2013年12月15日日曜日

映画『ローマでアモーレ』

2012年 監督:ウディ・アレン
製作国:アメリカ/イタリア/スペイン
at ギンレイホール




今度はローマ。
群像劇になっていて、意外と面白かった。

中でも恋人の親友がやってくる話が面白い。
誰もが彼女の虜になるという小悪魔的魅力の彼女の親友モニカに心動かされるジャック。
そのジャックのそばに突然現れては進言を繰り返す高名な建築家ジョン。
ジョンは別に死んでいるわけでもないのに、幽霊のような位置づけで突然現れる。
映画ではあまりやらない心情のモノローグを、ジャックとジョンの会話(他の人には聞こえない)という形でしれっとやってしまうところ、賛否両論あろうがそのウディ・アレンの強引さ(洒脱さ?)が面白い。
進言する内容も「彼女はインテリぶっているだけだ!」「有名な小説のフレーズを一つだけ暗記して諳んじてるだけだ」とか、なかなか的確(というか、僕は危うくだまされていたけど)で、ジャックもそこは分かっていながらも彼女の魅力から逃げられないでいる。
このインテリぶる方法は結構使えるなと思った。
小説に限らず、音楽、絵画、映画等々なんでもいいが、人の名前やタイトルを知っているだけじゃ足りない。プラスしてワンフレーズや軽いエピソードなどを混ぜてやれば、実際読んだことも聞いたことも見たこともなくてもインテリっぽく見えそうだ。
もちろん突っ込んだ質問されたらうまく回避する必要があるけど。

以前、俳優女優は皆ウディ・アレンの映画に出たがる、なんて話を聞いたことあるけど、今でもそうなのかな。
生霊建築家ジョンにアレック・ボールドウィン。
ジャック役にはザッカーバーグことジェシー・アイゼンバーグ。
小悪魔モニカにはJUNOことエレン・ペイジ。
以前も出ているペネロペ・クルスは今度はコールガール役。
ロベルト・ベニーニは突然有名になるおっさん役。
ロベルト・ベニーニがウディ・アレンの映画に出るなんてちょっと前まで想像もしなかったけどな。

シャワー歌手のおっさんはかなり有名なテノール歌手らしい。ファビオ・アルミリアート。

映画『愛さえあれば』

2012年 監督:スサンネ・ビア
製作国:デンマーク
at ギンレイホール




おっさんとおばさんの恋愛物で何が楽しいのかと思いきや、なかなか面白かった。
なにかそれぞれ欠点のある個性的な家族を下地に王道の恋愛コメディが繰り広げられるという、ありきたりな設定なんだけどなぁ。
能天気に騒々しいだけじゃなくて、ちゃんとドラマがあるからかな。
フィリップの義妹のおばちゃんはさんざんな言われようで可愛そうだったけど。

自分を隠していたウィッグを脱ぎ捨て、「愛さえあれば」と素直にさらけだせば幸せになれる。
「愛さえあれば」と思えるかどうかが重要だけど。

出演者は皆デンマークで有名な俳優達らしい。
そこに一人ぼつんとピアース・ブロスナンが入っている。(一応外国人役)
アストリッド役のモリー・ブリキスト・エゲリンドちゃんが北欧美人という感じで綺麗だった。

時折はさまれるバルコニーの固定ショットがなかなかよかった。

2013年12月1日日曜日

映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

2012年 監督:デレク・シアンフランス
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




クールな二枚目俳優からいつのまにかバイオレンスを演じさせたら今や右に出るものはいなくなったライアン・ゴズリング主演。
あとブラッドリー・クーパーが清潔な風貌で正義感あふれる警官役で出ている。

移動遊園地で曲芸バイク乗りのスターとして各地を転々とするルーク(ライアン・ゴズリング)は、かつての恋人との間に息子が生まれていることを知る。
孤独なライダーの父性は一気に爆発して転職。
その技術を生かしてスタントマンにでもなればもっと稼げそうだけど、たぶん父親となった今危険な職業はやりたくないしこの地を離れたくなかったんだろうね。
ということで自動車整備工場で働きだす。
で、気づいたら犯罪に手を染めて、あわわという展開になって次の世代へと話は続いていく。

一つの事件をきっかけに始まる二つの家族の苦悩と葛藤が、重いはずなのに家族愛に包まれて染み入ってくる。
人間ドラマに加えて犯罪要素のスリリングさ、そしてファザコンAJ君(エモリー・コーエン)の異様なまでのクソガキ度が加わって141分も長く感じないほど面白かった。

オープニングからかっこいい。
シャコンシャコンとバタフライナイフを危険にいじくるむきむきの男のカットからそのまま長回しでバイクの曲芸まで。

映画『イノセント・ガーデン』

2013年 監督:パク・チャヌク
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




18歳の誕生日に父が突然事故死して、葬式には今迄存在すら知らなかった叔父が現れる。
そのまま一緒に暮らし始める叔父だったが、イケメンで紳士的な叔父には何か常に違和感があって。
っていうサスペンス。

最近読んだ小説で、「悪」とは脳の異常による病気、事故で脳が損傷したのかもしれないし、腫瘍かもしれないし、遺伝かもしれない、っていう話を思い出した。

最後まで見るとストーリー自体はなんだそんなことかという感じがしないでもない。
演出は音の使い方がちょっと変な方向に走っちゃっていて、安易というかなんというか惜しいところ。基本的に音がクローズアップされるのは好きなんだけど。

ミア・ワシコウスカとニコール・キッドマンはすごくいい。


あんまり関係ない話だけど、女性って20代過ぎたあたりからひじがしわしわになってたるむよね。
さらに年を重ねると、しわしわの部分が茶色くなってくる。
誘惑的なテニスウェア姿のニコール・キッドマンのひじが見事なたるみと色だった。(色が白いから余計目立つ)

2013年11月17日日曜日

映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

2010年 監督:リチャード・プレス
製作国:アメリカ/フランス
at ギンレイホール




ニューヨーク・タイムズの人気コラム「ON THE STREET」と「EVENING HOURS」を長年にわたり担当する、ニューヨークのファッションフォトグラファー、ビル・カニンガム。
84歳。
ニューヨークはもちろん、パリコレに出向いたビルが警備員に止められそうになっているのをスタッフが見つけて「この方は重要なお方なので」と丁重に招きいれられるくらいファッション界では有名な人らしい。
そんな有名なビルだが、私生活は近しい人ですらよく知らないという。
説得に8年、撮影と編集で2年かかったというビル・カニンガムのドキュメンタリー。

一人のじいさんを追いかけているだけ、といえばそれまでだが、これが結構面白い。
見終わると誰もがビル・カニンガムのファンになっている。
84歳って相当なもんだよ。普通はベッドで寝たきりとか杖ついて首かくかくしながらよぼよぼ歩いている年齢。
一方ビルは雨の日も風の日も愛用の自転車にまたがりニューヨーク中を颯爽と走り回ってストリートファッションを撮影し続けている。
きっと毎日が楽しいんだろうな。
「これは仕事ではなく喜びだ」

映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』

2012年 監督:マリク・ベンジェルール
製作国:スウェーデン/イギリス
at ギンレイホール




かなり面白いドキュメンタリー映画だった。
1960年代の後半にデビューしたロドリゲスは、ボブ・ディランに匹敵するその才能で将来を有望視されたが発表したアルバムは商業的に大惨敗してそのまま姿を消してしまう。
しかし彼の音楽は南アフリカで大ヒットし、反アパルトヘイトの原動力にすらなっていた。
南アフリカではどの家にもビートルズのアビイ・ロードの隣に彼のアルバムがあったというくらいの有名人だが、実際ロドリゲスという人物については誰も何も知らなかった。
ステージ中に拳銃自殺したとか焼身自殺したとか、死亡理由もいろんな説があり真実が分からない。
そんなロドリゲスという「謎のアメリカ人」を追いかけたドキュメンタリー。

追いかけるというか、真実が全て分かっている状態から構成が練られていると思うんだけど、この構成が見事で下手な脚本の映画見るより数倍面白い。
なにより、か細いのになぜか力強い彼の歩く姿をドリーで映しているところなど、なんて映画的で美しいシーンなんだろう。

本当かどうか「全米で6枚売れた」っていう証言があるけど、その6枚のうちの1枚のダビングテープが南アフリカに持ち込まれる奇跡と、たった一つの個人所有のテープが南アフリカ中に広まる奇跡。

