2020年12月19日土曜日

映画『WAVES/ウェイブス』

2019年 監督:トレイ・エドワード・シュルツ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




上流階級で成績優秀でレスリング部のエースの高校生タイラー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)。
かわいい彼女もいて順風満帆、
しかし怪我に見舞われたりガキんちょには対処に困るような出来事がタイラー君の身にふりかかる。
とそこまではいいのだがそれらが積み重なって最悪の結果が。。
で次は妹ちゃんエミリー(テイラー・ラッセル)の話になる。

二部構成?
予告編見たときはこのエミリーが主役だと思っていたからタイラー君早く退場しないかなと思っていた。
意外と長い出番。

表向きは理想的な家族があっけなく崩壊し、そして再生していく物語。
ストーリーは本当どうでもいい感じではあった。
演出の方は360度ぐるぐるカメラが回ったり、アスペクト比が心情に応じて変わったりとか、なんかいろいろやっているけど、それが面白いかどうかは置いておいてなにはともあれ音楽を含めて音がうるさいので全く頭に入ってこない。
ダルデンヌ兄弟の映画を見たばかりだからなおさら音に敏感だった。

むきむき黒人金髪がどうも苦手なんだよな。
今やアジア人も含めて理想の体格って男女ともに世界共通のものになりつつあるなか、その理想を一番体現しているのは黒人であってそのままで美しいのになぜださい金髪にするのか。
妹ちゃんの方はスタイル抜群なので2部からが本番みたいな感じ。

妹ちゃんの彼氏ルーク(ルーカス・ヘッジズ)君がサイコパスかシリアルキラーにしか見えなかったのに普通に好青年かい。
ルーカス・ヘッジズは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の甥っ子か。がたいでかくなったな。

面白かったのは俳優たちの年齢で、タイラー役のケルヴィン・ハリソン・Jrと妹ちゃんテイラー・ラッセルと彼女役アレクサ・デミーはともに1994年生まれ。
25歳とかだよ。高校生。
ルーカス・ヘッジズだって1996年生まれ。
確かにはじめ大学生かと思ったら高校生かよと思いはしたけど、そんなに違和感はなかった。若いなぁ。


以下ネタばれ

被害者の親の前でよく号泣できるよなぁ。
タイラーは一体なんのために鍛えていたのか。
殺意があったわけではないのに最愛の人を誤って死なせたなんて精神が崩壊する。
欧米人は特にそう思うけど彼らはなんで怒りを抑えられないのか。
日本人だって怒るけど血管ぴくぴくさせながらも我慢する人がほとんどだよね。
日本人でもたまに大声でブチ切れる人はいるけど、このやばい人達がむしろ世界標準なのか。

一番良くわからないのは、グーか張り手かわからないが決め手は床への頭強打でしょ。
サスペンスドラマとかだと殴られて机の角に頭ぶつけて、っていうのはよくあるが、床って。。
身長高いとしても2M未満の高さから少なくとも横向きに力が加わっている状態で床に頭ぶつけて死ぬ?
タイラーに殴りかかってジャンプしているときに殴られて空中でぐりんと回転してそのまま頭を床に強打、とかいうわけでもないしな。
まだ殴られて首の骨が折れたとかのほうが納得できる。

映画『その手に触れるまで』

2019年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー / フランス
at ギンレイホール




この予告編、もう絶対面白い映画でしょって期待が高まる。
で、本編は期待通り面白かったのだが、なんというか潔すぎないか。
短いと思ったら84分しかなかったのか。
もっと見ていたかった。

というかこれ監督ダルデンヌ兄弟だった。
確かに。音楽もなく予定調和な盛り上げかたも一切ないのだが、淡々とした中に現れるドラマ性が秀逸だった。

ベルギーに暮らす13歳のアメッド(イディル・ベン・アディ)は最近までゲーム好きの少年だったらしいが、イスラム教の導師に感化されて過激よりのイスラム教にはまっていた。
公式ページによるとベルギーのブリュッセル西部のモレンベークは10万弱の人口の半分(地域によっては8割)がイスラム教徒らしい。
そして一部の過激派はパリ同時多発テロ等にも関与していて「ブリュッセルはヨーロッパにおけるテロリズムの交差点と化している」らしい。
善悪、敵味方、純潔不純。単純明快な二分は思春期に抱える漠然とした不安にがっちりはまったのだろうか。
少年の偏執的なまでの執念がすごい。

農場の女の子ルイーズ(ヴィクトリア・ブルック)がかわいい。
少しませた感じのたくましさがアメッドに与えた影響は大きかっただろうか。


以下ネタバレ
ラストは肩透かしっぽい感じで、まさかっと思ったらエンドロールに入る。
つまりどういうことだろう。
命の危機に際しては過激な思想もころっと覆る程度のことに過ぎなかったってこと?

