2018年12月23日日曜日

映画『レディ・バード』

2017年 監督:グレタ・ガーウィグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




アメリカの高校生くらいの少女の等身大の姿を描く、っていう映画は腐るほどあって、大体が口悪くてプライド高くてくそ生意気なのであまり好きなジャンルじゃないのだけど、さっき見たジェイソン・ライトマン監督が撮った『JUNO/ジュノ』とか意外に面白かったりするのもあるので、どんなもんだろうと見てみると、これがなかなか面白かった。

カリフォルニア州サクラメント。
自称レディ・バードと名乗る17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)はサクラメントが大嫌いだった。
そして何かと口うるさい母親も嫌い。
バークレーを卒業した養子の兄は現在スーパーでレジ打ちをし、その彼女もなぜか実家で同居している。
あまり裕福でないが(後に父親は失業)、地元の公立高校の治安が悪いので少し高めの市立のカトリック系の高校に通わせてもらっている。
そんなクリスティンはサクラメントを出てNYの大学への進学を夢見ている。
母は猛反対。
背景としてはそんな感じで、少女の成長と母娘の物語になっている。

クリスティンはスクールカーストでいうと中の下くらいの位置にいるのね。
親友のふくよかなジュリーとは仲良しだけど、できれば上位の人たちの仲間になりたいとも思っている。
裕福でない家とか、高齢の父とか、平凡な名前とか、あらゆることにコンプレックスをいだきながらも、恋に憧れNYに憧れ、今を生きている。

主演のシアーシャ・ローナンが魅力的で、あの独特な顔立ちに惹きつけられる。
演じた役も個性的ながら女性なら特に共感しそうな面が散りばめられていて面白い。

ラストシーンいいよね。
化粧もくずれていて。
家族、っていうものに胸が温かくなる。

映画『タリーと私の秘密の時間』

2018年 監督:ジェイソン・ライトマン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





二人の子供を生み、三人目を妊娠中のマーロ(シャーリーズ・セロン)。
長男は少し情緒が不安定でしょっちゅう学校に呼び出される中で3人目の出産。
子供二人の面倒と家事をこなして、かつ昼夜問わない授乳、で疲れ果てているときに、校長から遂には長男の転校をやんわり勧められる。
で、ナイトシッターを雇う。
やってきたのは若く自由があり未来への希望に溢れているタリー(マッケンジー・デイヴィス)という女性。
マーロはタリーが若いのに不安を感じるが、タリーは超完璧なシッターだった。
心に余裕ができるマーロ。
中盤まではそんな話。
ラストの展開は、なにこれ、怖って思う。サスペンス??

結婚して子供に恵まれて夢を掴んだ。でも自由はなくなった。
これが幸せか。
マーロは特に責めないが、夫は自分は乳出ないし何もできない、と言いながらゲームに勤しむ。
アメリカじゃ生後間もなくても普通にベビーシッターに預けて夫婦で出かけたりもするそうだ。
でもマーロは他人に預けるなんて、と全部自分一人でやろうとする。
(この大変さを見ていると家電もない時代の女性はすごいなぁ)
最後は存在感の薄い夫ドリュー(ロン・リヴィングストン)がキーになっていると思うが、で、結局幸せなハッピーエンドなの?
家族の絆を国家の礎にしてきたアメリカも今やシングルマザーだらけだし、アメリカ人はすぐ自由自由っていうし、なんかいろいろ破綻しているよな。

2018年12月9日日曜日

映画『ワンダー 君は太陽』

2017年 監督:スティーヴン・チョボスキー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




遺伝子の疾患で生まれたときから何度も整形手術を行っている10歳の少年オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)。
顔がモンスターのようなので自宅学習で過ごしてきたが、母イザベル(ジュリア・ロバーツ)は5年の新学期からオギーを学校に通わせることを決心する。
こんな顔の学友を10歳の少年たちが放って置く訳がない。
当然いじめられる。
ただし経緯はどうあれよき理解者、友人が現れ、次第に、、っていう。

なんか本当アメリカ人が好きそうな話だ。
私達は差別をしません。
重要なのは外見じゃありません。
私達は個性を尊重し、人の内面を見ます。
これでもしオギーの内面が普通の子だったらいじめはなくならかったのだろうな。

ああ、別につまらなかったわけではないのだけど。
主役はオギーだけど、途中章ごとに脇役の視点に切り替わる時があって、小説とかではそういうのよくあるけど映画ではそれほど多くないのでそこは面白かった。

映画『悲しみに、こんにちは』

2017年 監督:カルラ・シモン
製作国:スペイン
at ギンレイホール




予告編見た記憶もなく、1mmも期待しないまま見たのだけど、ここ数年でNo.1にしたいくらいよかった。

バルセロナに住む両親を亡くした6歳の少女フリダ(ライア・アルティガス)が、カタルーニャ(田舎)に住む叔父夫婦の家に引き取られる。
叔父夫婦とその3,4歳くらいの幼い娘アナ(パウラ・ロブレス)の3人家族はフリダを快く受け入れる。
ストーリーとしてはこれだけ。

叔父夫婦はすごくいい人達で、アナはお姉さんが出来たと喜ぶ。
フリダもすぐに家族に打ち解けているように見えるが、それほど素直にはいかない。
フリダを快く受け入れた、とはいえ、やはり自分たちの娘が誰よりも可愛い。
ましてや主に面倒を見る母親はフリダとは血のつながりはない。
いい人たちとはいえ、愛情に飢えたフリダはそういう微妙な機微を感じ取る。
反抗、嫉妬、猜疑心、そして喜び。
そういう感情が豊かな自然の穏やかな日常の中で漣のようにゆらめく様がどんな凝ったストーリーよりも動的で美しい。

自分が心配されていることを知ったフリダは翌日のお祭りで先頭をきって旗を持って元気にスキップする。
この時の無邪気な笑顔見たときに涙が溢れて、さらにはラストシーンでは久しぶりに大泣きしてしまった。
家族になれた瞬間と母の死を受け入れた瞬間。
映画史に残るラストシーン。

子役ってこまっしゃくれたガキが芸達者に演技して大人たちがよくできましたね~と思考停止した気持ち悪い笑顔で褒め称えるだけの存在だから基本的に嫌いで映画には邪魔だと思っているんだけど、子役に演技させない映画っていうのもあって(ジャン・ルノワールの『河』とかビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』とか)、これはどちらかというと演技させない方。
アナの「フリダ、遊んで」の可愛らしさは異常だし、アナとフリダの無邪気な笑顔は素、のはず。
アナはほぼ素で、フリダは主役ゆえに結構演技しているはずだけど(特にラストシーン)、子役嫌いの僕が何も違和感感じずに見たので監督なのかフリダ役のライア・アルティガスなのか、とにかく凄い。

にしてもこの邦題、サガンか斉藤由貴か安全地帯かと間違える。
原題は『ESTIU 1993』で英題は『SUMMER 1993』。
『SUMMER 1993』の方が無味シンプルでこの映画の表題としてはいいのにな。

最後に谷川俊太郎のレビューコメント
少女フリダの愛くるしい顔と無言の行動にひそむ、
苦しく悲しい孤独・・・
涙はフリダを解放しただろうか?

