2007年2月25日日曜日

映画『めぐりあい』

1968年 監督:恩地日出夫
BS2 録画


石川セリの武満徹ポップソングというアルバムがある。
武満の合唱曲を各編曲者がポップスに仕上げたアルバム、と勝手に思っていたけどこの映画の冒頭で、石川セリで昔何度も聞いた「めぐり逢い」という歌が流れたので、ああ映画音楽だったんだと知る。
いい歌ですな。
アルバム引っ張り出して見てみると収められた曲の半分くらいは映画音楽じゃん。
「○と△の歌」はそういえば羽仁進の『不良少年』でちょろっと流れてたしな。

主演黒沢年男に酒井和歌子。
黒沢年男は電車で見知らぬ女の乳をもんでカラカラ笑う男で脳みそまで筋肉でできていそうな青年の役。
酒井和歌子はというと、芯の強いしっかりとした女の子の役、というのはどうでもよくてとにかくもう笑顔が可愛すぎる。
列車のドア越しに見せた笑顔にころっと持っていかれる。
しかしまあ事ある毎に笑いすぎだろってくらい笑うなぁ。

酒井和歌子に待ち合わせをすっぽかされた黒沢年男が駅の伝言板に「甘ったれるな」と書き置くのだけど、どう見ても黒沢年男の方が甘ったれなのね。
黒沢年男の絶望がどこがどう絶望なのかさっぱり理解できない。
黒沢年男に限らず、その弟も甘ったれ。
それに比べて酒井和歌子の弟の学生がしっかりしているのでその好青年ぶりがまぶしい。
甘ったれの癇癪持ちと必殺の笑顔のしっかりものとの青春物。

結構面白い。
クロールの息継ぎの時の顔を普通アップで映すか?二人とも前髪ぺっちゃんこ。
雨の中のダンプカーの荷台シーンは笑っちゃうんだけど、ただの荷台のくせに壮大な名シーンになっているところが凄い。
火葬場が山奥で、黒い煙に深い緑、複雑な思いと匂いが混じってそうないいシーン。
他、いろいろ。

酒井和歌子の母役に森光子。夫に死なれてからコップで飲む晩酌が唯一の楽しみという人。
(夫に死なれてから晩酌が楽しみになったっていう設定は前にもどこかで見たな。淡島千景だったっけかな。酒を湯飲みで飲んでるの。思いだせん)
酒井和歌子の弟役で池田秀一。名前をどっかで聞いたことあると思って調べてみたらガンダムのシャアの声の人だった。
他、有島一郎や菅井きんや峰岸徹や田村亮が出ている。


内藤洋子と酒井和歌子は『ドリフターズですよ! 冒険冒険また冒険』にカメオ出演していて、それでしか見たことないと思っていたのだけど、調べてみたら酒井和歌子は小林正樹の『日本の青春』で黒沢年男と一緒に出ていたんだ。全然記憶に無い。
ぐはっ!小林正樹の傑作『いのちぼうにふろう』にも出てたの~。
とにかく今日は内藤洋子と酒井和歌子という二人の女優を知ることが出来て(今更だけど)有意義でした。

映画『あこがれ』

1966年 監督:恩地日出夫
BS2 録画


愛護施設に父親につれられてやってきた信子。
保母の新珠三千代につばを吐きかけるわ箸の持ち方を指導されれば箸を投げ出すわで超問題児だった。
問題児とはいえまだ幼い子供。信子は父親を恋しがる。
そんな信子をからかうのは一郎君。
父親恋しさに泣き出す信子。それにつられて母親に捨てられた一郎君も大泣き。
というのがタイトルロールで簡潔に流れた映像で、物語は少年少女が20歳を過ぎたくらいの頃から始まる。
一郎君(田村亮)は平塚の瀬戸物屋に養子に入って人の出来た養親(加東大介と賀原夏子)に愛情たっぷりに育てられた。
一方信子(内藤洋子)は父親(小沢昭一)と一緒に各地を転々としていた。
平塚で二年ぶりに再会した二人。
お互い本心を隠して友達として付き合っていたのだが次第に抑えられなくなって、ならばとっととくっついちゃえばいいものをよく分からないが養親への義理立て等で上手く行かない。