2013年11月4日月曜日

映画『きっと、うまくいく』

2009年 監督:ラージクマール・ヒラニ
製作国:インド
at ギンレイホール




予告編を見る限り、独自のミュージカル映画を量産してきたインド映画がハリウッドの娯楽映画に毒されてB級にもならないつまらない映画を作ってしまったんだと思った。
予告編の「ランチョーは超天才の自由人」ってところのどや顔なんてひどすぎる。
170分もあるし予告編の印象も悪いけど、一応見てみる。

で、見た感想は、なんか思っていたより面白かった。
まさにB級という感じで。
映画だからこそできる自由さ。
そしてできすぎているけどしっかり伏線張って徹底的に楽しませるストーリー。
上空からの撮影とかCGとか、無駄に金をかけている豪華さ。
2曲だけだけどミュージカルもあり。セットや衣装も豪華。

予告編のどや顔のところは、何か難問を解いてどや顔しているのかと思ったら全然違うシーンだった。

インドで歴代興行成績ナンバーワンらしい。
インドに馬鹿が増えなければいいけど。。。
この映画の主人公達に共感して真似したら9割方挫折してひどいことになるだろうから。
人生狂って「強姦を輸出」されたら迷惑だし。

この映画が高らかに謳っている「詰め込み教育は駄目」はインドだと青天の霹靂並みの衝撃なのかな。
ストーリーのテーマにまで据えて何度も声高らかに主張なんて、日本や欧米の映画ではまず作られないだろうし。
詰め込み教育の象徴であるサイレンサーが普通に社会で成功しているところがミソ。
そういえばこないだテレビでやっていたけど、秋田の国際教養大学ってところは凄いな。
いわば全校生徒がランチョーみたいな感じ。
もうちょっと遅く生まれていたら行きたかった。

フィクションの娯楽映画だから別にいいのかもしれないけど、結構やっていることがひどい。
サイレンサーに対する仕打ちなんか、もう悪質ないじめだよね。
嬉々として改竄されたヒンドゥー語でスピーチするサイレンサーが哀れだった。
他にも自分の都合で飛行機の離陸を止めて、なんか格好よく走り去っていったり、酔っ払って学長の家の玄関にしょんべんかけたり。
しょんべんって中学生かよ。大学生は普通そんな非常識で低俗なことはしません。
(ん?なんか僕も大学のゼミの合宿中似たようなことをした記憶がうっすら脳裏をよぎったけど。。)

ヒロインは一応美人ということなのかな。
インドでは美人なのだろう。
でも昔見たルノワールの『河』に出ていたインド少女は美人だったな。インド映画じゃないからか。

映画『カルテット!人生のオペラハウス』

2012年 監督:ダスティン・ホフマン
製作国:イギリス
at ギンレイホール




引退した老音楽家達が暮らす老人ホームが舞台。
かつて四重唱で名を馳せたレジー(トム・コートネイ)、シシー(ポーリーン・コリンズ)、ウィルフ(ビリー・コノリー)の3人もここで慎ましく(?)余生を過ごしていた。
この老人ホームビーチャム・ハウスが存続の危機にさらされる中、カルテットの最後の一人ジーン(マギー・スミス)がやってくるのだが、ジーンとレジーにはある確執があり。。

マギー・スミスがどうも苦手なのだけど、全体的にはまあ面白かった。
ダスティン・ホフマンの監督第一作。
もう75歳なんだね。

脇役の老人達はみな有名な音楽家達らしい。
クラシックからジャズまで。

トム・コートネイより存在感があったので最初主人公かと思ったウィルフ役のビリー・コノリーはコメディアンとして有名な人らしい。

2013年10月20日日曜日

映画『舟を編む』

2013年 監督:石井裕也
製作国:日本
at ギンレイホール




『大渡海』っていう新しい辞書の編纂に取り組むことになった男のお話。
原作三浦しをん。
133分あるけど飽きずに見ることができる。
なんといっても今や日本映画界の至宝となりつつある松田龍平と、結婚したい女優No.1の宮崎あおいが出ているから。
(松田龍平はよかったんだけど暗めの真面目人間役をやらせたら変質者っぽく見えなくもない)

辞書ってこんなに時間かけて作っているんだな。
儲けってあるんだろうか。

他に加藤剛、八千草薫、小林薫、伊佐山ひろ子、オダギリジョー。
下宿のおばちゃんに渡辺美佐子。
池脇千鶴はエンドロール見てやっと気づくくらい分からなかった。
あと麻生久美子もクレジットされていたけど、どこに出ていたんだろう。

映画『かぞくのくに』

2011年 監督:ヤン・ヨンヒ
製作国:日本
at ギンレイホール




ところどころ手持ちカメラがうざかったものの、全般的に面白かった。役者陣の演技も濃厚だし。

喫茶店を経営する家族のもとに兄が帰ってくるらしい。
北朝鮮から。
病気療養のための特別な帰国。
家族や仲間達は25年ぶりの再会に喜ぶ。

25年ぶりっていったい何歳の頃に渡ったのだろう。
井浦新の年齢を知らなくて、でも妹役の安藤サクラは20代のはずだから、井浦新の見た目30代くらいだとすると小学生?
でも小学生とかならこんな親密な仲間達がいるとも思えないし。
京野ことみが同級生ならやっぱり今30前半くらい?
と思ったらどうも15,6歳くらいに地上の楽園に行ったらしい。
じゃあ今40くらいか。
村上淳もそういえばそのくらいか。
妹は随分兄の事を慕っているが、いくつの設定なのだろう。

車に乗った兄をつかんだまま車が発進して、もつれそうになりながらそれでも手を離さないシーンが一番良かった。

2013年10月6日日曜日

映画『ゼロ・ダーク・サーティ 』

2012年 監督:キャスリン・ビグロー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




158分で主演女優もあまり美人じゃないし耐えられそうにないかもと思ったけど、意外と最後まで見られた。
特にラストはすごい緊張感。

どこまでフィクションなんだろうと、Wikiを見ると、ステルスヘリが一揆墜落したとか諸々事実らしい。
世界中を回って行った関係者への取材を通して脚本が書かれたらしいので、ほぼ実話に近いフィクションっぽい。
そりゃあこの題材で広く知れ渡っている事実だけ合わせて後は適当な作り話、なんてことはないよな。

アメリカ映画でアメリカ人が主人公だから、なんとなくアメリカ寄りで見てしまう。
ラストは下手なガンアクションより面白いし、主人公の、そしてアメリカ市民の憎き敵をやっつけるというシチュエーションはさらに喝采を起こさせるのだろう。
でも、フィクションならともかく、事実ならまたちょっと違う。
問答無用に撃ち殺していく様は結構残酷だから。
拷問にしろラストにしろ、やられたらやり返す倍返しだ!的な仕組みが恐ろしい、ということを教えてくれる映画。

映画『東ベルリンから来た女』

2012年 監督:クリスティアン・ペツォールト
製作国:ドイツ
at ギンレイホール




1980年の東ドイツ。東ドイツから脱出を図る女性の物語。
西側の移住申請が却下され、東ベルリンから田舎の小さな病院に左遷されたバルバラ(ニーナ・ホス)。
シュタージの監視の中、誰にも心を開かず密かに西に逃れる準備を進めるバルバラだったが。

舞台は冷戦時代の東ドイツだけど、物語の中心はバルバラという女性の生き方にある。
豊かな西の恋人と、真摯に患者と向き合いやれることに全力を尽くす東の男との間で揺れる心や、西への脱出と医師としての使命の狭間等々、繊細な心の機微が映像や音で丁寧に描かれる。
なかなか面白かった。

2013年9月25日水曜日

映画『天使の分け前』

2010年 監督:ケン・ローチ
製作国:イギリス/フランス/ベルギー/イタリア
at ギンレイホール




子供の頃から凶暴な性格のロビー(ポール・ブラニガン)は暴力事件により裁判所から300時間の社会奉仕活動を命じられる。
その社会奉仕活動の指導者であるハリー(ジョン・ヘンショウ)はスコッチ・ウイスキーの愛好家で、ロビーの息子誕生のお祝いに年代物のウィスキーを振舞ったことをきっかけにロビーの才能が目覚めていく。