2018年11月25日日曜日

映画『30年後の同窓会』

2017年 監督:リチャード・リンクレイター
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




妻をなくし、息子もなくした“ドク”(スティーヴ・カレル)はかつてのベトナム戦争の仲間を訪ねる。
寂れたバーを営むサル(ブライアン・クランストン)。
牧師になったミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)。
息子の軍葬に立ち会うべく3人は目的地へと向かうのだが、、

ドク達は30年も会っていないものの、サルの凄まじいキャクターによってか次第に昔のノリになっていく。
3人の漫才のようなかけあい、特に喋り続けるサルの陽気さ素直さが場を明るくするが、その裏には過去や現在の悲しみも漂っている。
あくまでアメリカ視点だけど、一応反戦映画にもなっているのかな。
戦争で心の傷を負った(だろう)男たちの再生のロードムービー。

バカ騒ぎ部分だけど、実はそんなに面白いわけじゃなく、列車の貨物倉庫での会話とか何がそんなに面白いのかわからず、ああ、何一つ面白くなくても馬鹿笑いできる時代っていうのはあるよね~としらーっと見ていた。

ちなみにいつの時代設定なんだろうと思ったら2003年らしい。
何十年後かに2017年の携帯はあんなんだったのねと思われるかもしれない。

映画『さよなら、僕のマンハッタン』

2017年 監督:マーク・ウェブ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





アッパー・ウエストサイドのある実家を離れてロウワー・イーストサイド(アッパーからロウワーというのがポイントらしい)で一人暮らしを始めたトーマス(カラム・ターナー)。
恋人ミミ(カーシー・クレモンズ)とは恋人なのかどうかも微妙な関係を過ごす。
ある日隣に越してきた変なおっさんW.F(ジェフ・ブリッジス)と知り合い、いろいろと人生のアドバイスを聞くようになる。
そしてまたある日、ミミとでかけたナイトクラブで父イーサン(ピアース・ブロスナン)が若い?女ジョハンナ(ケイト・ベッキンセイル)と逢引しているところを目撃する。
そんなこんなでなんかいろんな人生模様や隠された人間関係等々現れてきていい感じに終わる。

88分だったのか。
まあ楽しめるけど短いからか1日くらいでだいぶ内容忘れてしまった。

ジェフ・ブリッジスは大分痩せたのかな。

2018年11月11日日曜日

映画『モリーズ・ゲーム』

2017年 監督:アーロン・ソーキン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





若くしてセレブ御用達の高額ポーカー経営者になり、そしてFBIに踏み込まれて財産を全額没収されたモリー(ジェシカ・チャステイン)の物語。
実在の人物で2014年に書かれた本人の回顧録をもとに、脚本家のアーロン・ソーキンが脚色および監督を務めている。

なんかずっとスクリーン下部の字幕を追っていた気がするが140分あるもののなかなか面白かった。

理不尽な暴力ってなにがなんでも復讐してやろうという気になるけど、自分に落ち度があったからと納得したのか現実的な復讐の難しさから諦めたのか 聖人君子のように達観して受け入れている様は、できる人はどこか違うなと思わせる。

原作では結構な人数の実名が出ているらしく、プレイヤーXは原作からの何人かの合成キャラらしいが、ベースはトビー・マグワイアらしい。

映画『ファントム・スレッド』

2017年 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




1950年代のロンドンでファンション界の中心にいる天才仕立て屋のレイノルズ(ダニエル・デイ=ルイス)。
神経質なレイノルズとそんな彼が服のことだけに集中できるように最大限に注意を払う姉シリル(レスリー・マンヴィル)。
ある日レイノルズはモデルとして理想的な体をした女性アルマ(ヴィッキー・クリープス)を見つける。
親子ほども年の差があるが二人は惹かれ合い、レイノルズはアルマをミューズとして迎え入れる。
しかしレイノルズとシリル、そしてアルマの3人の生活は次第にほころびを見せ始め。。

華やかな衣装、建物、階段、ドア、演技、情緒的な音楽、音楽、音楽。。。
見どころは多々ある気がするが、このひっきりなしに流れる音楽がうるせーなと思っているうちに寝てしまった。
130分は長い。

2018年10月28日日曜日

映画『リメンバー・ミー』

2017年 監督:リー・アンクリッチ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




同時上映の『アナと雪の女王/家族の思い出』から。

アナ雪みていないし、というかそういえばピクサー作品ってこれが初鑑賞だな。
めっちゃアメリカ!って感じだ。
キャラクターの顔もリアクションも笑いも。
鼻が人参に見える変な生き物がいるなと思ったらこいつが一応この話の主役っぽい。
人参に見えるのはやっぱり人参で、雪だるまの妖精だかおばけだかホムンクルスだか使い魔だか式神だかなのだろう。
アナ雪本編を見ていれば面白く見れたのだろうか。

で、『リメンバー・ミー』。

メキシコが舞台で、メキシコの死者の日に死者の国に迷い込んでしまった少年の話。
めっちゃアメリカ!って感じだ。メキシコだけど。

緻密によく動くなぁ。
水とかどうやって撮ってるんだろう。

最後の意外な事実にはシンプルながら上手いと言いたくなる。子供も大人も楽しめるんじゃないかと思う。
ただ、俺はもう好んでピクサー映画を見ることはないだろうなとは思った。

映画『犬ヶ島』

2018年 監督:ウェス・アンダーソン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





ウェス・アンダーソンが『ファンタスティック Mr.FOX 』に続いて撮った2作目のストップモーションアニメ。
ストップモーションアニメが本来持つ不気味さと海外からみたオリエンタルな日本とウェス・アンダーソンが嫌にマッチしている。
主人公のアタリ少年の声なんか特に不気味だよなぁ。演じたコーユー・ランキンはカナダ人と日本人のハーフの少年らしい。
ぬるぬる動いて特に口の動きなんかすごい。

途中で寝不足によりうとうとしてしまったがまあ面白かった。

声優陣が声だけでほとんど気づかなかったけど豪華。
エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、フランシス・マクドーマンド、ハーヴェイ・カイテル、渡辺謙、オノ・ヨーコ、村上虹郎、野田洋次郎、夏木マリ、山田孝之、松田翔太、松田龍平、etc..

2018年10月14日日曜日

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

2017年 監督:ジョー・ライト
製作国:イギリス
at ギンレイホール




1940年、チャーチルが首相に就任してからほんの数ヶ月の話。
派遣した軍はドイツ軍によりダンケルクに追い込まれ、党内ではドイツと和平交渉を開始するべきという意見が多数を占める中、チャーチルの苦悩と決断が描かれる。

嫌われ者で英雄、政治家、軍人として有能なのか無能なのかよくわからない、というチャーチルの人物像が映画のキャラクターとして面白い。
演説で人々の士気を高めて同一意思で団結させる能力はリーダーとしては有能なんだろう。
ヒトラーもそうだけど。

地下鉄のシーンなんか、実際本土が攻撃されていないときならなんとでも言えるよなぁと思った。
チャーチルの決断が正しかったか間違っていたかは結果論でしかなくて、逆の結果なら「イギリスという国を終焉させた男」という邦題になったのだろうか。

秘書役のリリー・ジェームズの美しさとあふれる気品が尋常じゃない。他の作品も見てみたい!