青春メロドラマなんだけどなかなか面白い。
脇を固める役者陣が何気に豪華。
主役二人の生き方に大きく関わる先生役にいつまでも綺麗な新珠三千代。
一郎の養父に加東大介
信子の父親役で酒飲みの典型的な駄目親父に小沢昭一。
娘を思ってうつろに去っていく時「ばかやろうだよぅ。お前達は」と言ってにやっと笑う。
駄目親父のくせにおいしいところをかっさらっていきます。
一郎の生みの親に乙羽信子。
一郎の消息を聞きに愛護施設に訪れ、園長と話す乙羽信子の複雑な表情が凄いわ。
園長(小夜福子)がまた偉そうなの。一郎を捨てたこの母親を責めるような口調で。
愛護施設の園長という偽善者に見られやすい立場の役が、まんまこの偽善者め!って感じの役になっていて、子を捨てた乙羽信子より悪人に見える。
心優しい新珠三千代が二人の間にお茶持ってやってきてほっとする。
園長の好サポートと乙羽信子の控えめな演技によってこの母親に親近感を持てばその後の新珠三千代や養親など脇役人が次から次へと好サポートを見せ、最後の再会と別れシーンは思わず泣ける。
もう青春メロドラマじゃなくて後半から一気に家族愛の物語へ変貌。
そういえば養父加東大介のまんま姉役で沢村貞子も出ていた。

そして内藤洋子は綺麗だなぁ。
凛としたたたずまいや純真な視線から流れる一筋の涙とか。
その美しい瞳を持った顔がこれでもかってくらい何度もアップで映される。

原作木下恵介で脚本が山田太一。
音楽は武満徹。映画音楽になるとメロディアスな武満徹がギターでメランコリックな旋律を聞かせてくれる。

2007年2月24日土曜日

BS日本のうた 神野美伽

2007年2月4日放送のBS日本のうた。
後半の熱唱一人舞台は神野美伽。
昔浜村淳が演歌の「えん」は「艶」であり「縁」であり演じるの「演」である、というようなことを言っていたけど、演じるってことでみれば当然大根役者もいるわけだ。
大根役者といってすぐに思い浮かぶのが僕の場合神野美伽さんになる。
詩の世界に入って演じているとき、入りすぎているのかそれとも分かりやすく演じようとしているのか、とにかくいかにも演じてますっていう表情や振りがとてもうざい。
歌っている時の表情の豊かさがこんなにうざいもんだと知ったのはこの人が歌っているのを見たときからだった。

歌う姿や歌う前のトーク等見ていると、神野さんは粋なおばちゃんになりたがっているように見える。
そして粋なおばちゃんになりたくて成りそこなり続けているような。
普段の神野さんを知らないからどうとも言えないけど周りの歌手によれば
松原のぶえ「神野さんは歌っている姿が凛としていてものすごくかっこいいんですね。しかも性格が飾らない性格で最高です。本当に気さくで。」
八代亜紀「美伽ちゃんはですねぇ、年齢は下なんですけどしっかりしていてほんとお姉さんみたい。」
らしい。
神野美伽という人物にこんなに違和感があるのはきっとこの人の「飾らない性格」っていうのは素じゃなくて演じて形成されたからなのだろう。
演じて形成される性格が悪いわけではないし大体そんなもんだから別にいいんだけど、大根役者が演じているから違和感があるのかな。
神野さんの今の性格を作るきっかけが人生のどこかできっとあったはずと思っていたけど、この熱唱ひとり舞台で少し判明。
まず、4歳の頃にちあきなおみを見て「かっこいいな」と思ったらしい。
そして子供の頃からあこがれ続けている歌手がいて、それは八代亜紀だった。
ちあきなおみに八代亜紀、この二人への憧れが今の神野さんを作ったのか。なんか納得。

