2004年5月31日月曜日

映画『胸に輝く星』

1957年 監督:アンソニー・マン
BS2 録画


西部劇。
西部劇はそう何本も見ていないのだけど、今まで見た中ではかなり上位に入る面白さ。
見終わった後えらい晴れがましい気分になった。

保安官であることに嫌気が差して、賞金稼ぎしながら放浪する男モーグ(ヘンリー・フォンダ)。
4日前に見た『荒野の決闘』(1946)から11年が経過。僕にとっては4日間でヘンリー・フォンダはじいさんになっていた。あ、でも52歳くらいか。じゃあおっさんか。相変わらずかっこいいのではあるが。
モーグはとある町で若き保安官ベンに会う。人殺しが大っ嫌い(?)で正義感に溢れたちょっと小生意気な男ベンを演じたのがアンソニー・パーキンス。『サイコ』の前だな。
まあ、超大まかに言えば、その道を極めている元保安官と、駆け出しで腕はないが情熱だけには溢れた青年保安官が出会うっていう話。

それにしてもキップ君、ダメじゃないか君ぃ。もう少しで散弾銃で頭ぶちぬかれているところだよ。おじさんはねぇ、一体どれだけ君の事を心配して探していたと思っているの?
などとモーグはキップ君を非難することなど全く無く、むしろ犯人を発見したキップ君の手柄を褒め称えるのであった。子供から好奇心を奪っちゃいけん。

ラストは対決を高見の見物で傍観していたモーグであったが立ち位置から考えて、敵の流れ弾が見事に命中して「ば、ばかな!」のセリフを残して寂しく散っていく様を予見したのだが、そんな展開になるわけないよな。
ラストは未来の安定と希望を匂わせるかっこいい瞬間を見せてくれるのであった。

あ、そうだ、美しき未亡人ノーナを演じたベッツィ・パルマーを調べていたらこの女優さん、この作品の後23年間映画には出演していないみたい。
そして復帰した作品っていうのが『13日の金曜日』。

この作品、中盤でちょっと悲しき事件が起きるのだけど、一体誰を憎めばいいのか分からない。
保安官っつーのはバンバン悪人を撃ち殺すもんだと思うけど、若きベンは殺さない主義の男だから悪人がいても殺さず逮捕する。
正義の手によって殺された奴が一番憎む相手だとすれば、唯一保安官ベンによって殺された男を憎む対象にすればいいのか。
いや、よくよく考えるとこの殺されちゃった奴って特に悪い事してないよなぁ。

殺された奴、確かにこいつがいなくなれば街の人たちの暴徒化は抑えられる、イコール平和になる。でもこいつは特に悪い事していない。逮捕できないじゃん、じゃあ殺しちゃおうぜって論理か。
やっぱし殺人によってしか街の平和は保たれないんじゃん。
ま、殺されたのは成り行きで正当防衛といえば正当防衛のなだが。
感情的に一番憎むべき男は法の裁きに委ねられて、憎くもなんともない男は画面の中で殺される、か。
後になって"よくよく考えると"なんだかよく分からなくなってくるのだけど、不思議な事に見終わった後の余韻はすっきり爽やか面白かったぜと拍手したくなるような映画。

・・・この文読んでこの作品が面白そうだと思った人がいたら会ってみたい。

2004年5月30日日曜日

映画『解夏』

2003年 監督:磯村一路
at ギンレイホール


解夏 スタンダード・エディション

混んでいたから一番前の席に座った。
隣に座った女性の方がふと気づくとずっと大泣きしている。
なんかうらやましい。
どこで泣けるか、どこで泣こうかとうずうず期待していたけどちっとも泣けなかった。
大沢たかおが長崎の町を見下ろす墓地で「おお~!!」って叫んだところで無理やり泣いとけば良かったか。

小学校の先生大沢たかおがベーチェット病という病気のため、失明すると医師に宣告される。
彼には婚約者の石田ゆり子がいる。
こんな失明なんかしちゃったら彼女を幸せにできない!ってことで一人実家の長崎に帰る大沢たかお。
こんにゃろーって追いかける石田ゆり子。

磯村一路さんといえば『がんばっていきまっしょい』の人。でも僕は見ていない。
調べていたら『あさってDANCE』っていう中嶋朋子がいかしていた映画を見てるなぁ。
この監督さん真面目な人なのかな。いや、監督じゃなくて原作のさだまさしが真面目なんだろう。

始まって10分くらいだったかな。えらい恐ろしいシーンがある。
急にいやな音が大音量で飛び込んできて心臓が口から飛び出るかと思った(表現古い?)。
結構むかついたんだよね。これ。なんでこんな無意味に人をびっくりさせるようなことするかな。
大体あのシーン自体なんの意味合いがあったんだ?

大沢たかおは沢木耕太郎の『深夜特急』のドラマ版を見てから好き。
石田ゆり子は甲斐甲斐しい上にむっちりしていて素敵だった。
田辺誠一も面白かった。
鴻上尚史が小学校の先生役で画面に現れた時に館内から数人の失笑が聞こえたのだけど、なんだ?冴えない先生役が面白かったの?
松村達雄は芸達者だねぇ。
大沢たかおの母役の富司純子って誰?と思ったら藤純子だった。ああ!そうだったのか。

2004年5月29日土曜日

映画『ジョゼと虎と魚たち』

2003年 監督:犬童一心
at ギンレイホール


ジョゼと虎と魚たち

池脇千鶴っていうのは役者の雰囲気持ったいい女優だな。
そして妻夫木君。あんまし好きじゃないのだけど、この映画の役ははまっていたような気がする。
池脇が演じるジョゼは両足が不自由で歩けない。ばあさんと二人で暮らす。ばあさんはジョゼをあんたは壊れ物だと言って彼女の存在をひた隠す。近所にはばればれなんだけど。
妻夫木君が演じるのは、性生活を謳歌する(といったら言い過ぎか)大学生で、ちょっとちゃらちゃらした雰囲気の恒夫君。
この二人が偶然出会う。その出会い方はなんだか劇的にしようとして失敗しちゃったような出会い方なんだけど。