映画『女は二度決断する』

2017年 監督:ファティ・アキン
製作国:ドイツ
at ギンレイホール




爆弾テロで突然夫と幼い息子を同時に失った母親の物語。

移民問題、極右等、ドイツの社会的な背景を浮き彫りにすつというよりかは、ひたすらカティヤ(ダイアン・クルーガー)の悲しみ、怒り、憎悪を追っていくという感じ。
ダイアン・クルーガーありきでその熱演には見とれる。
にしてもこの裁判、いろいろ無能すぎないか。
疑わしきは罰せずって0.1%でもなんか怪しい点があれば無罪にする気か。偽証は疑わないくせに。
というので最後の展開も含めてなんかすっきりしない。

2018年9月30日日曜日

映画『君の名前で僕を呼んで』

2017年 監督:ルカ・グァダニーノ
製作国:イタリア/フランス/ブラジル/アメリカ
at ギンレイホール





ハエの映画。と思うくらい最後ハエが全部持っていった。
避暑地だから虫が多いのは分かるが、カットしなかったのは演技がよかったか、それとも死のイメージを付けるためか。

北イタリアの避暑地で夏季休暇を過ごす17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)。
大学教授の父の助手としてアメリカから24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)がやってくる。
自信家で社交的なオリヴァーに反発しながらもエリオはオリヴァーから目を離せなくなる。

昔のフランス映画みたいな話を今やるか。
父親のあの進歩的な理解は、、なるほどそういうことか。

つまらなくはなかったけど132分は長い。1回時計を見てしまった。

映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

2017年 監督:ショーン・ベイカー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




あたしジャンシー。そういえば子供の頃一緒に遊んでいたムーニーって子がいたわ。
ムーニーのお母さんも優しい人だった記憶があるけど、今思うと私の家以上に困窮していて、そしてお母さんはとんでもないビッチだったと思うの。
でも本当のビッチに成り下がったのは生きるのに必死だったからだと思うの。

予告編を見た印象だと、あまり裕福そうではないけど生活はできるレベルの家庭の子どもたちがクソガキぶりを発揮してそれを面白おかしく描いているだけの映画かと思った。
冒頭のムーニーとスクーティが地べたに座って、ムーニーが投げ出した足先の靴をパタンパタンと打ち付ける音が心地よく、思っていたのと違うかもと思う。
その後の唾飛ばしゲームのクソガキとかいうレベルを通り越した行動と態度に唖然とするともうこの映画にはまっているかもしれない。

フロリダのディズニーワールドのすぐ側にある安モーテル群の一角が舞台になっている。
アパートに住む余裕のない人達は安モーテルに住むらしい。
この安モーテルで生活するシングルマザーのヘイリー(ブリア・ヴィネイト)と娘ムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)を中心に物語が進む。
ヘイリーは理不尽な要求を突っぱねてから、詐欺まがい(窃盗含む)の押し売りで少しの金を得る生活。
モーテル代を滞納しても支配人のボビー(ウィレム・デフォー)に汚い悪態を付くような母親を見ているのでムーニーの言葉遣いも最悪。でもかわいい。
基本毎日だらだらしているヘイリーを見ながらムーニーは自由に遊びまくる。

支配人のボビーは、悩みの種でもあるヘイリーに対して支配人としてお責務を行使しながらもどこかこの親子を心配して気にかけている。
モーテルの住人の安全を守るのはもちろん、彼らの生活や将来も心配しているといういいおっさん。
演じるウィレム・デフォーのこわもての渋さがまたいいんだな。

かつて藤原新也がディズニーワールドを「幼児回帰症候群患者」の「一種の野天の巨大な精神病院」と称したのを思い出す。(藤原新也『アメリカ』より)
この映画に出てくるディズニーワールドに行く人達はどこか虚しく滑稽だ。
ぶくぶく太ったとりあえず平均水準以上の生活を送っているであろう人たちが家族サービスやら休暇でディズニーワールドに向かう姿(しかもカモにされる)を、生活に困窮している人たちと対比して見てしまうからだろうか。
まあ、結局最後はヘイリー達もってことなんだけど、ヘイリー達のそれは切実で重い。

たぶんヘイリーの自分勝手さや品の無さぶりに共感する観客はいないだろうが、ヘイリー見ているとアメリカ人って大なり小なりみんなこんな感じじゃね?って思ってくる。
プライド高くて自己主張が激しくてわがままで切れやすい。

なかなか面白かった。

2018年9月16日日曜日

映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』

2017年 監督:チャン・フン
製作国:韓国
at ギンレイホール




1980年韓国の光州事件を扱った話。
男やもめで一人娘を育てるキム・マンソプ(ソン・ガンホ)はソウル市内で個人タクシーの運転手をしている。
生活は厳しく、家賃も滞納している。
そんな中、ある外国人客を光州につれていくだけで大金がもらえるという話に飛びつく。というか掠め取る。
外国人客ユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)を乗せてうきうきで光州に赴くが、光州は軍により閉鎖されていた。
光州に入れないことには大金が受け取れない。。。

ユルゲン・ヒンツペーターは実在の人物で、彼は東京在住のドイツ人記者だった。
韓国では報道が規制されて、実際に光州で起こっている出来事とはかけ離れた報道がされていたが、ヒンツペーターによって光州での実情が世界に報道されるようになる。
彼を光州まで送ったタクシー運転手も実在の人物だけど、ヒンツペーターは事件後のキム氏との再開を熱望していたがキム氏の行方が知れず、結局その夢は叶わないまま2016年に他界する。
本作ではそのキム氏が主人公となっている。
キム氏の所在不明ということから分かるように、この映画の主人公は大分創作されたキャラクターになっている。
逆にそれが幸いしてか、光州事件を扱ったシリアスでありながらも前半のコメディや、人情、悲劇、信念、はてはカーチェイスまで、娯楽要素もふんだんに盛り込まれている。
特にキム氏の人物造形が面白く、金にいじきたなくお調子者で政治には全くの無関心という表層の裏には、娘を何より大事に思い生活することで精一杯な頑張る父親の姿があり、かつ光州の実情を目の当たりにしてからの心情の変化等々、創作ならではの面白さがある。
金にいじきたない結果が後のエンジントラブルにつながったりとかもするしね。

この映画をきっかけにキム氏の息子が名乗り出たらしい。
実際のキム氏は1984年には亡くなられていたという。
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30571.html
映画の中のキム・サボクは創作の人物キム・マンソプでありキム・サボクではないんだなという当たり前のことを思うくらい実際のキム・サボクは映画とはいろいろ違った模様。
こちらはこちらでドラマがあるなぁと思う。

あと、光州事件ってよくは知らないし今もよくわかってないけど、悲劇、じゃなくて人為的な虐殺だよね。
1980年とはいえ韓国こえーと思った。

映画『メイド・イン・ホンコン』

1997年 監督:フルーツ・チャン
製作国:香港
at ギンレイホール





中国返還前の香港で今を生きる3人+1人の少年少女の物語。
死のイメージと隣り合わせの生の力が今この瞬間瞬間で激しく燃えさかる様が愛しくて美しい。
サンのシーンの別の映画かのような青みがかって透き通った映像や、煩雑で無機質な香港の街並み、墓場のシーンの気恥ずかしいくらいの青春感と死とエロスと幻想的で物悲しい風景、サム・リーの圧倒的な存在感。
音楽もいいよね。
フルーツ・チャンのデビュー作で低予算のインディーズ映画だけど、時代も相まって奇跡的な熱量を持った作品になっている。面白かった。

2018年8月30日木曜日

映画『ザ・シークレットマン』

2017年 監督:ピーター・ランデズマン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の続きかのようにつながるので今回のギンレイはなかなかの組み合わせ。
今度はFBIが舞台。

ウォーターゲート事件自体ちゃんと知っているかと言われればよくは知らないのだけど、じゃあこの映画見たら分かるかといえばそんなこともなかったりする。
ただ、難しいお話だからと敬遠することもなかったりする。
だってFBI副長官マーク・フェルトを演じた主演のリーアム・ニーソンが渋いから!