熱唱ひとり舞台の中盤に舞を披露するコーナーがあった。
能面つけて芯の無いふにゃふにゃした踊り(舞じゃない気がする)を披露。
この人、前にも能面つけて踊っていたのだけどこれも粋でかっこいいおばちゃんに思われるための一環か。
衣装は、着物→能装束→黒いドレス、の早着替え。
衣装ごとに分かりやすく演じ方が変わるのだけどドレスは強烈。
ドレス姿の色っぽい女を演じているのだろうが、これがまた・・・

この回のBS日本のうたは門倉有希が歌った「京都から博多まで」だけ残して後はさくっと削除。

2007年2月18日日曜日

映画『サンキュー・スモーキング』

2006年 監督:ジェイソン・ライトマン
at ギンレイホール


サンキュー・スモーキング (特別編)

ウディ・アレンが長すぎて疲労感が残っていたので軽いコメディが嬉しい。
タバコ研究アカデミーのスポークスマンのニック・ネイラーは、たばこ業界の顔として日々闘っていた。
政府や各市民団体から非難を受けて苦しい立場のたばこ業界。
その非難を一手に引き受けるのがたばこ業界の「顔」。
たばこが有害なことは誰でも知っている。ニック・ネイラーも例外ではない。
しかし彼はたばこを擁護しなければならない。
ここに葛藤や苦しみ辛さが必然と存在するはずだけど、ニック・ネイラーはそういう男ではなった。
降り注ぐ批判の言葉を、相手の知識不足を切捨て、相手の矛盾をつつき、つまりあれやこれや相手の揚げ足を取って優位な立場になることでさらりと交わしていく。
葛藤がないのは彼は別に嘘をついてないから。(冗談での発言は除いて)
たばこの非難を擁護するが別に吸えと勧めるわけでもない。吸う吸わないは自分で選べと。
矢面に立って悪者になる辛さが無いのは逆境であればあるほど楽しいと思う男だったから。
まあ、これらが本当に彼の心に存在しないってわけでも無いのだけど。

主演がアーロン・エッカート。
この人『ブラック・ダリア』でリー役をやった人だな。
このあご兄ちゃんがいい感じでうさんくさい。頭が切れるように見えないところがまたうさんくさい。
ディベートシーンもそんなに凄かったわけでもないしな。

そういえば一回も喫煙シーンが無かったな。

映画『マッチポイント』

2005年 監督:ウディ・アレン
at ギンレイホール


マッチポイント 初回限定版 (特別ブックレット付)

ウディ・アレンがロンドンで撮影した不倫サスペンス。
「ケチな不倫男」が指輪と同じに落ち損ねて宙ぶらりんのケチな人生を歩む話。

主演が『ベルベット・ゴールドマイン』のジョナサン・リース=マイヤーズ。
アイルランドの田舎出身の元プロテニスプレイヤー役で、引退してロンドンの会員制テニスクラブのコーチを始めるところから映画は始まる。
この男クリスは、ドストエフスキーの「罪と罰」(この映画のストーリーと結構関係あり)を読んだりオペラ好きだったりと、高尚な趣味を持っているがなんだかうさんくさい。
ブルジョワに憧れていたのかねぇ。
念願かなってブルジョワの娘と結婚して養父の会社に入社しそれなりの役職にまで就く。
で、不倫です。
でもまあ、恐ろしく官能的なスカーレット・ヨハンソンが絡んできたら逃げられないわな。

妻役のエミリー・モーティマーは女性から嫌われそうな顔している。
サトウタマオ系のうるうる瞳の媚びた視線するから。
ほとんどの観客はスカーレット・ヨハンソンを応援していたのではなかろうか。
にしてもヨハンソンの相手は澄ましていても根はケチな男なので幸せは遠い。
クリスは「上流階級の暮らしには馴染めないが」みたいな台詞を言っていたけど、そんな嘘で塗り固めた人生をたまたま強運だったために死ぬまで続けなきゃいけない苦しさ。
築き上げたものを全てぶち壊す破壊と喪失(再生)のカタルシスは訪れることなく、ブルジョワ世界は今日も平穏でした。