この映画の時代設定っていつなんだろう。
登場人物があからさまに身体に障害がある人に対して差別意識を全開にしている。
痛いなぁ。
幸せ絶頂の二人に微かに漂いだす不安感もこれまた痛いなぁ。
冒頭、スナップ写真をスライドしながら妻夫木君が思い出の過去を回想する。
う~ん、意図的にやっているのか。それとも真面目なのか。なんかちゃっちくて痛いなぁ。
ラストの池脇千鶴の表情が凄くいい。前向きなんだけど顔の内側にしまいこんだ感情が胸をしめつけて痛い。
音楽が少しうざい。

最後の展開は決して唐突ではないにしろ、ちょっと不満。

まあまあ面白かった。
映画っていうか池脇千鶴が良かった。
見終わった後も感情が尾を引く。なんか今日は困ったなぁ。寿美さんと千鶴ちゃんに参った一日。

いつまでも 麗しく

午後4時過ぎ、新小岩に降り立つ。
この駅は初めて降りる。名画座のない街にはほとんど降りた事が無い。

今日は田川寿美さんが、柏、錦糸町、新小岩の順で新曲の店頭イベントを行うのである。
田川寿美は僕が演歌を聞きだした去年の初め頃からずっと好きだったのだけど、最近寿美熱が今まで以上に盛り上がり、こりゃもう生歌を一刻も早く聴きたいと思っていたところにこのイベント情報。
小躍りして喜んだね。
錦糸町が一番近いのだけど、時間が分かったのが新小岩だけだったので新小岩にする。
新小岩は17:30からヤマサトーホー堂で行われる。
Do 演歌.comでお馴染みのヤマサトーホー堂。

着いたときまだ1時間くらい余裕があったけど、とりあえず場所確認として新小岩駅からヤマサトーホー堂に行ってみる。
昨日マピオンで調べたところ、大通りから1本となりの細道に立地していると知り、もしや住宅街にぽつんとあったりするのだろうかと思っていたけど、行ってみるとバリバリ人通りの多い駅前商店街に店はあった。
1時間前なのに店先には何人かの人だかりができている。
とりあえず場所も分かった事だし、新小岩を散策してみる。
と、その前に商店街の脇道で煙草を一服。
目の前を通り過ぎた年配の夫婦がトーホー堂で配っていたチラシを持って通り過ぎる。
「お前にやるよ」と言って妻にチラシを渡すおっさん。
「あの子ぱっとしないのよね~。もう大分前からいるよね。10年・・・くらい?」
ぱっとしない・・・ですか。今や日本の歌い手で最高峰の位置にいる女性をつかまえてぱっとしないですか。

17:20頃、再びヤマサトーホー堂に戻る。
細長い店内にぎっしり人が詰まっている。皆年配の方々で、一瞬ひるむ。
いや、ひるんでる場合ではない。目的を果たさなければ。
通りすがりをそれとなく装いながらも一気に突撃。

17:30、いよいよ寿美さん登場。
店内がざわめき、興奮も高まる。
寿美さんが店内奥の台に上ると、いっそうざわめきが増し、寿美さんに向け怒涛の如くおっさんおばさんが詰め寄る。
押し競饅頭状態。
僕の右側のほんのわずかな隙間に入ってきた化粧の濃いおばさん。僕を思いっきり押しのけてくる。
むかっとして押し返す。こなくそ、俺は一歩も動かんぞ!
おばさんの肩が僕の二の腕に食い込む。おばさんは少しも気にしていないらしく、後ろの連れのおばさんと「全然見えないわ~」としきりに言い合っている。
(´ー`)(ー`)(` )(  )( #`)(#`皿)(#`皿´)/ ムカァー!!
僕のかよわい二の腕がかなりの力でへこむくらいぶつかり合っているというのになんでこのばあさんは少しも気にしていないのだ。・・・この根性。負けた。つーかこんなばあさんにかかわってる場合じゃない。一歩左による。
さて、寿美さん。生で初めて見たよ~。でも前のおっさんの剥げた頭ばかりでようやっとお顔がほんの少し見えるだけ。
こんなことなら1時間前から陣取っておけばよかった。

新曲を1曲歌って終わりかと思っていたけど、まず『しゃくなげの雨』を歌ってくれる。
凄い音量。凄い迫力。でも音量でかすぎて音が少し割れていた。にしても堂々とした歌いっぷり。しびれる。
と、人の感動を邪魔するのはやっぱり隣のばあさん。「見えないわー」「着物だね」「ほら、あそこの鏡に映って見えるよ」等々、後ろのおばさんと喋り続ける。
いくら見えないからって、ぎゃあぎゃあうっせーよ。
「ほら、北山たけし」とか言って、店内のポスター見て全然寿美さんと関係の無い話までし出すし。歌っている最中に!

2曲目、『海鳴り』。おお、まだ歌ってくれるのか。
っていうか隣のばあさんの連れのばあさん歌ってるよ。しかも音程外れてるし。

3曲目、『悲しい歌はきらいですか』。
す、すばらしい!相変わらず歌うばあさんを差し引いても素晴らしい。
歌い終わった後のMCで「何人か口ずさんでくれる方もいらっしゃいましたね」と嬉しそうに寿美さんが言っていた。
ふむ、そうか。こりゃぁ嬉しい事なのか。じゃあまあ許そう。と言いたいところだけどやっぱ歌声の細かな色合いまで楽しみたい者にとっては邪魔臭い以外のなにものでもない。
っつーかこういうイベントじゃなくて金払ってコンサートに行けって話だな。
こういうイベントはコンサートでは考えられないくらい歌い手を間近で見れるし、歌と歌い手と観客が正に一体となっているようなお祭り的空間が特異で、楽しみ方としては純粋に歌声に耳を傾け酔いしれるという場ではないのかもしれない。

4曲目、新曲『花になれ』。
これで最後。姿がちょっと見える。オレンジ色の綺麗な着物姿だった。

終わった後、握手会が始まると店員が言う。
「握手はいいや」ととなりのおばさん二人は帰っていく。
他にも店内にいた半数がぞろぞろ店を出て行く。
どうしよう。歌を聴ければそれでよかったのだけど。でも間近でも見てみたいな。よし!並ぼう。