予告編の紹介で『フル・モンティ』が引き合いに出されていたりするから、すかっとする成功譚なのかなと思ったら微妙に違う。
いや、すかっとする成功譚には違いはないけど、目覚めた才能はそんなに関係ないから。
クライムロードコンゲームムービーみたいな感じ。
はらはらどきどきほろっとしてかなり面白かった。

監督はケン・ローチ。
この人の何気ない日常に潜む温かいユーモアを捉える才能って凄いよな。
※僕が今まで映画見て一番爆笑して記憶に残っているのはケン・ローチの『ケス』のサッカーシーン

主役ロビー役のポール・ブラニガンは背も小さいし美男子でもないけど、演技が自然でひきつけられる。
これまで演技経験0だったのに主役に抜擢されたらしい。

映画『世界にひとつのプレイブック』

2012年 監督:デヴィッド・O・ラッセル
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




あからさまに笑わせようという感じはそんなに無いけど見ていて楽しいラブコメディ。
恋愛物としての盛り上がりもあるし、なかなか面白かった。

ティファニー役は30くらいの女優さんかなと思って、でもどこかで見たことあるなと思ったらジェニファー・ローレンスだった。
2010年の『ウィンターズ・ボーン』ではまだ少女だったのに。。
メイクを濃くして大人っぽくしているからブラッドリー・クーパーと並んでいても違和感が無い。

豪華にも父親役にロバート・デ・ニーロが出演している。
情けないような頼りになるような、お茶目なじいさんがはまっているから凄い。

2013年9月8日日曜日

映画『リンカーン』

2012年 監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




150分っていう事前情報を入れていたせいか、始まった瞬間から眠気が襲ってきて、こりゃぁめくるめくジェットコースタームービーじゃない限り耐えられそうにない、という予感のとおり爆睡してしまった。

リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスがいい。
サリー・フィールドちゃんが演じた妻が、なんか嫌な感じの女性だったので調べてみたら悪妻として有名らしい。
息子のロバート・リンカーンを演じたのは『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョセフ・ゴードン=レヴィット。
タデウスはトミー・リー・ジョーンズだったのか。顔がぼこぼこだったから気づかなかった。

映画『魔女と呼ばれた少女』

2012年 監督:キム・グエン
製作国:カナダ
at ギンレイホール




ストーリーは重い話のはずなのにそんなに重くない。
亡霊が見えるという設定とシーンが幻想的な反面、やや虚構性が勝ってしまった感じ。
というか全体的に、残酷な人生をこれ見よがしに描くわけでもなく、反戦を高らかに謳うわけでもなく、ただ、一人の少女が否応なく巻き込まれる悲劇を静かな視線で見つめ続ける、というスタイルなので虚構性もくそもないのかもしれない。
涙や感動を誘うべく作られているわけじゃないから。
じゃあ冷たい無感動な映画なのかというとそうでもなく、死に近い地平から少女が体験する喜び悲しみ、生と死、激動と安寧、そして恋、は、むやみに感動で流されない分、それはそれでなかなか強烈な印象を残す。

マジシャンだけなんで黒人じゃないんだろうと思ったら、アルビノの少年らしい。

コンゴの情勢とこの映画について、作家の田中真知さんの解説が面白かった。
http://earclean.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-e1d4.html

2013年8月25日日曜日

映画『テッド』

2012年 監督:セス・マクファーレン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




笑いがくどくて段々疲れてきた。
テッドがつぶらな瞳でリンスだかなんだかを顔にぴゅっぴゅっとかけているシーンに笑ってしまった事を私は後悔している。

映画とかの小ねたがいっぱい散りばめられていて、監督のセス・マクファーレンって何者なんだろうと調べてみると、
俳優、声優、アニメーター、脚本家、コメディアン、プロデューサー、映画監督、歌手
で2013年のアカデミー賞では司会に抜擢されたけどその下品で差別的なジョークがひどかったと話題になっている模様。
で、結局何者なのかよくわからなかったけどオタクなのは間違いなさそうだ。

後半にノラ・ジョーンズがしれっと出てくる。
普通の会話の中でさらっとテッドとの体の関係を暴露しだすからびっくりして一瞬固まったけど、笑いどころだったのかな。
ノラ・ジョーンズ、ラヴィ・シャンカールの娘。
ずっとノラ・ジョーンズは年上なんだと思っていけど生年月日見たら日本で言うところの同級生だった。

主役のマーク・ウォールバーグは誰も違和感感じないのかな。
サブカルオタクの子供みたいな中年ならもっと童顔の優男風の俳優さんにすればよかったのに。
マーク・ウォールバーグはむきむきマッチョで、言ってみればつまりゴリラじゃん。
ゴリラが。。いやマーク・ウォールバーグの口からオタクジョークが飛び出してもなぁ。
はっ!まさかそれも全体で小ネタの一つなのか!!

日本語字幕でクマもんとかガチャピンとか出てくるから原文はどうなっているんだろうと思って「小ネタ」で調べてみたらいろいろ解説してくれているページがあった。
http://patrikeiji.blog37.fc2.com/blog-entry-450.html
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記

映画『シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~』

2012年 監督:ダニエル・コーエン
製作国:フランス
at ギンレイホール




脳みそ使わず気楽に楽しみたいときにはうってつけのサクセスコメディ映画。

三ツ星レストランのシェフアレクサンドル・ラガルド(ジャン・レノ)はテレビで料理番組も担当する人気のシェフ。
しかし近頃ではスランプに陥り、オーナーからは古臭いとも言われ、新メニューのアイデアも開かず、有能な助手達もやめていき、近日やってくるだろう審査会では星を落とす可能性が高くなっていた。
一方若いシェフジャッキー・ボノ(ミカエル・ユーン)は数々の有名料理人のレシピを記憶し再現できる上に一流の舌も持つというすばらしい能力の持ち主だが、その料理に対するこだわりと情熱から客にまで文句を言ったりして勤めるレストランを次々に首になっていた。
ボノは婚約者の妊娠をきっかけにペンキ塗りの仕事を始めるが、料理への情熱は冷めることなく、あるきっかけでラガルドと出会うことになる。

ストーリーの展開上はサクセスストーリーだけど、ジャンルとしてはコメディなので笑いもちりばめられる。
サクセスストーリーだけだと説得力にかけるけど、程よいコメディとのバランスが丁度いいので最後まで楽しく見ることができる。
「分子料理」の偵察箇所はちょっとくどかったけど。

ミカエル・ユーンのフィルモグラフィにある『変態ピエロ』という映画が非常に気になる。。

2013年8月11日日曜日

映画『愛、アムール』

2012年 監督:ミヒャエル・ハネケ
製作国:フランス/ドイツ/オーストリア
at ギンレイホール




何度目かの長回しのセリフが始まったとき、127分って情報が頭をよぎって一旦寝る。
その後も結構うとうとしてしまったけど、中盤にあるホラー映画のように恐ろしいシーン以降は目が覚めた。
室内劇で登場人物は基本的にジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)の二人のみ。
たまにやってくる娘エヴァ(イザベル・ユペール)や、かつての弟子とか看護士とか鳩が訪れてアクセントを加えるけど、基本は二人の室内劇。
室内といっても、シーンによって室内は様々な表情を見せるし、妻が壊れていく過程もゆっくりであるがために痛々しく突き刺さり、決して単調なわけではない。
単調じゃないけど、長いセリフは人の話を聞くのが苦手な僕にはちょっと。。

オープニングのコンサートシーンではずっと観客席のみで演奏者を一切映さないということをやってのけ、発病シーンでは流しっぱなしの水道をずっと意識させつつ、それが突然止まることで緊迫感はそのままに期待と不安を上乗せさせたり、っていう細かい仕掛けが最初の十数分以外にもいっぱいあったんだろうな。たぶん。うとうとしていたら思い出せないが。

自分の両親もいつのまにか高齢になってきたので親孝行しようかな、と思った。

映画『ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-』

2011年 監督:アンドレア・セグレ
製作国:イタリア/フランス
at ギンレイホール




労働者斡旋組織を通してイタリアにやってきている中国人のシュン・リー(チャオ・タオ)は、組織に多額の借金を抱え、いつか故国に残してきた息子を呼び寄せることを夢見ている。
一方静かな漁師町キオッジャで漁師を営むベーピ(ラデ・シェルベッジア)は30年前にユーゴスラビアからやってきた移民で、今では地元に溶け込んでいるが、どこか孤独を抱えていた。
このキオッジャの海辺の酒場オステリアにシュン・リーがやってくる。職場として。
同じ故国を離れた者同士、シュン・リーとベーピの間に次第に絆が芽生えてくる。