2007年2月17日土曜日

映画『でっかいでっかい野郎』

1969年 監督:野村芳太郎
BS2 録画


でっかいでっかい野郎

渥美清主演のコメディ。
舞台は福岡若松。
ひげもじゃのアル中南田松次郎(渥美清)は父親の遺灰を持って父親の故郷若松にやってきた。
で、そのまま居つく。
あるきっかけで有名人となり、無法松と呼ばれ持てはやされたりする。
(が、無法松どうこうがストーリーに大きく関係するわけでもない)
保護士の長門裕之、岩下志麻夫妻にやっかいになり、へそ曲がりで嫌われ者の伴淳と親しくなり、ぐっと年の離れた中川加奈に恋をする。

なかなか楽しいコメディ。
中川加奈があまり可愛くないけど可愛い。
棒読み?とたまに思うようなしれっとした台詞回しや、愛くるしい笑顔や怒った顔など・・・
でもなによりいつもミニスカートという健康的で若さに溢れた魅力が最高です。むちむちです。
この中川加奈をへたれラッパ吹き役の大野しげひさがさらっていく。
他に、財津一郎がちょい役ながら強烈なインパクトを残して去っていく。

2007年2月12日月曜日

NHK歌謡コンサート 小田切千

HDDレコーダーを整理していたらまだ見ていない番組があったので見る。
2006/04/04のNHK歌謡コンサート。
司会が阿部渉アナから小田切アナに代わったその第一回目だった。
寿美さんも出てたんだ。
初回ということで気合の入った小田切アナ。
「始まりの季節に、贈る歌にちなんだ名曲の数々をお届けしてまいりましょう。
歌っていただくのは!いは!・・・いしはらじゅんこさん!、そして、しまづあやさん!、と・・・」
と言って黙ってくるっと後ろを向いて寿美さんの方をじっと見る小田切アナ。
思い出した!って感じで「たがわとしみさん!」
と紹介する小田切アナ。
場内から笑い。
何これ?演出?
いや、本当に忘れていたっぽい。
そもそも石原詢子さんをいきなり「いは!」って噛んでるしな。
まあ、寿美さんの名前を忘れたことは初回ということで大目にみよう。
たぶんこの回に出てた歌手は氷川きよしと美川憲一、藤あや子くらいしか知らなくて、番組前に必死に出演者の名前を覚えたんだろう。

紹介された3人は「平成の美人歌姫三姉妹」と小田切アナに勝手に命名される。
演歌5人娘は有名だけど皆もう40前後だしな。
そろそろ30前後くらいの人たちで新しい5人娘を作ってもらいたいな。
でもこういうキャッチフレーズって一体誰が付けるの?
ユニット組んでレコード出せばレコード会社が付けるんだろうけど、そうじゃなかったら芸能雑誌とかなのかね。
勝手に名前付くほどあんまり知名度がないから演歌界が勝手に命名して盛り上げなきゃ。
にしてもこの年代で3人選ぶなら、島津亜矢さんを外して林あさ美さんを入れるかな。
でも実力も人気も充分あるのになんで島津亜矢さんが入らないのってなるとなんかひどい話になってしまうので5人娘とか3人娘とか選ぶの難しいのかも。

