2016年12月30日金曜日

映画『ミツバチのささやき』

1973年 監督:ヴィクトル・エリセ
製作国:スペイン
BS2 録画




1940年頃のお話。
お話というかなんだろう、説明的なセリフは一切なく、きゅっとする映像や音、音楽が端的に紡がれていく。

ストーリーはよくわからない部分も多々あったものの、簡単に書いておく。
ある日スペインの小さな村に映画『フランケンシュタイン』の巡回映画がやってくる。
目を輝かせて見つめるアナとイザベルの姉妹。
しかしアナは少女とフランケンシュタインがなぜ殺されてしまうのか理解できない。
姉は「フランケンシュタインも少女も死んでいない、映画の中の出来事は全部嘘だから。彼は精霊なのだ、村はずれに今でも住んでいる」と説明する。
後々わかるが、姉は妹に嘘を教えてからかうのを遊びとしている。(とっさにこんな嘘をつけるのがすごい)
村はずれの廃墟になった石造りの家、精霊の住む家にアナを連れて行くイザベル。
アナは一人この廃墟に通い詰めるようになる。
あ、ここまでにしておこう。

主演のアナの瞳が美しすぎる。
まっすぐで疑いのない瞳。時に慈愛に満ち、時に深淵の孤独を湛える。
そして、あまり笑顔を見せないので笑っているシーンがとてもほっこりする。

1940年というのはスペイン内戦が集結した直後で、制作はフランコの独裁政権化。なんでも国政批判が随所に盛り込まれているらしい。
アナの家庭がぎくしゃくしているのが内戦によるスペイン分断の象徴だとか廃墟の周りが何もなく荒涼としているのがスペインの孤立感だとか。by Wikipedia
いや、知らんわ~。ということで印象深いシーンが多々ある中で個人的に特に気に入ったシーンを書いていこう。

妻テレサが自転車に乗って駅にやってくるシーンで、奥から自転車が走ってきて降りて横移動すると汽車が奥から入ってくる、っていうこの一連の流れのカメラワークがいいわ。
テレサが誰に手紙を書いていたのかはよくわからなかったが、そういえばWikiではテレサは後妻で手紙を書いていたのが実母らしい。
いや、絶対違うよね。手紙を書いていたのは今見返してもテレサにしか見えない。

フランケンシュタインを見終わった姉妹がフランケンシュタインごっこかなんかで奇声を発しながら家に走って戻るシーンで、たぶん姉のイザベルの方だと思うが、甲高い「キー」って声を発しているんだけど、なんかこの声がすごく気になる。
不快といえば不快だが、大人が発する声と違って不快感よりも楽しさとか郷愁といった感情が湧いてくる。

最初に廃墟に行くシーン、丘の上から見下ろすあの荒涼とした平地の彼方にぽつんと佇む廃墟。吹き下ろしの風の音や雲でできた大きな影と光。座るイザベルと傍らに立つアナ。
走り出すと同時に流れる楽しげな音楽と、点のように小さい走る二人の後ろ姿。
廃墟の前で井戸の周りをうろついた後に家の中に消えるイザベルとそれを見つめるアナ。家から走って飛び出してきたイザベルに向かって走り出すアナ。一瞬無言で向かい合うアナとイザベル。
なんか全てがいい。
あと、全般的だけど走る姿がどれもいい。

線路のレールに耳をつけるアナとイザベルのシーン。
轟音を上げて通り過ぎる汽車をレールの傍らで見送る二人。
なんでもないシーンだけど、通り過ぎる瞬間にカメラが少しパンするせいか、なんか感動的だった。
ちなみにアナの左頬がレールにつけたせいで少し煤けている。

男にりんごを差し出すアナ。男の手品にそっと微笑むアナ。天使か。

なにかしっくりしていない家族のお茶会の席で無邪気に笑い合うアナとイザベル。
おもむろに父親が取り出したオルゴール付き懐中時計に驚いて放心するアナ。
大きめの茶碗を両手で抱えている姿の可愛らしさも相まって泣けてくる。
この辺のシーンは、姉に全てを依存していたアナが、姉に対する不信感を経て、精霊はやっぱりいたんだ、という信頼回復と、一人で考え行動を起こし始めるという成長、そして残酷な現実の直視へと続く重要なシーン。

ああ、あとひげ剃りのクリーム塗る用のブラシでひげ剃りの真似事をして遊ぶシーンのアナの笑顔がかわいかった。
全般的な感想は、結局アナが可愛い、に落ち着くかも。


学生の頃に武満徹と蓮實重彦の対談でヴィクトル・エリセの『ミツバチのささやき』を扱っているのを読んでからずっと見たかった映画。
録画したのは2011年だな。もっと早く見ておけばよかった。
若い時にまず見て、年齢重ねるごとに見返していきたかった。
結構有名どころの映画をことごとく見ていないので、もう若くはないけどできるだけ早めに見ておこうかなと思ってきた。
録画していていつでも見れる状態の中にはタルコフスキーや山中貞雄がある。

2016年12月25日日曜日

映画『キャプテン アブ・ラーイド』

2007年 監督:アミン・マタルカ
製作国:ヨルダン
BS2 録画




空港で清掃員として働く老人のアブ・ラーイド(ナディム・サワラ)は妻を亡くし、一人で静かに暮らしている。
ある日空港のゴミ箱で機長の帽子を拾ったアブ・ラーイドは、地元の子どもたちに機長だと誤解されてしまう。
最初こそ否定していたアブ・ラーイドだが、やがて子どもたちに旅の話を聞かせるようになる。

まあ、いきなりばれそうになるんだけど。
そもそもアブ・ラーイド自身、機長が嘘だとばれることに特に注意を払っていないし。
嘘だとばれれば子どもたちは傷つきはする。
だが重要なのはうちに閉じこもりがちだったアブ・ラーイドが子どもたちと接することで外に目を向けるようになったこと。
そして子どもたちは一時でも旅の話に胸をときめかせて楽しい時間を過ごしたこと。
嘘をつかなかったら何も変わらなかった。
傷つくとかはきっと瑣末な話。
嘘は夢や優しさだから。
2千冊の蔵書があるという嘘もばれれば単なる笑い話という寛容さがある。

子どもたちと交流を持ったアブ・ラーイドは、次第に子どもたちの苦しい生活に関心を寄せていく。
この映画の主題は機長と嘘をついていたことよりもこの子どもたちとの関わりにある。
親に強制されて学校を休んでお菓子の街頭販売をする少年や、家庭内暴力に苦しむ少年。
お菓子の少年には、買い取って学校に行かせてやる優しさを見せるアブ・ラーイドだが、その善意は少年を窮地に追い詰める。
家庭内暴力の家はアブ・ラーイドの隣人で、最初に頃はうるせーなくらいの無関心ぶりだったのに、少年と知り合うことでなんとか救おうと動き出す。
そして少年はもとより、おそらく暴力を振るう父親をも救おうとしたのだろう。その結果は。。

アブ・ラーイドの家の屋上の景色がすごい。
丘の上にあって首都アンマンを一望できる素晴らしい景色。
屋上に柵のようなものがないから恐怖も伴うけど視界良好。

約40年ぶりのヨルダン製長編劇映画であり、海外で公開された作品としては50年振りらしい。
監督のアミン・マタルカは13歳でアメリカに移住し、アメリカで映画制作を学んだらしい。
女性機長役のラナ・スルターンは、最初の登場シーンではなんだこのけばい感じの姉ちゃんはと思ったけど、役柄はなんかすごいいい子だった。
ラナ・スルターンは朝のテレビ番組の司会者として絶大な人気を誇る人で今回演技に初挑戦らしい。テレビ司会者かぁ。なんか納得。

2016年12月16日金曜日

映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』

2016年 監督:アレハンドロ・モンテベルデ
製作国:メキシコ/アメリカ
at ギンレイホール




第二次世界大戦下、身長が低くてリトルボーイとあだ名される少年ペッパーが主人公。
兄が扁平足により兵隊になれなかった代わりに、大好きな父が出兵してしまう。
で、ペッパー君は父親の無事の帰還を祈ってかなんか忘れたが、司祭から渡された善行リストの実践を始める。

なかなか優しい映画で、日本とアメリカの描き方も悪者にも善者にも偏りすぎずバランスいい。
ただ、つまらなくはなかったけど面白くもなかった。
兄の扁平足がのちのち生きてくるのは面白かったけど。

ネットのレビューでも見てみるかと調べていると、ペッパーを演じたジェイコブ・サルヴァーティが結構賞賛されている。
そうか、書くことに困ったら子役でも褒めておけばいいのか。
だた、自分は子役自体があまり好きじゃないのでペッパー君も特になんとも思わなかったんだよなぁ。