FBI捜査官のアンジェロを演じたアイク・バリンホルツがマーク・ウォールバーグ並のサル顔で少しも頭良さそうに見えなかったのだけは残念。

映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

2017年 監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





ペンタゴン・ペーパーズをめぐるワシントン・ポストの内幕が描かれる。
そつのない演出と安定したメリル・ストリープとトム・ハンクスによってなかなか見ごたえがある。
キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)の葛藤と成長と決断の流れ。
一貫して強気のベン(トム・ハンクス)が妻の言葉で他者に目を向ける瞬間が同時にキャサリン像を描く、等々、人物描写も短く的確でバランスがいい。
悪く言えばうまくまとまりすぎて物足りない、と言えなくもないけど。

2018年8月19日日曜日

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

2017年 監督:ギレルモ・デル・トロ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




主演するようなタイプじゃないけど、『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』に続いてこれも主演だな、サリー・ホーキンス。
1962年のアメリカ。
軍の研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は耳は聞こえるが喋れない。
しかし長年の付き合いの同僚ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)とともに毎日そつなく仕事をこなしていた。
ある日、この研究所にアマゾンから不思議な生物が運び込まれる。
現地では神と崇められていた半魚人のような生物。
そしてイライザは水槽の中の生物と運命の出会いをするのだった。
ラブロマンスの始まり。

最初アメリ系のおしゃれCGくそつまらん系かと思って一瞬警戒したが、イライザの朝の日課とか、んっ?と思いながらもどうやらおしゃれ系ではないようなので一安心。
ただ、グロい。
ファンタジーだけどグロい。
可愛そうな猫ちゃんも人の営みもグロい。
このグロさ、いる?
というかギレルモ・デル・トロって『パンズ・ラビリンス』の人か。納得。

つまらなくい訳ではなくラストもそれなりの結末にまとまっているけど、なんか中途半端なもやもや感が残る映画。
グロさとか風刺とか、優しいファンタジーと反する要素がうまく馴染めないまたは十全に機能しきれないまま浮いている感じ。

映画『ナチュラルウーマン』

2017年 監督:セバスティアン・レリオ
製作国:チリ/ドイツ/スペイン/アメリカ
at ギンレイホール





登場人物のどの女性よりも綺麗な女性マリーナ(ダニエラ・ベガ)は年の離れた恋人オルランド(フランシスコ・レジェス)と幸せに暮らしている。
しかしある日突然オルランドが体の不調を訴え、マリーナは慌てて彼を病院に連れていく。
それを契機に、幸せな生活は一転、不幸と差別に彩られる。

脚がごついけど(劇中でもそのまま触れられている)、凛として力強い瞳が美しい。
舞台はチリなのかな。
この強烈な差別の閉塞感に息が詰まる。

最後は、あ、終わりそうっていうのを何度も繰り返しながら続いていく。
ダンスフロアから不自然に飛び上がってマリーナの顔がドアップになったときにこれでエンドロール来たら泣きそうと思ったけど普通に次のシーンへ。
なかなか面白かった。

2018年8月5日日曜日

映画『グレイテスト・ショーマン』

2017年 監督:マイケル・グレイシー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




冒頭から圧倒的大音量のミュージカルで掴んでくる。
CGの白馬の蹄の音がそのまま音楽になっていたりなんかして、もう冒頭で腹いっぱい。後は忘れた。

幼少期の恋愛を一途に貫いていよいよチャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)を迎えに行ったP・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)を見た時、こんなに老けるまで時間が経ったんだね、苦労したね、一途だね、と思いそうになるけど、あの迎えに行った時の年齢は一体いくつくらいの設定なんだろう。
最後まで娘たちが幼いままだというところから考えると、やっぱり50手前くらいで迎えに行ったのだろうか。謎。

『ラ・ラ・ランド』と同じ音楽チームらしい。

アン・ウィーラー役のゼンデイヤが美しく可愛らしい。

なんかサーカス誕生みたいに思える描き方されていて、いやいやサーカスなんて大昔からあるよなぁと調べてみると、古くは古代エジプト、そして近代サーカスの原点は1770年のイギリス「アストリー・ローヤル演芸劇場」での開催とされるらしい。

映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

2016年 監督:アシュリング・ウォルシュ
製作国:カナダ/アイルランド
at ギンレイホール




カナダの画家モード・ルイスの物語。
仲睦まじい夫婦の物語かつ画家としてのサクセスストーリー、みたいなものを想像してたが(いや、それで結局間違いはないのだが)、それほどほのぼのとはしていなかった。
夫となるエベレット(イーサン・ホーク)の初めの頃のモード(サリー・ホーキンス)への扱いのひどさ!
体裁ばかり気にする叔母の薄情さ!
兄のクズさ!

20世紀初頭という時代的なものもあろうが、今だったらモードのような立場や扱いになったらヒステリックに叫びだして裁判起こしそうだ。
若年性関節リウマチを患って手足が不自由なモードはそれでも自分と同じ孤独を抱えるエベレットを想い続ける。

2018年7月22日日曜日

映画『スリー・ビルボード』

2017年 監督:マーティン・マクドナー
製作国:イギリス/アメリカ
at ギンレイホール




7ヶ月前に娘をレイプの末に火をつけられて殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、一向に犯人が逮捕されないことに業を煮やして、道路脇の3枚の広告板に警察批判の広告を貼り出す。
名指しで批判された署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)は心を痛めるが、彼は末期がんで余命いくばくもなかった。
このアメリカミズーリ州の田舎町の警察署ではある程度まともなのは署長のウィロビーのみで、あとはかなりのクズ警官ばかりだった。
特にやばいのがマザコン風のディクソン(サム・ロックウェル)で、横暴とかそういうレベルじゃないよねこれ。
この3者、特に後半はディクソンの物語。

ミルドレッドが被害者の母親というか加害者?と思うくらい過激。
暴力に彩られた街で、復讐やら家族愛やら敬愛する人物からの天啓やら、住人達の様々な思いが交錯してヒートアップしたり浄化したりしなかったり。
Wiki見ると監督は北野映画のファンらしいね。(学生への鉄拳制裁あたりを見たときになんとなく北野映画を思い出した)

映画『15時17分、パリ行き』

2018年 監督:クリント・イーストウッド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




2015年、アムステルダム発パリ行きの高速列車内でテロ事件が発生する。
犯人はイスラム過激派の男一人。
この列車に居合わせたアメリカ人の幼馴染3人がテロリストに立ち向かう。

立ち向かうといってもテロ自体はほんの数分の出来事なので、映画は3人の幼少時代の出会いとか軍で経験したこととか3人の欧州旅行の様子とかが中心となる。
列車内の現在と過去が交互に描かれ、音で現在と過去が切り替わったりするのはスタイリッシュ。

あのちびっこ達が面影まったくなくガチムチのむさい大人になるのに違和感があるけどそこはまあいい。
それよりこの3人ってどちらかという犯罪者役よりの顔立ちじゃないか。
あ、まじか、実際の当事者たちが演じていたらしい。失礼しました。

