2011年1月3日月曜日

映画『スウィングガールズ』

2004年 監督:矢口史靖
DVD


スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]

数年前に会社の同僚に借りて、見よう見ようと思っていたDVDをやっと見る。
ネットで調べてみるとなぜかあまり評判がよくないんだな。
面白いのに。

楽譜も読めない楽器の初心者達が有能な講師がいるわけでもなく、名演奏を聞きこんでいるわけでもなく、そんなに練習している風でもないのにいつの間にか高校生とは思えないレベルのビッグバンドに成長している不思議。
指導に当たる教師はレコードマニアだが楽器未経験でかつ致命的に音楽の才能が無い。
上手くなるには唯一の経験者の拓雄君が頼りだが、彼は元パーカスで管楽器の経験が無い上に、ど下手な演奏に何も不満も湧かないほどの音痴だった。
というように上手くなる要素が微塵も無いところに突っ込みつつも、そんなことどうでもいいくらいの要素が二つある。

一つ目はなんといっても上野樹里の小憎たらしいはっちゃけっぷりで、『チルソクの夏』やジョゼの真面目さと、変人寄りだったのだめとの中間の丁度いい自由さ。
高校生の成長譚、といっても無気力で自分勝手に生きていた少女が打ち込めるものを見つけて大事な仲間も得る、ということ以外何がどう成長したのかは不明なものの、ヒロインの表情豊かな若い魅力は『ロボコン』の長澤まさみに匹敵する。
矢口映画のヒロインは西田尚美しかいないと思っていたけど上野樹里もぴったりだ。

二つ目は矢口史靖独特のリズム感で、それがストーリーの突っ込みどころにもなるのだけど、とにかく場面展開の素早いリズム感が心地いい。
短いカットの中にも強烈なキャラクターの登場人物達がシーンの隅々で何気なくかつ奔放に動いていて結構濃密だったりもする。
お得意の人形を使ったギャグもあり。
そして基本的には馬鹿ノリで紡がれる矢口監督の演出にはめずらしく、それまでのノリが一変して時間が止まったかのように静謐になる短いシーンがある。
このシーンの上野樹里の美しいこと。
滅茶苦茶かわいいというわけでもない上野樹里がその生涯を通して一番美しい顔した瞬間だったんじゃないかと思うくらい神秘的なシーン。
この唯一の異質なシーンが作品全体に楔のように作用して、軽妙なノリの奥に潜む隙間をじわじわ埋めていくから作品が重層的になり面白くなっている。
このシーンがなかったら『ウォーターボーイズ』みたいにパッと見てパッと楽しんでパッと忘れてしまったかもしれない。

最後の演奏シーンは絶対吹き替えだと思っていた。
部活で3年間みっちり練習してもこれほど吹けるようになる人は稀なのに、撮影で初めて楽器を手にしたと思われる出演者達がこんなに吹けるようになるわけがない。
ただ、指使いとかアンブシュアとか本当っぽく様になっているなぁと思っていたら、様になっているどころか本当に彼女達が演奏していたらしい。
クランクイン前から練習していたというが、それにしても驚きだ。

このDVDは特典で監督や出演者の解説が副音声で聞けるようになっている。
しかも2パターン。
105分丸まる付いているから後2回見なくては。

見終わってからそういえばこの映画は松田まどかが出ていたはずと思って見直したら、本当に全く目立たない役でバリトンサックス吹いていた。
ファミリーマートが印象的な名作『NAGISA なぎさ』でデビュー作ながら主役張っていたのになぁ。

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