で分かるのだが、それにしても衝撃だ。
捨て台詞に使えそうだな。「黙って死んでくれ」。
第一次世界大戦直前のドイツ北部にある村での出来事。
村のドクターの家の門付近に針金が張られ、馬に乗ったドクターが落馬して大怪我を負う事件が発生する。
誰が何のために行なったのか不明なまま、この事件を皮切りに次々に不可解な事件が連続する。
中には偶然の事故や犯行意図も犯人も明確になる事件もあるけど、多くは犯人がはっきり明かされないままラストを迎える。
村を支配しているのは男爵一家で、それと同等くらいの権力者にプロテスタントの牧師一家がいる。
男爵一家の下には家令一家がいて、さらに小作人一家がいる。
それからドクター一家や独身の若い教師がいて、物語自体はこの教師が老齢になった後の昔語りという形式で進んでいく。
登場人物が多い。
大量にいる子供達も誰が誰の子供なのか分からなくて混乱する。
字幕も背景の白色に重なってよく読めなかったりするので、字幕に集中していたら映像が見れない。
そんな悪循環の上にはっきり犯人が分からないラストだから大量のはてなマークです。
犯人を示唆するヒントはたくさんあって、もう一回くらい見たらもうちょっと詳細に各事件の犯人を想定できるかもしれない。
でも犯人によって解釈が異なってくるとはいえ、謎解きの物語というわけでもないので、犯人探しはそれほど重要じゃない。
重要なのはこの一見平和そうに見えるのどかな村の、大人達の独りよがりなエゴイズムと、その犠牲者の子供達に育つ残忍狡猾な悪意にある。
間接的な復讐と天誅気取りの履き違えた正義と差別。
村を襲った謎の事件は、第一次世界大戦という大きな「事件」にかき消されてうやむやになる。
いや、うやむやというか、この村の出来事が第一次世界大戦、そしてナチスへとシームレスに移行していくような感じだ。
モノクロにしたら面白くなっちゃうから今の時代の監督がカラーで勝負しないで安易にモノクロにするのは卑怯だと思っていたけど、この映画に関してはまあ許せるかもしれない。
のどかな村の中に重く垂れ込める見えない悪意と緊張感がモノクロの映像によって上手く表現されている。
カラーフィルムをデジタル処理でモノクロ変換しているらしい。
そのせいかモノクロの発色がいいというか緻密というか、くっきりした映像になっている。
ちなみに登場人物による賛美歌はあるけどバックミュージックが一切無い。
クレジットタイトルやエンドロールも無音。
下手に音楽使うよりも一切無い方が確実に面白くなるもんだ。
2011年4月24日日曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