2018年7月8日日曜日

映画『ベロニカとの記憶』

2017年 監督:リテーシュ・バトラ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




狭い店で中古カメラ店を経営しながら年金生活を送るトニー(ジム・ブロードベント)。
ある日一通の手紙が届く。学生時代の初恋の女性ベロニカの母親が亡くなり、一冊の日記がトニーに遺贈された、というもの。
ベロニカとは何十年もあっておらず、しかもその母親(一度しか会っていない)からの遺贈とは何なのか?
ほろ苦い青春の思い出に浸りながらトニーはこの奇妙な出来事に関心を寄せていく。

前半はかったるくてうとうとしてしまったが、なかなか面白かった。
主人公のトニーはあからさまでなく微妙に嫌な奴として描かれ、そのちくちくとした仕込みが後半の真相につながる。

シャーロット・ランプリングはあの三白眼が最近少し苦手になってきていて、どんな映画でもその存在感と表現力で魅了してくれる存在だけにちょっと悩ましいところ。
この映画でも複雑な過去の鎖を背負った女性を静謐な演技で見せてくれるけど、若き日のベロニカ(フレイア・メイヴァー)と1mmも似ていないところが痛い。
年取って三白眼にはならない。
この役は薄幸そうな美少女が薄幸に年老いたような風貌の女優さんの方がよかったな。ぱっと女優名が出てこないけど。

映画『あなたの旅立ち、綴ります』

2017年 監督:マーク・ペリントン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




キャリアウーマンで広告業界で名を馳せたハリエット(シャーリー・マクレーン)はその財で優雅に暮らしていた。
死期が近づくにつれ、ふとしたことから自分の訃報記事がどう書かれるか気になりだす。
なんでも自分でコントロールしないと気がすまない彼女は、地元新聞社に乗り込み訃報記事の執筆依頼をする。
担当として選ばれたのは若き女性社員のアン(アマンダ・セイフライド)。
アンはさっそく取材を開始するが、ハリエットの評判はさんざんなものだった。
で、いい訃報記事を書くための条件を満たすためにハリエットは行動を開始し、なんだかんだで二人は仲良くなってアンの悩みもなんか解消してよかったねという話。

アンのハリエットに対する態度、足を机に乗せたり「なんか偉そうでむかつく」と言ってしまうような負けん気というかプライドの高さには驚く。
いや、欧米人の自己主張の激しさやプライドの高さは一般的だろうけど、それにしても小さな会社のぺーぺー平社員がなんの対抗心を燃やしているのかと。
そりゃあ失敗するのも怖くなるわ。

ちょっと寝不足気味だったので大分うとうとしてしまった。

シャーリー・マクレーンは若い頃が輝いていただけに塗りたくった化粧がなんか複雑。
アマンダ・セイフライドってなんか苦手なんだよね。
美人っぽくもあるしクリーチャーっぽくもある。
でも最後の方でハリエットを見つめる立ち姿は優しさに溢れてはっとするほど恐ろしく美しかった。
そういう思いがけず映える姿を見せるところが面白くもあり苦手でもある。

老女と若い女性が海(湖)に入るって、ジェシカ・タンディとブリジット・フォンダが出演する『カミーラ/あなたといた夏』を思い出す。
そのシーンだけ見るとカミーラの方が強烈だったためにこちらはとってつけたようなお遊びに見える。。

2018年6月24日日曜日

映画『勝手にふるえてろ』

2017年 監督:大九明子
製作国:日本
at ギンレイホール




高校時代のクラスの人気者イチ(北村匠海)に10年間も片思いし続けるヨシカ(松岡茉優)。
ヨシカは高校時代は髪ボサボサでメガネを掛けた暗い女の子だったらしい。
今ではコンビニ店員やらバーガーショップの店員、マッサージ師(池田鉄洋)やら釣り好きのおっさん(古舘寛治)等々と長年の友達かのように話する明るい女性になっている。
勤め先で知り合ったニ(渡辺大知)に付き合ってくれと言われるし絶好調に見えるが、やっぱりイチを忘れられず、イチに会うべく密かに同窓会を企画する。

最後の方の唐突なミュージカルは、内容(ネタバラシ)といいタイミングといい、どう考えても好きな展開のはずなのになぜか少しも心が動かなかくて、後で分析しようかと思っていたけどこれ書いているときにはもう詳細忘れてしまった。
そういう演出を見飽きたというのもあるかもしれない。
ここのミュージカルに感動できたらこの映画はかなりの名作になるはず。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』

2017年 監督:白石和彌
製作国:日本
at ギンレイホール




電話でも対面でも店にクレームを入れまくる北原十和子(蒼井優)。
「ここまで来た私の時間返してくれますぅ?」
そんな十和子の同居人で結構年上な佐野陣治(阿部サダヲ)は十和子に甲斐甲斐しく尽くしている。
働かず家事もまったくしない十和子だけど陣治はとにかく十和子命なので十和子のためならなんでもやる。
不潔な陣治に嫌悪感をいだきながらも十和子と陣治の同居生活は続いていた。
十和子にはひどい別れ方をした前の男黒崎俊一(竹野内豊)がいて、十和子は時折黒崎との思い出に浸るが、ある時その黒崎が消息不明になっていることを知る。
サスペンス物で純愛物な話。

あまり惹き込まれることもないけど主演蒼井優だしまあまあ面白かった。

偽イチローみたいな奴がいると思ったら竹野内豊だった。
松坂桃李もそうだけど新旧イケメンがクズ男を演じる。イケメンってくずだよねぇ。

2018年6月10日日曜日

映画『ロング,ロングバケーション』

2017年 監督:パオロ・ヴィルズィ
製作国:イタリア/フランス
at ギンレイホール




老夫婦のジョン(ドナルド・サザーランド)と妻エラ(ヘレン・ミレン)が古いキャンピングカーでヘミングウェイの家があるフロリダのキーウェスト目指して旅に出る。
ジョンは認知症でエラは何やら病気を患っている模様。
突然いなくなった両親に息子たちは大騒ぎするが夫婦はのんびりしたもの。
長年連れ添った離れがたい二人の楽しくて切ないロードムービー。

エラはこの旅である決意をしているのね。子供がいないのならば、とも少し思うが。

懐かしの曲も満載で、中でもキャロル・キングの『It's Too Late』はメロディーラインといいシンプルで無駄のない編曲といい改めて名曲だなと思う。

映画『ローズの秘密の頁(ぺージ)』

2016年 監督:ジム・シェリダン
製作国:アイルランド
at ギンレイホール




アイルランドの古い精神病院が取り壊しが決まり、入院患者の転院手続きが進められていた。
転院する患者の再診のために訪れた若きグリーン医師(エリック・バナ)は、この病院に古くからいるローズ(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)という老女に興味をひかれる。
彼女は生まれたての赤ん坊を殺害したとしてこの病院に40年収容されていた。
彼女は本当に赤ん坊を殺したのか?40年前に一体何があったのか?っていう話。

アイルランドの時代背景に詳しくないのでよくわからない部分も多く、それゆえかストーリー自体もさほど面白くはないのだけど、若き日のローズ役で出演しているルーニー・マーラが見れるだけでいい映画なんじゃないかと思わせる。