映画『帰ってきたヒトラー』

2015年 監督:ダーヴィト・ヴネント
製作国:ドイツ
at ギンレイホール




ヒトラーが2014年にタイムスリップした!
新聞、雑誌を読み漁って急速に現代に順応していくヒトラー。
冴えないテレビマンの思惑でドイツ中を行脚して現代ドイツの実情を学ぶヒトラー。
テレビに出演するヒトラー。
ものまね芸人として大人気になるヒトラー。
しかしヒトラーは自分がものまね芸人だとは少しも思っていない。演説できる場があればそれでいい。
やがて彼の芸、というか大真面目な演説は。。。

と、その先を期待していたんだけど、なんだか複雑な劇中劇の入れ子構造でお茶を濁されたような消化不良具合。
原作は世界中でベストセラーになっていて、ラストもだいぶ異なるらしい。

ヒトラーが街を闊歩するとことろかドキュメンタリーっぽい映像だったけど、本当にドキュメンタリーだった模様。
すごいね、役者をあの格好で歩かせたのもそうだけど、若者の反応もすごい。
ヒトラーのビジョンははっきりしているゆえ、その演説は明確でわかりやすい。
政治家として頼れる感に溢れたこんな候補者が出てきたら、ころっと国民は信じてしまうんだろうな。
コメディに笑いながらも時折ぞっとして、なかなか面白かった。

2016年12月4日日曜日

映画『海よりもまだ深く』

2016年 監督:是枝裕和
製作国:日本
at ギンレイホール




15年前に新人賞をとったものの、鳴かず飛ばずで今は取材と称して探偵業をやっている主人公篠田良多(阿部寛)。
ギャンブル好きで妻にも愛想をつかされ逃げられるという典型的なダメ人間。
そのダメ人間にほどよい距離感で接する母親(樹木希林)。
母は夫を亡くして一人で団地住まい。
良多と母親を中心に物語は進んでいく。
といってもストーリー上の大きな展開は無いんだけどさ。

ちょっと設定の違う『歩いても 歩いても』という感じ。
配役の阿部寛と樹木希林は同じだし、阿部寛の役名も今見てみたら同じ良太だな。
なんかもう良太シリーズみたいにして設定変えながらあと10本くらいは良質なホームドラマを量産できそうだな。
会話劇の妙はいうに及ばず、へそくり隠しとか宝くじとか、あとあと効いてくる小道具もうまいしずっと見ていられる。

個人的には実家が団地なので余計に面白かったな。
帰ろうと思えばいつでも帰れる距離にあるところとか、母親がベランダで観葉植物育てていたりとか、「泊まっていきなさいよ」と言うところとかさ。

最後の方でラジオから流れるテレサテンの『別れの予感』、そこでやっとこの映画のタイトルってそこからか!と気づいてなんか意味もなく感動してしまった。

真木よう子は綺麗だな。
怒ったリリー・フランキーはめっちゃ怖かった。

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』

2016年 監督:岩井俊二
製作国:日本
at ギンレイホール




臨時教師として働く皆川七海(黒木華)はSNSで知り合った鶴岡(地曵豪)ととんとん拍子に結婚。
ここまではまあ普通っぽいが、式の出席者の都合で安室(綾野剛)という男に会ってから、七海の人生は狂いだす。
いや、別に七海が安室と不倫するとかじゃなくて、安室にいいように操られるというか、いや操られているのにまあ七海にしてみればいい方向に向かっているからサスペンス的なものでもないし、蒲田とかいうごみごみした街から大豪邸にいく落差はファンタジーでもあるし、結局結婚が続いていても不幸になっていそうだから「狂いだす」という言い方は適切じゃないかもしれない。
天然っぽい七海が騙されたり操られたりしながら、そんなことは露知らずに純粋に泣いたり笑ったりするのを愛でる映画。
黒木華って可愛いわけでも美人でもないのになんか引き付けられるんだよね。
きらきらした光に照らされる美少女っていういつもの岩井映画のシーンでもなぜか映える。

地曵豪って人は初めて見たけど、電話で起こっている姿がなんかぞっとするくらいリアルで怖かった(役柄もあるだろうが)。

里中真白役は見たことあるけど思い出せず、市川実和子実和子姉妹のどっちかかなぁと思っていたらエンドロールでCoccoと知りびっくりする。
こんなに普通に、いや、普通以上に演技できるんだ。
それにしてもやせすぎだろ。。でも役柄にぴったり。

エンドロールに名前があった夏目ナナはあのマネージャ役の人だったのか。
雰囲気変わったのかな。
あと、希崎ジェシカとか森下くるみとかもちょい役で出ている。

りりぃはこの時は元気そうだな。ご冥福をお祈りします。

ああ、あとふんだんに使われるクラシック音楽はだいたいうるさかった。

2016年11月20日日曜日

映画『ブルックリン』

2015年 監督:ジョン・クローリー
製作国:アイルランド/イギリス/カナダ
at ギンレイホール




1950年代のアイルランドの小さな町で暮らすエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は神父の計らいで単身ブルックリンに移り住む。
知らない土地での生活に馴染めず、故郷を懐かしみつらい日々を送るエイリシュだが、イタリア系の気のいい青年トニー(エモリー・コーエン)と出会ってからエイリシュの人生は劇的に充実していく。

1950年代の街並みや調度品、服装、そしてシアーシャ・ローナンの静けさを湛えた佇まいに魅了される。
エイリシュがいい子なんだわ。
いい子なんだけど帰国した後にアメリカ帰りのアバズレ風に見えてしまうのが心が痛い。

ストーリー的には女ってよく分からない、という話だった。
以下、ネタばれ


なぜにジムに惹かれる?そりゃあ紳士的でいい奴ではあるけどさ。
故郷か、それともブルックリンか、悩んだ末の決断の決め手はそれかい!
きっとジムとトニーならもちろんトニーなのだが、故郷には母もいるし結婚相手としては同じ国の人間がいいかも、ってことで揺れ動いていたのだろう。
決断のきっかけはきっかけに過ぎず、形としては愛を選んだということだ。
エイリシュ情熱的~。

映画『これが私の人生設計』

2014年 監督:リッカルド・ミラーニ
製作国:イタリア
at ギンレイホール




世界で活躍する女性建築家のセレーナ(パオラ・コルテッレージ)は人生を見つめなおして故郷のローマに戻ってくる。
ただしローマの建築業界は超男性社会で入り込む隙間もなく、ウェイトレスをしたりしてなんとか過ごしていく。
で、バイク盗まれたり男と出会ったり建築会社に潜り込んだりするっていうアラフォー女性応援コメディ。

最初の方は全然面白くなかった。
コメディ要素がなんかしっくりこず、公営団地でいきなりでかい音させてびっくりさせるのも嫌いだし、恋愛相手になるっぽい魅力的な男性(ラウル・ボヴァ)の登場シーンはこれでもかとちゃかしまくっているし。
アラフォー独身女性が主人公ってことで恋愛要素も当然のごとく入るはずで、その相手となりうる男性の重要な登場シーンなのに、こんなにコメディになっちゃったらもうこの先にどんなドラマが待ち受けていようが二人の展開を常にしらけて見てしまうだろう。
と、思っていたのだけど、この男、実はゲイだった!
っていう事実が判ってから登場シーンのちゃかしぶりも納得し、違和感を感じていたコメディ要素もなんか慣れてきてだんだんと面白くなってきた。

女性秘書(ルネッタ・サヴィーノ)が会社の玄関で社長の家族を見つめているときの悲しげな表情には泣きそうになった。
それにしてもなにがきっかけでこの秘書は反旗を翻したんだろう。

主演のパオラ・コルテッレージは国民的歌手としても人気らしい。

2016年11月6日日曜日

映画『ルーム』

2015年 監督:レニー・アブラハムソン
製作国:アイルランド/カナダ
at ギンレイホール




生まれたときから「部屋」に閉じ込められ、一度も外に出たことのない少年とその母親の話。
母親が息子の名前を連呼して泣き叫んだり(もう演技を超えてすごい形相だった)、good byとか、泣くわ~これ。

予告編見たときは閉じ込められているのは子供だけだと勝手に勘違いしていたので、母親と二人でマンションっぽい部屋に住んでいるのは逃げ出した後の話なのかと思ってしまった。
だからどたどた走り回ったりジャンプして階下の住民から文句くるぞとはらはらしたり。

少しネタばれすると、
部屋の中の話とその後の外の話が半々くらいで描かれている。
だから部屋の中にずっといる親子という謎のミステリーから脱出のアクション、そしてその後の人間ドラマ、と盛りだくさん。
全体に共通してあるのは親子の愛情で、どの段階でもこの要素ひとつがアクセントになって泣ける。
世界を知らない子供と世界を知っている母親。外に出た後の二人の順応の仕方の対比も面白い。