列に並んでいると、店員がCDをお買い上げになってから並んでくださいとアナウンスしている。
なんですと!
列を外れる。
店頭でCD販売していた。
新曲のシングルを手にとって見る。シングルのカップリングは何かと思ったら『悲しい歌はきらいですか』だった。
う~ん。少し迷うな。『悲しい歌はきらいですか』はラジオからMDに入れたやつを持っているし。
決めた。買おう。買ったら握手&サイン色紙の交換券をくれた。
「こちらへどうぞ~」と言われて指示通り列に並ぶ。
段々寿美さんに近づいていく。滅茶苦茶緊張した。
前のおっさんがなにやら寿美さんと話していて、寿美さんが「そうなんですか」と気さくに対応している。
そのおっさんが帰りいよいよ僕の番。
寿美さんからまずサイン色紙を両手で受け取る。
受け取った後ちらっと顔を見ると、目をぱちくりさせていた。なんだろう。なんか変な顔してたか。それとも比較的若目の男が珍しかったのか。
手を差し出してきたので握手する。
「頑張ってください」と言ってもう一度ちらっと見るが、メガネを外していたせいもあってよく見えなかった。僕はすぐ目線そらしちゃったし。
なんかあまりに緊張して直視できなかったのだよね。
というか握手の後なんか妙ににやけ顔になってしまいそんな顔を見られまいとそそくさ踵を返して店を出ちゃった。
今思うと寿美さんに背を向けた後の僕の表情を見たやつがいたらえらい不気味だったんじゃないだろうか。うつむいてにやにやしてたと思うし。

よ~し!9/27の渋谷公会堂のコンサートはぜーったい行くぞ~!
ちなみに去年のコンサートはちょうど客先で仕事している時期で忙しいかなと思ってチケットとらなかったのだけど、当日思いがけず仕事が早く終わりもしや当日券があるかもと思って竹橋から渋谷に向かった。
汗だくになってもう開演30分程過ぎた頃に渋谷公会堂にたどり着く。
入り口にいた兄さんに当日券あるかと聴くと、いぶかしげな顔しながら「席は完売です」と言われ、うなだれて帰宅した。
今年はちゃんとチケット取ってどんなに仕事忙しかろうが行く事にしよう。でもそもそもチケット取れるかなぁ?


とっとと帰ってCD聴いて余韻に浸ろうかと思ったが、せっかくだから飯田橋に行く。
マックでくつろぐ。mp3プレイヤーで寿美さんが歌う『悲しい歌はきらいですか』と『お祭りマンボ』を聴きながら。

2004年5月27日木曜日

映画『荒野の決闘』

1946年 監督:ジョン・フォード
BS2 録画


荒野の決闘 <特別編>

ワイアット・アープですね。演じるのはヘンリー・フォンダ。
ワイアットとドク・ホリデイ(ヴィクター・マチュア)が酒場でけんかした後、それを見ていた太っちょピアノ弾きのおっさんが勢いよくピアノを弾き出す。
チャンチャンってな感じで。
このサンバイザー付けたおっさんの無表情な顔と軽快な曲とくわえ煙草から吐き出されてもくもく漂う煙と弾きながら後ろを振り返る仕草と、もうかっこよすぎるし笑える。

また、劇場では怒り狂った観客が色んなものを投げる。特に帽子が面白い。フリスビーかと思うくらい見事に飛んでいた。
ヘンリー・フォンダが見事にキャッチして投げ返しているし。

アープ兄弟が三人でむしゃむしゃ飯食ってるシーンがあるのだけど、いいシーン、っていうか美味そう。

まあ、面白かった。
ラストのOK牧場での決闘は位置関係がよく分からなんかった。
ウォルター・ブレナンも出演。

手短に記録まで。

2004年5月25日火曜日

映画『瞼の母』

1962年 監督:加藤泰
BS2 録画


瞼の母

なんていいやつなんだ、中村錦之助は。いいやつすぎて涙が出る。

この映画エキストラが面白い。街道や江戸の町を歩くただの通行人なんだけど、ありとあらゆる職業格好の人物が素敵に通り過ぎ、または立ち止まる。
存在感がありすぎず、なさすぎず、エキストラはやっぱりエキストラなんだけど、彼らだけ見ていても面白いくらい。
エキストラですら面白いのだからもちろん中心となる人物達はもっと面白い。
盲目の三味線引き浪花千栄子や江戸の導入にあまりにもふさわしい酔漢星十郎、むさいやくざものを見事に演じた山形勲、見れば見るほど味わい深い顔した原健策、流し目が強烈だった沢村貞子、・・・きりがない。
名シーンも盛りだくさん。
浪花千栄子、星十郎、錦之助が織り成したあの詰まりに詰まった極上の長回し。
母木暮実千代と子錦之助、再会シーンでの興奮と歓喜と衝撃と動揺と失意と…って様々な感情の複雑な襞。

殺陣のシーンで、画面見てると立ち回る人達が動くたびにいやに残像が画面に残って、ああ、いつもHDDに録画するとき画質を少し落として入れているのだけどこんなになっちゃってたんだ、なんで今まで気づかなかったのだろう?って思ったけどこれは録画画質の問題じゃないよな、よく考えると。

2004年5月23日日曜日

映画『風と女と旅鴉』

1958年 監督:加藤泰
BS2 録画


面白すぎる。最初から最後までのめりこんで、ラストではかない余韻に浸る。
わがままそうな坊ちゃん顔した中村錦之助が孤独にいじけた男を上手く演じている。
演技と言うか顔がもう役にはまっているからな。
ちなみにこの作品で錦之助は初めてノーメークで出演したらしい。
もう一人の主役が三国連太郎。渋くて男前な三国。

