ビデオ→DVD録画

会社の先輩に借りて見たのだけど、息をもつかせぬ面白さ。
始まって20分後くらい、家族四人の顔をそれぞれ映すショットがある。
黙りこくった四人の顔。
とてつもない静寂。
冒頭からずっとかかっていたバックミュージックが止まったからこんな静かになったのだろうか?と一瞬思うが、考えてみればバックミュージックなんか流れていなかった。
じゃあなんでただ登場人物の顔を映しているだけなのにこんなに違和感があるのかと思えばこの映画、ひっきりなしに誰かしらが喋っていたからだった。
父が喋り母が喋り、息子が喋り娘が喋り、社長が喋りピノサク君が喋り・・・
ひっきりなしのセリフの応酬が実にリズミカル。
さらにその軽快なセリフミュージックの内容がこれまた実に腹黒いんだから軽く眩暈がする。
舞台となっている場所は団地の一室なんだけど、カメラは状況に合わせて仰角俯瞰、窓の外ドアの外等々様々な位置から人物を捉える。
この部屋は狭いっちゃあ狭いのだが、窓がまるで日本家屋のように大きく開いている。入り口の内開きドアは閉めていたり開けっ放しだったり。
空間の開放感や閉塞感をセットの状態やカメラ位置で見事に調節している。
子供のいる後家で、生きるために最も腹黒い人間になった女性を演じたのは若尾文子さん。
どうもこの人僕の中ではセーラー服におさげで丸メガネをかけたロリ少女のイメージで固まってしまっていたのだけど、この映画では少女の顔に大人の表情が張り付いたような不思議な魅力があった。(しかも役どころは腹黒いし)
使用された音楽は能の囃子ぐらいだった気がする。ぃよぉ~っぽんぽんぽぽんぽん、ってリズムはこの映画によく合う。
テレビに映し出されたディスコの映像。ディスコミュージックは次第に囃子に変わり、部屋の中を無尽に踊り狂う若者二人。窓の外は真っ赤な夕焼けで食卓では父と母が黙々と食事をしている、ってそんなシーンもありました。
ちなみに終始灰色がかった映像には時たまのっぺりした吐き気を感じたりもする。
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