2023年11月4日土曜日

映画『武曲 MUKOKU』

2017年 監督:熊切和嘉
製作国:日本
at ギンレイホール




藤沢周原作で、原作は以前読了済み。
あ、映画化されているんだと知ったときは、よく映画化する気になったなという感じ。
素人だけど運動神経と本能に基づいた剣の才能に満ちた羽田君とか、剣道八段で達人の域にあるミツムラ禅師とか、映像で一体どう表現すんのよ。

で、いろいろ楽しみにして見てみたんだけど、どうなんだろう。
小説では矢田部と羽田のダブル主人公で、映画でも一応そうなんだけど、どちらかというと矢田部の比重が多い気がする。
そして映画では矢田部が最初からアル中で、映画の半分はアル中が暴れている姿を見せられている感じ。
羽田君はただの生意気な素人って程度。
そこそこ大作な原作の心情描写はとりあえず置いておいて、ストーリーの盛り上がる部分を中心に脚本した感じかな。
藤沢周の中ではストーリーっぽい展開があるとはいえ、原作では心理描写がメインだからなぁ。
ストーリーの上っ面なぞってもそれほど面白いわけじゃない。
かといって立ち会いを魅せようとしても、演じるのは剣の達人じゃなくて役者である以上限界がある。
羽田君を演じた村上虹郎は剣道初段で、矢田部役の綾野剛は未経験者だが撮影前に二ヶ月の特訓を行ったらしいけど。
別に本物の達人や天才の立会が見たいというわけでもなく、映画なんだしそれっぽくあればそれでいいのだが、この作品に関しては立会が目玉になっているし、原作読んでいる人からするとちゃんとした本物の迫力を見たかったな。
綾野剛のアル中演技を散々見させられると立ち会いシーンもなんか笑っちゃうのよね。

熊切監督は『鬼畜大宴会』しか見ていないからか、どうしてもB級映画臭を感じてしまう。
脳天ぶちぬく所とか黒い雨とかホタルみたいなCGとか。

綾野剛が後半むきむきになっているのは、心身ともに回復したことを肉体で表したいという監督の要望に応えて、短期間でバンプアップしたらしい。すご。

前田敦子がちょい役で出ている。
矢田部に彼女なんていたっけって思って原作探してパラパラ読んでいると一応カズノという名前の女性は原作にもいる。彼女じゃないけど。
なんかパンツ(色気のないパンツ)を見せるためだけにキャスティングされたようなちょい役。。

もしかしたら原作読まずに見たら楽しめたのかもなぁ。

2023年10月22日日曜日

映画『最低。』

2017年 監督:瀬々敬久
製作国:日本
Amazonプライム




3人の女性を主人公にした群像劇。
主人公の一人あやこ役を演じた山田愛奈がすごい。
クールで心優しい美少女という雰囲気から一転狂気が滲み出る感覚にぞくっとする。
最後の方の早口狂気の演技はうますぎるというかリアルを超えているというか、映画初主演の子の演技に泣かされるとは思ってもみなかった。

3人の主人公はいずれもAV女優に関係する子たちになっている。
エンドロールで知ったけど原作が紗倉まな。
原作は4人の主人公の連作短編らしい。
映画では、というか原作もかもしれないけど、3人の主人公は完全に独立しているわけではなくて物語上緩く関連していたりもする。血縁とかマネージャー繋がりとか。
映画だから繋げたような気もするけど、血縁の方は好きなものが同じっていう結構重要な要素が入るから原作もそうなのかな。

美穂役の森口彩乃はこれが初脱ぎ。
眼力の強い美人。おでこ出している人は自信がある証拠だから大体美人よね。
美穂がなんでAVに出演したのかはなんかよく分からなかった。
欲求不満ならもっと他の手があるしAVというファンタジーで解消されるものじゃないだろうし。