さて、歌コン金メダルのコーナー。第一回目。
観客の支持率で金銀銅のメダルが貰えるんだけど、今まで金以外のメダルを貰った人を見たことがない。
いつのまにか金メダルのなかでもポイントで順位を付けて何位に入りました、とかやっていたのだけど、今じゃ気づいたらコーナー自体なくなっている。
第一回目は瀬口侑希。
氷川きよしと同期らしい。
何この差は。
厳しい世界だね。でも苦労すればするだけいい歌になるから。
トークでは亡くなった親父さんのエピソードとか話されて、もう歌う前から金メダルの予感。
少し涙目気味でワンコーラスだけ熱唱。
ここで小田切アナがやってくれる。
「ありがとうございました。うえすぎかおりさん、海峡を歌っていただきました。」
えっ!?うえすぎかおりじゃなくて瀬口侑希だろ?
これはひどいよ。
まあ、聞き流したとして結果の方はというと、見事に金メダル。
瀬口侑希は泣く寸前くらいで大喜び。
少々感動ムードの中でやる男小田切千が
「せぐち、かおりさんでしたー」
せぐちゆうきだっつーの。
応援団長の美川憲一は目が点になっている。
感動ムードぶち壊しでス。
これからも苦労が待っている新人さんのこの晴れ舞台で名前くらいしっかり連呼して宣伝してやらないでどうするんですか!
小田切アナが間違えた理由。それはこのすぐ次に歌うのが上杉香緒里だったから。

この番組の初司会だから、で済ますにはあまりにひどい間違い。
先週6日の歌謡コンサートでも、藤原浩の曲紹介で一度新川二郎といってしまい慌てて言い直すという間違いも犯している。
もう寿美さんの名前を忘れたことは笑って流せません。重罪です。従って受信料払いません。

2007年2月11日日曜日

映画『拝啓天皇陛下様』

1963年 監督:野村芳太郎
BS2 録画


拝啓天皇陛下様

拝啓天皇陛下様、なんていうから戦争批判映画かと思ったら渥美清映画だった。
渥美清の繊細な魅力を堪能できる一作。

昭和6年、岡山の錬兵所で作家志望の棟本博(長門裕之)は山田正助(渥美清)という男と出会う。
山田正助=ヤマショウは幼い頃に親と死別し、それ以来天涯孤独の身だった。
読み書きができず学が無く、おとぼけた性格だが、情に篤く人懐こい男。
意地悪な二年兵にいじめられようが、それでもヤマショウにとって軍は必ず三度の飯にありつけるという正に天国の場所となる。
意地悪な二年兵といっても演じる西村晃はなかなかコミカルだし、なにより二年兵となったヤマショウ達が「歴史は繰り返す」といって今度は意地悪な二年兵となるところなど、全体的にコミカルに描かれる。
ヤマショウにとっての天国(=軍)で一番偉い(というか神)のは天皇陛下だった。
ヤマショウは二年兵の時にこの天皇陛下本人を見ることができる。
それまで天皇の写真すら見たこと無かったヤマショウだが、思いのほか優しい顔をした天皇を見て親近感を抱いたヤマショウは天皇に惚れこんでしまう。
棟本という親友がいて多くの仲間達や後輩がいて、堀江中隊長(加藤嘉)というヤマショウに親身な父親みたいな男がいて、大好きな天皇がいて、そして三度の飯にありつける、という最高の居場所を見つけたヤマショウ。
だが、二年の満期除隊で渋々その最高の居場所を離れることになる。
やがて戦争が始まり、ヤマショウは再び自分の最高の居場所に戻ってきて、召集された棟本とも再会する。

と、上記のような書き方すると、純粋なヤマショウが戦争によってどんどん性格が変わっていくとか、戦争の悲劇の運命に巻き込まれていくとか、終戦により居場所を失ったヤマショウが落ちていくとか、いろいろ考えられそうだがどれにもならない。
戦争シーンは棟本が所属する部隊しか映らなかったが、ヤマショウも戦地でつらい体験をしてきたはず。
でもヤマショウはどんな環境でどんな経験してもいつまでもヤマショウだった。
最終的に悲劇は悲劇なんだけど戦争とは関係ないところで起きる。
(正確に言えば戦争も含めたこの時代に生きた男の人生だから関係はあるのだけど)
終戦で拠り所を失った男が新たな居場所を築きつつあったのだが、結果的に軍が最高の居場所となってしまったという人生のなんと寂しいことか。
でもヤマショウはヤマショウで幸せだったのだろうな。

