BS2 録画
![2001年宇宙の旅 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ZVSEIcELL.jpg)
初めてビデオテープに録画したのが学生の頃だから、10年以上前からいつでも見れる状態だった映画をやっと観る。
広い荒野で夕日のシルエットに猿の影が浮かぶが、動きがなんか人間が猿の真似をしているような不自然さがある。
どうやら着ぐるみを着ている人間らしい。
よくできた特殊メイクだ。
他の本物の動物達と段々違和感が無くなって溶け込んでくる。
それにしても宇宙のSFだと思っていたのに荒野で猿人達がウキーって吠えているのだが。。。
しかし神秘的な謎の石版が突如現れ、それに触れた猿人は道具を使用することを覚える。
ツァラトゥストラはかく語りきの音楽に乗せた仰々しい人類の夜明けシーンに笑いつつもなんかSFっぽくなってきたぞ、と思って観ていると、猿人が上空に投げた骨から突如シーンはスペースシャトルが飛ぶ宇宙へ切り替わる。
なんという時間の飛翔だ。
数十万、数百万年の跳躍は勢い余って2001年に行ってしまう。誤差の範囲だ。
ねっころがって観ていたら美しき青きドナウなんて聞かされるもんだから爆睡してしまった。
この音楽は無いわ~。
映画館で見なくてよかった。
巻き戻して再開。
再開後は意外とめりこんで見る。
冒頭50分くらいは序章に過ぎなかった。
ディスカバリー号の木星探査の章が始まってから俄然面白くなってくる。
かったるい音楽がほとんど無くなったからかな。
宇宙が黒い。当たり前だが黒い。
時間も空間も分らなくなりそうなどこまでも永遠に沈み込んで行く黒の質感が、白い宇宙船や黄色い宇宙服を異空間が混在しているかのように拒絶したり音も無く飲み込んだりしていく。
黒の中の白がよく映えるんだこれが。
ディスカバリー号の外見の緻密さと重そうな質感は圧巻だ。(白い作業用ポッドの造形もかっこいい)
黒と白を基調にしてぽつんと配色される赤や黄色の原色、無限の闇の中での永遠の静止を基本とした動き等々、ストイックなまでに必要最小限のものしか存在していない。
無駄なものがそぎ落とされすぎて余白みたいなものがなくなってくると却って息苦しくなるものだが、そもそも基調となっている黒と白は余白の色だ。
しかもどこまでも深く清潔な黒と白。
単調になりそうになると他の色がさりげなくアクセントを加える。
だから黒の深度に身を投じたまま、静かに沈み込んでいったり浮き上がったり、白のまばゆさにはっとして弾き出されたり、冷徹に研ぎ澄まされた無機的な闇の階層の内と外をゆらゆらとたゆたうことになる。
寒々としているのにどこか大きい温もりを持つ揺らぎに神経が麻痺してくる。
極めつけはラストで、映像といいストーリーといい、呆気にとられてしまった。
堰を切ったようにあふれ出す光の奔流から始まり、静寂の異空間までの10数分、息を呑んで見守ったものの、圧倒的な映像という感じではない。
トリップする準備はこれまでの2時間で十分すぎるほど整っているので、ここらで一発圧倒的な光の洪水をどうだといわんばかりに見せ付けたら簡単にトリップするだろう。
てもそんなもの見せてもドラッグきめたヒッピーが喜ぶだけだしね。
光の洪水のスピードに流されながらもボウマンの恐ろしく歪んだ顔のストップ画を挿入して抜きを入れたりして抑制するところはこれまでの演出と変わらない。
分りやすい光の洪水の余韻を引きずりながら、続く光の不定形に揺らぐ姿態のシーンも長いし。
だから「圧倒的」じゃないのだけど、じゃあ何なんだよと言われると、さっきから「圧倒的」だった・・・って言ってしまいそうになる語彙の無さに泣けてくる。
この映画で時間も空間も超越して平然と並列されている、例えば生と死、静と動、無機的有機的、肉体と精神(AI)、ミクロとマクロ、この世と反転してすぐ裏にあるあの世等々、まあイメージ次第なのだが、こういう反義要素が耳鳴りのような音楽とスピード感に比して恐ろしく静寂なあの木星突入の映像で一気に、大手を振って膨れ上がるわけだ。
闇に沈み込んでいく恐怖から一転して一分の隙間もない光の間隙に落ち込んでいく不安と、ネガポジ反転の気味悪さを伴いつつ。
それがつまり圧倒的。。。
簡単に言うと、面白かった。
1968年だもんな。当時に見たらもっと別の映像衝撃を受けたのだろうな。
ストーリーが不可解なのでそれが納得できなければWikipediaの解説を解釈の手引きとして見るのもいい。
昔はWikipediaに映画作品の解説なんて載っていなかった気がするが最近は充実しているんだねぇ。
全部読んでないけどへぇーと思ったのは、ヘルメット無しで真空に出ても「短時間であれば科学的に可能と考えられている」らしい。
そうか、あのシーンはおいおいと思ったけど、おいおいは僕の方でしたか。

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