人気AV女優彩乃役の佐々木心音はよく脱いでいるらしい。
Wiki見ると女優・シンガーソングライターになっているな。多才。

この映画は嫌な感じのする人の描き方がうまい。
というか登場人物すべてなんか嫌な面を見せてくれる。
あやこを冷やかしに来る同級生集団のなんといやらしいことか。
いじめ中心人物の子なんか作品によってはかわいいキャラになりそうなのに、あのあごといいめっちゃむかつく。
とりまきの女子高生たちの冴えなさもまたリアル。

彩乃の母親も「私はあなたのことをこんなに心配しているのにどうしてわかってくれないの」系の人でだんだんうざくなってくる絶妙さ。
渡辺真起子がうまい。
「戻るなんてできるわけないでしょ!そういう仕事してんだよ私」
あやこの母は実家に帰ったけどな。娘のために。

美穂の夫健太(忍成修吾)も最初から嫌な感じ。
変態サイコパス役がはまりそうだけど、それもこの作品だけの印象なんだろうな。
ネットで検索すると爽やかイケメンの写真がいっぱい出てくるし。

一人ひとり上げていたらきりがないけど、どの人物もいやーな感じだったり嫌な面が出てきたりとかするのよ。

主人公3人の女優は知らなかったが、脇役は結構豪華に固めている。
渡辺真起子、根岸季衣、高岡早紀、江口のりこ!

2023年9月30日土曜日

映画『孤狼の血 LEVEL2』

2021年 監督:白石和彌
製作国:日本
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『孤狼の血』の続編。
原作にはないオリジナルストーリーらしい。
にしてもめっちゃ面白かった。

今作では日岡秀一(松坂桃李)が主人公となる。
あれからかなり頑張ったらしい。完全に裏社会をコントロールしている。
そこに上林成浩(鈴木亮平)という五十子会長の右腕だった男が出所する。
なんか礼儀正しい人の良さそうなあんちゃん。
と思ったのもつかの間、、、悪魔や。。

この上林っていうのがマジで恐ろしい。
組長警察一般人、見境なさすぎる。頭悪いんだろうな。
それが押し通ったのは裏である思惑があったからなんだけど、一番野放しにしちゃいけない男に自由を与えたらそりゃあ秩序が崩壊するわ。
鈴木亮平ってこんなに耳が尖っていたっけ。
変な髪型含めて悪魔にしか見えん。
こんなところにスパイ送り込むとか正気の沙汰じゃないんだけど、見てるこっちは上林が次にどんな行動するのかビビりながら見ているから、緊張感がものすごい。
上林の過去を少し掘り下げたり等、キャラクターとしても大事にされている感があって、最後の方なんてなんか可哀想かっこよく見えてくる。

登場人物は多い。
印象的なキャラクターが多くて飽きない。
音尾琢真演じる成金ヤクザとかさ、前作では下っ端とはいえ結構イケイケなヤクザだったのにすっかりコメディ雑魚キャラにwww
腹黒な監察官(滝藤賢一)は、お前何様っていう凄みをきかせたりして大物ぶっているところでの最後の落差とか、痛快。こういう落差の演技できるのって凄いよね滝藤賢一。
中村梅雀、宮崎美子の胡散臭さとかさ、癖強い人達ばっかり。
吉田鋼太郎演じる会長の雑魚感とか三宅弘城演じる警部補の正義感だけの無能キャラとか大物なのか小物なのかわからない斎藤工演じる若頭とか。
あまり出番のない尾谷組組長代行役の渋川清彦の最後のシーンのクローズアップ顔はあまりに渋すぎて笑いそうになった。

あまりに素人でなんか違和感あると思ったクラブのママ役は柚月裕子だった。

ドキドキで最高に面白かったよ。上林は映画史に残る悪役。

2023年9月24日日曜日

映画『宵待草』

1974年 監督:神代辰巳
製作国:日本
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冒頭から床。
でも女性がさわさわするたびに男は「いてっ!」「いてっ!」とか言っている。おどけた伴奏まで付くし。
なにこれ、コメディ?
遊郭の朝5時。男は苛立ちながら慌てて出ていき、憲兵を襲う。えっ。。
ぶれっぶれっに揺れて酔いそうになるカメラ、刀がぶつかり合うキュぃーんっていうコントみたいな音、、なんか開始5分で大混乱だよ。