2018年5月27日日曜日

映画『gifted/ギフテッド』

2017年 監督:マーク・ウェブ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




叔父のフランク(クリス・エヴァンス)と二人で暮らす7歳のメアリー(マッケナ・グレイス)は、馬鹿な授業や馬鹿な同級生と時を過ごすことに我慢ならず、小学校に行きたがらない。
メアリーは7歳にして57かける135を暗算で答えられるほどの天才児だった!
先生は彼女は天才児だから特別な学校へ、とフランクに勧めるが、それはなんとかなんとかという暗算法で俺も8歳でマスターしているし大した話じゃないと一蹴する。
えっ?凡人・・・
というのは振りで・・

ジャンルとしては家族ドラマになるのかな。それと天才児をどう育てるべきかドラマ。

メアリー役のマッケナ・グレイスがとにかく凄い。
最初見たときクリーチャー的不気味さがあって怖かったのだけど、見慣れるとなかなか可愛らしい。
怖い一因としてはまつげが異様に長いのね。
つけまつげの2倍くらいはあるんじゃないだろうか。
それのせいか、7歳の体に30歳の女性の顔が乗っているかのような不気味さがある。
その不気味さが天才児とマッチしているし、それに演技もころころ変わる表情が無邪気な幼児性だったりきりっと大人びた表情だったりと、こちらを惹きつけてくる。
いやぁ、天才児だわ。

映画『はじまりのボーイミーツガール』

2016年 監督:ミシェル・ブジュナー
製作国:フランス
at ギンレイホール




落ちこぼれのヴィクトール(ジャン=スタン・デュ・パック)は優等生のマリー(アリックス・ヴァイヨ)に密かに憧れていた。
やがて二人の距離は近づいていくのだが、チェリストを目指すマリーはある秘密を抱えていた。

12歳の少年少女の爽やかな恋物語というテイストだけど、なんだかいろいろ消化不良のまま終わる感じ。
入院して治療に専念したら治るのかそれとも絶望的なのかとかその辺はよくわからないけど、とりあえず入院しろよと思う。
入院して試験の時だけ外出して記念受験すればいいじゃん。
どうせろくに練習してないんだし入院してもしなくても変わらない。
師匠も出てこないから独学なんでしょ。(なぜか上手いけど)
少年少女の恋愛ものにありがちな大人との対立だけど、大人を応援したくもなる。
入院しないのがずっと先のことよりすぐそこの夢を大事にするという子供の考えによるものならもっとそこを分かりやすくしてほしい。
頑固な親父の心変わりの契機もなんだか弱いし、何に心動かされたんだろう。

とはいえ可愛らしい少年少女のくっつき離れる王道の展開はそれなりに爽やかで面白かった。

校舎の黄色や赤の柱は絵になりそうだ。

2018年5月13日日曜日

映画『ノクターナル・アニマルズ』

2016年 監督:トム・フォード
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




肉塊が、、裸の肉塊がスローモーションでぶよんぶよん踊っている。。

アート・ディーラーのスーザン・モロー(エイミー・アダムス)は一応の成功を収めてはいるが、夫との関係は醒めきっており生活に満たされていない。
そんな時、小説家を目指していた20年前に別れた元夫から著作が送られてくる。
本を読み進めると、その面白さにのめり込んでいくスーザン。
以降、小説世界と現実と過去が描かれ、それぞれ小出しに関連づいていく。
予告編を見ると少し超常的な事象も含めたサイコサスペンスかな、と勝手に思っていたけど、実際はごりごりのドラマだと思う。
しかしこの予告編よくできてるな。
このカットの並びに肉塊入れるのかよ、とか、本編見た後だとこのつなぎ方の妙に感心する。

小説世界のあの絡まれ方は怖い。中指立てちゃ駄目だよ。。
冒頭の醜悪さ(失礼かもしれない)に比べると本編はおとなしい気もするけど、自分勝手な人たちや復讐心は小説世界で寓意的に誇張されて十分醜悪だよな。

ジェイク・ギレンホールが二役。
警官役のマイケル・シャノンって人はなかなか存在感があって気になる。74年生まれだから結構若かったのか。
ちんぴらにアーロン・テイラー=ジョンソン。

映画『否定と肯定』

2016年 監督:ミック・ジャクソン
製作国:イギリス/アメリカ
at ギンレイホール




ユダヤ人歴史学者のデボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は、著書で非難したホロコースト否定論者のデイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)から名誉毀損で訴えられる。
否定論者とは話にならないので討論する気もなかったリップシュタットだったが、この戦いを受けて立つ決意をする。

実際にあった物語らしい。
最高峰の弁護士達による綿密な調査に基づく戦略の裏側が面白い。
弁護士役にトム・ウィルキンソン。

リップシュタットはプライドと我が強く、あまり好きなタイプではないけどレイチェル・ワイズならOKだ。

2018年5月2日水曜日

映画『ゲット・アウト』

2017年 監督:ジョーダン・ピール
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




予告編よく出来てるなぁ。一体何が起きているんだという期待感にあふれている。
見終わった後でいろいろシーンを思い出すと、警官にIDを提示させなかった理由とか祖父や祖母の話とかそもそもこの映画のタイトルとか、いろいろ伏線がはられているんだなと思う。
2回目見るともっと面白いかも。

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

2017年 監督:アンディ・ムスキエティ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




予告編でピエロが映っているしネタばれじゃん、と思ったけど、ピエロは冒頭からがっつり登場してしかも普通に喋る。
そこで怖くないぜと安心してしまうと。。

見始めてからそういえば俺ホラー映画苦手だったなと思いだした。

スタンド・バイ・ミーのような雰囲気も醸し出しつつ、少年少女達の青春物、成長譚にもなっていて、なかなか見ごたえがあった。
少年少女の冒険譚とホラーはよく合うものなんだと初めて知ったよ。
ラストステージも用意されていて、ペニーワイズのぼこぼこっぷりがキュートだった。

2018年4月15日日曜日

映画『婚約者の友人』

2016年 監督:フランソワ・オゾン
製作国:フランス/ドイツ
at ギンレイホール




これは面白いね。
モノクロとカラーのしっとりとした映像の美しさ。
モノクロとカラーを使い分ける映画って、回想や過去シーンをモノクロとか、主人公が壁を乗り越えたらカラーになるとか、なんらかのストーリーに連動してこれみよがしに切り替わる映画が多いと思うけど、これはそういうのが無い。
いや、あったのかもしれないけど気づかないくらい違和感なくモノクロとカラーが使いこなされている。

ストーリーも面白く、ミステリーと恋愛、戦争、贖罪、家族ドラマ等々、常に惹きつけてくる。
舞台は第一次大戦後のドイツで、婚約者フランツを戦争で失くしたアンナ(パウラ・ベーア)が、失意の毎日を送っている時、フランスからフランツの友人を名乗るアドリアン(ピエール・ニネ)が訪ねてくる。
アドリアンからフランツの事を聞くうちに元気を取り戻していくアンナ。
しかしアドリアンはある秘密を抱えていた。
っていうのが前半。

アドリアンの秘密って絶対フランツの恋人だったとかそういうオチでしょ、オゾンだし、と思っていたら全然違かった。
そもそもこれってエルンスト・ルビッチの『私の殺した男』(1932) の脚本がベースになっているらしい。