2020年12月5日土曜日

映画『パブリック 図書館の奇跡』

2018年 監督:エミリオ・エステヴェス
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




オハイオ州に大寒波が襲来する。
凍死者も出る中、市が提供する避難用シェルターは満杯。
ホームレス達は身を守るため行きつけの?図書館に立てこもる。
図書館職員のスチュアート・グッドソン(エミリオ・エステヴェス)は最初こそ難色を示すが次第に彼らに協力することにする。

この事件の解決を利用したい次期市長選に立候補者の検事ジョシュ・デイヴィス(クリスチャン・スレイター)とか、大事件にして有名になりたいレポーターのレベッカ(ガブリエル・ユニオン)とか、なんかお疲れ気味の館長(ジェフリー・ライト)とか、ホームレスになっている息子を探したい敏腕交渉人(交渉してたっけ?)のビル・ラムステッドアレック・ボールドウィン)等々、外では思惑がうずまきながらも、内ではその息子やらレーザーアイを持ったビッグ・ジョージ(チェ・“ライムフェスト”・スミス)やらグッドソンの過去とかいろいろドラマもある。
陽気でバイオレンスでチャーミングで社会問題を扱いながらも頭空っぽで楽しく鑑賞できる。
全体的に人物造形はそんなに深くはないけど、こういう定型的なので固めるとそれはそれで楽しい。
館長が合流するところなんかよく意味がわからないのもあってギャグっぽく見える。蝶ネクタイをかっこよく外すのなんか全然かっこよくないしwww。
レーザーアイがメガネかけて周りを見渡したり、人をガン見したりする演技って誰がやってもそりゃあこうなるよなという白々しさが楽しい。

グッドソンの同僚でぱっつん前髪メガネのぽっちゃりマイラ(ジェナ・マローン)が可愛い。
なんやかんやいいながらも帰らずに留まるとはいい子だ。
アパート管理人のアンジェラ(テイラー・シリング)もその顎とともになかなか男勝りなさばさば感がいい感じ。

なにより驚いたのは、レポーターで馬鹿な小娘役のガブリエル・ユニオンはなんと1972年生まれ!
テイラー・シリングより12歳も上だよ~~。

映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』

2019年 監督:フランソワ・オゾン
製作国:フランス
at ギンレイホール




今も裁判が進行中らしいプレナ神父事件という実際の事件が題材になっている。
主演が途中でシームレスに切り替わっていくような形になっている。

事件自体はカトリック教会にありがちな少年への性犯罪。
しかしまあ何十年もの間罪を重ね続ける、野放しにされる、っていう環境がもう恐ろしい。
犯罪の性質上被害者が声をあげにくいということもある。
子供に与える衝撃・トラウマは空き巣に入られたとかそんなレベルじゃないから重犯罪だよな。
そういえば映画の中で教会が素晴らしいものとして描かれているのをあまり見た記憶がない。

被害者達は大人に成長した今も事件のトラウマを抱えている。
エマニュエル(スワン・アルロー)がプレナに関する新聞記事見ただけで癲癇みたいな発作を起こしたのは泣きそうだ。
というかバイクになんか乗っても大丈夫なんだろうか。
エマニュエルの彼女の嫉妬具合も壊れているよなぁ。
被害者たちのトラウマ、親の葛藤・無関心、家族愛、教会や神父の無垢なのか馬鹿なのかわからないずる賢さ、被害者たちのすれ違い。
事件の内容もさることながら、なかなか面白い人間ドラマになっている。

エンドロール見て気づいたけど監督はフランソワ・オゾンだった。
まじか、全然気付きもしなかった。。こういう題材も撮るのか。
あと、一人目のアレクサンドル役はメルヴィル・プポーだった!
一時期好きな俳優を聞かれたらメルヴィル・プポーとロマン・デュリスと言おうと決めていた時期がある。(誰にも聞かれなかったが)
そんなにお気に入りだったのに全く気づかなかった。というか今でもなんかしっくり来ていないけど。おっさんになったな。

2020年11月21日土曜日

映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

2019年 監督:ウディ・アレン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール



エル・ファニングかわいい!っていう映画。
ウディ・アレンの最近の映画の中ではなかなか面白かった。
恋愛コメディー。

エル・ファニングのちょっとおバカな感じが最高にキュート。
にこにこして表情豊かで全身で感情表現してさ。いっぱしの記者ぶった真面目な顔もいい。

主演ティモシー・シャラメとエル・ファニング。
セレーナ・ゴメスやジュード・ロウも出ている。

以下ネタばれ

シェイクスピアのくだりはよく知らないけど全然シェイクスピアじゃなかったんだろうね。
そっち選ぶかぁ。
簡単に浮気しそうだしおバカだけどめっちゃいい子じゃん。
おっさんたちはアシュレーの魅力にメロメロで、ギャツビーもその一人だったけど、若くIQの高いギャツビーには物足りなかったか。

映画『はちどり』

2018年 監督:キム・ボラ
製作国:韓国 / アメリカ
at ギンレイホール



予告編からして絶対面白いとわかるとおり、本編も期待通りだった。
今予告編見直すとどのシーンも泣きそうだ。

冒頭の団地の廊下から見える空が広すぎるのにびっくりする。
手すりの高さが低いのだ。ちょっとよろけたら手すり乗り越えて転落しそう。
この不安定で開放的でちゃっちく小汚い廊下から主人公の顔を映さないまま始まるシーン。
なにか事件でも起きているかのような、家庭背景が薄く見えるような、コントのような、この見事な冒頭でもう引き込まれてしまった。