母親役にブリー・ラーソン。
少年役にジェイコブ・トレンブレイ。
二人とも初めてみたけど今後も大活躍しそうだな。
じいじ役にウィリアム・H・メイシーも出ている。

映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』

2015年 監督:ジュリアン・ジャロルド
製作国:イギリス
at ギンレイホール




英国王女の秘密の外出
っていうお話。
1945年の戦勝記念日に王女時代のエリザベス女王が王宮を抜け出していた、という史実に着想を得たらしい。

エリザベス王女を演じた主演のサラ・ガドンは冒頭のモノクロを見たときになんだこのおばさんはと思ったけど、よくよく見るとなかなかの美形で気品もあって役柄に合っている。
対してマーガレット王女を演じたベル・パウリーが農夫の娘のような野暮ったさを放っていて、サラ・ガドンが品があるだけに対比でどんどんみすぼらしく見えてくる。
自由奔放な恋多き王女というイメージをコメディにしたらこうなるのかもしれないけど。

それにしても国民全員が祝って国中お祭り騒ぎになるなんてこと滅多にないよな。
ハロウィンだって限定的な場所で限定的な人たちが騒いでいるだけだし祝っているわけでもないし。
昔のサッカーワールドカップは皆熱狂していたような気もするけど、興味ない人はいっぱいいたしどちらかというと屋内で熱狂していたし。
だから屋外屋内問わずどこいっても人が祝っているという不思議な光景と1945年の雰囲気がなかなか楽しめた。

2016年10月16日日曜日

映画『すれ違いのダイアリーズ』

2014年 監督:ニティワット・タラトーン
製作国:タイ
at ギンレイホール




ど田舎の水上学校にやってきた新任教師のソーンは毎日失敗ばかり。
そんなとき偶然前任教師のエーンの日記を見つけ、その内容に共感したりしているうちにソーンは会ったこともないエーンに恋をする。
って話。

水のあるアジアのど田舎の風景と純朴な子供たち、そこに異分子のようにやってきて、気づいたら自然に染まっていくソーンやエーン。
田舎と若い二人のパワフルさとの対比や、王道のすれ違いにほんわかする。
現代映画なのに映像にしろストーリーにしろどこか懐かしい。アジア映画は不思議で面白いねぇ。

若い二人ってかいたけど、二人ともそれほど若くないんだな。
ソーン役のスクリット・ウィセートケーオはタイで最も人気のあるポップスターらしい。あと数年ではげそう。
エーン役のきれいな人チャーマーン・ブンヤサックは1982年生まれだな。

映画『神様メール』

2015年 監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
製作国:ベルギー/フランス/ルクセンブルク
at ギンレイホール




予告編の小さな鳥の群れを操って動かしている男のシーンから、この映画面白そうという予感がしていたのに見事に外れたな。
パソコンを使って人々の運命をもてあそぶ神がいて、その娘が父に反逆して余命を知らせるメールを全人類に一斉送信する。
その後娘は下界に降り立ち、6人の使途を探しに旅に出る。
片腕が義手の美しき女とかゴリラに恋したおばさんとか冒険家になりたかった男とか殺し屋に転身した男とか。
一人一人やそれぞれが寓話的なお話でゆったり展開されていく。

全体的な印象としては、醜悪、という言葉が浮かぶ。
醜悪で面白いとかじゃなくて、なんかどことなく不快でもどかしい醜悪。
芸術作品にもなれず、エンターテインメントにもなれないどっちつかずの状態でそのまま終わる感じ。

なんだろうね。まず音が不快だな。
特に神様役のおっさんの怒鳴り声が今まで聞いたことないような耳障りな響き。
叫び声やら突然入る大きな音とか。
予告編の鳥のシーンもなんか思っていたのと違って感動もなかったし。

宗教的にかなり突っ込んだブラックジョークは海外ではどういう反応しているんだろう。

あ、この監督『八日目』の人だったのか。

2016年10月2日日曜日

映画『レヴェナント:蘇えりし者』

2015年 監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




予告編のグリズリーに襲われているところが衝撃で気になっていたんだけど、本編はもっと凄かった。
まじ怖いわー。

真冬の西部劇といった雰囲気をかもしつつ、圧倒的な大自然の驚異がこれでもかと押し寄せてくる。
そういえば学生の頃はこういう人間がちっぽけに思える映画が大好きだったな。今も好きだけど。
人間がちっぽけではあるけれど、そのちっぽけな人間ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)のダイハード以上の不死身っぷりや生命力がすさまじい。
普通なら4,5回は死んでるよ。
生命力の源は、復讐!
死んでいる場合じゃない。

瀕死の男の生命力と、それを簡単に飲み込み押しつぶす雄大な自然の対比に常に息を呑む。面白かった。
マイナス20度の極寒の地っていうから撮影は過酷そうだな。

映画『サウスポー』

2015年 監督:アントワーン・フークア
製作国:アメリカ/香港
at ギンレイホール




殴られまくって怒りを蓄積して最後には逆転するスタイルのボクシングチャンピオンの物語。
王者として栄光の日々を送っていたビリー・‘ザ・グレート’・ホープ(ジェイク・ギレンホール)は、その怒りを抑えられない性格がわざわいして最愛の妻を失ってしまう。
娘とも離れ離れになって豪邸も失い、どん底まで落ちたビリーは再起をかけてあるジムの門をたたく。

危険な匂いのするビリーをジェイク・ギレンホールが好演している。
『ナイトクローラー』もそうだったけど、危ない男を演じさせたら1,2を争う役者にいつのまにかなったと思う。
『ムーンライト・マイル』やら『ドニー・ダーコ』のあの細い青年はどこにいったんだろう。

妻役にレイチェル・マクアダムス。
こういうけばい格好も似合う。

他、フォレスト・ウィテカーって久しぶりに見たな。

2016年9月22日木曜日

映画『さざなみ』

2015年 監督:アンドリュー・ヘイ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




原題は『45 YEARS』。
45年っていうのもなかなかの時の流れを感じるいいタイトルだけど、『さざなみ』っていうのもいいタイトルだよな。
邦題を原題と変えると大抵は興味本位のうすっぺらいタイトルになるのに、この変更は結構いい。
正にさざなみだから。

長年連れ添った夫婦、ケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)は45周年の記念パーティを迎えようとしていた。
そんなある日、スイスから一通の手紙が届く。
50年前にクレバスに落ちて亡くなった夫の元恋人の遺体が昔のままの状態で発見されたという知らせ。
元恋人とはいえ大昔の話であるのに、45年間もの長い月日で築き上げられた強固な夫婦の信頼関係がさざなみのように揺れはじめる。

基本的に静かに流れていく映画だけど、トム・コートネイとシャーロット・ランプリングとの間に漂う空気感が凄い。
熟年の寄り添い合ってきた空気感だったり、小さなしこりのように膨れてよどむ不信や嫉妬の空気感だったり。
カメラもなんていうか知らないけどパンフォーカスの反対で被写体のみにピントが合って奥のピントがぼやけるから、非情なくらいに役者の演技に視線が集まる。
そのフォーカスに耐えられる、どころか十二分に生かしきるシャーロット・ランプリングがやっぱり凄いよな。

ところでシャーロット・ランプリングを見るといつも倍賞千恵子を思い出すんだよね。

映画『最高の花婿』

2014年 監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン
製作国:フランス
at ギンレイホール




なかなか面白いコメディ。
フランスロワール地方に住むヴェルヌイユ夫妻には4人の娘達がいる。
3人までは嫁に出ているが、夫はそれぞれアラブ人、ユダヤ人、中国人と国際結婚になっている。
末娘こそはフランス人をと願う両親の思惑とは裏腹に、末娘が連れてきた婚約者はコートジボワール生まれの黒人だった。

アラブ人、ユダヤ人、中国人の3人が気づいたら仲良くなっているのが本当に面白い。
人種間で見た目も全然違うしお互い相容れないくらいの関係だったのに、後半で見せる生まれたときから兄弟だったかのような親密な距離感には感動すら覚える。
皆一応フランス籍なのかな。国際結婚でここまで円満なのはフランス語ペラペラだからというのもあろうが。

精神病みつつある三女が絶対どこかで見たことある女優だと思っていたけど、所見っぽい。エミリー・カン。
どの女優と見間違えたんだろう。

2016年9月4日日曜日

映画『キャロル』

2010年 監督:トッド・ヘインズ
製作国:イギリス/アメリカ/フランス
at ギンレイホール




なにこのスリリングで甘い視線の交錯劇。
めちゃくちゃ面白かった。

1952年のニューヨークが舞台の女性同士の恋愛物。
古ぼけた淡い色彩に映える衣装。
映えるといえば、ケイト・ブランシェットがかっこいい、そしてルーニー・マーラがかわいすぎる。
特にルーニー・マーラ、惚れそうだ。

118分もあったのか。
冒頭から目が離せない。


===
今日のギンレイホールは一本目に見た『リリーのすべて』が凄い混んでいたんだけど、なんだったんだろう。
ジョニーデップだのディカプリオだのが出ていたわけでもないのに謎すぎる。
この『キャロル』は見た時間帯にもよるのかもしれないけど半分以下に減ったから『リリーのすべて』だけなんかあったのかな。