冒頭、旅姿の三国が山道をひょこひょこ走る。酔っているかのような走り方。この走り方一つとってももう面白い。
のどがからからに渇いていたらしく、小川を見つけた三国はのどを潤す。
水を飲むのに夢中の三国の背後に忍び寄ったのが錦之助。こうして二人は出会う。
素性の知れない二人。錦之助の生まれた村で次第に明らかになる過去。
途中までこの二人は強いのか強くないのかよく分からないんだよね。誰とも戦わないから。
錦之助が演じている役は精神的に幼い印象を受けるため、弱そうな気もするしでも意外と強いのかもしれないし。
三国は年長として渋い雰囲気が強そうに見えるけど、なんだか頼りない歩き方するから弱そうでもある。
強い弱いや謎の過去も含めてちょこちょこ明らかにしながら物語は展開していく。
しかも織り交ぜられたユーモアも結構笑える。
三国と殿山泰司のコメディアンぶりに笑い、錦之助の真面目なウインクに笑い・・・

そういえば長谷川裕見子の登場シーンでのひんやりとした視線のあまりの麗しさにはぞくっとしたな。

2004年5月22日土曜日

映画『暗殺者のメロディ』

1972年 監督:ジョセフ・ロージー
BS2 録画


暗殺者のメロディ

これはなんだか妙に悲しい気分になる映画だな。メロディは悲しいメロディ。

すかしているくせにグラスの割れる音に無様にも体をびくつかせる小心者ジャック。演じるのはアラン・ドロン。
そして暗殺されるトロツキーを演じるのはリチャード・バートン。
ジャックの恋人ギータにはロミー・シュナイダー。
人物の顔を撮るのが上手い。要所要所で差し込まれる一瞬間の表情のアップが、どの役者も深い味の顔(表情)を見せるため、軽い緊張とともに引き込まれる。
意外性があると映画は面白い。
丸いグラサンをかけたクールな謎の男ジャックがどこか幼稚な精神年齢だったり、聡明な女性ギータが急にヒステリックに叫んだり・・・

1940年メキシコ、世界に衝撃を与えたトロツキー暗殺を映画化した作品。
この映画、あまり多くを説明しない。政治背景の予備知識が必要ということもあるけど、結構画面から得られる情報を冷静に捉えて記憶解釈していかないと細かい部分がよく分からないと思う。
例えば、次のシーンに行く前にそのシーンの最後を静止させてから移行するという編集が2箇所ある。
ギータのキスを顔をそむけて避けるジャックのおどけてるのだかなんだかよくわからない表情の静止。響き渡る釣鐘の音を止めるべく狂ったようにロープに飛びつくジャックの静止。
1つ目の静止など一瞬の静止がいやに異様な印象を受けるし、2つ目もジャックの病んだ精神が狂的な姿で静止により焼きつく。
異様さの印象しか受けなかったけど、この映画をもう一度早送りしながら見ていると、1つ目がただの仲のよいカップルのジャックをスナップショットで切り取り、2つ目はジャックが暗殺実行を決意した瞬間を切り取ったというように、この2つはジャックという人物の全く違う側面をそれぞれ印象的に切り取ったのだろうと思う。
そのシーンを見た瞬間にはなんだか分からないけど、物語が進むにつれあのシーンはああいう意味合いが含まれていたのかと気づいたり気づかなかったりする部分が多い。
だから1回目は気楽に見て、2回目に不明な部分をチェックしながら見て、政治背景を勉強してから3回目・・・って時間があればやってみるといい。
でも1回目でも十分僕は面白かった。役者の顔見てるだけでも面白いし。

暗殺に使った凶器が面白かったのだけど、実際にもこの凶器が使用されたらしい。
あと、トロツキーが遺書を吹き込むシーンがあるのだけど、実際の遺書をほぼそのまま引用しているみたい。詩的に映像化されていたしなんだか感動的。Life is beautiful.

そういえばフリーダは一切出てこなかったな。シケイロスは出てたけど。

2004年5月21日金曜日

演歌歌謡曲

「BSにほんの歌」の再放送を見る。
1時間半の番組中最後の30分は一人の歌手でワンマンショーが行われるのだけど、最近ワンマンショーが廃止されたかなんかで二人の歌手によるスペシャルショーというコーナーに変わっている。
そして今回のスペシャルショーは八代亜紀となんと門倉有希なのである。

番組開始の一曲目は後半のスペシャルショーに出演する歌手がまず歌うのだけど、その時の門倉さんになんだか違和感を感じる。
まあそれは置いておこう。
2曲目、林あさ美が歌う「天使の誘惑」。
この曲は黛ジュンの鼻に詰まった甘い甘すぎる強烈な歌声が耳にこびりついているのだけど、林あさ美は見事に林あさ美だった。
どこまでも突き抜けていく明るい健康的な歌声がまぶしすぎて悪どい行いをしている人なら彼女を直視できないことであろう。

3曲目、田川寿美きたー。香田晋とデュエット。「愛の奇跡」。ヒデとロザンナだな。
男性歌手ってそれほど興味ないのだけど、香田晋はなぜか好き。だから寿美ファンとしては興味深いデュエット。
デュエットといったら二人が歌いながら目を合わせ微笑みあったりするもんだけど、この二人ほとんどお互いの顔を見ない。
それぞれがそれぞれの振りでノリノリ歌っている。大人のデュエット。かっこよすぎる二人。香田晋までかっこいい。

12曲目、大川栄策。「与作」。すげー合ってる。

14曲目、神園さやか。新曲「さすらい鴎」。衣装の制服を夏物にチェンジ。スカートの丈が前より少し短くなった気がする。
この子もう5,6年したらえらい美人に化けそうだし、その頃には歌の方も少しずつ味が出始めているだろうから期待したい。
サビが、「ヤンサノエーヤンサノエー 見えてかくれて日が昏れるハイ!」って歌詞なんだけど、「見えてかくぅ~れ~て 日~が~ぁ昏れるぅ~」って歌った時点でもうサビが終了している感じで「ハイ!」ってどうやって歌うんだ?と固唾をのんで見守ると、満面の笑みで「はいぃ~」・・・ってどうやって説明すりゃいいか分かんないんだけど、この「ハイ!」をふにゃふにゃっと可愛らしい歌い方をするとはちょっと意外で面白かった。
っていうかこの可愛らしさのレベルはガキじゃん。現役高校生が!それでいいのか!おっさんはだませるのか!?

