at ギンレイホール
ギンレイの受付で財布からカードを出して差し出したら受け取ろうとした従業員さんから「カードが違います」と言われ、差し出した自分の右手につまんでいるカードに目を落とすとPASMOだった。
慌ててギンレイの会員カードを取り出して渡す。
恥ずかしい。
![北京の自転車 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51RPaGXNHGL.jpg)
前回ギンレイに来た時この映画の予告編は流れなかったから全く内容が分らないまま見始める。
いやぁー、面白い。
期待感も何もないまま見た映画が驚くほど面白かった時ほど興奮することはないよなぁ。
今年観た映画のNo.1にしよう。
山西省から北京に出稼ぎにやって来たグイ(ツイ・リン)は自転車宅配便の仕事にありつく。
今まで乗ったことも見たことも無いかっこいい高級マウンテンバイクが支給され、しかも宅配の点数をかせぐとその自転車は自分のものになるという。
北京を走り回り、あと少しで自分のものになるという所で自転車が盗まれてしまう。
盗まれた自転車は高校生のジェン(リー・ビン)が乗っていた。
一応不良のカテゴリーに入ると思われる青春を謳歌する高校生ジェン。
そして頑固だけど真面目で純朴なグイ。
隣のマンションの裕福な高嶺の花の女性をじっと見つめて、向こうが気付くとさっと目をそらすばればれな行動を何度も繰り返す純朴なグイなんだよ。
そんな自転車が盗まれて仕事もクビになってしまった可哀想なグイと比較するとジェンに対しては怒りしか湧いてこない。
ジェンがまたむかつく顔してるんだな。
もう見つけ次第ぼこぼこにしてくれることを祈る。
なのになんだ、グイは自分の自転車を見つけてしげしげと見渡していたところ、怒りの形相で追っかけてきたジェンを見た途端、殴りかかるでもなく自転車に乗って一目散に逃げ出すではないか。
「おい!まて!ドロボー!!」
この逃げるシーンがなかなかいい。
低いギアでしゃかしゃか漕ぐグイと全力疾走のグイ、そこから高スピードの危うい緊張→静止→ユーモア→激しい怒り、と怒涛の展開をする。
もう怒りだよ怒り。映画観てこんなに怒ったことは無いってくらいの怒り。本当むかつく。
同級生の不良仲間とつるんで遊んでいるジェンは痩せ型で背も高くない。
不良仲間も皆弱っちそう。
一人ガタイのいいやつがいるけど、中分け眼鏡のただのデブだ。
そんななんちゃって不良仲間に取り囲まれて恐怖で手も足も出ないグイのなんて哀れなことか。
社会人が高校生ごときガキどもに理不尽な仕打ちを受けるのだ。
哀れというか情けない。
でも最初は気付かなかったけど、社会人といってもどうやらグイはこの高校生と同い年くらいらしい。
この年でもう働くグイと高校に通う裕福な不良という対決。
裕福といってもジェンの家庭はかなりの貧乏で小学生の義妹の進学費やらなんやらでいつまで経っても父親からマウンテンバイクを買ってもらえない。
友達がマウンテンバイクに乗って遊んでいるのをいつも傍から見ているだけだった。
都市部、農村部での貧富の差はむろんのこと、都市部の中でもいろんな貧富の層がある。
警察にでも行けばいいものを、貧困層は警察を利用することすらできないのか知らないが、とにかくあまりに理不尽な仕打ちにも泣き寝入りするしかない。
しかしジェンの自転車に対する執着心は異常だった。
もう頑固とかいうレベルじゃないくらい自転車に固執している。
愛だね、これは。
その異常な愛の結果、グイとジェンの間である折衷案が取り交わされ実践される。
そんなんでいいのかよというような取引だけど、そのおかげでお互い関わることのなかったであろう二人の間に友情とも違う密かな連帯感が生まれる。
そして悲しみのラストへ。
なんかあんなにむかついていたジェンがかっこよく見えてくる。
それにしてもラストで見張り役のような不良が自転車を執拗に蹴りつける姿が滑稽だ。
怒りの矛先を直接当人に当てずに物に当たっている、という訳でもないけど、とにかく物に当たる姿っていうのは滑稽以外の何者でもない。
昔図書館の閲覧室で勉強しているとくっちゃべっているカップルに切れたらしい中学生が壁やドアを蹴りながら退出していって、特に気にもしていなかったが閉館時間になって帰ろうとしたら僕の自転車が倒れている上に前かごがぐちゃぐちゃにひん曲がっている。
きっとあの切れた中学生の仕業に違いない。
っていうのをふと思い出した。
この映画の不良もきっと日々の生活で溜まる怒りがあってそれを執拗なまでに自転車に当たっていたのだろう。
エンドロールを見ていると、2000年という文字が見える。
10年前じゃん。
2001年にベルリン国際映画祭銀熊賞を取っているらしい。
なんでも広電総局の管理部門が批准した脚本に沿わなかったため、長らく上映禁止になったとのこと。
監督はワン・シャオシュアイでいわゆる中国の第6世代の監督。
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