at ギンレイホール

朝、寝ていたら電話で起こされて、休日出勤することになる。
今日は1日中寝ているつもりだったのに。
仕事をぱっぱと済ませてそのまま映画を見に行く。
製作国、イギリス/アイルランド。
冒頭、おっさんがタンバリンのような太鼓を叩きながら歌を歌っている。
時折フレームをカンとたたくそのリズムに高揚する。プリミティブな民族音楽。
どこか建物の中で演奏されている。
次にウエディングドレスを纏った花嫁が映し出される。
結婚式で歌われてるんだぁ。なんだかそこで感動したのね。
音楽聴いて、生で聞きたいと思っているところでそれを生で聞いている女性が映し出され、しかもこの女性は自身の結婚式という舞台で聞いている。
音楽の高揚感に、それを聴く幸せな女性の表情と結婚式でこのプリミティブな音楽が演奏されているという違和感が一瞬にして加わるのだから面白い。
そして次には結婚式の出席者が映るのだけど、なにやらにやにやしながら隣の人とひそひそ話したり、無表情に女性がたばこをふかしていたりする。
この反応が演奏されている音楽を肯定的に捉えているのか否定的なのか、もしくは音楽は全く意識されていない状態での反応なのかは分からないが、観客としては全体的な幸せの空間の中の複数のイメージの相克を感じることになる。
で、さらに凄いのは、なんやかんやで賑やかな結婚式会場のフロアを抜け、2階の部屋に入ったマーガレット(アンヌ=マリー・ダフ)が従兄のケヴィン君にあっつーまにレイプされちゃうのだよ。驚きだよね。この展開。
全体的な幸せの空間すら一瞬にして真逆の空間を付加しちゃうのだよ。
会場に戻ったマーガレットはおどおどしながらも泣きながら友人に話し、友人はケヴィンを責め、おっさん(父親?)にも報告され、おっさんは険しい顔になり、ってのが賑やかに出席者がダンスしている中描かれる。
ダンスの音楽のみで、交わされる会話は何一つ聞こえないためよくわからないのだけど、とにかくストーリーは展開しだした。
レイプ犯が従兄というところで親同士の葛藤とか描かれていくのかなと思っていると、画面は翌朝になり、マーガレットは車でどこかに連れて行かれ、気づいたら今度はバーナデッド(ノラ=ジェーン・ヌーン)という女性が出てくる。
バーナデッドは孤児院に暮らす。
バーナデッドがなにやら孤児院の鉄柵に群がる5,6人の男の子と話をしている。
「キスさせろよ」とか「足を見せてみろよ」などと言われているがまんざらでもない様子。
授業が始まるかなんかで建物に戻るバーナデッドを窓から見下ろす人の影。
次にはバーナデッドの剥ぎ取られたベッドが映し出される。
それで今度はローズ(ドロシー・ダフィ)の話・・・
ってもうなにがなんやら分かんない。
ローズは赤ん坊を生んだばかり。しかしローズの母親は孫である赤ん坊を見向きもしない。
結婚もしていないのに子供を生んだローズを許せないらしい。
ローズの父親も出てくるが父親も同じ考え。赤ん坊を養子に出す手配まで既に済ませている。
「赤ん坊をもらっていくよ」と無慈悲に言う神父。赤ん坊と引き離されるローズ。
この映画の概略を知っていれば特に混乱もしないだろうが、僕は全く知らないで見たので、ここまでで結局なんの映画なのかよく分からなかった。レイプ後の会話もなんも聞かしてくんないしさ。
ただ、もう今年のベストファイブに入れようとは思った。
3本の線はこの後1つの閉じた空間に収まり、この映画の"本題"が始まる。
主役の3人の女性は美人といった感じではない。
マーガレットは寺島進系の顔立ち。バーナデッドは目がでかい。ローズはおっとり系でかわいいのだがかわいくないのか分からない。
この微妙さがリアル。
そしてあまり美人でない3人がなぜか非常に美しい。
目がねぇ、すごいんだよ。
院長の底の見えない深い目、マーガレットの荒みきるぎりぎりのところで止まった目、ローズの常に涙を湛えているような優しい母の目、バーナデッドの折れない信念を持った強く真っ直ぐな目。
バーナデッドの目のドアップ(目のラインに凝固した血)、ラストの方、バーナデッドの静止映像、そしてクリスピーナ(アイリーン・ウォルシュ)の最後のシーン。忘れられない。

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