2004年10月3日日曜日

映画『キル・ビル Vol.2』

2004年 監督:クエンティン・タランティーノ
at ギンレイホール


キル・ビル Vol.2 (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第2弾)

明らかに変じゃん、よくよく考えるとおかしんじゃん、っていうことをタランティーノがさりげなく、でも気づけよと言わんばかりに堂々とちりばめつくした作品。
いや、別にこのシーンは何の映画のあのシーンのオマージュ(というかほぼ茶化し)だとかを楽しまなきゃいけないとか言ってるんじゃなくて(元ネタなんてほとんど俺分からなかったし)そうじゃなくて普通に考えてそれはおかしいでしょっていうのがいっぱいあるってこと。
この胡散臭さは他の映画ではそういうもんだと普通に納得して見ていたこと(ワイヤーアクションとか)も、さらには真面目そうなシーンまで全て胡散臭くする。
なんで胡散臭いかっていうのはこの人、絶妙にずらすんだよな。そして外れすぎそうになると突然リアルを加える。

身動きがまったくとれない状態(例えば運動マットにくるまれるなんて考えただけで恐ろしい)って僕大嫌い。
だからブライドが木の棺桶に入れられたときはこっちまで息が苦しくなる。
手足を縛られたまま棺桶に入れられ、蓋は釘で打ち付けられていく。
一本また一本と打ち付けられるたびに棺桶の中に差し込む光が喪失する。
最後の一打ちで光は全て閉ざされ、ブライドの荒い呼吸音と共にばさっばさっと土がかぶさる音がする。
今までの罪を悔いてブライドに殺される事を望んでいる風のビルの弟バドは、ブライドに懐中電灯を持たせていた。
闇の息苦しさに詰まって懐中電灯が点くとまぶしく浮かび上がるブライドの顔。今度は生き物として動く事を悲痛に禁じられた空間の息苦しさに詰まる。
懐中電灯でがつがつ蓋を叩いてみるがびくともしない。
どう考えても助からないでしょ。

はちゃめちゃでなんでもありだと思わせておいて突如現れるリアルにどきっとする。
硬い板を拳で何度も突けばそりゃ血も出るさ。
「五点掌爆心拳」なる最高にそそられる名前の必殺技の話が出てくるから埋められたブライドはこの必殺拳で板も土もぶわーっと吹っ飛ばすのかと思いきや脱出方法はリアルに地味だし。
かつ体が通れるくらいの穴が板に開く前にふりそそぐ土の重さで動けなくなるんじゃないかという疑問も、血を流す拳でついに板を破ったチープなまでの感動と土をかきわけゾンビのように地面から手が出現するシーンの笑いのためにどうでもよくなる。
ファンタジーながら生々しいリアルも突きつけ「ふんっ」と笑えるテイスト。混在のさせ方が上手い。

エル・ドライバーが隠していた毒蛇は彼女の暗殺道具じゃないのかね。
毒牙にかかり苦しむ男に向かってメモを取り出したエルは、ネットで調べたと言ってこの毒蛇の恐ろしさを高説する。
ふーん・・・えっ?ネットで調べた??この蛇の事よく知らんの?手塩かけて育てた暗殺道具じゃないの?
その毒蛇まだどこかに潜んでいるよ。お前も危ないじゃん!なに余裕かましてくつろいでんのさ。
かつブライドまでやってきて、狭いトレーラー内で金髪女二人の死闘が始まる。蛇はどこへいったやら。
日本刀を持った二人の人間。一歩外に出れば広がる荒野に出さずに敢えてトレーラー内。この狭さで刀は振れない。
狭い通路で静かに対峙する二人。この狭さだ、これは突きしかない。相手も突いてくるだろう。相手の突きを刀身でそらしながら突くか?等々無駄に考える。
忘れちゃいけないのは現実的な戦いなんてしないよね。
対峙する二人の距離が縮まりいきなりつばぜり合いになったっていいよ。他の映画でもよくあることだし。
そうなんだ。なぜか現実的思考をついしてしまうのはこの映画の胡散臭さ(ずらしと強引さと生々しさによる)のせい。
死闘が終わり立ち去るブライドの足元には、私はここにいましたよって感じでブライドを威嚇する毒蛇がいる。
しかもブライドは結局毒蛇の存在なんて一向に知らないまま立ち去る。かわいそうな蛇。

ところでビルの弟バドは凄腕の殺し屋だったらしいが、勤め先のクラブではガタイはよくないが強面の上司に遅刻を怒られ、無様に言い訳してはいいくるめられてうなだれるただのしょぼいおっさん。
本当は強いのに今は普通の生活をしている渋さ。
バドは最強の殺し屋ブライドを捕らえる。バドは凄腕なのだから。
しかしエルの話を聞いていると、バドが本当ただの間抜けなおっさんに見えてくる。
そうなるとそんな男に不意打ちとはいえ殺されかけたブライドまで間抜けに見えてくる。
周りの人物まで巻き込んでびみょーな人物に仕立て上げたバド。
腕のたいした見せ場もないまま消えていったバドだが一番魅せてくれた人物でもある。

西暦1000何年だかに伝説を作ったカンフーの達人パイメイ。ブライドはパイメイに師事する。
元弟子で恋人のビルがパイメイにブライドの弟子入りを頼みに行く。
ビルは顔にあざを作って戻ってきてブライドに弟子入りOKだと伝える。顔のあざの理由は言わない。手合わせでもしたのか?
この展開、元ネタは知らないけどいかにもカンフー映画にありそうな話で笑える。
パイメイは超人的に強い。剣で襲い掛かるブライドなんて軽くあしらう。おお、突いた剣の上に乗っかっちゃってるよ。ブライドはなんて怪力なんだ。
ブライドのカンフーはわざとそうさせたのか知らないが、腰が入らず手だけで繰り出しているようなチャチなカンフーで、かつ構えだけは立派だというバランス。・・・ん~、やっぱりわざとチープにしたんだろうな。
超人的に強い上になぜか超人的に傲慢なパイメイ。飯のシーンで短く師匠と弟子の感動的な愛を胡散臭いノリで描く。
超人的に強いパイメイ。"最後のとき"は一瞬普通に納得してしまったがすぐ思い直して笑う。

緊迫の突入から肩透かしで始まる親子再会。なんなの?この子供の初めて会う母親に対する感動のなさは。
大仰な感動にせず、少しずらす。
北斗神拳のような五点掌爆心拳もうまいことに笑い寸前の感動シーンを作り上げる。

語彙がとぼしいから簡単に「感動」って言葉を使っているけど実際に感動したのはなんだかんだ言っても「恨み節」の梶芽衣子の声だけだったのだけど。
・・・なんでこんなに文章が長くなったのかといえば、冒頭の段落で簡潔にこの作品全体の印象を書いて終わるはずが失敗し、むかついてとりあえずやめて部分的な感想を書いてみたらなんかわかるかなと思って書いていたら長くなっちゃった。
それで今この時点で考えがまとまったかというとさっぱしだな。
まあ、そこそこ面白い。vol.1よかこっちが面白かったな。

0 件のコメント:

コメントを投稿