ストーリー上はそんなに面白い展開をするわけでもない。
ただ、1シーン1シーンがすごくいい。
静かなのに感情が溢れていて。

2013年7月28日日曜日

映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

2012年 監督:アン・リー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ラストなんだあれ?
しらけちゃったよ。
人食い島あたりから、んっ?とは思ったけどさ。
主演の青年の演技が胡散臭いのもそのためか。
あと太平洋の透明度が尋常じゃないところとか。
ほかの人はどう思っているんだろうと調べてみると、まあいろいろなんだなと思う。
それよりも何よりも、あの嫌らしく汚らしい感じさえする端役のコックがジェラール・ドパルデューだと!?
た、確かにジェラール・ドパルデューとクレジットされている。。

少年とトラの漂流物語。
漂流するまでが長い。
漂流期間は半月か一ヶ月くらいかと思っていたら227日だったのか。
トラの食料は全部魚だったのかな。

映画『ムーンライズ・キングダム』

2012年 監督:ウェス・アンダーソン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




70年代の映画のような雰囲気で始まり、あれっ、これどんな映画だったっけと前回のギンレイで見ているはずの予告編を思い出そうと努めていると、建物を縦に切ったようなセットやドリー、片側一列に並ぶ食卓とかではっと思い出した。
ああ、ウェス・アンダーソンか。

ストーリーの中核は少年と少女の恋物語だけど、『小さな恋のメロディ』とか『地下鉄のザジ』とかを合わせて攪拌して最終的にはウェス・アンダーソン色に染め上げた感じ。
なかなか面白かった。

スージー役の子(カーラ・ヘイワード)は12歳くらいなのに化粧が濃いけど、顔立ちが大人っぽいのであまり違和感が無い。
子供と大人の中間、というか12歳くらいなら子供だと思うけど、化粧の濃さによって大人方面にぐいっと引っ張られて、子供っぽさと大人っぽさが奇妙なアンバランスさで同居している。
それに加えて相手役の男の子サム(ジャレッド・ギルマン)は、見た目がまんま子供なので、二人が並ぶとまたアンバランス。
サムはいじめられっ子風の顔立ちなのに、ボーイスカウトで培ったサバイバル術と大人びた言動のギャップが凄い。
ギャップとアンバランスにまみれた魅力的な二人を中心に巻き起こる騒動が、ウェス・アンダーソンの「すかした」演出でシュールでコミカルに描かれていくから面白い。
(最後のほうに行くに従って飽和状態になってカオスになりつつもあったけど)

ウォード隊長役にエドワード・ノートン。個人的に超久しぶりに見たわ。
さえない男で不倫中の警部役にはブルース・ウィリス。不死身の男の見る影も無い。
スージーの厳格な父親役にビル・マーレイ。老けたなぁ。
絵に描いたような悪役福祉局員にティルダ・スウィントン。悪役でも上品です。
スージーの母役にフランシス・マクドーマンド。『ファーゴ』はもう15年以上前か。。

2013年7月15日月曜日

映画『ジャンゴ 繋がれざる者』

2010年 監督:クエンティン・タランティーノ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




タランティーノ製の西部劇。
ジャンゴといえばマカロニウエスタン『続・荒野の用心棒』でフランコ・ネロが演じた役柄。
以降マカロニウエスタンの代名詞のようになって、様々な亜流が作られている。
日本でも三池崇史が『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』って作ってるよね。見てないけど。(※タランティーノも出演していたらしい)

西部劇といったら大半が南北戦争後が舞台だけど、この映画は南北戦争前が舞台になっている。
場所も西部じゃなくて南部。
だからか荒野が出てこない!
は、まあいいとして、さて、ジャンゴはこの映画では黒人。
そして南北戦争前の南部なのでばりばりの奴隷制時代だ。
白人に人間扱いすらされていない黒人が「自由人」として憎き白人をばしばし撃ち殺すっていう構図がもうカタルシスの塊になっている。
そしてマカロニウエスタンへのオマージュと共にこの映画の主題になっているのがこの黒人奴隷制度で、アメリカでは今まで自国の奴隷制度を扱った映画をほとんど作っていないらしい。
アメリカ人が今まで真正面から捉えようとしなかった黒歴史を取り扱いつつエンターテインメントに仕上げてしまったのがこの映画。

上映時間165分。
でもそんなに苦ではない。
ラストがかっこいいので。

全然気づかなかったけどディカプリオの屋敷でジャンゴに名前を尋ねていた男は初代ジャンゴのフランコ・ネロだったらしい。
あと、執事スティーブン役はサミュエル・L・ジャクソンだったんだねぇ。全然気づかなかった。
『おとなのけんか』しか見たこと無いけど、クリストフ・ヴァルツはいい役者だな。

映画『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』

2011年 監督:ジョージ・クルーニー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




サイコな悪人を演じさせたら右に出るものはいないジョシュ・ハートネットのポジションを後ろから猛追して今にも奪いそうな男がいる。
その名をライアン・ゴズリング。

民主党予備選の最有力候補に躍り出たマイク・モリス(ジョージ・クルーニー)をベテラン参謀のポール・ザラ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と共に補佐する30歳の若く有能な男がいた。
その名をライアン・ゴズリング。
じゃなかった、スティーヴン・マイヤーズ(ライアン・ゴズリング)。
選挙は天下分け目のオハイオ州予備選に突入しようとしていた。
緊張と興奮に包まれてスタッフ達が懸命に仕事をこなす中、スティーヴンはインターンの若く美しいモリー(エヴァン・レイチェル・ウッド)といい仲になったりして公私共に充実していた。
(いや、ちゃんと有能に仕事をこなしているからなんも問題ないんだけど)
そんな中、スティーヴンに敵陣営からの引き抜きの話が出てきて、そこから少しずつ歯車が狂いだしていく。
そうしたらもうライアン・ゴズリングの独壇場です。

2013年6月30日日曜日

映画『レ・ミゼラブル』

2010年 監督:トム・フーパー
製作国:イギリス
at ギンレイホール




いわずと知れたヴィクトル・ユゴー原作でミュージカルとしても世界中で愛されている作品。
文化圏に住んでいる人間なら、原作やミュージカルを見ていない人でもあらすじくらいは知っていることだろう。
ちなみに僕はどんな話かも一切知らなかった。

冒頭から嵐の中巨大なガレオン船を綱で引くたくさんの囚人達が大迫力。
(※ガレオン船って言ってみたかっただけでガレオン船がどんな船なのか詳細は知らない)
冒頭もそうだけどCGで上空から地上までうねりながらカメラが降りていったり、逆に地上から上空に上がっていったりと要所要所でおおっと思うようなCG使ったカメラワークが取り入れられていて、CG映画を見る機会が少ないので新鮮だった。

レ・ミゼラブルは知らなくてもコゼットのイラストだけは見たことがあったので、あの貧しく憂いを秘めた表情の美少女をどんな子が演じるのだろう、という期待を裏切らず、ブロンドのなかなかの美少女が演じていた。
なかなかの?そこそこのかもしれないけど、とりあえず美少女には見えた。
ちょっとホラー映画に出てきそうな子だった。
イザベル・アレンという子らしい。
この少女時代はすぐ終わって、すぐ成人時代に移行するけど、成人のコゼットを演じたのがアメリカのケロンパことアマンダ・セイフライド。
まじかよ。
全然イメージと違うじゃん。
この子清純な役柄ばっか演じるけど違和感しか感じないんだよなぁ。
出演作を全部見ているわけじゃないけど、一度でも悪女とかビッチを演じたことはあるのかな。
はまりすぎて今まで必死に植えつけてきた清純イメージが一気に崩壊する様を見てみたい。

映画『塀の中のジュリアス・シーザー』

2012年 監督:パオロ・タヴィアーニ,ヴィットリオ・タヴィアーニ
製作国:イタリア
at ギンレイホール




館内が暗くなった瞬間から日ごろの疲れでうとうとしてきて、そのまま最後まで船を漕いでは起きてまた船を漕ぐを繰り返してしまった。

大半がモノクロ映像で、1960年代くらいの意欲的なインディーズ映画を見ているようだった。
刑務所の囚人達がジュリアス・シーザーのお披露目に向けてレッスンを開始するんだけど、段々役柄と現実がごっちゃになってきて、刑務所全体が舞台になったりと、稽古、本番、舞台がその境界を曖昧にしながら、ジュリアス・シーザーの話をベースにストーリーが展開していく。