15曲目が田川寿美さんで新曲「花になれ」。
もう本当この人にはいつまでも歌い続けてほしい。僕に幸せをください。
ちなみにこの新曲の作曲は堀内孝雄なんだけど、まんま堀内色全開の曲になっている。

そして後半八代亜紀と門倉有希のスペシャルショー。
1曲目「おんな港町」八代と門倉が交互にフレーズを歌うのに八代さんが間違えて門倉が歌う部分も歌いだしてしまい、少々ごまかしながらマイクを遠ざけたのだけど、門倉さんには八代さんを"きっ"と睨みつけるくらいのことをして欲しかったなぁ。
門倉さんはどうしたかというと、少し微笑みながらすいませんってな感じに会釈しただけ。
と書くと律儀じゃないかって思えてきたけど、門倉さんは大先輩八代と歌うせいか、それともこのステージのせいか、がちがちに緊張しているみたいで、しきりに八代の方を向いてはひきつった笑顔で微笑み合っていて、それが痛々しくてさ。
口をにっとさせる笑い方はいつもの笑い方なんだけど、今回は本当いつも以上に不自然だった。
八代が少しでも門倉さんの方を向けば「あっ!微笑みあわなきゃ!」と自分に義務付けているみたいで。
こんなんじゃ門倉さんも聴いている僕も歌どころじゃないんだな。ちょっと消化不良。

7曲目「春夏秋冬ふられ節」。イントロが始まると門倉さんはどっかに引っ込み、出てくる出てくる、林あさ美、多岐川舞子、そして神野美伽がぁ!
この曲を初めて聴いたのはいつだったか。神野さんの顔と振り付けがトラウマになったこの曲を!!
まず林さんが歌う。ん~、今までの八代門倉のステージに漂っていた苦しさを見事に吹き飛ばす。
林、多岐川と歌っている間、後ろの神野さんが気になってちらちら見てしまったのだけど、前見たときのような振り付けをしていなかった。残念。
・・・神野さんの振り付けってなんかいいんだよな。いいんだけどトラウマになる。くさやみたいなもんか。食った事ないけど。

「春夏秋冬ふられ節」が終わり、陽気なステージが去ると照明が暗くなりギターの寂しいメロディーとともに門倉さん再登場。
八代の「舟歌」のさわりを歌う。これだ!これ!この暗さ!暗いオーラ。これに僕はしびれたのだ。
暗さは門倉さんの本質ではないかもしれないけど、孤独で暗くて情念の塊のような女を演技でもいいから堪能させて欲しい。

それにしても門倉さんこのステージで5年は老けた気がした。

2004年5月20日木曜日

風邪

昨日家帰ってオムライス作っているとき、急に吐き気が襲ってきて戸惑った。
家に帰る途中で毒ガスでも吸ったか、もしくはマンション内に毒ガスが充満しているか。
・・・毒ガスっていうかたぶん風邪だったみたい。体温計を持っていないからよく分からないけど。

2日間で終わらせなければならない仕事があったから休みたくなかった。
昨日の夜から今日の朝にかけて苦しみぬいたら幾分吐き気も収まったので出社する。
会社にあった置き薬を飲んで仕事する。あったまいて~し、回転も鈍い。
昼飯を食う気になれず、かといって何も栄養を取らないと死ぬ気もしたので、ウイダーインゼリーとリポビタンDとグリコのヨーグルトを摂取。
仕事の資料をぱっぱと作って見直しする気力も無くそのまま上司に提出。軽く分かりづらい資料だと文句を言われたがOK貰ったので、体調悪いと報告して早退させてもらう。
この資料を作成した後に待っている仕事が時間を要するのだけど、大変な分だけこの体調で取り掛かるのはよくない気がして。

午後4時過ぎに家に着き、布団敷いて寝る。
午後10時過ぎに目を覚ましたときには少し頭痛いという以外にはすっきり回復していた。

2004年5月19日水曜日

迷路

一歩進んだと思ったらすぐ壁に阻まれる。一度つかえると壁が四方から迫って体を圧迫する。
体の向きを変える。一瞬空間が開けるが壁は再び迫って苦しみを呼び起こす。
辺りを見回しても暗闇しか拡がらない。
この迷路は難しい。且つ苦しい。いつもは(毎日やっている事だが)苦もなくできるというのに。

朝までにはゴールに着かなければならない。
えっ!でも、もう午前5時だ。急がなければ。
しかし行けども行けども(といっても一歩も進めないのだが)目に映るのはHDDレコーダーの液晶の明かりだけ。
・・・
確か、予約録画した映画は午前0時から2時間ではなかったか。予約録画、したよな。電源が入れっぱなしなのか。まあ、どうでもいい。やることがある。

難しい。難しいよ。この迷路。寒いし。暑いし。苦しいし。
もう体の節々が痛い。上も下も分からずに吐き気が積もる。

吐こう。
起き上がってトイレに行く。付けた玄関の電気があまりにまぶしくて目がまともに開けられない。頭が痛い。
ゲロゲロゲロゲ~~。
寝る前に吐いた2回と合わせ、これで夜に作って食べたオムライスの米粒一粒残さず全て吐き出したはず。
布団に戻る前に部屋の電気を付けて壁に掛けた時計の時間を見ると午前3時だった。
道に迷って時間まで遡ったか。

布団に入る。
悪寒によるえもいえぬ寒さのために掛けていた厚い掛け布団を一枚はがす。
四方から押し寄せた壁が現れなくなる。なんだ、簡単な事だ。そう、簡単だったんだ。
壁は現れなくなった。迷路も消えた。吐き気と頭痛とだるさと悪寒は残った。
苦しさの中何度も目を覚ます。時間は全く分からない。目覚ましが鳴っていないのが頼りになる。

気づくと薄いカーテンに遮られた朝の光が部屋をやんわり明るくしていた。午前8時過ぎ。
吐き気が大分収まっている。
布団の中からテレビを付け、NHKの「天花」を久しぶりに見る。
9時半、出社。