舞台は1994年のソウル。
14歳のウニ(パク・ジフ)は学校に馴染んでいない。
かといって孤独なわけではなく、頭悪そうだが人のよさそうな彼氏がいるし、漢文塾では他校の生徒で親友とも呼べる間柄の友だちもいる。
姉は親の目を盗んで学校をサボりがちで夜遊びばかりしている。
兄はソウル大を目指して猛勉強中。あまり成績はよくなさそう。
両親は兄にめっちゃ期待していて娘たちには結構無関心。
そんで思いっきり家父長制な家族。1994年だよな。この家族だけじゃなくて一般的っぽい。
っていう背景にいる少女の数ヶ月?間の日常が描かれる。

恋、死、友情、家族、病気、暴力、憧れ、同性愛、etc...
どれも日常で起こりうることだけど濃すぎる。。
なにより14歳界隈の残酷さがなんともいえない。
野暮ったい後輩の子の憎たらしさよ。

1シーン1シーンをこれでもかというくらいゆったりと長い時間をかけている。
最近の映画じゃ考えられないくらい。
ウニが食事をする様子をこれでもかというくらいずっと見つめる母親とか。
このシーンいるのっていうのとか、何このシーン怖いんだけど(外で母親に呼びかけるが母親が一向に気付かないシーンとか)っていうのとか、本当面白い。

監督はこれが長編デビュー作らしい。
こなれていくとつまらなくなっていきそうな気もするから少し心配だが次回作が楽しみ。
というか公式ページみたらなにこの人、凄い美人。

以下、ネタばれ

最後のウニの表情がなんともいえないくらいいいのだが、後ろの子たちが気になる。
そういえばクラスメイトはそれまでほとんど映されていなかった。
後ろの子たちは二人ともふくよか体型のメガネで、中学生って普通こうだよな、っていうのを最後に唐突に認識した。
後ろの子たちに比べてウニの異常なまでの成熟ぶりを強烈に感じる。
ウニのような体験をする子は多くないし、クラスメイトたちも今を全力で生きているはずだが、ウニほど傷ついていないという点でウニだけが別種族になっている。
そしてなによりもウニが可愛すぎるのだ。こんな美少女普通いないだろ。
そういう意味でも後ろの子たちとの対比が強烈だった。

2020年11月7日土曜日

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

2019年 監督:グリンダ・チャーダ
製作国:イギリス
at ギンレイホール



1987年のイギリスの田舎町ルートン。
ジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)は高校生になるが、子供の頃からの親友マット(ディーン=チャールズ・チャップマン)は彼女ができていい感じなのに自分は厳格な父親のもと夜遊びもできずになんだか冴えない毎日を過ごしていた。
趣味といえば鬱憤をはらすかのように詩を書くことだけ。
そんなジャベドがブルース・スプリングスティーンに出会う!

なんか最高にハッピーで楽しい映画で面白かった。

1987年でもうブルース・スプリングスティーンは古い扱いになっちゃうんだね。
80年代ならデュランデュランとかワム!だのカルチャークラブだのそういうおしゃれ系が流行りだしていた頃ならたしかに古いかも。
そんな若者にはウケないブルース・スプリングスティーンにはまった青年の人生が明るくなっていく様は見ていて楽しい。
シャツの袖切るのも笑える。
そして彼女(ネル・ウィリアムズ)がいい感じにへちゃむくれかわいい。リボンとかキュート。

明るくなるといってもパキスタン移民で立場も弱い家族にふりかかる問題は深刻。
だけどブルース・スプリングスティーン!
道を切り開いていくぜ。

中盤あたりの『Born to Run』の青春MVみたいなやつが最高の山場だった。
ここ見るだけでも価値がある。
『Born to Run』の後半の音階が下がっていくところ、って天才だよなぁ。

実在の人物の回顧録が原作で、最後の写真はほっこりする。

長らく聞いていなかったけど家帰ってMD漁ってやっと見つけた。しばらく聞く。

映画『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

2018年 監督:グザヴィエ・ドラン
製作国:カナダ / イギリス
at ギンレイホール



人気俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が若くして死亡したというニュースが流れる。
彼には100通以上もの手紙をやりとりした文通相手がいた。
それが11歳の少年だったルパート・ターナー(ジェイコブ・トレンブイ)。
大スターだが母と確執があってゲイを隠していてとかいろいろ悩みをかかえながらも優しく美しい微笑みでいいヤツで少しも奢りのない青年と、母子家庭でいじめられっ子でこちらも母と少し微妙な距離ができている少年の二人の物語。