いつか十分睡眠とってからもう一回見てみよう。

2013年6月16日日曜日

映画『最強のふたり』

2011年 監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
製作国:フランス
at ギンレイホール




首から下が麻痺した大富豪フィリップと、スラム出身の黒人青年ドリスの物語。
普通なら知り合うこともない二人が友情関係を育んでいく。

面白いのはドリスのフィリップに対する接し方で、相手が富豪だとか重度の障害を持つものだとか一切気にしていない。
障害者っていうと、無意識に言葉に気をつけたりして腫れ物を扱うようにしてしまうけど、ドリスの無法?ぶりを見よ。
「これは健常者用のチョコだからあげられないよ」とか、一方的にフィリップに雪をぶつけて遊んだり、髭を面白くカットして遊んだりとか。
人によっては一々傷つく人もいるかもしれないけど、フィリップにとっては普通に接してくれるのが何よりうれしい。
ドリスの言動も友達に対するただの無邪気な悪ふざけだから。

実話をもとにした話らしく、最後に本物の二人が映し出される。
ドリスの方は黒人じゃないっぽかった。

映画『恋のロンドン狂騒曲』

2010年 監督:ウディ・アレン
製作国:アメリカ/スペイン
at ギンレイホール




うーん。何も感想が無い。
予定調和なハッピーエンドじゃないところと、豪華キャストというところが楽しむポイントなのかな。
悲喜劇おりまざる人生の一こまをライトに楽しみたい人は楽しめるはず。

2013年6月2日日曜日

映画『横道世之介』

2012年 監督:沖田修一
製作国:日本
at ギンレイホール




にゃーにゃーにゃーで始まる160分。
ネタばれしてんじゃね?っていう予告編と、160分という長さから最初から心が折れていたのだけど、そこそこ面白かった。

主人公はもっと現実ばなれした変なやつなのかと思ったら、結構普通の奴で、ちょっと図々しく、そして人がいい。
懐かしい場所もいっぱい映っていて、ああ、何の責任も無い気楽な学生に戻りたいと少し思ってしまった。
浮世ばなれした祥子ちゃん(吉高由里子)が大人になったら落ち着いた雰囲気になっているのも、学生時代って若くて変で特殊だよなって思わせる。

160分だけど、全体的には駆け足な感じがする。
特に卒業後がすっ飛ばしすぎていて、学生時代あれだけ親密になったのに、卒業後に音信不通になるってどういうこと?
・・・いや、よくあるなぁ。
にしても祥子ちゃんと別れた理由とかそれなりにドラマがあったはずなのに。

一応世之介が主人公だけど、実は友人達の回想っていう視点の方がメインだったりするのかもしれない。
友人達が見た世之介なので、それは断片的な記憶になる。
そして人によって世之介像が違うかもしれないし、そもそも世之介の本当の姿を誰も知らなかったかもしれない。
回想視点と考えると、断片的な展開も納得がいく。
でも描き方として、「学生時代→その登場人物達による回想」っていう順番が基本だから、回想視点がメインじゃなくて、やっぱり世之介視点のお話に見えて駆け足感を感じてしまうのだけど。

原作は吉田修一の小説で結構有名な作品らしい。

阿久津唯役の子がなんか見たことある気がすると思っていたら、連ドラに出ていたチュルチュルさんだったんだな。朝倉あき。

映画『夢売るふたり』

2012年 監督:西川美和
製作国:日本
at ギンレイホール




女性映画監督が作る映画ってどうも苦手なことが多いのだけど、西川美和だけは面白いなぁ。
女性ならではの繊細さみたいなものが、映像のスタイリッシュさとか芸術性とか一部の天才しか向いても意味が無い無駄な方向には向かず、ちゃんと人間に向いているから。
だから登場人物の表情を捉えるのが上手い。
心の奥底や秘密が露見する時の緊張感とか静けさとか役者さんの表情とか、堪らなくいい。
例えば松たか子が振り向いたまま固まった時のクローズアップで、首からあごにかけて幾重にも現れたたるみ皺はキュートでした。

2013年5月19日日曜日

映画『アルバート氏の人生』

2011年 監督:ロドリゴ・ガルシア
製作国:アイルランド
at ギンレイホール




なによりも気になるのはペイジ役の役者は本当に女性なのかということだ。
高身長でがたいもよくイケメン風の顔立ち。
女性と言われれば確かに女性っぽい柔和な顔立ちに見えなくも無いが、女性の服を着たシーンは男が無理に女装しているようにしか見えなかった。
ジャネット・マクティア。
女性でした。失礼しました。
出演作見ると『ローズ・イン・タイドランド』で見てるな。

19世紀のアイルランドで、一人で生きていくために40年以上も男として生きていた女性の物語。

主演グレン・クローズ。
演技がうまいからかなんなのか、見てるだけで悲しくなってくる。
悲しいというか痛々しい、か。

『キッズ・オールライト』『永遠の僕たち』のミア・ワシコウスカも出ている。かわいい。

映画『ローマ法王の休日』

2011年 監督:ナンニ・モレッティ
製作国:イタリア
at ギンレイホール




久しぶりすぎて忘れていたけど、20分くらい観てやっと思い出した。
このシーンのすっ飛ばし方、おしゃべりな登場人物、ストーリー展開の無さ。
ナンニ・モレッティだね。

ローマ法王が逝去。
世界中から枢機卿が集まり次期教皇を決めるコンクラーヴェが執り行われる。
気づいたら選ばれてしまったという感じで本命達を押しのけて新法王に選ばれたのはメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)。
しかしこのメルヴィル、大勢の信者達の前での初演説の直前にプレッシャーから逃げ出してしまう。

カトリックのお偉いさん達を普通の悩めるおっさん達にまで引き下げた。
といってももともと信者でもない人たちにとっては彼らを殊更神格視しているわけでもないので、厳かな雰囲気で始まった後のギャップを見ても違和感は無いのだけど、そこはナンニ・モレッティ。
そもそも普通のおっさんといっても何も下品なおっさんにまで貶めているわけでもなく、ある程度の威厳は保ちつつ新たな解釈や視点をブラックユーモア風に盛り込んでいく。
法王選挙で誰もが「私が選ばれませんように」と切に願っていたり、枢機卿達が睡眠薬漬けだったり。
ほぼぶつ切りエピソードでなんとなく全体が紡ぎだされるナンニ・モレッティスタイルが描き出すのは、人間の優しさ、苦しさ、喜び、悲しみ、っていう等身大の人間達で、今回のこの映画ではそれをローマ法王や枢機卿達に対してやってしまった、ってところがまず面白い。
そしてナンニ・モレッティの映画には爆笑するほどの笑いも、ストーリー上盛り上がるポイントもあまりなく、テンションはほぼローレベルのまま気づいたらエンドロールを迎えるのになぜだかじんわり登場人物達が染み込んでくる、っていう不思議な面白さも健在だ。
最後のメルヴィルの吹っ切れた表情は爽やかだけど、崩れ落ちるように悲しむ信者との対比はなかなか印象深い。

ヴァチカンからクレームがきそうな感じだけど、特に何の干渉もなかったって公式ページに書いてある。
確かに別に教会を批判しているわけじゃないけどさ。権威が。。

主演はミシェル・ピッコリ。
ミシェル・ピッコリ?
ずっと日本語表記はミシェル・ピコリだと思っていた。

2013年5月6日月曜日

映画『別離』

2011年 監督:アスガー・ファルハディ
製作国:イラン
at ギンレイホール




最初の方で少し寝てしまったのをすごく後悔した。
事件が起ってからは少しも目が離せないほど面白い。
当事者達だけじゃなくて周りの家族の心情まで丹念に描かれていて、特に11歳の娘テルメーの苦しさ、悲しさ、優しさには心が痛くなる。
(テルメーが主役みたいなもんだ)
悪い人なんて一人もいない。
ラジエーのどうしようもない夫ですら信心深く妻想いの男だし。
いい人たちだらけなのに、それがなんでこんなことになっちゃったんだろうねぇ。