2004年5月16日日曜日

映画『伊豆の踊子』

1974年 監督:西河克己
BS2 録画


伊豆の踊子

映画の伊豆の踊子を見るのはこれで2回目。
1回目は高橋英樹、吉永小百合版で見ている。この時の監督も西河克己だった。
別に百恵ファンでもないから大して興味もなかったのだけど出演者に石川さゆりという名前を見つけたので録画していた。

期待していなかったわりには結構面白かった。
百恵さんが好演していて。
書生役の三浦友和は高橋英樹よりかは頭よさげに見える。
百恵友和の初共演作とのこと。

ラストシーンが面白い。
座敷で芸を続ける百恵だが刺青をした酔客にまとわりつかれ、さりげなく払っていたのだけどついに抱きつかれてしまい百恵さんが「うっぷ」という顔をしたところで画面が静止し、「終」の文字が浮かび上がる。
ちょっと笑ってしまうようなこれがラストシーンでいいの?・・・というかこの抱きついたエキストラはこの役を貰ったときに小躍りして喜んだのだろうな。

時折友和の心情がナレーションで入る。
この声が友和ではなくて宇野重吉なのだ。
確か高橋英樹版では大學の教授かなんかになった書生さんが過去を振り返るという形式で物語が進んでいたような気がする。そしてその教授役を宇野重吉が演じていた。
ということは友和版もこれ昔を振り返るという形式をとっていたのだろうか。書生の未来の姿など一切出てこないのだけど。

見終わって、ふー、っと一息ついてから思い出した。あっ!石川さゆりは!?
早送りしながら探していたら、病気で死ぬ寸前だった女郎のおきぬちゃんが石川さゆりさんだった。
う~ん。そうか。影うすいなぁ。

百恵さんを金で買おうとしたエロおやじは三遊亭小円遊。
百恵さんの覗き見に熱中するあまりに、つい友和が落としてしまったガラスの釣燈籠。落ちて割れた釣燈籠を拾い上げた板前さんは鈴木ヒロミツ。やせてる。
一瞬だけ出てきて百恵さんの可愛さを褒め称える飴屋は青空はるお。

2004年5月15日土曜日

映画『私の小さな楽園』

2000年 監督:アンドルーチャ・ワディントン
at ギンレイホール


私の小さな楽園

ブラジルのコメディドラマ。
要は淫乱女性の話なんだけど、淫乱などとは口を滑らせても言いたくない、恐れ多い気持ちになる映画(あ!2回も言っちゃった)。
主人公のダルレーニという女性はあまり美人とはいえない女性(というかおばさんか)なのだが、なぜかもてもてで子供を4人生む。
しかも4人の子供の父親が皆別人。そして実の亭主との間に子供はいない。いんらんじゃ~!
と、言いたくなるのだが、ダルレーニはふくよかで豪快で笑うとむきっと歯茎が飛び出し時に可愛らしい表情を見せるおばさんで、・・・えーっと、つまり野性的なんだな。
だから奔放な性は汚らしさよりも湧き上がる生命の思わず拝みたくなるような輝きを見せる。

性交→出産→性交→出産・・・
ガキが簡単にぽんぽん生まれてくるところがダルレーニを神にする。
(生まれた子がこれまた亭主とダルレーニとは似ても似つかない)
出産シーンはほとんど描かれない。本当ぽんぽん人種も目の色も違う子供がダルレーニから飛び出してくる。
苦しんで苦しんでやっとの思いで一つの生命を産み落とす偉大な女性が描かれない。いいのだ、ダルレーニは。もともと偉大な母なる女神なのだから。

ブラジルのどこまでも広がる底の無い青い空と、空に張り合うかのように体を横たえる荒涼とした大地。そしてダルレーニ。

ところでハンモックって乗った瞬間布がびりびり破けて落ちちゃう気がするのだけど。
ハンモックって丈夫なんだね。

映画『かげろう』

2003年 監督:アンドレ・テシネ
at ギンレイホール


かげろう

主演エマニュエル・ベアール。
顔はもう結構おばさんになっているのに脱いだら凄い。
なんかこの"脱いだら凄い"ってパターン最近あったなぁと考えてみたら『ピアノレッスン』のホリーハンター。
顔だけ見ていると少しもそそられないのに、脱いだら完璧なまでの体のラインと張りにびっくりしたあのホリーハンター。
今回のエマニュエル・ベアールも相変わらず美しいとはいえ老け始めの顔に似合わず20代かと思うぴちぴちした裸体に驚く(本物?)。
それにしてもエマニュエル・ベアールって痩せたよなぁ。
『美しき諍い女(いさかいめ)』の時はもっと太っていた気がするけど。

第2次大戦下のフランス。戦火に包まれるパリから南仏に逃げるエマニュエル・ベアールと2人の子供。
南仏へと行進する群集を突如襲うドイツの戦闘機。
道の縁でおびえながら伏せている人たちの上に戦闘機から黒い物体が重力に従い降ったかと思うと大爆発。
一つ、二つ、三つ。
爆発で吹き飛ぶおっさん。子供達をかばって泣きながら(確か泣いていた)伏せるエマニュエル・ベアール。
これが本当に戦闘機から爆弾が投下されているかのように見えるんだな。だからエマニュエル・ベアールと一緒に僕は泣いたよ。

ストーリーはこの戦闘機の爆撃時に知り合った青年とエマニュエル・ベアール親子が森の奥深いところにある立派な無人の屋敷で戦争が終わるのをひっそり待つ話。
戦時下なのに人間の戦争なんて無縁に広がるフランスの自然に覆われひっそり佇む屋敷で登場人物一人一人の心の揺れ(変化)がもろくも力強い躍動を見せる。
過去、現在、未来。人間はどれを真摯に見つめるのが一番いいのだろうな。

結構面白かった。見ていて何度も緊張させられるし。
ラストシーンってなんだったんだろう。意味ありげに知らんおっさん映してるし。

「巨匠アンドレ・テシネ監督」・・・って言ったってボクしらな~い、って思っていたけど『夜の子供たち』という映画を以前見ていた。
『夜の子供たち』はめちゃ面白かったのさ。
この監督、もう2,3作見て気に入ったら好きな監督リストに入れよう。