少年の母親役がナタリー・ポートマンなのね。
最近見たスカーレット・ヨハンソンもそうだけど、母親役が普通にしっくりきている年齢になったんだな。

ドノヴァンの母親の方はスーザン・サランドン。若い。

いじめっ子のバスの後部座席から煽りまくる憎たらしさとか、優しいドノヴァンがぎこちなくブチ切れるところとか、ナタリー・ポートマンの笑顔とか、ちょい役でただならぬ雰囲気を醸し出すマイケル・ガンボンとか、印象的なシーンは結構あったけど内容の詳細は忘れた。
まあ、面白かったと思う。

あとインタビュアーの、主義に合わない仕事は受けないみたいな、欧米では当たり前にこういう人いるんだろうな。
ちやほやされてる馬鹿なスターのインタビューなんてちゃんちゃらおかしいぜって感じで本も読まずに適当に仕事しようとするのがプロか。
あの説得で納得しちゃうほど軽い主義。

2020年10月24日土曜日

映画『1917 命をかけた伝令』

2019年 監督:サム・メンデス
製作国:イギリス / アメリカ
at ギンレイホール



この予告編の最後の戦場走っているシーン見てすごい楽しみにしていた。
いやー面白かった。
できればあの走っているシーンは予告編じゃなくて本編で初めて見たかったな。

第一次大戦中の西部戦線。
その最前線では1600名にもなる連隊が今まさにドイツ軍の罠にはまろうとしていた。
航空偵察でドイツ軍の策略に気づいたイギリス陸軍は連隊に作戦中止を告げたいが連絡手段の電話線が切られてしまっている。
だから伝えに行ってね、と命令されたのが若い二人の兵士。
1600名の命を救うために彼らはどこに敵がいるかもわからない戦地を最前線まで命をかけて駆け抜けていく。

トレマーズとかゾンビとか、そういうモンスターパニック系映画に近い感じ。
面白かった。

予告編で全編ワンカットと言っているのも気になっていて、戦争系映画でそんなことできる?と思っていたけど実際にはだぶんワンカット風であってカットは入っている、はず。
最初の方の爆発で崩れて生き埋めのシーンとか、あれワンカットだったら本当に崩れてきた瓦礫で生き埋めになる必要があるし危険すぎるしね。
あと昼から夜になっているところとか川に飛び込むところとか。
それでも圧倒的に長い長回しの連続なので本当にすごいし、押しつぶされそうな緊迫感もある。
そして夜の破壊された市街地のあの照明の明滅の美しさ。

予告編にもあるあの飛行機のシーンすごいよね。
どうなってるんだろう、飛行機と人物を別撮り?

以下ネタばれ

腹さされてぽっくりいく奴もいれば、銃で撃たれても平然としているやつもいる。
不死身の杉元。
他の動画見ていたら、撃たれたのはヘルメットだったっぽいな。だからふっ飛ばされて気絶して確実に撃たれたように見えたけど無傷だったのか。

映画『ジョジョ・ラビット』

2019年 監督:タイカ・ワイティティ
製作国:ドイツ / アメリカ
at ギンレイホール




ビートルズかかるし英語だし、で、戦後アメリカのナチス好き少年の話だったかな、と思ったけど戦時中のドイツの話。
10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)はナチスに傾倒し、不在の父親の代わりかのようにイマジナリーフレンドを持っている。しかもヒトラーだしwww
立派な兵士に憧れるジョジョだけど、皆の前でうさぎを殺すことができずに“ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられてしまう。
で、なんだかんだで家にユダヤ人少女が匿われていて、彼女を敵視蔑視していたジョジョだけど次第に、、って話。

残酷な部分もあるけど戦争映画というかだいぶコメディーより。

母親(スカーレット・ヨハンソン)の靴をよく映すなぁと思っていたらそういうつなげ方か。

ユダヤ人少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)は過酷な状況なのに、なんだろう、危機感無くね、と思ってしまった。
簡単に隠れ部屋の外にでるわ、ジョジョを挑発するわ。

少年たちの指導役のクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)がかっこいい。
戦いに赴く時の化粧と格好と生き生きとした表情が笑いと哀愁とかっこよさの絶妙なバランス。

2020年10月10日土曜日

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

2019年 監督:グレタ・ガーウィグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール



135分あるけど、その長さが冗長じゃなくて充実と感じるほど濃厚で面白かった。
若草物語って原作でもアニメでも映画でも、そういえば見ていないな。
原作読んでいる人はこのアレンジを概ね絶賛しているっぽい。
原作知らなくても楽しめる。

面白いストーリーに自然の風景、建物、衣装、家具小物が色を添える。
そしてなんといっても主演のシアーシャ・ローナンがいいよな。
さっきのアルバ・アウグストといい、女優は美人過ぎないほうがいいのか。

あとぽっちゃり体型太眉ぱっつん前髪のエイミー(フローレンス・ピュー)が可愛い。
ジョーとローリーのあとを追って氷の上をたどたどしく進む可愛さよ。
その体重のせい?で落ちたときと駆けつけるジョーの二人の姿には泣ける。