これは、実は傑作なのか、よく分からないけどかなり面白かった。
ストーリーは先があまりにも読めなさすぎる。
3,4本くらいの違う映画をつなぎ合わせて1本にしたのかと思うくらい。
コメディなのかシリアスなのかミュージカルなのかアメリカンニューシネマなのかwww

代議士の息子のぼんぼん国彦(高岡健二)は、やろうとすると頭が痛くなってできないという奇病を抱えていた。
いや、そこはあまり重要じゃないか。
国彦はノンポリだが、革命を起こそうとしているアナーキー集団に所属している。
あ、時は大正ね。
温泉宿で知り合った男が唐突にいなくなったり、なんやかんやで国彦と平田玄二(夏八木勲)と北条寺しの(高橋洋子)の逃避行ロードムービーが始まって映画撮影に参加したり気球に乗ったり3連串刺ししたり玄二の父(殿山泰司)が毒おにぎり食ったりでんぐり返ししたり。

コメディとシリアスのどっちともつかない狭間っていうのが結構怖い。
いつの間にか電車を降りた団員が吊り橋をえっほえっほと走っているのは追手が迫る恐怖というか走る姿が可愛らしいし、その後の気球を降りる平田たちを笑い声あふれる和気あいあいとした雰囲気で手伝うところとか、ハテナマークと共に不気味な恐怖がある。
萎んだ気球が覆いかぶさってくるのは演出通りなのかな。
3連串刺しとかギャグだよね。
気球の操縦士はこつ然消えたけど何処行った??怖い。

名シーンも多い。
雪解けのぐじょぐじょの未舗装道路を走る自転車を馬で追っかけるのはいいし、死者の前で大衆演劇みたいな舞踊シーン(巧みに避ける国彦)とか、後ろから迫りくる蒸気機関車をさして気にもせずに避けたり、汽車に乗った「しの」が降りるところが映っていなかったり、海沿いっぽい所にある竹柵に寄りかかっている二人がカメラが引くとすごい岸壁だったり等々。

脚本は長谷川和彦なのね。
監督作2作しかないけど二本とも傑作だったし長谷川和彦ファンなら脚本作も全部抑えていそう。(私は知らなかった)
このページみると結構演出で変えているみたいね。
音楽は細野晴臣。
牧歌的な曲が多い。
アップテンポ船頭小唄とか大正歌謡とか、常に口ずさむやつがいいんだけどその辺は神代辰巳の演出であって細野晴臣は関わっていないんだろうな。

そういえば国彦(高岡健二)が痛みで頭を掻きむしる姿が一瞬宮本浩次に見えたw

北条寺しの役の高橋洋子は可愛らしい顔立ちで、時々凄い美人でもある。
高橋洋子、書いた小説は芥川賞候補になって映画監督もやっている。めっちゃ多才。
NHK朝ドラのヒロインもやっていて、平均視聴率46.1%。めっちゃ有名。
文学座で松田優作と同期だったらしい。
高橋洋子っていうと、ああエヴァの。。ってなるけど、古い世代はこちらの高橋洋子さんになるんだろうな。

2023年9月17日日曜日

映画『恋人たちは濡れた』

1973年 監督:神代辰巳
製作国:日本
Amazonプライム




自転車の車輪のアップから荷台にフィルム缶を積んだ自転車の後ろ姿。
漕ぐ男はしきりに後ろを振り返りながら坂道を登っていく。
潮風で錆びた倒れかけのようなガードレールの向こうには白波が立つ海。
こけて転がるフィルム。
男はフォルムを巻きながらこんにゃろー
『恋人たちは濡れた』ドン!
冒頭からとんでもなく引き込んでくる。

男(大江徹)は映画館でフィルム運びの仕事をしている。
3日前にこの町に流れ着いたらしい。
しかし「お前中川の克だろ」といろんな人に声をかけられる。
そんな奴知らねーよ人違いだよと。
この辺の設定がよく分からなかったけど、当時のプレス資料で「五年振りに故郷の土を踏んだ男」って書いてあるみたいだから人違いじゃないらしい。
最後まで見てなんとなくそうかなとは思ったが、はっきりそういう設定だと分かるとまたいろいろ見方が変わってくるな。母親シーンとかさ。