映画『リリーのすべて』

2015年 監督:トム・フーパー
製作国:イギリス/ドイツ/アメリカ
at ギンレイホール




1926年、デンマーク。
画家の夫婦アイナー(エディ・レッドメイン)とゲルダ(アリシア・ヴィカンダー)は仲睦まじく日々を暮らしていた。
ある日、夫のアイナーがあるきっかけから自分の性に違和感を感じ始める。

ゲルダを演じたアリシア・ヴィカンダーがとにかく魅力的。
冒頭のアップからもう惚れそうになる。
こんな奥さんがいても抗えないのか~。

エディ・レッドメインの女装は男にしか見えないのだけど、劇中でも一応普通に男とばれているのかな。

2016年8月22日月曜日

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

2015年 監督:アダム・マッケイ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




サブプライム・ローンの破綻をいち早く予測した男たちの物語。

専門用語が飛び交うけど、途中途中でやさしい解説が入る。
ただ、そもそも空売りが何かよくわかっていないと解説もちんぷんかんぷんだったりする。
とにかくなんか駆け引きしてんなーっていうのと、破綻するという事実をまだ知らない過去の人々(当然自分も含む)を上から目線で見ているだけでも面白い。

変人っぽいトレーダーマイケルにクリスチャン・ベイル。
怒れるヘッジファンドマネージャーマークにスティーヴ・カレル。
マークにCDSを持ちかける胡散臭い顔の銀行家ジャレッドにライアン・ゴズリング。
若い投資家二人組が信用を寄せる伝説の銀行家ベンにブラッド・ピット。

若い投資家二人っていうのが、なぜだか見ているだけでちょっと不快になった。
特にがたいのいい方が嫌な感じがするのだけど、なんだろう。
全然頭よさそうに見えないからかな。

映画『スポットライト 世紀のスクープ』

2015年 監督:トム・マッカーシー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




神父による子供への性的暴行事件。
ボストンの地元新聞「ボストン・グローブ」の記者達がカトリック教会と社会の闇に迫っていく。
実話に基づいた社会派ドラマ。

字幕ばっかり見ていてあまり映像見ていた記憶がないけど、なかなか面白かった。
主役っぽい人の名前すら覚えられなかったものの。。

対象にがしがし突っ込んでいく記者マイク役にマーク・ラファロ。
しぶいリーダーにマイケル・キートン。
紅一点の女性記者にレイチェル・マクアダムス。

2016年8月11日木曜日

映画『独裁者と小さな孫』

2014年 監督:モフセン・マフマルバフ
製作国:ジョージア/フランス/イギリス/ドイツ
at ギンレイホール




あれ、ストーリーがなんとなくわかるぞ?
キアロスタミ亡き今、もっといっぱい撮ってほしいモフセン・マフマルバフの監督作。

架空の国の独裁者が、クーデターにより小さな孫を連れて逃亡するお話。
ストーリーがわかるぞ、といっても細かいところはよくわからない。
つい先ほどまで大統領家族に歓声を送っていた国民が、いきなり大統領を目の敵にするようになったように見えるけど、歓声は嘘だったのかそれとも大統領にかけられた懸賞金目当てなのか。
大統領がどれほどひどい事をしてきたか?というのは明確に描かれない。
描かれるのは国民は貧困にあえいでいるとか、なんかいろいろ処刑してきたらしいとか、遊びで街の電気を消したり点けたりできるくらいやりたい放題の力を持っている、という点かな。
というか「独裁者」というワードひとつで十分なのかもしれない。
独裁者の非道ぶりが薄れてしまうのは、クーデター後の街の様子、特に兵士の非道ぶりが見るに耐えないからというのもある。
この、クーデター後が前よりひどくなってない?というのがラストの悲痛な訴えにつながるのではあるが。

最初からストーリーを期待していたわけではないけど、映像の方は期待していたほどの感動がなかった。
なかったといってもそこらの映画よりかは大分面白いのだが、昔に見た『サイレンス』のような静謐なイメージの氾濫を期待していたから期待に比べれば、という話。
じいさんと孫のロードムービーのようなシチュエーションだから期待が大きすぎた。
どちらかというとストーリーによるメッセージの発信に重きを置いている作品になっている。
あ、別にだからつまらないといっているわけじゃなくて、今年のベスト3に入れたいくらい面白かったんだけどね。

映画『ヘイトフル・エイト』

2015年 監督:クエンティン・タランティーノ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




冒頭の音楽がいい曲だけど音響設備のせいか耳障りに聞こえてきて、うーんと思っているとオープニングクレジットに音楽エンニオ・モリコーネの文字が現れる。
まだご健在だったのね。

予告編では密室ミステリーとか謳っているけど、それほどミステリー要素が強いわけではなく、いや、ストーリーも面白いんだけど、それよりも登場人物のあくの強さをベースに、簡単に人が死ぬ(それも笑いと紙一重の)圧倒的B級要素が強烈だった。
口から血吹き出しすぎだろ、とか、たかだかリボルバーの一撃で頭蓋骨ごと吹っ飛ぶかいな、とか。
ミニーの紳士洋品店の面々、特に女性陣の描写など、あの明るさと社交性とユーモアは、徹底的に「ああ、いるよねこういう人」とか「ああ、人間ドラマとかの映画とかでよく見るよねこういう人」っていう既視感を十分に与えてくれる。
そっから吹っ飛ぶわけだからB級的見せ方が上手い。

8人の中で唯一の女性役にジェニファー・ジェイソン・リー。
もう20年ぶりとかそんなレベルでこの人見た気がする。
にしても変わらないな。
もともと美人女優という感じでもなかったけど、返り血や肉片で真っ赤になった顔は神々しくさえあった。
もう50なかばなんだね。

他の7人は、
サミュエル・L・ジャクソン
カート・ラッセル
ティム・ロス
マイケル・マドセン
ウォルトン・ゴギンズ
デミアン・ビチル
ブルース・ダーン

2016年7月24日日曜日

映画『モヒカン故郷に帰る』

2015年 監督:沖田修一
製作国:日本
at ギンレイホール




だんまつまーー!
デスメタルのバンドマンでモヒカン頭の田村永吉(松田龍平)は彼女の由佳(前田敦子)を連れて7年ぶりに故郷の瀬戸内海の島に帰る。
っていうホームドラマ。
つまらなくはなかったけど。。

永吉のひょうひょうとしてふてぶてしい感じが松田龍平にぴったりで、ぴったりすぎて逆につまらないという変な現象が発生している。
なんだろうね、まほろ駅前の行天のようなキャラクターで、もう松田龍平以外考えられないはずなのに、なんかはまらないもどかしさ。

あと前田敦子の違和感もなんなんだろう。
演技の上手い下手はよくわからないけど、なんかこのヤンキーっぽい役柄に合っていないのかもしれない。
じゃあどんな役柄なら合うのかといわれれば何も思い浮かばないが。
清楚なお嬢さん役でもないしなぁ。
底意地悪い女役とかはまりそうな気もする。あの声で憎たらしい女役なら破壊力ありそうだし。

柄本明ともたいまさこはよかったな。
特にもたいまさこがすばらしい。
頼れるお母さんの母性あり、かわいらしさあり、コメディ演技もなんなくこなす、まるでメインヒロインじゃないか。

映画『家族はつらいよ』

2016年 監督:山田洋次
製作国:日本
at ギンレイホール




なんだろう、面白かったかと言えばあるあるネタのような子ネタが散りばめられていてまあ面白かったのかもしれないけど、相当回数のあくびをしてしまったことも事実。
子ネタといっても吹き出してしまうような事もなく、むしろあざとさにしらーっとする点も多々あり。
(鶴瓶の前フリと登場だけは面白かったけど)

東京物語がインサートされた時に、ああ、なんかすべてがこじんまりときれいにまとまっているからつまんないのかなと思った。
小津のようなシンプルなバストショットの様式的安定感の裏にある底知れぬ不安感や違和感のような刺激もなく、画面も全体的に密集しすぎてせまっくるしい。
なぜ東京物語を入れたんだろう。
観客が比較しちゃうじゃん。
自信あったのかな。

長男の妻役は夏川結衣だったのか。2000年の『アカシアの道』くらいで記憶が止まっているのでこんなベテラン主婦役を演じられると全然気付かなかった。

ふと思ったけど、妻夫木聡の役を松田龍平が演じていたらどうなっていただろう。
この幸せ家族に松田龍平が紛れ込んだ、それだけで絵的にかなり面白くなりそう。

2016年7月10日日曜日

映画『オデッセイ』

2015年 監督:リドリー・スコット
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




火星に一人取り残されてしまった男のSFサバイバル。
科学考証がしっかりしているし(たぶん)、問題が解決したと思ったらまた大小様々な問題が発生する等、なんか楡周平の小説読んでいる気分になった。
長いけど面白かった。
にしても中国が出てくる(協力する)のはよく分からなかったけど。