監督のアスガー・ファルハディは調べてみると『彼女が消えた浜辺』の人だった。
ああ、納得。
こういう日常のサスペンスを描かせたら右に出るものはいないってくらい上り詰めてほしいな。

映画『桃(タオ)さんのしあわせ』

2011年 監督:アン・ホイ
製作国:中国/香港
at ギンレイホール




最初の方久しぶりすぎて気づかなかったけど、なんか見たことあると思った主人公はアンディ・ラウだった。

少女の頃から60年間もの間メイドとして仕えていた桃(タオ)さんの物語。
そこにいるのが当たり前、世話してくれるのが当たり前のタオさん(ディニー・イップ)が、ある日脳卒中で倒れてしまう。
タオさんの大切さにいまさら気づいたロジャー(アンディ・ラウ)は、メイドを辞めて老人ホームに入ったタオさんを献身的に世話するのだった。

っていう概要だけ見ると、なんてことない話に思えるけど、登場人物達の名演も相俟ってタオさんに笑みが戻っていく過程や周囲の人物達の人物像の変化など、そういう些細な変化の一つ一つに悲しみや優しさが詰まっていて面白かった。

老人ホームって不思議なところだな。
入居の初めはこんな寂しく無機的なところで人生を終えるのかっていうなんともいえない悲しさがあるけど、仲間や知り合いが一人また一人と増えていくと、ここが第二の温かいホームになる。

プロデューサーのロジャー・リーの実体験にもとづく話らしく、この企画に賛同したアンディ・ラウはノーギャラで出演したらしい。
っていうことよりもアンディ・ラウがいつのまにか50歳過ぎているってことに驚きだ。

香港映画人がたくさん出ている。
アンソニー・ウォン、そしてサモ・ハン・キンポーにツイ・ハーク。
後、調べてみると顔は知らないけどレイモンド・チョウ(ゴールデン・ハーベスト会長)も出ていたらしい。
後、『五福星』とかに出演していたジョン・シャム!

2013年4月21日日曜日

映画『声をかくす人』

2011年 監督:ロバート・レッドフォード
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




メアリー・サラット役のロビン・ライトが誰かに似ているとずっと思っていて、今気づいた。
倍賞千恵子に似ているんだ。
だからあの達観した風の細めた目に少し嫌な感じがしたのか。

リンカーン大統領の暗殺に関わったとされる共犯者達の裁判の話。
「戦時に法は沈黙する」っていう現代アメリカにも通じそうな題材を扱っている。
でも堅っ苦しいわけじゃなくて、なぜメアリー・サラットは共犯者にされたのか?真実は?彼女の意図は?という謎、乗り気じゃなかったフレデリック・エイキン(ジェームズ・マカヴォイ)が弁護にすべてを捧げるようになっていく過程、エイキンの周りの友人たちの反応の変化、政府上層部の意図、証言者達の心変わり等々、人々の思惑が交錯変容していく様が丁寧に描かれているしエンターテインメントとして十分面白い。

サラットの娘役にエヴァン・レイチェル・ウッド。
他、トム・ウィルキンソン、ケヴィン・クラインも出演。

映画『風にそよぐ草』

2009年 監督:アラン・レネ
製作国:フランス/イタリア
at ギンレイホール




また変な映画だなぁ。
予告編見る限りつまらなそうな普通の恋愛映画に見えるけど、本編の印象は全く異なる。
何より変だ。
恐ろしいまでの心情展開の速さ。
予測不能な台詞。
ラストなんてまさかと思いつつそのまさかの展開に笑っていいのか悲しんでいいのかわからないで少し呆然としてしまった。

ともすれば観客がおいてけぼりになりそうだけど、なんだろう、このスタイリッシュさは。
必要最小限のカットと、潔く映像を放棄したナレーションで小気味よく展開していく。
かつ常に驚きに満ちているので全く飽きない。
登場人物も、
良き夫→ちょっと変かもしれないおっさん→かなりやばいストーカー→百戦錬磨の恋の達人風ダンディなおっさん→??(チャック。。。)
とか
一人身でさびしい女性→おたく達の憧れのミューズ→スペイン人かってくらい情熱的な女→??
という風に印象が目まぐるしく変わっていく。

面白かった。
これ書いていてやっと思い出したけど、監督はアラン・レネ。
若いころ『ヒロシマモナムール』の一部を見て断念したままだったので今度見てみようかな。

きれいな奥さん(アンヌ・コンシニ)が夫の想いに気づきながらも知らない振りしている姿が泣ける。
警官役にマチュー・アマルリック。
主演にサビーヌ・アゼマとアンドレ・デュソリエ。

2013年4月7日日曜日

映画『最終目的地』

2009年 監督:ジェームズ・アイヴォリー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




真田広之とシャルロット・ゲンズブールが一つのショットに一緒に収まっているなんて!
真田広之とレクターがそんなちょめちょめな関係だったなんて!

わずか1冊の著書を残して自殺した作家の伝記を書こうとしている青年が、作家の家族の公認を求めて南米ウルグアイまでやってくる。
作家の家には、作家の兄、作家の正妻、作家の愛人とその娘という奇妙な家族構成の人たちが住んでいた。
彼らをつなぐ存在であった作家がいなくなった今、それぞれがどこか宙ぶらりんのような感覚で日々を過ごしていたが、突然やってきた青年をきっかけに少しずつ変化が訪れる。

静かで穏やかな時間が流れる瞬間が心地いい。
キャストもいいし面白かった。

映画『人生の特等席』

2012年 監督:ロバート・ロレンツ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




途中でちょっとあくび出てきたけど、頑固親父がよく似合ういくつになっても渋いクリント・イーストウッドを見てるだけでも面白いし、ストーリーもここまでできすぎた展開すると却ってすんなり受け入れられるもんだ。

イーストウッドの娘役に エイミー・アダムス。
エイミー・アダムスにちょっかい出してくる若者にジャスティン・ティンバーレイク。
実年齢はエイミー・アダムスが7歳くらい年上だな。

監督のロバート・ロレンツは長年イーストウッド映画の助監督や製作総指揮をやっていた人らしい。

2013年3月19日火曜日

映画『思秋期』

2010年 監督:パディ・コンシダイン
製作国:イギリス
at ギンレイホール




衝動的な怒りを抑えきれずに暴力沙汰ばかりを起こしているおっさんと、チャリティショップを経営するクリスチャンの女性の物語。
おっさんジョセフ(ピーター・ミュラン)は怒りの衝動を抑えられない自分にすごく嫌悪している。
嫌悪しているけどどうすることもできずに酒を飲んでまた暴れる、の繰り返し。
家族も誰もいなくなり孤独なジョセフは、ある日バーでひと悶着起こした後、怒りの衝動と自分への苛立ちを体いっぱいに湛えながら近くにあったチャリティショップに逃げ込む。
店にいたハンナ(オリヴィア・コールマン)はそんな彼に優しく声をかける。

真面目に精一杯生きているんだけどなんか人生がうまくいかない、っていう不器用物は全般的に好き。
この映画もなかなか面白かった。
登場人物はどいつもこいつも悲しいくらい不器用な奴しか出てこないし。

ピーター・ミュランが渋い。
破壊的な危険さと優しさ、臆病さを同時にすんなり表現するから引き込まれる。

映画『ミラノ、愛に生きる』

2009年 監督:ルカ・グァダニーノ
製作国:イタリア
at ギンレイホール




1960年前後の映画のようなタイトルクレジットとともに、どこかの上流階級のお屋敷で始まろうとしているパーティの様子が描かれる。
何人もいるお手伝いさんが次々に料理を運んでいく。
なんだけど、流れる音楽がどこか不穏で、何か陰惨な事件でも起きそうな感じ。
運ばれる料理とかタルトに毒が混入されているとか。
で、結局何もおきない。。

音楽の使い方が本当面白い。
微妙にアンマッチだったり、わざとらしいくらいに大仰だったり。
どっちにしても映像が音楽によって変容していくような音楽の使い方って相当センスが無いとできないはずなのに、どのシーンもさらっとやってのけているから凄い。
映像と音楽が崩壊しない程度に不安定なぎりぎりのところでバランスを取るっていうセンス。
映像もまた面白く、何この不安定なショットは?に始まり、何この変な間は?何この変なクローズアップは?何この変というか古いラブシーンは?何この展開!?と常にこちらを楽しませてくれる。
・・こう書くと変な映画みたいな感じだが、変な映画というわけじゃない。いや、変なことは変なんだけど、なんていえばいいかと考えながら予告編を見たら雑誌社のコメントの中でぴったりな言葉があった。
"エレガント"
変な何々がたくさんあっても全ては何故か"エレガント"に昇華されるわけです。
まったく不思議な映画だ。