映画『リンドグレーン』

2018年 監督:ペアニル・フィシャー・クリステンセン
製作国:スウェーデン / デンマーク
at ギンレイホール




数々の名作児童文学で知られるスウェーデンの女性作家アストリッド・リンドグレーンの半生を描いたもの。

主演のアルバ・アウグストがとにかくやばい。
登場シーンはなんかへちゃむくれた表情だし可愛らしさもないのでどうなんだろうと思ったけど、次第に彼女の一挙手一投足から目が離せなくなる。
可愛くはなかったはずなのに中盤以降なんか物凄く美しく見えるし。
すごい女優がいたもんだ。

やばいといえば編集長がやばいよな。悪い人ではないけど。

2020年9月26日土曜日

映画『ジュディ 虹の彼方に』

2019年 監督:ルパート・グールド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




昔タップダンス目当てに『オズの魔法使』を見たのに、ジュディ・ガーランドの歌声、存在感、愛らしさに圧倒された思い出がある。
『オズの魔法使』は見た人全てがジュディ・ガーランドのファンになるという特殊な映画。
そんなジュディ・ガーランドの晩年のロンドン公演を描いたのがこの作品。

晩年のことをあまりよく知らなかったけど、住む家が無いとかショック。
オズの頃から会社からの強い圧力で蝕まれていたのか。。
知りたかったような知りたくなかったような。

主演はレネー・ゼルウィガーで本人が歌っているらしい。すごいね。

あとロンドン公演でマネージャみたいなことしていた人がすごく魅力的だった。ジェシー・バックリー。
出演作はあまり多くなさそう。『ワイルド・ローズ』は面白そうだな。

映画『スキャンダル』

2019年 監督:ジェイ・ローチ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール



2016年に実際にFOXニュースで起きたセクハラ告発を扱ったドラマ。
シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの共演。
シャーリーズ・セロンとかニコール・キッドマンがなんとなく違和感あったのだけど、なんか本人に似せるために特殊メイクしているらしいね。
それにしてもシャーリーズ・セロンが美人すぎる。
彼女が演じたメーガン・ケリーという人も調べてみると結構な美人だった。
なんか2018年にケリーが人種差別を養護する発言で解雇されたとかなんとかでそんなこともあってシャーリーズ・セロン自身はケリーにあまりいい印象を持っていないらしい。

会社全体で蔓延するセクハラFOX。
最近日本にうんざりしていたけどどこの国も似たようなもんだ。

映画自体はまあまあ面白かった。

2020年9月14日月曜日

映画『娘は戦場で生まれた』

2018年 監督:ワアド・アル=カティーブ、エドワード・ワッツ
製作国:イギリス / シリア
at ギンレイホール


 

2011年のアラブの春から続くシリアの内戦をアレッポに住むワアドが収めた記録。
一体何体の死体が映し出されたんだろうというくらい人がたくさん死んでいる。
そんな中で生まれる生命もある。
なかなか見応えがあった。

で、些細な話だけど、疑問点等をメモっておくと

時系列があっちこっちに飛びすぎて混乱する。なぜ時系列どおりに映さないのか。

映画で泣き叫ぶ母親を見ると条件反射で泣いてしまうから、これも何度も泣いたのだけど、それにしても息子を自ら運ぶ母親とか、全部撮ってよ!と叫ぶ母親とか、どことなくB級監督が演出したドラマのような雰囲気がするのは何だろう。実際に亡くされているのに申し訳ない。

住処を離れるのはつらい、政権に屈するのはつらい、ってのは分かるけど、家族の命のほうが何より大事じゃないかと思う。なぜアレッポを脱出しない。

ドローン使ったりとか、映像にこだわる必要は全くないのになぁ。胡散臭く見えてしまう。

あんなに若いのに主要な医師の座に収まるのは、救急病棟の比じゃないほどの経験を積むからだろうか。

映画『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

2018年 監督: ジョン・チェスター
製作国:アメリカ
at ギンレイホール


 

野生動物のカメラマンをしていたジョンとその妻で料理研究家のモリーは、東京ドーム17個分もの広さを持つ荒れ地を購入して農場を始める。
伝統農法を活用した事前と共生する農場を目指して、二人の苦労と喜びが綴られる。

桃が虫に食われまくる。だから農薬ばらまく。
コヨーテが家畜を襲う。だから射殺する。
ではなくて、何にどんな不利益を被ろうが人工的な力は一切使わない。
増えすぎた生物には天敵がいるし、コヨーテだって数が減れば弊害も出る。
(弊害っていい方が人間視点だけど)
そうやって自然のサイクルができあがれば多種多様な生物に溢れた豊かな農場ができあがる。
ってことなんだけど、果実は鳥や虫に食われるために甘く実っているのに食われない果実がたくさん残ったらそれはもう自然のサイクルから逸脱しているような気もしないではない。
育った農作物を人間様が摂取するっていう目的がある時点で完全に自然と同一にはならないものの、こういう生命のバランスを見ていると、増えすぎてバランスを崩しまくっている人間は誰が減らすのだろうか。人間?