ハブの大穴が空いた箇所をビニールで塞いだやつって、大嵐の夜とか不安でしょうがない。

マットデイモンのあの激やせは本当に絞ったのかそれともCGなのか。

手の空気噴射のシーンなんかくるくる回転しながらあらぬ方向に行ってそこで人生終了になりそうだけど。

映画の尺の都合で原作から省いたり簡潔に描いたりしている部分が多々あるらしい。
ここに詳しく書いてあってなかなか面白い。
http://www.jifu-labo.net/2016/02/explain_martian/

映画『白鯨との闘い』

2015年 監督:ロン・ハワード
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ぐわっときてどんがらがっしゃーんの後に果てしなくぎゅるるるるという映画。
つまらなくはなかったけれどいざ感想書こうとしても書くことがない。
CGってどんどん進化していくよね。
あと、碇をあげる大きな機械とか、ああいうの見ていると腕を巻き取られそうで背筋が少し寒くなる。

2016年6月26日日曜日

映画『最愛の子』

2010年 監督:ピーター・チャン
製作国:中国/香港
at ギンレイホール




冒頭のごちゃごちゃした電線を無造作に引っこ抜いたりつなげたりしているシーンがこりゃ絶対感電死するパターンじゃんと思って怖くて目を細めていたけど全然そんな話じゃなかった。

3歳の子供が誘拐されて両親は必死に探し続けるのだが時は過ぎ行く。
3年後、ついに息子の居場所を突き止めるがやっと見つけた息子は自分たちのことを忘れていた。

生みの親そして育ての親の子供に対する想い。
こりゃ絶対泣けるわと思ったけど泣くまではいかなかったな。
でも面白かった。

消える前のポンポンが誰かに似ているなと思っていて今気づいた。千鳥のノブに似ているんだ。

子供を誘拐された親が集う会がいやに怖かった。
頑張れ頑張れコールは宗教に近い。
でもリーダー格のハン(チャン・イー)がいいやつだった。この人も誰かに似ているんだよな。

実話が元になっているらしく、ラストで実際の関係者達と俳優たちが会うシーンが挿入されている。
ティエンを演じたホアン・ボーなんて田舎の冴えない親父みたいだったのにおしゃれな帽子かぶったりしちゃっていかにも芸能人的なオーラをかもし出していた。
育ての母親リー・ホンチンを演じたヴィッキー・チャオなんか本当に田舎の農家の娘みたいに野暮ったかったのにばっちり化粧してドレス着たりしてめちゃくちゃ綺麗な芸能人だった。
ホアン・ボーは2013年には「最も集客力のある俳優」に選ばれるほどの有名人らしい。
ヴィッキー・チャオって名前だけはなんか聞いたことあると思ったらチャン・ツィイーらと並ぶ「中国四大女優」の一人らしい。
ここのところアジア映画を全然見なくなったのでついていけていない、っていうのはどうでもよくて、なによりラストでそんな俳優達の素の姿なんて見たく無かったよということ。
少ししらけてしまった。

監督のピーター・チャンはなんか聞いたことあると思って調べてみたら『君さえいれば/金枝玉葉』の監督だ。
アニタ・ユンは元気かな。

映画『ビューティー・インサイド』

2015年 監督:ペク
製作国:韓国
at ギンレイホール







ウジンウジンウジンウジン・・・
つまりそういう話だ。

昔チャウ・シンチーの映画だったかな、映画制作者たちが企画会議している場で各自突拍子もないアイデアを出し合いながら「それいいね!」「それは売れるね!」と大爆笑しながら軽いノリで企画を決めているシーンを思い出した。
毎朝起きると人格記憶はそのままだけど姿は全くの別人になる、ってどうよ?いいね!それサイコー!
みたいな。
でもなんか調べてみると2012年のインテルと東芝の合作ソーシャル・フィルム「*The Beauty Inside」が原案らしい。

上野樹里がちょろっと出ている。
他にもウジン役を演じた人たちは皆そこそこ有名な俳優さんたちらしい。
あと蒼井そらも名前だけ出てくる。名前が出てきたときに劇場内が老若男女爆笑していたように思うのだけど

ヒロインのハン・ヒョジュが凄い美人なのでそれだけで見る価値あると思う。

2016年6月13日月曜日

映画『ディーパンの闘い』

2015年 監督:ジャック・オーディアール
製作国:フランス
at ギンレイホール




スリランカの戦禍から逃れるためにフランスにやってきた元兵士のディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)。
一人でではなく、家族の方が難民として受け入れられやすいということで、他人のヤリニと母を亡くした少女イラヤルの3人の擬似家族として。
パリ郊外の団地で管理人の職を得たディーパンはそこでヤリニとイラヤルとともに嘘がばれないようにしながら新たな生活を始める。

最後にめっちゃディーパンが活躍してガキどもを始末するんじゃないかという予感と、もう戦いから離れて欲しいという希望が半々で、グループのボスもヤリニにはなんか優しい一面を見せるし、最後はどうすんだろうと思いながら鑑賞する。

ボスを演じたヴァンサン・ロティエはどっかで見たことあると思っていたけど全くの気のせいらしかった。
一応『ムード・インディゴ うたかたの日々』とかいう映画に出ていたらしいが記憶にないし。
エドワードノートンに少し似ているから勘違いしたのかな。


以下ネタバレ
最後はフィルムノワール的雰囲気。
無双すぎて少し引く。
車に乗っているときにディーパンが脳天ぶち抜かれたように見えたのだけどなんだったんだろう。
あそこで実は死んでいてイギリスの風景は幻想ってことなら、あの無双っぷりも納得がいくし悲しい結末だ。
敢えて死んだ瞬間を分かりづらくしてどっちとも取れるようにしたのかな。

映画『サウルの息子』

2015年 監督:ネメシュ・ラースロー
製作国:ハンガリー
at ギンレイホール




冒頭からピンぼけで何も見えない、と思ったら一人の男がカメラの前にやってきて無表情な顔がくっきりと映し出される。
この男が主人公のサウル。
ホロコースト映画。
ハンガリー系のユダヤ人のサウルは、同胞たちの死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドの一人として働いている。
ゾンダーコマンドも最後にはガス室に送られて処刑される運命らしい。
ガス室の血や糞尿処理、死体の運搬、灰の処分等々の重労働をいずれ殺す予定のユダヤ人にやらせる、って物凄い合理的だけど恐ろしいほどに残酷だ。
漫画やら映画やらで「お前に人の心はないのかー!」みたいなセリフを吐く状況が生易しく思えるくらいだ。もう殺す規模が違うし人でなしの数も多すぎる。

カメラはサウルを超接近して追いかけ続ける。
スタンダードサイズの狭い画面の中央にはいつもサウルがいて、サウルの位置にしかピントがあっていないので画面の奥はピンぼけしてほとんど何も見えない。
他のゾンダーコマンドの仲間もサウルと同じ位置に来たときだけやっと顔が判明する。
サウルの位置にしかピントが合わないっていうのは、耐え難い作業に視界や心を閉ざすしかないサウルの心情を表しているのかな。
それに周りの残虐な光景をそのまま映していたらその光景に訴えてくるものがありながらも、どこか映画という虚構から作り物の胡散臭さを感じてしまっていたかもしれない。
にしてもだ、回りの光景がほとんどピンボケしているっていうのはまあ、とにかく疲れる。

エキストラは凄い数がいて、結構な熱演をしていると思う(全裸だし)。ほとんど映っていないけど。
すっぽんぽんで物のように床をずるずる引きずられるのは痛そうだった。

サウルってもうだいぶ精神がおかしくなっていたんだろうな。
ある目的のためだけに、それが自分への救いでもあるかのように、仲間への迷惑を顧みずに突き進むサウルが悲しい。
仲間から見たら大迷惑なサウルだが、仲間たちが異常にサウルに優しい。
昔から知っている同郷の友とかだったりするのだろうか。

ラスト近くの少年のシーンは怖かった。
さんざん地獄を見せられた後に違う世界から来たかのような地獄と全く無縁な少年がするーっと現れるから「なにこれ」と思って一瞬凍りついてしまった。
「違和感」って最近の映画じゃめったに見なくなったな。いいシーンだった。

2016年5月29日日曜日

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』

2015年 監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




142分もあったのか。
少しも飽きなかったので気づかなかった。

冷戦時代にアメリカで捉えられたソ連の老スパイ。
そのスパイを弁護することになったドノヴァン(トム・ハンクス)が主人公。
スパイ映画じゃなくてネゴシエーターだな。
一介の保険の弁護士だったのにドノヴァンの弁護やらスパイ交換やら、どんどんスケールが大きくなっていく。