2004年5月14日金曜日

映画『大学は出たけれど』

1929年 監督:小津安二郎
BS2 録画


小津安二郎 DVD-BOX 第四集

高田稔を『朗かに歩め』で初めて見たと思っていたけど、この『大学は出たけれど』で見ていた。
大卒の真面目な男を演じているがこれはこれでかっこいい。

この作品は本来約70分あるらしい。しかし現存するのは11分の短縮版のみ。
あっというまに終わる。
昔フィルムセンターで見たときもマーベルグラフ短縮版という11分の断片だった。全部見てみたいなぁ。
ラストで歩道橋から夫の乗った電車を見送った田中絹代は何かを思い出したかのように突然駆け出す。
えっ?なんだろう?鍋の火でも点けっぱなしだった?

映画『朗かに歩め』

1930年 監督:小津安二郎
BS2 録画


小津安二郎 DVD-BOX 第四集

ナイフの謙と恐れられる不良モダンボーイが当時日本で一番素敵な女性だった筈の川崎弘子さんに一目ぼれする。
弘子さんは不良が大っ嫌い。だからナイフの謙は更生する。
単純と言えば単純なストーリーだが、めちゃくちゃ面白い。

モダンな洋室に住むナイフの謙と貧しい日本家屋に住む川崎弘子。かっこいいオープンカーに乗って行ったデート先は鎌倉の大仏。
大仏のすぐ側にオープンカーを止め、大仏を背に石段に腰掛ける二人。ナイフの謙はかっこいい洋装で弘子さんはしとやかな和服。
デートについてきた弘子さんの妹は洋装で、大仏の側で紙風船で一人遊ぶ。
何気なく異質のものを画面に並置している、そのしれっとした感じが面白い。

ナイフの謙は一度弘子さんの妹を車で轢きそうになる。その時泣く泣くうち捨てられた妹のキューピー人形。人形の足が割れちゃったから。
数日後、三人で大仏見に行った帰り、妹を轢きそうになった現場を車で通る。
今じゃもうあの事件も笑い話だ。道端に捨てられたキューピー人形は何度も通りを行く車に踏み潰されたため無残にもぺちゃんこになっていた。
ぺちゃんこのキューピー人形はもう笑いの種でしかない。三人でキューピー人形の変わり果てた姿を心ゆくまで笑い飛ばした後、あれほど名残惜しげに足の割れて捨てられてしまった人形を振り返りつつ見ていた妹が、ぺちゃんこ人形を車内からぽーんと後ろに笑いながら放り投げてしまった。
再び道端に転がるぺちゃんこ人形。この残酷さが妙に可笑しい。
この映画では、捨てる、拾う、という動作が何度も出現する。帽子だったり人形だったり細切れの紙だったり縄跳びだったり・・・
苛立ちの表れの捨てるだったり、父のような義兄が出来たことによる人形との別れ(ちょっと強引な解釈か?)であったり、ナイフの謙と仙公との間に細く引かれた溝を一気に飛び越す縄跳びだったり、相手を馬鹿にした意味での捨てるだったり、特に意味はなかったり・・・
意味というか、物が放物線を描いて落ちるという動きが画面に入るとなんだか面白いよね。唐突に画面にスピード感が加わった後、投げられたものは直前の躍動が遠い過去の事のように死んだように静止する。
放られた後、捨てられ置き去りにされる哀愁があったり、執拗に拾う可笑しさがあったり。

ナイフの謙を演じたのは高田稔。
この人恐ろしくかっこいい。あの視線はまさにナイフ。ただしどこかあやういナイフ。
うつむいている時の美しさは男の僕でも思わず見とれる。
うつむいた美しさと言ったら忘れていけないのが川崎弘子さん。美人ではないのだけどなんでこんなに可憐なのかなぁ。
可憐さと美しさは弘子さんがうつむいたときにピークに達する。見とれちゃうね。
不良モダンガール千恵子を演じるのは伊達里子。この四角い顔した人『淑女と髭』でも弘子さんをいじめていたのだよね。
伊達里子さんはモダン・ガールを代表する女優で小津はこの伊達里子さんや井上雪子さんを連れて颯爽と横浜を歩いていたらしい。
ちなみにゴルフ場のシーンでキャディをしていた少年達の一人にひょっこり突貫小僧がいたよなぁ。

2004年5月11日火曜日

2004年5月9日日曜日

映画『西部の男』

1940年 監督:ウィリアム・ワイラー
BS2 録画


西部の男

ウィリアム・ワイラーが撮った西部劇。
テキサス州ペコスで農民と牛飼いが対立していた。
牛飼いは昔からこの土地にいて牛の放牧をしていたのだが、後からやってきた農民が牛によって作物が荒らされるといって土地に柵を立てる。
牛飼いは生意気な農民め、ってことで柵を壊し農民に発砲。農民も応戦。そんな毎日。
この土地を仕切るのは自称判事のロイ・ビーン(ウォルター・ブレナン)。こいつは牛飼いの味方で、ままごとのような裁判を行っては農民を吊るし首に。
そんな土地にやってきた流れ者がコール(ゲイリー・クーパー)。コールは中立。
だってロイ・ビーンは悪徳ではあるがどこか憎めない男で、コールはこのビーンと仲良くなっちゃったのだけど、一方農民側の娘ジェーン(ドリス・ダヴェンポート)が美しいからジェーンの家にいついちゃってもいるし、ってことで中立。
(…実際にはお互いがお互いの言い分を聞きもしないで争いをしているから話し合いで解決させようとコールは紳士になっているわけだけど)

1シーン1シーンが面白い。意表を突くというか。
夜、ジェーンが家の中で窓辺のランプに火をつけると、窓の外に光る目が!!コールが家の中を覗いていたのだった。(ジェーンの家を知らないコールはそうやって何軒も必死に家の中を覗きまわっていたのだろうか)
他にもロイ・ビーンを殺しにやってきた数人の農民がビーンのいる部屋のドアに一斉に銃を構えてビーンが出てくるのを待っていると、突然後ろのドアが開き銃を構えたビーンが現れたり。
意識を集中させていない画面の一点にいきなり意識を持って行かせる。