動物カメラマンだけあって、生物達をきれいに撮る。
虫嫌いだけど昆虫って綺麗だよね、と思えてしまう。

2020年8月29日土曜日

映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

2019年 監督:ライアン・ジョンソン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




世界的ミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が85歳の誕生日の日に自殺した。
自殺、なのだが匿名の依頼を受けて探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が真相を究明していく。

謎解きというか中盤で自殺の真相は明らかになる。(なんかさっきも同じこと書いた)
中盤ってことはまだ続きがあって。。

笑いも散りばめられたテイストになっているから、家族達の惜しげもない醜さも笑いになる。
欲にまみれた偽善者集団の中にいるからこそ、専属看護師のマルタ(アナ・デ・アルマス)の天使っぷりが際立つ。
アンクルパンツ姿がかわいい。
アナ・デ・アルマスのかわいさとその奮闘ぶりを見るだけでも価値のある映画。

ブノワ・ブランの登場シーンは後方でふんぞり返って時折いやがらせのように単音をならしてなにこいつっていう印象的な入りから、実は優秀な探偵っていう流れは結構好き。

それにしてもあんなに似たような瓶を特に確認もせずに使うなんてありえなくないかと思うけど、そこは終盤で説明があって、、、って、そういうもんなの?

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』

2019年 監督:レジス・ロワンサル
製作国:フランス / ベルギー
at ギンレイホール




世界的ベストセラー3部作の最終巻がいよいよ完成する。
世界同時出版を目指して9カ国の翻訳家が集められる。
そして洋館の地下に閉じ込められる。
原稿の流出を防ぐための処置。
なのにあっけなく流出。
犯人は誰だ~~

実際ダ・ヴィンチ・コードシリーズ4作目がこうやって翻訳家達を地下に閉じ込めて翻訳させたみたいね。

結構中盤に種明かしがあるけど真相はまだまだ続く。
最後に犯人がアングストロームに真相を明かしてドヤ顔するのが小生意気でいきいきしすぎて楽しい。
ネズミでパニックになった程度でかばんをすり替えられるかよ(むしろ周りがパニックになったら余計かばんを守ろうとするんじゃないか)と思ったけど、そういうことね。

9人の翻訳家達の人物像をもう少し見たかった。
イタリア男なんかただ最悪だったし。なんの根拠もなくすぐ暴力ふるって明らかに知性が足りない。
入れ墨だらけのポルトガル語担当なんか翻訳家に見えないんだけどどういう人生を歩んできたのか。。

2020年8月15日土曜日

映画『ジョーカー』

2019年 監督:トッド・フィリップス
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




事前に予告編見ていたけど、バットマンのジョーカーが主役のエンターテインメント系映画なのかと思っていた。
それであまり気乗りはしなかったのね。
でもこの階段で赤スーツのピエロが両手上げているポーズの写真見たら俄然興味が湧いてきた。
https://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/news/?id=19

どう考えても名作じゃん。こんな写真がある映画。
で、本編見たらやっぱり面白かった。というか悲しかった。
雰囲気はアメリカン・ニューシネマに近い。

バットマンのジョーカーじゃなくてそのジョーカーに似ているからジョーカーとあだ名されたのね。
と納得していたら、調べてみるとやっぱりバットマンのジョーカーで、ジョーカーの誕生を描いたオリジナルストーリーらしい。
そういう前提で見たらまた違っていただろうな。
もう早々にバットマンのジョーカーは関係ないと思ったから、途中の展開は驚きだし、アーサーがただただ悲しい。

80年代くらいなのかな。
コメディアンを目指す青年アーサー(ホアキン・フェニックス)は脳に欠損があって、突然笑いが止まらなくなる時がある。
公共のカウンセリングを受けながらもピエロの仕事をせっせとこなして年老いた母の面倒を見る日々。
どっからどうみても心優しい男。
しかし世の中には悪意や差別がうずまいている。
社会の底辺に生き、しかもガリガリにやせ細った彼には何も抗う手段がない。
しかしある時同僚から身を守るためと言われて拳銃を渡され、そこから歯車が狂い始める。

ホアキン・フェニックスが凄まじい。
トラウマになるレベル。実際彼の表情を思い出すたびに悲しい気分になる。
あの走り方もなんだ。素じゃなくて演技でやっているなら天才か。
予告編見返していたら、ガキどもに看板奪われるときの一瞬の「ああ」っていう表情すごいな。泣きそう。

病院の出口専用のドアに何度もぶつかっていくシーンが印象的。
赤スーツ黄色ベスト緑シャツでピエロメイクって最高にかっこいい。
この完璧ファッションで楽しみにしていた階段のシーンに突入したときは、ああ、と泣きそうになったのにすぐスローモーションに入って早く終わらないかなと思っていたらそのまま階段シーンも終わってしまって消化不良だった。
消化不良といえば病院で踊っているシーンももっと見たかったんだけどなぁ。