ストーリーの全体的にはアメリカ人が大好きな人道的英雄譚になっている。
そしてこういうヒーローって必ず家族を愛し家族に尊敬される男なんだよね。
ラストの家族のシーンなんかかっけーってアメリカの少年から父親、じいさんまでが歓喜したに違いない。
英雄が英雄であるためには敵が敵でなければいけないので、この場合はソ連やら東ドイツが敵役を担ってなんか凄い後進国みたいな扱いになっている気がした。
とはいえ、敵国のスパイであるアベル(マーク・ライランス)と友情に似た絆で結ばれたり、スパイを弁護するドノヴァンに対する冷たい視線や仕打ちがころっと転換するある意味アメリカ人の低脳さをこけにしたようなシーンもあったりする。
まあそれもこれも人道的ヒーローがアメリカ人である、ってところに集約されてうやむやになるのだろうが。

スパイ役のマーク・ライランスが凄い魅力的だった。
すべてを達観しているような老練のスパイの静謐な佇まいが渋い。
対するトム・ハンクスは。。あれっ?トム・ハンクスってこんなに太っていたっけ。
快楽をむさぼる成金男みたいな。。

ドイツでの偽家族の退散時の真顔っぷりに笑ってしまったんだけど、こういうのはコーエン兄弟が脚本だからかな。

====
併映の『キングスマン』は見逃した。
17:20を18:20になぜか勘違いしてしまったため。
ノー天気に楽しめそうだったのにな。

2016年5月15日日曜日

映画『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

2014年 監督:リチャード・ロンクレイン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが夫婦役。
っていうのが最大の見所。
本当に長年連れ添った夫婦のようだ。
この二人の夫婦っぷりを見ているだけで十二分に楽しめる。

ダイアン・キートンはもう70近いんだな。
メガネがなんか目のイラストがついたアイマスクをつけている様に見えた。

『パリ3区の遺産相続人』

2014年 監督:イスラエル・ホロヴィッツ
製作国:アメリカ/イギリス/フランス
at ギンレイホール




文無しのニューヨーカーマティアス(ケヴィン・クライン)は、父の遺産でパリの高級アパルトマンを相続した。
早速うっぱらおうと有り金はたいてパリにやってきたマティアスは、アパルトマンの住人マティルド(マギー・スミス)という老婦人から「ヴィアジェ」というフランス独特の不動産売買制度について知らされる。
どうも相続したアパルトマンは「ヴィアジェ」での契約であり、遺産相続というか借金の相続(今のところは)だったらしい。

コメディっぽいのかと思っていたら意外とシリアスな人間ドラマだった。
主人公がろくでなしっぽく見えて実はそんな過去があったのか、とか、いつも優雅にかまえているマティルドが衝撃の事実を知ったときの崩れようとか、母親と仲のよさげなクロエ(クリスティン・スコット・トーマス)にそんな思いがあったのかとか。
もうまさしく「人間ドラマ」といった感じのストーリーを3人の名優と演出が重苦しくも軽々しくもない適度なバランスを作り上げていて、なかなか面白かった。

他、脇役で不動産屋役のドミニク・ピノンとか、いい感じのアクセントになっている。

2016年5月5日木曜日

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』

2015年 監督:サイモン・カーティス
製作国:アメリカ/イギリス
at ギンレイホール




いやぁ、面白かった。
クリムトの「黄金のアデーレ」にこんなドラマがあったんだね。
しかも弁護士を担当したのがシェーンベルクの孫とか。

ヘレン・ミレンのこの上品さは何だろう。嫌味のない品を持ったばあさんって稀有な存在だよな。
ライアン・レイノルズはこの映画で初めて見たけど、そんなに頭がよさそうに見えない。
フベルトゥス役の俳優がどこかで見たことあるのに思い出せずにいたけど、『グッバイ、レーニン!』『ベルリン、僕らの革命』等に出ていたダニエル・ブリュールだった。

映画『ミケランジェロ・プロジェクト』

2013年 監督:ジョージ・クルーニー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




なんか後半近くまで全然のれないんだよな。
何が起きているのか、何をやっているのかよく分からないというか。
シリアスなのかコメディーなのか、そのバランスが非常に悪いのも一因かな。

予告編を見た感じは何も考えずに楽しめそうだと思ったのだけど。
ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット等々、役者陣は豪華。

2016年4月17日日曜日

映画『マイ・ファニー・レディ』

2014年 監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




コールガールから人気の新進女優になったイザベラ・“イジー”・パターソン(イモージェン・プーツ)が、インタビューを受けながらその過去を紐解いていく。
なかなか笑える群像コメディ。
最後にはあの監督まで登場するし、最初から最後まで楽しかった。

主演のイモージェン・プーツってはじめてみたけど綺麗さと愛らしさを兼ねそろえて、いろんな映画で重宝しそうだな。
オーウェン・ウィルソンは変わらないな。

映画『夏をゆく人々』

2014年 監督:アリーチェ・ロルヴァケル
製作国:イタリア/スイス/ドイツ
at ギンレイホール




監督のアリーチェ・ロルヴァケルは1981年生まれの女性監督。
って知ってびっくりした。
長編2作目にしておそろしい名作を作ったものだ。

舞台はイタリアトスカーナ。人里離れた土地で昔ながらの方法で養蜂を営む家族の物語。
たぶん息子が欲しかったのだろうが、4人の娘と両親の6人家族。プラスよくわからない居候の女性ココを含めれば7人。
長女のジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は12歳ながら父親の右腕として働いている。
ある日村にテレビ番組「ふしぎの国」のテレビクルーがやってきて、居合わせたジェルソミーナは司会者ミリーのきらびやかさに心惹かれていく。
食品衛生の基準に満たない作業所は改築を迫られ、ミツバチは隣の畑の除草剤によって全滅に追い込まれるという状況の中、この番組が伝統に則った生活を営む家族のコンテストを開くときき、ジェルソミーナは出演を希望するが父親は断固反対する。

『ブラス!』等々の最近のイギリス映画によくあるような田舎町のハッピーな成功譚ではない。
家父長制の家庭の中でテレビ番組や少年更生プログラムでやってきた少年等、外部から訪れる変化に敏感に反応して美しく揺れ動く、思春期のジェルソミーナの物語。
ジェルソミーナを溺愛しているが愛情表現の不器用な父親に触発されてか、とにかくジェルソミーナが愛しい。
ジェルソミーナの心の機微が暖かい陽光に照らされながら繊細に綴られていく。

導入からよくて、真っ暗闇に中に光が現れて、移動する光は二つになり四つになり、車のヘッドライトだと気づく頃にはなにごとかの事件の幕開けかと思う。
停車した車から降りてきた男たちは、「あんなところに家なんてあったか?」「昔からあるだろ」みたいな会話の後に家族が住む家の中にシーンが移る。
おもむろに起きだすジェルソミーナ。
しかし外の様子とはなんら関係なく、閉じた家の中では別の要素でにわかに騒がしくなる。

あと、ラストもまた秀逸なんだな。
あまり書けないけど、美しく儚い幻のような。。

司会者ミリーは誰だこのおばさんと思っていたらモニカ・ベルッチだったらしい。

2016年3月27日日曜日

映画『恋人たち』

2015年 監督:橋口亮輔
製作国:日本
at ギンレイホール




これは、名作すぎる。
特にある登場人物がうんこ座りでたばこふかしながら野ションして、たばこの火をおもむろに地面に持っていって消した「ジュッ」っていう音でこの映画は僕の中で殿堂入りした。

過去の傷を引きずったり、家庭に縛られて鬱屈していったり、と悩みをかかえながら毎日を生きる人たちの群像劇。
もう、なんというか日常的すぎるというか、リアルすぎるというか、そのリアルってやつがリアルっぽいどころか嫌悪感まで抱きそうなほどの真に迫ったリアルで、他の映画がすべて上辺を綺麗に取り繕った偽者にすら思えてくる。
予告編にもあるけど、常にいらいらして高圧的に当り散らす弁当屋のおかみとかさ。
このおかみは物語の最初の方にしか出てこないくせにここで一気に引き込むよね。
おかみだけじゃなくてそれをにこにこなだめる夫、そしておかみに理不尽にどなられる業者の男なんかもリアルすぎて怖い。
この業者の男藤田(光石研)は愚鈍そうな人物として登場したくせにかなりのアウトローだったりする。

主要な話の軸は主に二つで、一つは通り魔に妻を殺された男篠塚(篠原篤)を中心とした話。
橋梁点検をする職に付いているが、いまだに立ち直れずに日々を生きている。
生活は厳しく健康保険もろくに払えない。
医者の高圧的な一言「払いなさいよ」。こんな口の利き方する医者がいたらぶんなぐりそうになるよな。