予告編を見なかったのでどんな話かも知らず、タイトルからして恋愛物かなとは思っても、まさかお母さんの方とは思わなかった。

ラストシーンは呆気にとられながらも思わず泣いてしまった。
抱き合うシーンは『鍵泥棒のメソッド』だと単なるあまり面白くもないユーモアだったけど、この映画だとひどく感動的だった。

2013年2月24日日曜日

映画『ロック・オブ・エイジズ』

2012年 監督:アダム・シャンクマン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




長距離バスの乗客が次々に歌いだすオープニングはにやっとするくらい楽しい。
でも終始音楽みたいな状態なのでだんだん疲れてきた。

大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
懐かしの80年代ロックが満載。
ストーリーは忘れた。
爽やかなサクセスストーリーだったと思う。
皆歌が上手い。

映画『リンカーン弁護士』

2011年 監督:ブラッド・ファーマン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




やり手らしいが金に汚そうな弁護士ミック・ハラー(マシュー・マコノヒー)。
ある日金持ちの御曹司ルイスが女性を殴打して重傷を負わせた事件の弁護の依頼が来る。
簡単な司法取引で高額の報酬というおいしい話。
しかしこの事件には大きな裏があり、ミックは次第に追い込まれていく。

マシュー・マコノヒーが『評決のとき』以来の法廷に帰ってきた。
ミックは最初はいやな感じの弁護士役なのかと思っていたら、正義感というかしっかりとした信念を持って弁護をしている男で、じわじわと魅力が増してくる。
そうなるとマシュー・マコノヒーの円熟した色気が猛威をふるってマシュー・マコノヒーファンの全国のおばさん達は歓喜のうちに失神していったに違いない。

ウィリアム・H・メイシーのロン毛ヒッピースタイルは強烈だった。

2013年2月11日月曜日

映画『苦役列車』

2012年 監督:山下敦弘
製作国:日本
at ギンレイホール




原作未読で予告編も見ていないからどんな話かも知らずに鑑賞開始。
オープニングは1980年代のドラマのような懐かしい雰囲気。
しかもオープニングで風俗店から出てきた若者のファッションがださい、というか80年代っぽい。
どうも時代設定は80年代っぽく、後で何年生まれかの話が出てきてそこから逆算すると1986年という設定らしい。

19歳で中卒の北町貫多(森山未來)は日雇いの仕事で生計を立てている。
得た金は酒代と風俗代に消えていき、家賃は何ヶ月も滞納している。
ある日、日雇いの仕事場に田舎から出てきた専門学校生日下部正二(高良健吾)がやってきて、同い年ということもあり、二人は意気投合して友達になる。
青春を無為に過ごしてきた貫多が青春っぽい人生を謳歌し始めるのだったが。。

なかなか面白かった。
森山未來について以前「かっこつけ走りだけで後数年食いつないだ後は消えていくだろう」みたいなことを書いた気がするけど、謝りたい、すいません。
森山未來のあの目を見よ。
どっからどうみても変質者だ。
ブリーフ一枚で狂ったように走る彼を今すぐ逮捕しろ。
イケメンぶった役しかやらないと思っていたのに、なかなかやるじゃないか。

前田敦子も出演している。
R15+指定の映画だけあって、変質者森山未來にべろんと舐められている。
この配役だけどもっと別な子の方がよかったな。
彼女じゃ主人公が一目ぼれするほど可愛くないんだもん。
橋本愛じゃ古書店に似合わないし。。あ、川口春奈あたりなんかどうだろう。
でもなぁ、役どころとしては「もしかしたらちょっと可愛いかも」くらいが現実的でよかったかのかな。
それでも前田敦子には少し違和感。

高良健吾が演じた正二は貧乏学生のようでいて「JUNKO KOSHINO」とプリントされたニットを着ていたりするから実はなんか裏があるのかと思ったら何もなかった。
金がなくてもおしゃれに金を使うのは厭わない正二ってことか。
・・・よく知らないけどJUNKO KOSHINOはそんなに高くないのかな。それと当時それがおしゃれだったのかどうかも知らないが。


NHKで出だしからかます西村賢太



映画『鍵泥棒のメソッド』

2012年 監督:内田けんじ
製作国:日本
at ギンレイホール




殺し屋と自殺しようとしていた役者志望の男の人生が銭湯で入れ替わる。
記憶をなくした殺し屋はそのまま貧乏な役者人生を歩み始め、役者志望の男は殺し屋の持つ大金を使って人生の清算(精算)を始める。
そこに殺し屋に殺しを依頼していたやくざが接触してきたり、婚活中の雑誌編集長が絡んできて、ストーリーは笑いながらめまぐるしく展開していく。
脚本が面白い。

情けない顔をさせたら日本一の堺雅人と、いつのまにかメジャー俳優になっていた香川照之と、肩書きを女優にしたさそうな広末涼子が主演。
広末はどうもスクリーンに映るとあの平べったい顔のせいか、するっと上滑りしていくような感じになるので、映画には合ってない気がする。
荒川良々は何の威圧感もなかったけど面白かったからいい。

監督は『運命じゃない人』の内田けんじ。

2013年1月14日月曜日

大雪につき

3連休もくそもなくて仕事だったので出勤。
今回のギンレイのプログラムは見送りかなと諦めていたけど、雪がどんどん積もり始めたから早々に解散となる。
せっかくきたからとりあえず14時くらいまで仕事したあと、ギンレイホールに映画を見に行く。
電車は普通に動いていた。
今回の映画は二本とも面白かったから見逃さないでよかったわ~。

映画『星の旅人たち』

2010年 監督:エミリオ・エステヴェス
製作国:アメリカ/スペイン
at ギンレイホール




ゴルフ満喫中の眼科医トム(マーティン・シーン)のもとに、一人息子のダニエル(エミリオ・エステヴェス)が死亡したという知らせが入る。
息子は聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅に出発した矢先に嵐に巻き込まれる事故にあっていた。
遺体の確認にフランスとスペインの国境の町までやって来たトムは、息子が果たせなかった巡礼の旅を息子の遺灰とともに歩くことを決意する。

一人息子とは決して仲が悪かったわけでもないが、よかったわけでもない。
自分の言うことをきかずに気ままに自分の人生を生きる息子とはしょちゅう軽い小競り合いをしていた。
なによりも大切だった一人息子が何を考え、巡礼の旅に何を求めていたのか?
トムにとっての巡礼の旅は、親子の対話の旅であったが、期せずして喪失から立ち直る旅にもなった。
その辺の描き方のさりげなさ、心境の変化が上手くて面白い。

トムはどちらかというと堅物なじいさんで、元々巡礼がしたくてやってきたわけじゃないからとにかく人を寄せ付けないし、巡礼の旅を楽しもうという気持ちも無い。
それでも個性的なはみ出し者が一人また一人とトムの周りに集まってくる。

"個性的なはみ出し者"と書いたけど、アイルランド人ジャック(ジェームズ・ネスビット)の登場シーンにはちょっと辟易した。
キャラ付けがオーバーすぎて、こんな感じであざとい登場人物がたくさん出てきたらどうしようかと思ったけど、ジャックは出会いの時が嘘のようにおとなしくなるし、ジャックが最後の旅仲間なのでとりあえずよかった。

エミリオ・エステヴェスは一人息子ダニエルとしても出演しているので、マーティン・シーンと本物の親子で親子役共演。

映画『キリマンジャロの雪』

2011年 監督:ロベール・ゲディギャン
製作国:フランス
at ギンレイホール




ヘミングウェイの短編とは関係なく、題名はフランスで1966年にヒットしたシャンソンの曲名から取ったらしい。
マルセイユに暮らすミシェル(ジャン=ピエール・ダルッサン)が勤める会社では20人の人員削減が行われようとしていた。
労働組合の委員長でもあるミシェルは、公平を期すためリストラする人をくじで決めたが、くじの中には自分の名前も入れており、ミシェルも20人の1人になってしまう。
リストラされた夫ミシェルを優しく迎える妻マリ=クレール(アリアンヌ・アスカリッド)。
そんな中、結婚30周年のパーティが子供たちや友人たちにより盛大に催され、アフリカキリマンジャロへの旅行券がプレゼントされる。
仕事はなくなっちゃったけど暫くは夫婦水入らずで過ごそう、みたいな幸せムードから一転、突然押し入った強盗が幸せをあっさり奪っていく。

