2004年9月3日金曜日

映画『2ペンスの希望』

1951年 監督:レナート・カステラーニ
BS2 録画


レナート・カステラーニか。恥ずかしながらよく知らなかったので調べてみた。
けど、よく分からなかった。
ネオレアリズモの巨匠とのこと。
ネオレアリズモとは一言じゃ言えないけれど戦時中ファシストの統制下で自由を抑圧されていた映画人達が、資金不足もなんのそので屋外に飛び出しイタリアの過酷な現実をありのままに映し出そうとしたリアリズム運動の事だったと思う。
ロベルト・ロッセリーニの1945年作『無防備都市』を原点としヴィスコンティの『揺れる大地』(1948)やヴィットリオ・デ・シーカの『靴みがき』(1946)『自転車泥棒』(1948)等が初期ネオレアリズモとして有名。

レナート・カステラーニはこの『2ペンスの希望』で1952年カンヌパルムドールを受賞している。
1954年には『ロミオとジュリエット』も撮っている。
この人の監督作を見るのはこの作品が初めてだけど、デ・シーカの『ああ結婚』の脚本にレナート・カステラーニが名を連ねていた。

普段は監督の経歴とか調べもしないのだけど、なんせ滅茶苦茶この作品は面白かったからな。
まだ9月だけれど、今年度に見た映画の中でナンバーワンにしたい。

舞台はナポリ近郊の田舎村で、青年アントニオが除隊し村に戻ってきたところから始まる。
彼の父は既に他界しており、彼は家族の中で唯一の男として母や姉妹を養うために働き口を探す。
しかし失業者が列を成すこの村ではなかなか仕事が見つからないのである。
そんな時、花火師の娘カルメラと出会う。カルメラはアントニオにぞっこんほれ込む。
でもアントニオは恋愛などしてる場合じゃない。カルメラなど気にもかけていなかったのだが次第にアントニオもカルメラに惹かれていく。
ってまあ、ちまちま書いていてもしょうがないから大まかに言うと、結婚しようとするが金が無くてできない!って話。この辺の時代のイタリア映画によくある話。
カルメラの父は無口で厳しい人なのね。そしてカルメラの家はある程度金を持っている家らしい。だから父はまともに職にもついていないアントニオなど身分が違うといった感じで認めない。
家族を養うため、結婚資金を作るため、日雇いで転々としながら必死に働くアントニオ。

あらすじだけ書くと暗そうな気がするが、映画は逆に底抜けに明るく楽しい。
そして映画見て涙出たのは久しぶり。
泣いたのは3,4箇所あるのだけど、1つ挙げるなら村に初めて通ったバスの開通式でアントニオがそのバスの運転手に就任したため、カルメラは仕事を抜け出して開通式に駆けつける。
着いたと同時に騒々しく爆竹を鳴らして風のように去っていく。
イタリアの明るい自然の中を腰を曲げて野生のように駆け抜ける姿が軽快な音楽に乗せてローアングルで映される。→泣
父の作業場に戻り何事もなく作業を再開するカルメラに父は爆竹を鳴らしたのは誰かと聞く。
カルメラはしらを切るが、続けて「お前がぬすんだのならただじゃおかん」という父の言葉を聴いて瞬時に判断したカルメラは「お仕置きを」と自ら頬を差し出し、父も間髪入れずがつんとはたく。→泣
鼻を手でくしゅっとさせ身震いした後に顔を上げ体を揺らせて明るくカルメラは歌いだす。→泣
・・・文章で書くっていうのは難しいなぁ。爆竹が鳴ってからカルメラが歌いだすまでの流れが涙出るくらい最高に素晴らしいのさ。
村人はよく歌を歌うのだけど、カルメラは特によく歌う。あばずれた声が非常に魅力的なのね。

人の家のうさぎを盗んでおいて責められても巧みにすっとぼけたりする自己中心的なアントニオの母親が次第にたくましくて頼りになるキュートなおばちゃんに見えてきたり、しゃがみこんで夢中でいたずらをしているカルメラをアントニオが蹴っ飛ばして突っ込みを入れたり、鎖でつながれ監禁されながらも三角座りで暴力的に声を張り上げ歌うカルメラに母が優しく近づき手を差し伸べるがその差し出した手に向かって「ワンワンワン」って叫びながら噛み付くそぶりをしたり、教会で働く小柄でよぼよぼのじいさんがとてもいい顔していたり、カルメラが店先から振り向いて走り去ろうとした瞬間に店の軒先に付いた日よけだか雨よけのテントを張るための紐に演出なのか素なのかぶつかったり、アントニオの着ているランニングシャツが無残なまでに穴だらけだったり。

演出も音楽も役者も全部いい。
役者は無名の新人と撮影場所の村人とのこと。
DVDに焼こっと。

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