映画『エタニティ 永遠の花たちへ』

2016年 監督:トラン・アン・ユン
製作国:フランス/ベルギー
at ギンレイホール




幸せと悲しみが絵巻物のように綴られていく。
映像は見応えあるんだけどなんだろう、ひっきりなしに流れる音楽がうるさい。
ストーリーよりも映像に重きを置いていると思うけど、あんなに音楽流されたら映像に集中できないし眠くもなる。
子沢山だから登場人物が多くて時代も豪快に飛んで役者が変わるから顔で覚えることができず、名前をちゃんと記憶していないと誰が誰だかわからなくなる。
そしてさっき生まれた子がすぐ大人になってかつお亡くなりになってもなんも悲しくない。
というか死にすぎて感覚が麻痺してくる。
絵巻物、またはプロが撮影した家族アルバムといった感じで、音楽が気にならなければ楽しめると思う。

トラン・アン・ユンはたぶん初めてかな。『青いパパイヤの香り』は見たいと思いながらも結局見ていない気がするので。

2018年4月1日日曜日

映画『ダンケルク』

2017年 監督:クリストファー・ノーラン
製作国:イギリス/アメリカ/フランス
at ギンレイホール




フランス北部にある港町ダンケルク。
大戦中、英仏連合軍の兵士約35万人がドイツ軍によりダンケルクに追い込まれていた。
チャーチルはイギリスから軍艦、民間船を総動員して彼らを救出するダイナモ作戦を発動する。
このダンケルクの救出劇を扱った映画。

どんくらい金かかっているんだろう。
とんでもない数のエキストラ、そしてどでかい戦艦やら船やら戦闘機が惜しげもなく沈んでいく。

主人公は若い少年兵で、救出を待つ大量の兵士が海岸に集まる中、少年はあの手この手を使って救出船に乗り込もうとする。
すぐそこにドイツ軍が迫る中、真剣にせこいことをしているのはコミカルでもあるが、なんとしても生き延びて故郷に帰るという確たる意思は伝わってくる。
というかそれしかないから。
少年はほとんど喋らないし過去が描かれることもないから、主人公のパーソナリティはつまり「なんとしても生き延びて故郷に帰る」ということになる。

陸(1週間)海(1日)空(1時間)の異なるフィールド異なる時間軸を交錯させながら、緊迫した脱出劇が描かれる。
セリフは多くないけど(特に陸)、それぞれにちゃんとドラマがあるしなかなか面白かった。


空中戦は後ろをとったら勝ちみたいな紅の豚知識は近代の戦闘機でもそのままなのか。
戦闘機の機関銃を後ろにも撃てるように取り付けておいて、照準は難しいけどミラーごしに撃ったら、後ろを取って安心した敵はびびるだろうな。

映画『ドリーム』

2016年 監督:セオドア・メルフィ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




1960年代のアメリカとソ連の宇宙開発競争の時代が舞台で、主人公はNASAに勤める3人の優秀な黒人女性。
人種差別が色濃く残る中で3人が奮闘する姿がコミカルに、そして時に熱く描かれる。

つまらなくはないのだけど、なんだろう、いまいち乗れない感じがする。
予告編見た時に
「1961年のハイウェイで白人警官に先導される黒人女性3人 奇跡だわ」
っていう言い方がいかにもアメリカ人!って感じで嫌な感じを受けたのを引きずっているのかな。
嫌な感じっていうのはここのオーバーアクションな表現が嫌いってだけじゃなくて、予告編全体から映画の内容自体差別されている黒人側が白人側を馬鹿にしているように思えたから。
差別受ける側が心の中で差別仕返すくらいいいじゃないかという気もするけど、一方方向でも嫌なのにお互いがお互いを下に見るっていう構図はあまり気持ちよくない。
まあ、実際は3人の中でもこの映画の中心となるキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)は人を馬鹿にするようなこともなく純粋に一生懸命だったけど。
って書くと後の二人は性格悪いみたいになっちゃうか。別にそそれほどでもなく、制限された環境でなんとか道をこじあけようとする姿は素直に感動していい気もする。

というような何が言いたいかわからないようなもやもや感。
虐げられている人たちがあからさまな悪役(白人)をギャフンと言わせるっている痛快エンターテインメントに寄りすぎて、差別もキャラクターも彼女たちの功績もなんか中途半端になっているのかな。

2018年3月18日日曜日

映画『幼な子われらに生まれ』

2017年 監督:三島有紀子
製作国:日本
at ギンレイホール




バツイチの田中信(浅野忠信)は同じくナツイチの奈苗(田中麗奈)と再婚し、奈苗の二人の娘と一緒に暮らしている。
信の元妻(寺島しのぶ)との間にも娘が一人いて、年に4回きりの娘との再会を信は楽しみにしている。
全てがうまく行っていたはずだが奈苗のお腹に赤ん坊ができてから少しずつ家族関係やら仕事やらがずれはじめていく。

なかなか面白かった。
家族関係っていうのが一番身近で一番難しいよね。
なんだかんだいってもスーツ姿で待つ宮藤官九郎演じる沢田や、ラストシーンの娘の表情とか泣ける。
あと誰も得しない浅野忠信と寺島しのぶのベッドシーンも泣ける。

ノータイのワイシャツを第一ボタンまではめた浅野忠信には狂気しか感じない。
浅野忠信が演じてきた役柄のイメージもあるけど『淵に立つ』のイメージが強いからかな。
小憎たらしい連れ子に業を煮やして、無表情に包丁持ち出して大虐殺が始まるのではないかとびくびくしてしまう。
仕事は定時帰りで仕事関係の飲みの誘いは基本お断りっていう少しずれた面(本当はそれが正しいのだけれど)も狂気を煽る。
が、第一ボタンはめるのは狂気ではなく論理的でルールに対してクソ真面目な性格の現れだったらしい。
この役柄は浅野忠信以外なら安心して見れそうだが、浅野忠信だからこそのひりひり感や佇ましはこの映画の不思議なアクセントになっている。

田中麗奈は結婚しているんだっけかな。奥さん、母親役がものすごくしっくり来ている。

映画『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

2017年 監督:石井裕也
製作国:日本
at ギンレイホール




予告編見て感動した映画は本編見ると意外と面白くないことが多い。
一方予告編見てつまらなそうだと思った映画はだいたい本編見ても予想通りつまらない。
で、この映画は後者で、1mmも面白くなさそうに思えた。
都会の若者が自分が恵まれていることにも気づかず自分が世界一不幸かのようにナルシスティックに感受性豊かな特別な存在ぶって厭世的退廃的スタンスで斜に構えて生きている、そんな中学生向け映画をおっさんが見て楽しめるわけがないじゃないか。
と思っていたけど、意外に大きな嫌悪感も湧き上がらずにそこそこ面白かった。

日雇い労働者で小説好きとか『苦役列車』っぽいけど、なにかもっと小奇麗な感じ。
松田龍平と田中哲司の二人がそれぞれ印象的で、大きくこの映画の質を上げているように思える。
主演の石橋静河は石橋凌原田美枝子の娘なんだね。丁度半々ずつ入っている感じがする。