偽善的と言われてもおかしくないほど人のいいミシェルとマリ=クレール。
マイク・リーの『家族の庭』では、同じく偽善的な夫婦が無意識に(あるいは偽善者の自己愛の結果)周囲の仲間たちをみじめな姿に追いやる様を残酷なタッチで描いていたけど、この映画の偽善者像はまたちょっと違う。
まず、夫婦が行う偽善行為はストーリー上はっきりと非難、否定される。
夫婦は葛藤する。
不合理に幸せを奪っていかれた憎しみを忘れないのか、優しさを取るのか。
夫婦がそれぞれ出した結論は偽善的で自己満足とも言えるが、なんだろう、この温かさは。
それに、あんなに犯人を憎んでいた妹夫婦にまでその大きな愛情を伝播させてしまうとは。
見終わって優しい気分になった。

ああ、なんかこれだけ書いたらこの映画も『家族の庭』も偽善者を描いた映画みたいに思えちゃうけど、そういうわけじゃないから。
この映画に関しては、労働者階級の貧困とか力強さとか、階級闘争世代と若者世代の認識の断絶とか、夫婦愛とか、妬みとか、いろんな正と負の要素がマルセイユの景観の中さりげなく組み込まれていて、それらが最後は大きな愛みたいなものに包まれて見事に昇華して温かい気分になる、っていう映画かな。

結婚30周年パーティでブロンディの曲で若者達が踊っているのを見て、一瞬時代設定は2,30年前なのかと思ったけど、一応設定は現代らしい。
ちなみに曲名忘れたから調べたら「ハート・オブ・グラス」(1979)だった。

主人公のミシェルを演じた役者さんが凄く馴染みのある顔で、何の映画に出ていたんだっけと考えても思い出せず、仕舞いには知り合いに似てるのかと思ったりもしたけど、帰って調べたらついこないだ見た『ル・アーヴルの靴みがき』にも警視役で出ていた人だった。
ジャン=ピエール・ダルッサン。
『画家と庭師とカンパーニュ』とか『サン・ジャックへの道』とか、面白かった映画にばっかり出ている。

2013年1月3日木曜日

映画『桐島、部活やめるってよ』

2012年 監督:吉田大八
製作国:日本
at ギンレイホール




テレビでCMがんがん流れていたからエンターテインメント性の強い映画なんだと思っていたけど、単館上映でひっそり公開してそうな映画だった。
朝井リョウのベストセラーの映画化ってことで宣伝に力入れていたのかな。
原作未読。

成績優秀でバレー部のキャプテンで、彼女は校内一の美人(らしい)、という学園の中心的存在の桐島が突然部活を辞めた。
辞めた理由は誰も知らない。
桐島を拠り所としていたバレー部やクラスの"イケてる"グループに走った衝撃は、桐島なんかと無縁だった他の生徒達にも波及していく。

生徒達の会話や空気感が非常にリアルで面白い。
学園ものの映画は多々あれど、生徒たちの会話にリアルを感じたのは中原俊の『櫻の園』以来だ。

週間少年マガジンに連載している『我妻さんは俺のヨメ』で、イケてる層、大丈夫層、イケてない層のピラミッド型ヒエラルキー図が出てきて、その時はあまり自分の高校生活と照らし合わせて実感がなかったけど、この映画見ていたら確かに"イケてる"グループみたいなものがあったような気がしてきた。
さすがに"イケてる"グループが"イケてない"グループを存在自体否定するように小ばかにするようなことはなかったとは思うけど、僕は授業はぎりぎりまでさぼってクラスにほとんどいなかったので実際はどうだったのかは分からない。
「おっまた~」みたいなくだりが気づいていないだけで、イケてない僕の身にも起きていたのかもしれない。
ああ、恐ろしいね~。

イケてないグループの映画部部長は、それなりに整った顔してるよなぁ、と思ったら神木隆之介だったんだね。
大きくなったもんだ。

イケメン菊池を演じた東出昌大は撮影当時23歳。

有望そうな若手が多く出演している中、前野朋哉を抑えて存在感を一番発揮していたのが橋本愛。
この子缶コーヒーのCMに出ていた子だよな。(このCMは暫く前田敦子だと思っていた)
かわいいとか美人っていうより、神秘的と言ったほうがいくらかしっくりくる不思議な顔立ちと存在感。
校内一の美人役の子とか、イケメン菊池の彼女役の子とか、橋本愛と並ぶと低級な庶民に見えてくる。
クレオパトラとかこんな顔してたんじゃないだろうか。
好きな顔立ちじゃないけど、今後が楽しみだな。
それにしても前田敦子の女優の道は橋本愛によりつぶされたと思って差し支えないと思う。

映画『テルマエ・ロマエ』

2012年 監督:武内英樹
製作国:日本
at ギンレイホール




初め30分くらいは超面白かったけど途中からなんか少し飽きてきた。
そりゃあずっとどたばたやっていたら疲れちゃうから次第にストーリーにシフトしていくのは当たり前の流れだけど、ストーリーがそれほど面白くない。
温泉宿のおっさん連中が出てきてからはあざとさも気になってくる。
広大なローマとせまっくるしい日本の対比も面白いし、日本のおじいちゃん達も面白かったんだけど、なんか惜しい感じ。
シリーズのドラマにしてゆったりやれば面白くなりそう。

監督の武内英樹はのだめドラマの演出家やっていた人らしい。
ああ、そうそう、このノリはまさにのだめじゃん。

ローマのシーンはCGじゃなくてセットに見えたけどどうなんだろうと思ったらやっぱりセットだった。
海外ドラマ『ROME[ローマ]』のセットを借りたらしい。

2013年1月2日水曜日

TVM『サンゴ礁伝説 青い海のエルフィ』

1986年 監督:黒田昌郎
製作国:日本
TOKYO MX録画




「サンゴしょう伝説 青い海のエルフィ」と汚い字で書いた紙の切れ端を勉強机にセロテープで貼り付けていて、結局勉強机を処分するまでの10数年の間確か貼りっぱなしだったと思う。
なんでそんなもの貼り付けていたかというと、小学生の頃テレビで見たこのアニメに号泣し、次放送したら絶対ビデオに録画しようと思っていたから。
(この紙があったからふしぎの海のナディアが始まったときも間違って見ることはなかった)

新聞取っていないので普段めったにテレビ番組表を見ることはないのだけど、12/30に寝る前になにげなくネットで番組表を見たら『サンゴ礁伝説 青い海のエルフィ』の文字が見えて慌てて録画した。
偶然ってあるものだ。

ラストは覚えていたけど、細かいところは全く記憶に無く、始めて見る様な感覚で鑑賞。
いやぁ、いい作品だな。
ラストが普通のハッピーエンドだったら全てが記憶の彼方に飛んでいただろう。
そういえば、小学生の頃から高校生くらいまで僕は普通の職業に付く気がなかった。
建設系の仕事はもとより、経済に関わる仕事も含めて、とにかく人類の発展に少しでも繋がるような仕事はしたくなかったから。
このコンクリートのジャングルにどうやったら自然を取り戻せるのだろうと小学生の時まじめに考えていたからな。
そんな考えをしていたのも、そのルーツはこのアニメを見たからじゃないかと思えてきた。
さらなる豊かさを求めて海底でちょっと土木工事をしただけで「海を荒らした」って事になるんだから。
「人類の発展=自然破壊」なんだから、人類はもう発展をやめて現状維持、いや最早現状維持でも自然は破壊されていくからとりあえず退化しとこうぜ。

映画なのかと思っていたら、日本電信電話の冠スポンサー枠として放送された単発のスペシャルアニメだったらしい。
エルフィのキャラクタがナウシカと被るのだけど、さらにエルフィの声はナウシカと同じ島本須美さん。
アルカスの声は城みちる。
城みちるの再デビュー作品として話題になったらしい。
イルカにのった少年はアニメの中でイルカと戯れていました。