ピンチのシーンも多々あり。処刑されるピンチ。馬で追いかけられるピンチ。嘘がばれそうなピンチ。中立という中途半端な立ち位置によるのっぴきならないピンチ。
ユーモアも織り交ぜ切り抜ける痛快さ。

いやあ、つまり面白かったな、この映画。

2004年5月8日土曜日

ゲーム

確か5/2だったと思うけどPS2のゲームを買った。
「ギガンティックドライブ」というロボットアクション。
ロールプレイング好きなのだけど、やると越すまで何も手がつかなくなり1日中やっちゃうから時間がもったいないしってことでこのアクションゲームを購入。
でもアクションゲームのくせに面白くて本当何日も一日中やってたな。
GW最後の5/5が終わるまでに3回クリアした。1日1回クリアくらいのペースで。
ゲーム中CDかけていたのだけど、30枚以上聴いてしまった。

このゲーム巨大人型ロボットを操縦するんだけど、両手両足を一つ一つボタン操作で動かす。
前進するにはR1ボタン(右足)とL1ボタン(左足)を交互に押すとか。

敵そっちのけで街を好きなだけ破壊しまくるもよし、紳士に街の被害を最小限に抑えるように努力するもよし。
逃げ惑う人をロボットでつかんだまま敵めがけてロケットパンチするもよし。
友人のバイト先のパン屋を徹底的に手榴弾で破壊しまくるもよし。
(この子は金に困りショーパブで働こうとしだしたりして、最終的には東京に仕事を探しに旅立ち音信不通になってしまう。ちょっと笑った。)

ストーリー終盤でヘリに乗った突撃レポーターの番原さんを偶然殺してしまったのだけど、それ以降のストーリーで番原さんの死に全く触れないっていうゲームの演出によりかなり罪悪感を感じた。

暫くゲームは買わないことにする。

映画『ピアノ・レッスン』

1993年 監督:ジェーン・カンピオン
BS2 録画


ピアノ・レッスン

変態がいて、変態がいて、変態がいて、アンナ・パキンがいる。
アンナ・パキンって昔の表記じゃアナ・パキンじゃなかったっけ。
まあいいや。
エイダ(ホリー・ハンター)は変態的な形で愛を示す男ベインズ(ハーヴェイ・カイテル)のどこに惚れたのか?
カイテルの体?
カイテルがこれまたホリーハンターにピアノを弾かせ、自分はピアノの下に寝そべりホリーにスカートまくれと命令する。そして妻エイダが他の男に体を売ってもこっそり覗き見しているだけの夫スチュアート(サム・ニール)。
ただし心まで明け渡していると知った瞬間には狂気の男に変身。

うーん。ストーリーを書く気にもなれないなぁ。面倒で。
だって面白いか面白くないかっていったらこの映画それほど面白くなかったからな。
ジャンルは恋愛ドラマってことになるのか。
アンナ・パキンが見せた見事な側転くらいしか覚えてないな。
あとハーヴェイ・カイテのむささ。

2004年5月2日日曜日

映画『櫻の園』

1990年 監督:中原俊
録画


櫻の園

顔は若いのにおっさん臭い格好した男と中学生っぽい制服少女がいちゃついている。
男が帰り、入れ替わりに部長と呼ばれるこれまたなんだかおばさん臭く野暮ったい少女が入ってくる。
そこからは少女少女少女が次々になだれ込んでくる。
舞台はどこかのグレードの高い女子高。創立記念日でチェーホフの櫻の園を上演する演劇部の少女達らしい。
中学校かと思ったら高校なのね。
数十人の女子高生で画面がごった返すけど、主要人物の登場の仕方に気が配られているため混乱はそれほどしない。

創立記念日当日、3年の杉山さんが前日に喫茶店で煙草を吸っている所を発見され(実際杉山さんは吸っていなかったのだけど)大問題になり、毎年恒例の櫻の園の上演だが今年は中止するという案が教師の間で持ち上がる。
冗談じゃないよって少女達は怒り、そこに少女同士の恋愛がからんだりしながらごたごたする話。

少女達はそろいもそろって野暮ったい。しかしそこにほんの数人の可愛い子がいる。

なんといってもクールビューティーつみきみほが凄い。昔は可愛かったのだな。
渦中の杉山さんを演じるつみきみほだが、皆の前でしおらしく「すいません」と謝っても彼女がかもしだすしれっとした雰囲気のため可笑しくてしょうがない。

あと、倉田さんを演じた白島靖代。宝塚の男役でもやっていそうな風貌。
櫻の園では女主人役を演じる事になり、自分は男役しか合わないのになぜ自分がこの役?と自信なく悩む。
そしてもっと女の子っぽく生まれたかったとも悩む。
そんなことないさ、十分可愛いよ。と思っていたけど、ラストの方で女主人の衣装と化粧をした白島は男が女装しているみたいでえらい不気味だった。
部長と一緒に曇りのない笑顔で写真撮ってるし。

そして、可愛くないけど気になったのが久保田麻紀を演じた梶原阿貴。
いるよな、こういうやったら偉そうな女。梶原阿貴が上手すぎて笑える。
えらそうな久保田をさしおいて、奥手そうな後輩城丸が彼氏と外泊しているなんてところも面白い。

この映画会話がリアル。
話の内容っていうか群れた少女達が相手に同意を求めながら騒いでいる姿が。
今の女子高生からしたらリアルじゃないけど、女子中あたりの少女なら今でもこんな感じなのではないだろうか。

まあ、つまり面白かった。
脚本がよくできていて少しも飽きない。
そして煙草。様々な場面で(ストーリーの流れに関係あるなしに関わらず)映画に緊張感を乗せるこの小道具。上手い。
原作は吉田秋生の漫画。

ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セッブンエイト(セブンのブンだけ音程が上がる)