もう一つは夫と姑の3人で暮らす主婦の高橋(成嶋瞳子)を中心とした話。
もう台所のごちゃっとした雰囲気(決して汚いわけじゃない)に嫌悪感を抱いてしまったが、そんなもんは序の口。
この高橋という役柄とそれを演じた成嶋瞳子がとにかく凄い。
いい具合の不細工加減からにじみ出る熟して朽ちかけはじめそうな体臭がこちらまで漂ってきそうだ。
(あれっ、ほめているつもりが恐ろしい悪口になっている気がする・・)
家庭的で夫に尽くし、小説や漫画を書くささやかな趣味を持ち、騙されやすく人のいい、乙女のような心を持った主婦。
にわとりを捕まえようと藤田と一緒にきゃっきゃきゃっきゃやっている様子とか、敬語の使いっぷりとか、凄まじいまでの攻撃力だ。

この二つの他には弁護士四ノ宮(池田良)を中心とした話もある。
この細身で情の薄そうな四ノ宮が、見た目どおりの嫌なやつなんだな。
こんな嫌な奴だけどこいつもまた偏見からくる理不尽に打ちのめされる。
生きるのはつらいね。

脇役でいえば黒田大輔演じるその名も黒田大輔が印象深い。
「あなたともっと話したいと思うよ」
隻腕という役柄。

保険課の職員を演じた山中崇も嫌な感じ。
そういえばこの職員が出てくるシーンで
「それじゃああなたの胸先三寸で決まるということですか?」
「そうです」
みたいな篠塚とのやりとりがあって、篠塚って一応学が無い設定だから胸先三寸っていう誤用を使っているのかと思いながらもそもそも学が無いのであればこの言葉すら知らないんじゃないかとも思うし、そういうさじ加減がなんか絶妙だなと思う。

篠塚の会社の後輩も強烈だった。
「っすよ」という敬語の使い方をするけどちゃらい系じゃない短髪の小男で、いかにもお調子ものといった感じ。
こういう後輩苦手だわ~。

映画『あん』

2015年 監督:河瀬直美
製作国:日本
at ギンレイホール




ハンセン病が題材になっているものの、これでもかと前面に押し出しているわけでもないので、すんなり見ることができる。
映像の陰影が美しくてなかなか見とれる。桜は綺麗だなぁ。
「ドラ焼きいかがですかぁー!」
樹木希林と永瀬正敏が安定した存在感を見せる。
脇役には市原悦子や水野美紀、浅田美代子等。
そして物語上も重要なつなぎとなるワカナ役に内田伽羅。
オールバックにしている少女って大抵自分の顔がかわいいと勘違いしている奴だと小学生の頃に悟ったんだけど、この子ならオールバックも許せる。
きりっとした潔い整った顔立ちはオールバックで十二分に映える。
樹木希林の孫らしい。
モックンに似たんだね。

河瀬直美ってなんだかんだで『萌の朱雀』以降一本も見ていなかったな。

2016年3月20日日曜日

映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』

2014年 監督:セオドア・メルフィ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ひねくれもののオヤジといじめられっ子の交流を描いたハートウォーミングコメディ。
と書くとくそつまらなさそうだけど、まあ普通に面白かった。
主演ビル・マーレイだしね。
あの女性がナオミ・ワッツだったんだと今知った。

映画『エール!』

2014年 監督:エリック・ラルティゴ
製作国:フランス
at ギンレイホール




田舎町で酪農を営むベリエ家は、長女のポーラ(ルアンヌ・エメラ)を除いて全員耳が聞こえない。
家族内なら手話で事足りるが、手話のできない人たちと話すときにはポーラは大活躍する。
そんなポーラは実は歌の才能があってパリの音楽学校のオーディションを勧められるが、家族を置いていけない葛藤に苦しむ。

なんか凄い面白かった。
他愛の無いストーリーなのに時にどぎつく時に笑え、そしてほっこりする。
で、なにより主演のルアンヌ・エメラが可愛すぎる。
顔の造形自体はそんなでもないんだけど役柄もあってかとにかくかわいい。
生命力にあふれた野性味の強い顔と優しい愛情の深さ。
そして赤いミニスカートから伸びた昔のアニメのような大根足!
ルアンヌ・エメラはフランスの歌のオーディション番組で歌手デビュー後、本作が映画デビューらしい。

2016年3月6日日曜日

映画『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』

2014年 監督:ヴィム・ヴェンダース,ジュリアーノ・リベイロ・サルガド
製作国:フランス/ブラジル/イタリア
at ギンレイホール




こっちはこっちで凄いドキュメンタリーだな。
セバスチャン・サルガドっていう人物と彼が追ってきた世界が圧倒的に訴えてくる。
写真がとにかく訴えてくる。
しかもセバスチャン・サルガド本人の解説つきで紹介されるのはかなり贅沢な事なんじゃないだろうか。
映像表現はどちらかというと控えめにして写真をメインに据えている印象だけど、彼が見てきたもの、彼が考えてきたこと、彼の人生が濃厚に詰まった映画になっている。
ある人物を取り上げて半生を映画化、とかってよくあるけど、生きていて過去の写真や映像があるならドキュメンタリーが一番いいよな。

映画『真珠のボタン』

2014年 監督:パトリシオ・グスマン
製作国:フランス/チリ/スペイン
at ギンレイホール




前作と同様に宇宙とピノチェト独裁政権時代の話が出てくるが、話の中心は水の遊動民(ノマド)になっている。
映像も前作は光がテーマっぽかったが、今回は水(氷含む)になっている。
水、いいよね。水の音もいいし、いつまでも見ていられる。
チリの過去は先住民の大虐殺まで遡る。
もう本当にいつでも虐殺、拷問しているなぁ。

時間や空間の概念がふっとびつつあるので、タイトルの真珠のボタンはそんなつながり方するのか、と一瞬意味が分からず混乱した後にじわじわ来た。

2016年2月29日月曜日

映画『光のノスタルジア』

2010年 監督:パトリシオ・グスマン
製作国:フランス/ドイツ/チリ
at ギンレイホール




ただのドキュメンタリーだと思っていたらなにこの映像のこだわり。
そこらの映画より面白かった。
宇宙の過去、地球の過去、そしてチリのごく最近の過去が静かに語られていく。

基本的に面白かったんだけど、最後の方であれっ終わりかなと思ったタイミングがあってそこで終わりを意識してしまったために一旦集中力が切れてしまった。
別にいいんだけどまだ続くのかと思いながら見ていると、本当のラストで宇宙とチリが邂逅(って意味が分からないだろうがネタばれになるので)するシーンがあって、なんてことはないはずなのに感動して泣いてしまった。

2016年2月21日日曜日

映画『人生スイッチ』

2014年 監督:ダミアン・ジフロン
製作国:アルゼンチン/スペイン
at ギンレイホール




全6話のオムニバス。
原題が読めないから分からないけど原題は人生スイッチではなさそう。
全部が全部スイッチを押すようにどこかのタイミングでカチッと切り替わるわけではないからなぁ。
とにかくどの話も狂気をはらんだブラックコメディー。
『バカヤロー! 』ってシリーズが昔あったよな。
あれのどぎつい版っていったら分かりやすいか。

個人的には予告編でも大きく取り上げられていて気になっていた「エンスト」が印象に残っているかな。
エンストじゃなくてパンクだけど。
あと一話目の「おかえし」は最初の二人の会話を聞いている時点から思いもつかない方向に飛んでいくからなかなか面白い。

映画『さよなら、人類』

2014年 監督:ロイ・アンダーソン
製作国:スウェーデン/ノルウェー/フランス/ドイツ
at ギンレイホール




最近芸術寄りの映画を全く観なくなったせいか、なんとも思わなくなってきたなぁ。
つまらなくはなかったけど、寝たら気持ちよく寝れそうだなと思った。

『実存を省みる枝の上の鳩』
原題を邦訳するとこうなるらしい。
でもそれじゃあ売れないから『さよなら、人類』にしたんだろうけど、「たま」になっちゃうじゃん。
それにどこに人類にさよならする要素があるんだろう。
確かに死のモチーフが何点か始めに提示されてはいるけど、意思を持たない死だし、その死も含めてこの映画の根幹は人間賛歌だから。

ストーリーはあってないようなものだけど、一応サム(ニルス・ヴェストブロム)とヨナタン(ホルゲル・アンデション)の二人が主演になっている。
この二人が断片的な挿話になんとなくの関連を持たせたり持たせなかったりで、狂言回し的な役割を担っている。

たまに場所も時空の概念も取っ払ったイメージ世界が繰り広げられるときがある。
現代のバーにカール12世が馬に乗って現れるのは結構びびる。
従者がバーのドアを開け放しにする方法をなぜか知っていて(あの仕組みは昔からあるのかもしれないけど)よどみなく作業したり、ヨナタンが面白マスクをかぶっている途中だったり。
ファラリスの雄牛の数十人版みたいな巨大殺人機械もすごかった。
どでかいドラム缶のような形からラッパの口がいくつも飛び出していて。
中の阿鼻叫喚がラッパから流れ出るのかと思いきや、異様なまでの静けさがたちこめ(なんか音か音楽があったような気もするけど)、揺れ動き回転する機械だけが雄弁に中の様子を語っている。
本当に火焚いているように見えるし、どうやって撮影しているんだろう。