プレス資料から
「男が故郷に帰った時、生きる望みを失った男の死を待つ姿があった。女の誘いも、男の友情も、母も、それは遠く離れた過去の思い出しかなかった。そんな一青年の暗い青春を描く日活ロマンポルノ注目の話題作。」
怖いもの知らずな感じは未来に絶望しているからか。
喧嘩をふっかけ、またはふっかけられるようなことをよくするのに、恐ろしく喧嘩が弱い、ってところが愛しい。
喧嘩に負けてハイハイしながら家に帰る途中、喧嘩相手光夫(堀弘一)の彼女洋子(中川梨絵)に蹴られたり頭はたかれたりとかさ。
この光夫と洋子とはその後なぜか3人でつるむようになる。つるむって言い方は違うか。克があんな感じだから仲よさげな関係でもないし。
光夫は世話焼きのいいやつで、洋子はなにやら克に興味がある風なのね。
洋子ちゃんの70年代サイケなファッションが可愛い。

絵沢萠子の全力走りは絵になるなぁ。
かなり早いけど、若い男の全力には及ばない悲しみ。

3人で馬跳びのシーンが一番好きだった。
3人ともへろへろになってんの。脱いでるし。
洋子は克とやりたいんだけど、いつも近くには光夫がいるし、3Pでもいいやみたいなことか。

「本当はよ、俺だってあんたとしたいんだよ」「だけどな・・・」
すごいラストシーンだ。

絡みはエロさはあんまりない感じ。
砂が痛そう。

「まあね」と「こんにゃろー」がしばらく口癖になりそうだ。

神代辰巳は学生の頃映画館でやっていた特集で『四畳半襖の裏張り』と『赫い髪の女』を見たはずなんだけどあまり覚えていないからまた見てみたいな。

2023年9月10日日曜日

映画『うれしはずかし物語』

1988年 監督:東陽一
製作国:日本
Amazonプライム




「ねえおじさん、あたしを愛人にして」
オープニングから引き込まれるよね。
殺風景なマンションの室内でおっさんと若い子がどことなくぎこちない感じで喋ってんの。
この人たちは何者なんだろうっていう興味からこのセリフww

寺田農と川上麻衣子主演。
今で言うところのパパ活みたいな関係。
企業の部長で妻と二人の子供がいるおじさん(寺田農)と純粋で奔放なチャコちゃん(川上麻衣子)がひと月15万毎週金曜に会う愛人契約を結ぶ。
おじさんは性欲だけじゃなくてチャコちゃんにめっちゃ夢中なのね。
チャコちゃん側はもちろんドライなんだけど微妙に謎な部分があって、最後に。。
だいぶ男視点の願望が詰まっているような気もしないでもないところ。
今だったらガチ恋客とかクソ客。
原作はジョージ秋山の漫画。読んでみたい。

エロ多めだけどなんか明るいのは全体的にコメディ要素が強いからか。
おじさんの妻(本阿彌周子)もよろしくやっていて、二人のすれ違いなんか緊張と緩和で笑える。
この本阿彌周子がまたエロい。川上麻衣子がきれいな体していてエロいんだけど、少しも負けてない熟年のエロス。

寺田農になんか憎めない愛嬌のあるおっさん演じさせたら強いよな。
それにしても女性側がノッていればいいけどそうでない場合は舐め回す男側の責めとかってキモいし滑稽よね。
ましてやおっさんと若い女性って組み合わせならなおさら。

日活ロマンポルノが終わった年に公開された日活ロマンポルノじゃない作品らしい。
なかなかの名作だった。

2023年8月27日日曜日

映画『ドラゴン・キングダム』

2008年 監督:ロブ・ミンコフ
製作国:アメリカ
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ジャッキー・チェンとジェット・リーが共演!
っていうので公開当時すごく見たかったんだよね。結局見なかったけど。
アマプラで普通に配信していたから見てみた。

