BS2 録画

拝啓天皇陛下様、なんていうから戦争批判映画かと思ったら渥美清映画だった。
渥美清の繊細な魅力を堪能できる一作。
昭和6年、岡山の錬兵所で作家志望の棟本博(長門裕之)は山田正助(渥美清)という男と出会う。
山田正助=ヤマショウは幼い頃に親と死別し、それ以来天涯孤独の身だった。
読み書きができず学が無く、おとぼけた性格だが、情に篤く人懐こい男。
意地悪な二年兵にいじめられようが、それでもヤマショウにとって軍は必ず三度の飯にありつけるという正に天国の場所となる。
意地悪な二年兵といっても演じる西村晃はなかなかコミカルだし、なにより二年兵となったヤマショウ達が「歴史は繰り返す」といって今度は意地悪な二年兵となるところなど、全体的にコミカルに描かれる。
ヤマショウにとっての天国(=軍)で一番偉い(というか神)のは天皇陛下だった。
ヤマショウは二年兵の時にこの天皇陛下本人を見ることができる。
それまで天皇の写真すら見たこと無かったヤマショウだが、思いのほか優しい顔をした天皇を見て親近感を抱いたヤマショウは天皇に惚れこんでしまう。
棟本という親友がいて多くの仲間達や後輩がいて、堀江中隊長(加藤嘉)というヤマショウに親身な父親みたいな男がいて、大好きな天皇がいて、そして三度の飯にありつける、という最高の居場所を見つけたヤマショウ。
だが、二年の満期除隊で渋々その最高の居場所を離れることになる。
やがて戦争が始まり、ヤマショウは再び自分の最高の居場所に戻ってきて、召集された棟本とも再会する。
と、上記のような書き方すると、純粋なヤマショウが戦争によってどんどん性格が変わっていくとか、戦争の悲劇の運命に巻き込まれていくとか、終戦により居場所を失ったヤマショウが落ちていくとか、いろいろ考えられそうだがどれにもならない。
戦争シーンは棟本が所属する部隊しか映らなかったが、ヤマショウも戦地でつらい体験をしてきたはず。
でもヤマショウはどんな環境でどんな経験してもいつまでもヤマショウだった。
最終的に悲劇は悲劇なんだけど戦争とは関係ないところで起きる。
(正確に言えば戦争も含めたこの時代に生きた男の人生だから関係はあるのだけど)
終戦で拠り所を失った男が新たな居場所を築きつつあったのだが、結果的に軍が最高の居場所となってしまったという人生のなんと寂しいことか。
でもヤマショウはヤマショウで幸せだったのだろうな。
全体的には喜劇調、時折混ざる悲劇またはよくよく考えると悲劇。
全体的に喜劇ってところが楽しい。
渥美清はもちろん夫婦役の長門裕之と左幸子もいいな。本当の夫婦でも出せないような自然さ。
左幸子はこんなにいい女だったのね。
棟田博原作でノンフィクションっぽい。
そういえば山下清が出てた。

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