2004年5月22日土曜日

映画『暗殺者のメロディ』

1972年 監督:ジョセフ・ロージー
BS2 録画


暗殺者のメロディ

これはなんだか妙に悲しい気分になる映画だな。メロディは悲しいメロディ。

すかしているくせにグラスの割れる音に無様にも体をびくつかせる小心者ジャック。演じるのはアラン・ドロン。
そして暗殺されるトロツキーを演じるのはリチャード・バートン。
ジャックの恋人ギータにはロミー・シュナイダー。
人物の顔を撮るのが上手い。要所要所で差し込まれる一瞬間の表情のアップが、どの役者も深い味の顔(表情)を見せるため、軽い緊張とともに引き込まれる。
意外性があると映画は面白い。
丸いグラサンをかけたクールな謎の男ジャックがどこか幼稚な精神年齢だったり、聡明な女性ギータが急にヒステリックに叫んだり・・・

1940年メキシコ、世界に衝撃を与えたトロツキー暗殺を映画化した作品。
この映画、あまり多くを説明しない。政治背景の予備知識が必要ということもあるけど、結構画面から得られる情報を冷静に捉えて記憶解釈していかないと細かい部分がよく分からないと思う。
例えば、次のシーンに行く前にそのシーンの最後を静止させてから移行するという編集が2箇所ある。
ギータのキスを顔をそむけて避けるジャックのおどけてるのだかなんだかよくわからない表情の静止。響き渡る釣鐘の音を止めるべく狂ったようにロープに飛びつくジャックの静止。
1つ目の静止など一瞬の静止がいやに異様な印象を受けるし、2つ目もジャックの病んだ精神が狂的な姿で静止により焼きつく。
異様さの印象しか受けなかったけど、この映画をもう一度早送りしながら見ていると、1つ目がただの仲のよいカップルのジャックをスナップショットで切り取り、2つ目はジャックが暗殺実行を決意した瞬間を切り取ったというように、この2つはジャックという人物の全く違う側面をそれぞれ印象的に切り取ったのだろうと思う。
そのシーンを見た瞬間にはなんだか分からないけど、物語が進むにつれあのシーンはああいう意味合いが含まれていたのかと気づいたり気づかなかったりする部分が多い。
だから1回目は気楽に見て、2回目に不明な部分をチェックしながら見て、政治背景を勉強してから3回目・・・って時間があればやってみるといい。
でも1回目でも十分僕は面白かった。役者の顔見てるだけでも面白いし。

暗殺に使った凶器が面白かったのだけど、実際にもこの凶器が使用されたらしい。
あと、トロツキーが遺書を吹き込むシーンがあるのだけど、実際の遺書をほぼそのまま引用しているみたい。詩的に映像化されていたしなんだか感動的。Life is beautiful.

そういえばフリーダは一切出てこなかったな。シケイロスは出てたけど。

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