最初孫悟空役で出てくるジェット・リーがコリン・チョウに石にされてしまい、えっ?共演っていうか同じ映画に出ているだけで接点無し??と勘違いしてしらけて見ていたけど、中盤以降でちゃんとあるじゃん。共演。

二人の対決が見どころで、正にジャッキー・チェンとジェット・リーが共演!っていう映画だった。
それ以外の見どころが全く無い、という意味でもある。

二人の対決は酔拳、螳螂拳、虎拳、蛇拳とか披露しちゃうしファンを喜ばせてくる。
ただ、まあジャッキーのスタントマン率が多すぎるんだよね。
3分の1以上はスタントマンなんじゃないかと思うくらい。
しょうがないとはいってもなんか気になるし残念なところ。

一応主人公はアメリカ人のカンフーオタク青年ジェイソン(マイケル・アンガラノ)。
地元のギャング達に脅されて、チャイナタウンの馴染みの質屋にギャング達が強盗に入る手引きするジェイソン。
はぁ?お前この質屋の主(ジャッキー・チェン)によくしてもらっているのに何してくれてんの?
これで観客は100%ジェイソンが嫌いになる。
ただね、マイケル・アンガラノが元々なんかやってたのか知らないけど、撮影のための付け焼き刃の動きっぽくない結構ちゃんとしたカンフーアクションやるんだよね。
調べるとカンフーは知らないが『あの頃ペニー・レインと』で主人公の幼少時代を演じていたりと、そこそこキャリアを積んでいる青年だった。
しっかし、中国の田舎の農村にいるマイケル・アンガラノのとんでもない違和感www

ストーリーは異世界転生ものって感じ、っていう説明がしっくりきそう。
ちょっとの修行で強くなるチート能力。

2023年8月20日日曜日

映画『導火線 FLASH POINT』

2007年 監督:ウィルソン・イップ
製作国:香港
Amazonプライム




主演ドニー・イェン。
カンフーアクション少なめかなと思ったけどラストに濃厚なバトルを見ることができる。
カンフーアクションというかより実践的なスタイル。
ジェット・リーも現代物でカンフー要素やワイヤーアクションを封印している作品あった気がする。

ストーリーの方はまああってもなくてもいいような話。
暴力デカのマー(ドニー・イェン)がやりたい放題のベトナム3兄弟と対決する話。
3兄弟っていっても強いのは次男(コリン・チョウ)だけだけど。
郷ひろみを坊っちゃん顔にしたようなコリン・チョウがまあ強くてドニー・イェンとの対決は見ごたえがあった。
そういえばマーの相棒みたいなやつで潜入捜査中のウィルソン(ルイス・クー)っていうのもいる。
ルイス・クーは濃い顔のチャラ男ってイメージで年齢重ねたら消えそうな感じだが、ルイス・クーって今や結構なトップスターらしい。
ダブル主演的に出番多いから当時からスターだったのかなぁ。
ルイス・クーの相手役にはファン・ビンビン!

なんかストーリーだけみるとクソみたいな話だけど、出演者は豪華だったのか。
ケント・チェンも出ているし!

2023年8月12日土曜日

映画『彼女はひとり』

2018年 監督:中川奈月
製作国:日本
Amazonプライム




何も情報無しで見たから最初ホラーかと思った。
幽霊出てくるからホラーといえばホラーなのか。
いや、ホラー要素は幽霊というより、映像や演技やストーリーの終始漂う不穏な雰囲気がホラーだった。
冒頭から幽霊出すことでなんとなく緊張感が生まれて、その緊張感の中での棒読み風の演技が、最初意味の分からない登場人物達の背景をより得体のしれないものにしている。
いやー、面白かった。

ストーリーも面白かった。少しずつ背景を匂わせ明かしていく見せ方や流れがうまい。
ただの先生と生徒だと思っていたら、あれっ、なんか少し距離近くね?からの間髪入れず「しばらく学校の外では会えないです」ww
この先生もまた面白いのね。
今どきいない熱血で、家庭の事情にまでぐいぐい踏み込んできて「私達はとても心配しているんです!」っていう微妙にイライラさせる絶妙なライン。
本人はいたって真面目でたぶん本気で心配しているんだろうけど、生徒と付き合っているんだから倫理観とか教師の仕事に対する矜持みたいなものは欠如している。
この誰からも嫌われそうな先生が最後。。脚本書いた人もひねくれてるなぁ。