全体的には喜劇調、時折混ざる悲劇またはよくよく考えると悲劇。
全体的に喜劇ってところが楽しい。
渥美清はもちろん夫婦役の長門裕之と左幸子もいいな。本当の夫婦でも出せないような自然さ。
左幸子はこんなにいい女だったのね。

棟田博原作でノンフィクションっぽい。
そういえば山下清が出てた。

2007年2月4日日曜日

映画『旅の贈りもの-0:00発』

2006年 監督:原田昌樹
at ギンレイホール


映画「旅の贈りもの 0:00発」

『ゆれる』は満席立ち見状態だったけど、香川照之ファンがどっと皆帰って隣の席にコートを置く余裕ができる。
既に二本見て帰ったのか『ゆれる』だけ見て帰ったのか。一本しか見てないならもったいないねぇ。これ面白いかもしれないのに。
等と思っていたけど、いやー、つまらなかった。
テレビの2時間ドラマでもこんなにつまんないのはないんじゃないかと思う。

大阪駅を午前0時に出発し、行き先は不明という不思議な列車があった。
多岐川華子(多岐川裕美の娘)に質問されて車掌の石丸謙二郎が得々とこの列車について説明するんだけどあまりに胡散臭くて笑える。
「この旅が皆様にとって何か大切なものを見つけられる旅になりますことを心よりお祈り申し上げます」
いや、絶対心から思ってないでしょ?
そんな列車に乗り込んだ乗客のうち悩みを抱えて旅立った者5名。(実はもっといたのかもしれないけどきっと何も見つけられず帰った)
列車は風町という小さな港町に着いていいおっちゃんの梅津栄や大滝秀治やなぜか真っ黒でこれまた胡散臭い徳永英明らと出会う。
それぞれがよく分からないまま生きる希望だかなんかを見出して「大切な何かを見つけられたようですね」と。
1)都会で疲れた人たちが田舎で癒されました。
2)のんびり生きて家族に目を向けることも大事です。
3)家族はあなたのことを大事に思っています。
4)田舎に住もうぜ
細川俊之がやせてる~。

映画『ゆれる』

2006年 監督:西川美和
at ギンレイホール


ゆれる

天気いいけど寒いしギンレイどうしようかなと思う。
今日の2本は邦画だけど予告編見る限りどちらも面白そうじゃないんだよな。
迷いながらもまあ行っとくかと決心して家を出る。
ギンレイに行ったら凄い行列。
なにこれ、そんな話題の映画なの?
いや、きっと皆香川照之ファンに違いない。
もの凄い人気だな。