ああ、音で思い出したけど、音がちょっと微妙だったな。
映画館の音響設備のせいかもしれないが、特に冒頭のバッグを話さないばあさんのシーンで、説得にかかる初老の男性の声とか、別に嫌な声質でもないのに音量のせいか声の一つ一つが硬く突き刺さってきて不快だった。

戦時中のバーのシーンでは、おもむろに歌から大合唱が始まり、その流れで金が無くて酒が飲めないと嘆く若い兵隊達に、若い女主人がならば酒代はキスで払いなさいよと言い放ち、並ぶイケメン達と次々にキスを交わすというシーンがある。
戦地に赴く前途有能な若者たちに、キスという愛にあふれた行為とともに酒を振舞う女主人。
「素敵やん」
ってことなのだろうが、まずは「兵士はキスしてただ酒飲めて至れり尽くせりじゃん」っていうのと、「次から次に恋人かのようにキスしていく女を見ていると売女じゃん」っていう思いがきたあとに、やっと「ああ、なんて俺の心は狭いんだろう」と反省して「素敵やん」に至る。

監督はスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン。
”リビング・トリロジー”(人間についての3部作)の三作目らしい。
前二作は『散歩する惑星』『愛おしき隣人』で、合わせて15年。
びっくりしたのは全部スタジオ撮影だったらしい。
いや、明らかに野外あったでしょ、予告編にもある線路脇のシーンとかさ、と思ったらこれもやっぱりスタジオで、ミニチュアの建物とマットペイント(背景画)らしい。すごいこだわり。。
CGもほぼ使っていないらしい。CG使っているとしたらあの猿(人形の可能性も高い)と巨大ドラム缶を熱する火とかかなぁ。

2016年2月11日木曜日

映画『マイ・インターン』

2015年 監督:ナンシー・マイヤーズ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ。
ストーリー自体は本当にどうでもいいなという感じだけど、テンポがいいので飽きずに見ることができる。
デ・ニーロとアン・ハサウェイのコメディ演技を楽しむ映画ってとこかな。
シニアインターンとかそんなのあるんだね。
にしても老人と若者たちってそんなに溶け込むもんかな。デ・ニーロめっちゃ頼られているし。
ああ、フィオナ役のレネ・ルッソは『ナイトクローラー』のニーナ役の人だったのか。気づかなかった。

映画『ナイトクローラー』

2014年 監督:ダン・ギルロイ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




社会の底辺に生きるルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)が、ナイトクローラー(報道パパラッチ)という職業に出会い、めきめきと頭角を現していくサクセスストーリー。
ただ、普通のサクセスストーリーと違うのは、ブルームが愛嬌のかけらもない正真正銘のくず野郎だということ。
なにか法を外れざるをえないときに起こる葛藤みたいなものは一切無く、なんのためらいもなく(踏み外すという感覚すらなく)必要に応じてずかずか一線を越えていく。
そもそもやってる職業がパパラッチだから、ダークヒーローが法をおかしてでもすかっと世直ししますよ、といった類でもない。
なにしろ血も涙もないくずだからね。
なのに、こんな主人公で楽しめるか!とはならず、意外にかなり面白かった。
社会の底辺に生き、感情表現やコミュニケーションがどこかぎこちないが、野望にだけはぎらぎら燃えている男。
そんな男の悲哀に惹かれるのだろうか。

こんな男を生み出す社会構造を批判しているだとか、真実よりも衝撃映像を求める暇な視聴者やそれに迎合するテレビ報道を批判している等々、いろいろ言いようはあるのかもしれないけどさ、それはどうでもいい。
夜の風景は美しいし、車の疾走感もいい。
ひやひやする緊張感が一本ぴーんと張っていて飽きさせないし、単純に頭のねじがぶっとんでいる兄ちゃんがモラルの欠如した業界にがちっとはまっていくサクセスストーリーとして楽しめる。

2016年1月24日日曜日

映画『アリスのままで』

2014年 監督:リチャード・グラツァー, ワッシュ・ウェストモアランド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




若年性アルツハイマーを扱った映画で、ジュリアン・ムーアがこれでアカデミー主演女優賞とったとかなんとか。
総合するとシリアスで見ごたえありそうだなと思いながら見始めたものの、いかんせんこれの前に見たアナイス・ドゥムースティエの衝撃が少しも抜けなかったことと、演技に関係ない気もするが冒頭のプレゼントだかを受け取るジュリアン・ムーアの欧米人っぽい大仰なリアクションを見てから悲しくなってきてあまり入り込めなかった。

ジュリアン・ムーア演じるアリスは大学教授で有名な言語学者らしい。
誰よりも言葉に情熱を傾けてきた言語学者が若年性アルツハイマーにかかって言葉や人格を失っていく悲しさ。
別に泣き所のある感動物ではない。
かといって惨いほどのシリアスでもない。
じゃあなにか、というと、まあよくわからないんだけどね。
とりあえず家族ドラマなのかな。
これ書いているときにはラストがどうだったかさっぱり思い出せないこともあって全体的な印象も曖昧。

夫ジョン役にアレック・ボールドウィン。
次女リディア役にはクリステン・スチュワート。


そういえば朝ドラの名作『純と愛』の若年性アルツハイマーはシリアスだったな。
しかも数ある不幸の一要素でしかないという。

映画『彼は秘密の女ともだち』

2014年 監督:フランソワ・オゾン
製作国:フランス
at ギンレイホール




クレールを演じたアナイス・ドゥムースティエがとにかく可愛らしい。
そばかす顔ですごい美人というわけでもないし、童顔で愛らしいというわでもないし 男がころっと騙されそうな媚びた表情豊かさを見せるわけでもないのに 可愛すぎて死にそうだ。
ロマン・デュリスの相手役だし30半ばか前半くらいかと思ったら1987年生まれだった。
出演作を見ると『キリマンジャロの雪』に出演していたらしいが、全く記憶にない。
今後注目していこう。

ストーリーは予告編の通り。
ロマン・デュリスの女装はまんまオカマだなぁと思った。
そのバランスがコミカルでシリアル。
ロマン・デュリスももう40過ぎか。
ここ数年は恋愛物系でしか見ていない気がする。

2016年1月10日日曜日

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

2015年 監督:ジョージ・ミラー
製作国:オーストラリア
at ギンレイホール




石井聰亙の『爆裂都市 BURST CITY』なら見たが、マッドマックスシリーズは1本も見ていない。
どんな感じなんだろうと見てみたら、いやぁ、ぶっ飛んでたなぁ。
アクションで重要な疾走感が詰まっている、というか食傷起こしそうなくらい疾走感そのものだし。
マッドな世界で適度に残虐で常に死と隣り合わせの緊張感。
ここまで「世紀末」だと性モラルも崩壊していそうだがエロ要素はほぼ無し。迫力の暴走のみに集中しろということか。

後で知ったけど、ほぼ主役のフュリオサを演じていたのはシャーリーズ・セロンだったんだな。

映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』

2015年 監督:クリストファー・マッカリー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ギンレイでこういう映画やるの珍しいな。
めっちゃ混んでるし。
外に並んでいるときに会員カードの期限が切れていることを思い出してどうしようかと思いつつとりあえずしれっと入ってみようかなと思ったら一旦通れた後にすぐ呼び止められてしまった。(ご迷惑をおかけしました)

カーチェイスありバイクチェイスあり格闘シーンあり謎の美女ありで、最後までまあ飽きずに見ることができる。
そういえばこのシリーズ見るの初めてだった。
公式ページでいろいろ情報を仕入れようと覗いてみたら、なんか公式ページが非常にしょぼい。
Webで宣伝しなくても集客できる大作の余裕か、それともたいした情報が無いのか。

トム・クルーズ53歳。
結構本当にスタントやっているらしい。
冒頭の本編に関係ない飛行機つかまりアクションもちゃんとやっているらしい。
それにしてもこのイーサン・ハントという役、命知らずにもほどがある。
人間っていうのは簡単に死ぬんだよ。
こんな無茶ばかりしてそれでも死なないなんて神でも乗り移っているのだろうか。
俺は絶対死なないという確信があってやっているならいいけど、無いのなら馬鹿なの?と思ってしまう。
あれっ、なんかアクション映画に対して野暮なこと言っているかも。

映画の最初の方にえらい美人のねーちゃんが出てきて、この子がヒロインかと思ったら早速殺されてしまって「はっ?」ってなったんだけど、ハーマイオニー・コーフィールド(Hermione Corfield)という駆け出しの女優さんだったっぽい。
あと、ジェレミー・レナーがどうしても頭よさそうに見えない。