ホアキン・フェニックスに劣らず存在感を出していたロバート・デ・ニーロ。
司会番組の登場シーンで音楽の終わりに合わせて両手を広げるおどけっぷりに笑った。

以下ネタバレ

なんといってもその死に様。
驚いた表情で一瞬にして死をさらすその姿態(死体)が最高に美しい。
まるで何百回も死んだことがあるかのようだよ。

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

2019年 監督:クエンティン・タランティーノ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




タランティーノの初期2作は見ていないというのもあって特に思い入れもない、というか映画オタク達が毎回分析しているようにいろんなものが散りばめられていてなんか面倒くさいという印象が強い。
毎回それなりに面白くは見ているけど、この映画161分もあるらしいということで併映の『ジョーカー』も長いので正直今回タランティーノはスキップしようかとも思っていた。
なのになんだこれ、今まで見たタランティーノ作品の中では最高に面白かった。

舞台は1969年のハリウッド。
たばこぷかぷかで喜怒哀楽が激しい熱い時代。
落ち目のTV俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とそのスタントマンで親友でもあるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)の二人が物語の中心となる。
プラス、リック・ダルトンのお隣に引っ越してきたロマン・ポランスキーの妻であるシャロン・テート(マーゴット・ロビー)も準主役。

冒頭からアル・パチーノ。背低いな。

前半は主にリックの不安や奮闘が中心となる。
リックの主演作がどれも面白そう。
火炎放射器のやつはB級っぽいし、西部劇はちゃんと本格西部劇っぽい。
リックの劇中劇の撮影シーンはリックだけ声が一際でかい。
落ち目とはいえさすが有名俳優、声のはりが違う、すごい迫力。ってことでいいんだよな、逆にその声のでかさが大根扱いにもなりうるのだろうか。
リックの共演者の大人びた少女がかっこいい。ジュリア・バターズ。

途中ラフな格好したヒッピーの少女たちがまぶしいくらい健康的に映し出されてなんなのかと思っていたら、このヒッピー達とクリフが関わってくる。
スパーン映画牧場のヒッピーのたまり場のシーンの、それまでと一転した緊張した雰囲気にはぞくっとする。
正確には牧場の前の、クリフが運転しながら助手席の少女の方を何度も見るところから緊張は始まっているんだけどさ。
海外の人って前見ないで運転するよね。超怖い。

予告編にもあるシャロン・テートが自身の出演作を上映している映画館に行って出演シーンのドジなシーンで観客が大爆笑しているのを見て満面の笑顔をするのがとてもいい。
ちょっと馬鹿な感じだけど純粋でとてもいい子すぎて泣けてくる。

以下ネタばれ

シャロン・テート事件ってすごい有名な事件らしいけど、全く知らなかった。
なろほど、そういうことだったのか。
単に圧倒的な暴力を描きたかっただけかと思っていたよ。
人の後頭部を掴んで顔面をこれでもかと壁に打ち続けるのって、電車の中とかで自分勝手な人に被害を被ったときに衝動的な怒りでやりたくなるときもあるけど、思うのと実際やるのは違うよな。残酷。
プールで拳銃撃ちまくる奴から逃げるために倉庫に入っていくリックの後ろ姿がうまい。こそこそっぷりが小物っぽくて笑える。
そんで打って変わってその後の反撃は。。

2020年8月1日土曜日

映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

2018年 監督:ダン・フォーゲルマン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




予告編はちゃんと見ると結構ネタバレしている気もするので見ない方が楽しめるかもしれない。
私は予告編真面目に見ていなかったから、本編の導入部なんて普通にだまされてアネット・ベニングが主役なのかと思ったし。

家族、恋人、家族でもなんでもない資産家、とかいろんな人の人生模様と出会いと偶然。
っていう話。

少し変質者的素質がありそうなウィル・デンプシー(オスカー・アイザック)と、その妻でボブ・ディランを崇拝しているいけいけのアビー・デンプシー(オリヴィア・ワイルド)の夫婦に始まり、
思慮深く見えるが頭はよくなさそうで暗いのか明るいのかもよくわからない謎のむきむき男ハビエル・ゴンザレス(セルヒオ・ペリス=メンチェータ)と、笑顔が太陽のように弾けて若々しいイザベル・ディアス(ライア・コスタ)。
嫌いな父の遺産を継いで資産家になった尋常じゃなく色気を放つサチオーネ(アントニオ・バンデラス)。(まじか、アントニオ・バンデラスだったと今知った)
孫を溺愛するけど非行少女っぽくなった孫にちょっと苦笑いのアーウィン・デンプシー(マンディ・パティンキン)。
で、いい子なのかやばいのか神のみぞしる孫ディラン・デンプシー(オリヴィア・クック)と、トラウマ克服好青年ロドリゴ・ゴンザレス・ディアス(アレックス・モネール)。
と、一体西暦何年だよっていう女。
が主な登場人物。

ロドリゴの彼女の天然がキュートだった。

映画『男と女 人生最良の日々』

2019年 監督:クロード・ルルーシュ
製作国:フランス
at ギンレイホール




『男と女』を見たのは大昔すぎて何も覚えていない(というか大分寝たような記憶がある)けど、なかなか面白かった。

主演二人がご健在な上、続編映画まで撮ってしまうっていう奇跡。
老境にあって若い頃を振り返る。
いつまでも若くそして老いている。

アヌーク・エーメなんて70前後くらいに見えるけど、確か『男と女』は60年代くらいだった気がするから80くらいなんだろうか、いやヌーヴェルヴァーグ時代から活躍しているからもっと。。と思って途中で考えるのをやめて見ていた。
調べたら1932年生まれだから90近いんだけど。見た目が若すぎる。髪ふさふさ。