兄香川照之、弟オダギリジョー。
兄は田舎で親父のガソリンスタンドで働き、弟は東京に出てフォトグラファーとして華々しく活躍。
そんなこんなで兄逮捕。

誠実な兄、不誠実な弟、その概念も事件の真実も兄弟の信頼もゆれてゆれて固まるようでゆれて。

僕が女性監督が苦手な理由は無駄に芸術っぽく撮るところなのだけど、この監督はまあまあさりげないからいいな。
この映画の肝となるつり橋から落ちるところなんか自然に引き込まれていたのか時間を取り戻して流れ出した川の奔流の音にびっくりすると同時に胸がざわめいた。
流れの音が復活するまでの時間は止まってそして飛んでいた。この時間操作は映画だからこそなんだけど音と視点とをフル活用して歪めて戻していくその流れる手腕が凄い。
俯瞰気味のカメラや少し斜めに傾いたカメラなど微妙な不安定さが程よい緊張感になっているんだろうけど、それよりもとにかく役者陣が皆凄くて一人一人がそれぞれの持ち味で見事に緊張感を作り出す。
香川照之の真面目いい人の中に潜むやりきれない怒りの影の緊張感。
オダギリジョーのエロティックで不安定な脆さの緊張感。
真木よう子の突如表出する「生理的」反応の緊張感。
木村祐一のコメディっぽさの雰囲気のまま切り込んでいく冷徹な緊張感。
兄弟の父伊武雅刀の無口で威圧的な緊張感。突然きれるし。(そういえばこの親子は突然きれるねぇ)
新井浩文の敬語で親しみ持って近付きながらも怒りを顕にする時の眼の緊張感。(この人は優しい人の役を演じれば優しいんだけど怖い役の時は眼がこえー)
ピエール瀧刑事のあまりに似合いすぎてかっこよすぎるゆえに事件が進展していく予感の緊張感。
等々。
父伊武雅刀は最後の方でぼけちゃうんだけどその前の香川照之がいなくなって一人で洗濯するシーンといい撮り方がなんか冷徹で残酷。

まあ、予告編から想像していたのと違って意外と面白かった。

2007年2月2日金曜日

映画『パルムの樹』

2002年 監督:なかむらたかし
BS2 録画


パルムの樹

水曜の夜に少し時間があったから見始めたのだけど5分くらいで寝てしまったため、今日もう一度最初から。
てっきり子供向けのファンタジーアニメかと思っていたら、冒頭から現代音楽風の音楽だし世界設定は壮大だし登場人物は負の感情だらけだし、で全然子供向けじゃなかった。

パルムは学者フォーによってクルップの樹から作られた命を持った人形。
パルムはフォーの妻で病気のシアンの看病をしながら人らしい心を身につけていく。
パルムにとってシアンは母親のようであり、そしてこの世の全てだった。
シアンが亡くなると、パルムもその動きを止めてしまう。
数十年が経過。パルムを作ったフォーはもはやはげじいさんとなったが、パルムは相変わらず「だんまり」状態だった。
しかしある日パルムが喋りだした。フォーの家に突然現れた青い肌の地底人コーラムをシアンと間違えたらしい。
コーラムはトートと呼ばれる天界から持ち帰った「トートの卵」を地底に持っていって欲しいとフォーとパルムに頼んで消える。
コーラムが消えてすぐに現れたトートの卵を追う謎の集団によってフォーは殺害され、一人ぼっちになったパルムは地底に向けて旅立つ。

パルムが状態によってそのキャラクターが千変万化する。
動かないパルム→動くが感情がないパルム→喋り捲り感情丸出しパルム(うざい)→コーラムの怨念に影響を受けた(?)悪い子パルム(ひどい)
この感情、キャラクタの不安定さが面白いのだけど、ちょっと変わりすぎだろう。ひやひやするしなかなか親しみを持ちにくい。
ストーリーは分かりにくい。ソーマって何?ポーラって何者?
台詞を一個聞き逃したり理解できなかったりすると2度と説明されないのでそのまま分からないまま終わる。
でもまあ飽きずには見れる。

2007年2月1日木曜日

きなこココア

先日、毎朝ホットミルクに溶かして飲んでいるインスタントコーヒーが切れたので99SHOPに買出しに行った。
いつものビン詰めのインスタントコーヒーの隣に袋詰めのコーヒーがあって気まぐれにそっちを買う。
翌朝ホットミルクにコーヒー粉を溶かすとなんだかよく溶けない。
入れすぎたかな?と思ってまあいいや口の中で溶かそうとそのまま飲むとぶへぇっってなった。
ぶへぇっってなってやっと気づいたけど、これペーパーフィルターでドリップするやつじゃん。
うう、ここまでぼけたとは。
で、今度はドラッグストアでインスタントココアを買う。
くりココアとか黒糖ココアとか豆乳ココアとかいろいろあってすげえ楽しいと思いながらとりあえずきなこココアを選んで買う。
そして今日の朝さっそくきなこココアを飲んでみる。
すげえ、ココアじゃなくてきなこの味しかしない。=あまりおいしくない・・・