大人はあまり出てこないけど、この先生に限らず主人公の父親とかエンコーおばさんとか、ろくな大人が出てこない。
大人の身勝手に傷つけられ、傷つけ合い、救いを求める、子どもたちの物語。

監督の大学院の修了制作で、脚本も監督が書いているらしい。

2023年3月5日日曜日

映画『野火』

2014年 監督:塚本晋也
製作国:日本
BS録画



タイトルバックの出し方と琵琶の響きがATG映画または50年代の名作邦画のような年代不詳のどこか懐かしい雰囲気を醸し出していて名作の予感!
その後顔面ドアップから始まるのに少し「ん?」と思いつつも見終わってみればなんかやっぱり不思議なテイストの映画で結論としては面白かった。

太平洋戦争末期のフィリピンレイテ島が舞台。
そこで主人公田村(塚本晋也)が見る地獄絵図。激しい飢えと見えない敵の攻撃の極限状態で精神を保っていられるのか。

学生の頃映画好きの人と話すと誰も彼もゴダール見ろ、鉄男見ろ、って馬鹿の一つ覚えみたいに言うからなんとなく敬遠して見なかった。
ゴダールは結局その数年後に見てしまったがそういえば鉄男は未だに見ていないな。というか塚本晋也監督作を見るのはこれが初めてな気がする。
鉄男や他の作品見ていないからよくわからないものの、作風はB級映画寄りの人なのかな。
顔面ドアップ始まりや特殊メイクによる過度な残酷表現(ところどころギャグ)や少し棒読み風の演技や手持ちカメラ等々。
今調べてみると監督は「自ら製作・監督・脚本・撮影・美術・編集・出演を兼ねる自主制作スタイルを貫いている」らしい。この映画は配給すら自分たちでやっているみたいね。
題材的にはちゃんと撮ろうとすると大規模ロケで相当な予算がかかると思うけど、これを低予算でやるために相当な工夫と撮影の組み立てをやっているらしい。

まあそんな裏側は置いておいてこの映画についてだけど、最初に書いた通りなんか不思議なテイストなんだよね。
題材の重さと真面目さに異質なB級っぽさが付与されることで相互に化学反応起こしているみたいな。
巨額な予算を投じて大作になっていたら逆に胡散臭いんじゃないかと思ってしまうくらいB級っぽさがハマっている気がする。

なんか嫌な顔と嫌な声した役者が出ているなと思ったらリリー・フランキー。
この人こんな嫌な顔と嫌な声してたっけwww
嫌味な小悪党演じさせたら日本一じゃないだろうか。

野火ってタイトルの映画が昔あった気がする。調べたら市川崑で1959年の公開作がある。
市川崑版もこれもどちらも大岡昇平の小説の映画化みたいね。
市川崑版もいつか見てみたい。

2023年1月29日日曜日

映画『翔んだカップル』

1980年 監督:相米慎二
製作国:日本
BS録画




相米監督のデビュー作。
原作は柳沢きみおの人気漫画。
中学生かと思うくらい童顔な薬師丸ひろ子と鶴見辰吾がスクリーン狭しと動き回る。
デビュー作から相米って感じだったんだな。
自転車のシーンとか、庭から坂を滑り出すまでそこ1カットかよって思ったり、ローラースケートで電話のシーンでは瓶ジュースを持った薬師丸ひろ子が画面奥の居間側から現れてびっくりしたり。
長回しや少しのドリーで空間を一気に広げたりスクリーンの外で動きを持たせたりっていうやつね。

石原真理子はこの時はまだ杉村役のためにスカウトされた無名の新人だったらしい。
なんか恐ろしく大人びた雰囲気を漂わせている。

真田広之と原田美枝子がイケイケの大学生として一瞬、ほんと一瞬だけ顔が映る。