2009年 監督:バフマン・ゴバディ
at ギンレイホール
『酔っぱらった馬の時間』という映画史上屈指の名作(だと思っている)イラン映画がある。
その監督がこのバフマン・ゴバディ。
と言いつつ『酔っぱらった馬の時間』しか見ていないのだけど、だからこそギンレイの予告編で突然バフマン・ゴバディという名前を見たときは本当びっくりして歓喜した。
予告編を見ると、西洋文化が規制されたイランで逮捕されたりしながらも好きな音楽をやり続ける若者達を追ったドキュメンタリーっぽい。
規制されている音楽を扱うわけだからテヘランでの撮影は無許可のゲリラ撮影。
ドキュメンタリーかぁと思いながらも、こんなに本気でギンレイに行くのを楽しみにしたのは久しぶりだ。
で、実際観てどうかというと、面白かったことは面白かったが見る前の期待値が高すぎたかもしれない。
ドキュメンタリーだと思っていたら、実在の事件人物に基づくというだけでドキュメンタリーでは無かった。
その点はよかったのだが、なにしろ音楽を扱っているわけだから半分以上音楽が流れて、ちょっと神経が疲れてしまった。
音楽のためならなんでもする便利屋のナデル(ハメッド・ベーダード)は息吸ってないんじゃないかと思うくらいのマシンガントークで、強烈で面白すぎるのだけどこれも一種の音楽のようなもの。
となると8割かた音楽が流れている感じか。
疲れる原因になった音楽だけど、実はどれもこれも本当に素晴らしい。
ジャンルも多岐に渡り、ロック、フォーク、ラップ、ブルース、ヘビメタ、伝統音楽を融合してプログレみたいなロック等々、なんでもありだ。
イランではこれらは全部音楽自体アンダーグラウンドになる。
あまり歌詞の字幕を読まなかったけど、歌詞だってイランの現状を訴えるものだったり、規制された社会での切実な夢を叫ぶものだったりする。
本当の自分がどうとか、そんな薄っぺらで内容の無い便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない物の考え方を歌詞にしてしまう国とは違うのです。
上に貼っ付けた予告編で2,3曲聴ける。
特に印象に残ったのは現在イランで最も有名なラップミュージシャンとか、ボブ・ディランも真っ青の悪声のエンジニアのババクとか、主役のアシュカン&ネガルのインディーロックとか。
西洋音楽の音楽人口が少ないだけに玉石混交かと思いきや、音楽をやる環境が困難で切実なためジャンルを超えてどれもが本当に「ロック」という感じがする。
ただ、やはり音楽を聴きにきたわけじゃなくて映画を観に来たわけですよ。
映画としても面白いことは確かなんだけども、映画の中で使われる音楽がいかに破壊力を持つのかという事実を改めて認識するはめになってしまった。
2011年1月30日日曜日
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