at ギンレイホール

『マルコヴィッチの穴』の脚本家チャーリー・カウフマンが主人公。
僕はずっとチャーリー・カウフマン本人が主演を演じていると思ったのね。
どっかで見たことあるとは思いつつ、きっと雑誌かなんかで見たのだろうくらいにしか思わなかった。
映画の中にはチャーリー・カウフマンの弟も出演している。
そっくりじゃん!どっちがどっちだか分からん。
一卵性双生児らしい。なるほど~。
しっかしただの脚本家にしては二人ともちゃんと演技してるなぁと少々の疑念を抱きながらも見ていた。
ラストの方では双子の弟の方がびっくりなことになる。
と、その前にこの映画の大まかなストーリーを書いておこう。
チャーリー・カウフマンがスーザンというニューヨークタイムス紙の女性記者が書いたノンフィクションの脚色を依頼される。
さっそく取り掛かるものの、全く書けない。
脚本を書けないこの内省的で恋人とも今一歩踏み出せない男の苦悩と、少しずつ脚本化されていくスーザンのノンフィクションの世界が映画の中で交互に描かれる。
つまりノンフィクションの映画化だけじゃなくて、脚本作るときの脚本家の苦悩というか思いっきりカウフマンの私的都合の部分まで映画化されてしまっている、という映画。
結構構成が複雑で、一つまた一つと異なる時間軸が合わさっていく。
僕は実話だと思って見ていた。だからスーザンもノンフィクションに登場する情熱的な蘭コレクタージョン・ラロシュも全て実在の人物だと思っていた。
そう思ってラストの展開を真に受けたら、この映画は最かなりの衝撃作になる。だから結構パニくった。
そうこうしているうちに映画が終わり、ぽけーっとエンドクレジットを見ていたらチャーリー・カウフマンの役者がニコラスケイジになっているじゃないか!
ニコラスケイジって言われたら、どっからどう見てもあいつはニコラスケイジにしか見えない。
なんで気づかなかったのだろう。アハハ
しかも帰ってから調べたら、弟のドナルド・カウフマンっていうのは架空の人物らしい。
となるとスーザンもジョン・ラロシュも架空の人物だったか。
そうだよな~。
スーザンが映画プロデューサーに映画化の話を持ちかけられたとき、スーザンは非常に喜びながら「でもあたし映画の脚本は書いたことないわ」と言う。
プロデューサーは「もう脚本家は決まっています」と答える。確か。
このシーンを見ている時点では、もう脚本も映画も完成して、観客は今この映画を"見て"いる。
だから、ああ、あなたのノンフィクションはこんなサイドストーリーでしか描かれない映画になっていますよ、すいませんっていう気持ちになる。
脚本家チャーリー・カウフマンはスーザンの写真で自慰をしてしまうわ、マンションを双眼鏡で覗き見したり、ストーキングしたり、スーザンを嘘つき呼ばわりするわで、見ているこっちが罪悪感にとらわれるし、こんなの描いていいのかと疑問に思っていたけど、全て創作ならば納得がいく。
いや!・・・がびーん!
今気になって調べたらスーザンもジョン・ラロシュも実在しており、ノンフィクション『蘭に魅せられた男―驚くべき蘭コレクターの世界』も全米で大反響を呼んだ本らしい。
えっ!えっ!まじ!
うーん、よくスーザンはOKしたなぁ。
この映画は前情報なしで事実関係も知らないまま見たほうが面白いかもな。ってここまで書いてから言うのも何だけど。
主人公が成長していく話なんてくだらない、カーチェイスなんかもいれたくない!って言っていた(脚本上わざと言わせた?)カウフマンが結局どういうストーリーを書いたのか(どういう目にあったか?)を楽しみに見るのもいいかもしれない。
どっからどこまでが、どの部分が事実なのか?を例え予備知識があっても巧みに目くらましをする。
全て事実だと思って見ていれば僕のように罪悪感に捕らえられたりびっくりしたりするだろうし、全て虚飾だと思って見ればそれはそれで違った感じ方もするだろう。
実際には事実と虚飾が入れ子になっている。
ストーリーはシンプルでいいんだ!ってカウフマンが映画の中で言っていた気がするが、事実もセリフも存在も原作もなにもかも1回以上否定する上、嘘と事実で複雑に入り組んだ構成を作り上げているが、でも結局この映画で表現していることはいたってシンプル。
このシンプルな主張を入り組んだ迷路(その迷路は複雑だけど誰でもゴールにたどり着く)のゴール地点に置く、ってなんていやらしいやつだ!って思うか、その遊び心ににやっとするか。
僕はこの映画面白かったけど少し疲労した。
僕は頭を出来るだけ使わないで済む映画が好きだから、頭を使うと疲れる。
ちなみにキャサリン・キーナーがちょびっと出ている。
カウフマンの恋人アメリア(カーラ・セイモア)がかわいい。
スーザン・オーリアン役にメリル・ストリープ。笑いとすれすれの女の怖さの演じ方が凄い。
ジョン・ラロシュ役にクリス・クーパー。
後は略。
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