2018年3月4日日曜日

映画『あさがくるまえに』

2016年 監督:カテル・キレヴェレ
製作国:フランス/ベルギー
at ギンレイホール




ラストの表情が素晴らしくて泣ける上にデヴィド・ボウイの『Five Years』が流れるもんだからたまらない。

一人の若き青年が脳死状態となる。
家族、ガールフレンドの悲しみ。
医師は家族に臓器提供の決断をせまる。
脳死状態の患者は非常に貴重なので臓器提供を受けてほしいが、家族は息子の死を受け止めきれない状態ですぐには判断できない。
家族と医師との葛藤。
一方音楽家のクレール(アンヌ・ドルヴァル)の心臓は末期状態にあり、生き延びるためにはもう心臓移植しかない。
しかし若くない自分が人の心臓まで使って生き延びることにクレールは抵抗を感じている。

監督は気鋭の若い女性監督らしい。
女性って感じがするわ。
凄いのは淡々と、瑞々しくもえぐってくる映像。
青春の爽やかな一ページはきらきらと輝き、家族の悲しみは地の底に沈みそうなほどにどんよりしている。
生を諦めつつあるクレールの穏やかさと悲しさは美しい映像の中で痛いほど浮き立つ。
そしてリアルすぎる手術シーン。心臓どくどくいってるし。。

クレール役のアンヌ・ドルヴァルはいくつくらいなんだろう。
すごく可愛らしいおばさんだった。

それにしても医者ってすごいよな。
人の命をあずかるってだけでもう吐きそうだ。
死ぬほど勉強して死ぬほど働いて医療ミスでも起こそうものならのほほんと生きている人たちから責められ。

映画『女神の見えざる手』

2016年 監督:ジョン・マッデン
製作国:フランス/アメリカ
at ギンレイホール





冒頭から大ピンチなんだけど、そこから時は遡る。
エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は超敏腕のロビイスト。
ロビイストとは特定の企業や団体の利益のために有利な政策が施行されるように政治家や官僚に働きかける人達らしい。
なにか大分怪しい感じもするけど、ちゃんとした職業らしい。
大手ロビー会社でその辣腕をふるうスローンに、銃擁護派団体からの新たな銃規制法案を潰してほしいという依頼が入ってくる。
信念からこの依頼を断ったスローンは、逆に銃規制法案を通すための長い戦いへと身を投じていく。

睡眠をほとんど取らない、プライベートも無い(恋愛はエスコートサービスで十分)。
全ては勝つためのあらゆる戦略に捧げられる。
大分人格破綻している気もするがそれすらも。。

なかなか面白かった。
ラストで明かされる長い仕込みの戦略は予測できそうで全く予測していなかったな。
ジェシカ・チャステインいいね。ケツアゴだし。

2018年2月18日日曜日

映画『ベイビー・ドライバー』

2017年 監督:エドガー・ライト
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




TAXIみたいなもんかと思っていたけど、音楽に合わせた冒頭のカーアクションから鷲掴みされる。
最高に楽しめるアクション映画。
カーアクションだけでなく、恋愛要素やら銃撃戦やらベイビーの成長譚と盛りだくさん。
ストーリーはなかなか予測がつかない。
うまい具合に外してくるので。
それにしても彼女は知り合ったばかりの男に全てを投げ捨ててよくついていったよな。

冒頭のカーチェイス

映画『パターソン』

2016年 監督:ジム・ジャームッシュ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




変わらないようで変わる、変わるようで変わらない一週間。

少しづつ切り取られていつのまにか覚えてしまう通勤通路。
いつも傾くポスト。
ストーリーに絡まない双子の符牒。
なめらかなバスの風景。
日課のバーの雰囲気。
パターソンとローラのやりとり。

全てが心地よい。

ニュージャージー州パターソンに住む、街と同じ名前のパターソンはバスの運転手をしている。
パターソンは仕事の傍ら、趣味で詩をノートに書きつけている。
愛する妻ローラはあなたの詩は素晴らしいから公開すべきよと力説するがパターソンはそれほど乗り気でない。
そんなパターソンの一週間。

日常物だと、これみよがしに個性的な仲間が出てきたりしてうんざりすることも多いけど、この映画はとても静かで、そしてさりげないユーモアに溢れている。
静か、だけど結構不穏な空気も流れている。
バスの運転は事故んないか、愛犬マーヴィンは盗まれやしないかと不安になったり、バーの拳銃事件はとんでもないことにならないかとはらはらしたり。

あと、パターソンとローラの関係など本当に夫婦なのってくらいよそよそしく見えるときもある。
どちらかがどちらかを騙しているんじゃないかと勘ぐりたくもなってくるが、実際はお互いがお互いを誰よりも大事に思っている、っぽい。
言いたいことも言わない、喧嘩もしない。だけど優しさと思いやりで満ち足りている幸せな関係。

ローラなんか絶対詐欺にあっていると思ったけど。

そういえば永瀬正敏も出ていたなとふと思い出した頃に永瀬正敏が現れる。
たどたどしい英語の日本人がこの役を演じる必要など全くないけど、パターソンに勇気を与えるこの重要な役柄を無名の俳優でなく『ミステリー・トレイン』以来の出演となる永瀬正敏が演じる、ってところが最高にいいよね。

ジム・ジャームッシュは『コーヒー&シガレッツ 』以来かな。
もう今年のNo.1にしたい。

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関係ないけど、この日は5:30起きで出勤して休日作業をした後の鑑賞となった。
土日に午前中に起きることすら稀なのに5:30起きで最高に眠い。
ジム・ジャームッシュは久しぶりに見たいが絶対寝てしまうだろうから行くかどうか迷ったけど見に来てよかった。

2018年2月4日日曜日

映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』

2016年 監督:ロジャー・スポティスウッド
製作国:イギリス
at ギンレイホール




薬物依存から抜け出そうともがくストリートミュージシャンでホームレス青年ジェームズと、偶然迷い込んだ茶トラの猫ボブとの物語。
実話がもとというか、ジェームズ本人が書いた本が世界中で大ベストセラーらしい。その映画化。

拾った猫がアイドル的人気になって、猫や周りの人に励まされながらどん底の生活から立ち直っていく。
ってだけなんだけど、意外とつまらなくはなかった。(別に猫好きでもないのに)

実話が元って取材に基づくとかじゃなくて本人が書いているってところが何か気持ち悪い面もある。
そしてお決まりのご本人登場もあったりする。

ボブは実際のボブなんだね。
それにしても芸達者すぎる。

映画『ブランカとギター弾き』

2015年 監督:長谷井宏紀
製作国:イタリア
at ギンレイホール




イタリア制作で日本人監督で舞台がフィリピン、ってなんだそれというのはおいておいて、なかなかいい映画だった。
長谷井宏紀監督がヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を受けて制作されたらしい。

ストリートチルドレンの少女ブランカと盲目の流しのギター弾きピーターを中心にした物語。
心温まる感動ストーリーとかサクセスストーリーとかそういう類いのものではなく、かといって説明を省きまくった芸術系というわけでもない。
ごくシンプルにストーリーは進んでいくのに、かなり面白い。
多くを説明しないのに人物描写がいいからかな。
生きるために他人にかまっていられない少年、居場所を守るために奸計をめぐらす小男と意外とそいつの言うことを信頼しているっぽいオーナー、なんかほっこりする路上の女(男)達。

少しネタバレすると、
ラストが主人公の笑顔で終わる映画にはずれは無いよね。
で、ラストの笑顔見て思い出したけど、この映画に大いに好感を持つ要因の一つに僕の大好きな映画『雨上がりの駅で』に雰囲気が似ているからというのがある。
ラストの笑顔も含め少女とおっさんという組み合わせも同じだし。