正確には忘れたけど
「あなたは私よりずっと若く見える」
「化粧しているからよ」
「いや、落ちつているからかな」
という言葉を受けてアヌーク・エーメがピューっていうような面白い声とおどけた顔をするのね。
その仕草が本当凄い女優だと思って少し感動した。

最後の方で昔のパリの街を疾走する映像が入るのは、なにからの引用だろう。
朝方で人が少ないときなのかもしれないけど、信号無視しながら猛スピードで街中を駆け抜けていて凄いスリル。でも狂っているwww。


2020年7月18日土曜日

映画『リチャード・ジュエル』

2019年 監督:クリント・イーストウッド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




オリンピックのイベント会場でいち早く爆弾(の可能性があるもの)を発見したリチャード(ポール・ウォルター・ハウザー)は一躍英雄となるが、マスゴミやら無能FBI職員によってその後に容疑者という全く真逆の目で見られるようになる。
無実の罪をあつかった実話もの。

主人公が悲劇のヒーローであるわけだけど、人物像が特殊で面白いのね。
戦争中なら国のため正義のためと言って平気でひどいことしそうな感じ。 逆にこの盲信さが人々を救ったとも言える。
そしてテレビに写った顔写真は犯人そのものwww

弁護士ワトソン(サム・ロックウェル)がかっこいい。
超ラフな格好で知的な仕事をしているのはいいよな。

元凶の一人記者のキャシー(オリヴィア・ワイルド)の下品っぷりが凄まじい。
とはいえ弁護士ワトソンと対等に口喧嘩(むしろ押してるくらい)しているシーンだけはよかったな。
キャシーの後半はギャグかと思った。そういうキャラじゃないでしょうに。

リチャードの母親役にキャシー・ベイツ。
息子への愛情とか、その後の悲しむ姿とか胸が痛い。

映画『家族を想うとき』

2019年 監督:ケン・ローチ
製作国:イギリス / フランス / ベルギー
at ギンレイホール




この予告編でもう名作だよね。
初めて予告編見たとき、なにやら家族が崩壊寸前な雰囲気の中「私の家族をナメないで」というセリフに泣きそうになる。
予告編はいつもメガネ外してみているから娘が言っていると勘違いしていたけど。娘はまだ小学生くらいで幼いのでそんなセリフ言わない(言う機会がない)。

予告編が素晴らしいと本編はつまらないときが多けど、これは本編ももっとよかった。
原題は『SORRY WE MISSED YOU』なのね。
宅配の不在票の常套句だけど、冒頭のタイトルバックでみたこのタイトルが登場人物一人一人にことあるごとに蘇ってきては泣けてくる。
絶対原題のほうがいいよ。

イギリスニューカッスル。
職を転々としたあと個人事業主のような自らの裁量と頑張りで売上を伸ばせるという宅配ドライバーの仕事につくリッキー(クリス・ヒッチェン)。
妻アビー(デビー・ハニーウッド)と共働きで、アビーは介護士をしている。
高校生の息子セブ(リス・ストーン)は少しグレがち。
娘のライザ(ケイティ・プロクター)は癒やし。
念願のマイホームを手に入れるべく、必死に配達を続けるリッキーだが、朝から夜中まで労働時間(14時間)があまりに過酷。
妻は妻でお客からの信頼も厚い優秀な介護士だが、ただでさえ過酷な労働時間なのにその優しさから休憩時間やプライベートまで削ったりする。
両親ともに過酷な長時間労働に出ていて、いい年した息子がグレるのもなんとなくわかる。
個人事業主みたいなもんのはずだったのに、そこに自由は無く一日でも仕事に穴を開けると多額のペナルティが取られる。
個人事業主なんて名ばかりで結局会社が負う責任を労働者に押し付けただけの低コスト搾取システムだった。
家族のためのマイホームに向けて頑張っていたはずなのに、家族はどんどん崩れていく。

介護士やっている妻アビーが本当天使かと思う。
おばちゃん顔なのに、あのふんわりした声やら優しい微笑みで最高の天使になる。
だから「私の家族をナメないで」とブチ切れるところとその直後のシーンは泣ける。
介護士が過酷な上薄給というのはどこの国も同じなのかな。

そして娘もまた天使なのね。
「ケンカしないで」って叫ぶ純粋な悲しみに泣ける。(泣いてばっかりだ)

セブ君はぶんなぐってやりたい時も何度もあるけど、家族に対する愛情はしっかり持っていたりする。
鍵が盗まれた展開は秀逸で、誰もが勘違いしたあとで真相がわかると感情が複雑にがらっと転換する。

セリフ忘れたけどこんな感じのやりとりもよかったな。
アビー「お母さんと目も合わせてくれないの?」
セブ「顔を向けられない」

2020年7月4日土曜日

映画『テルアビブ・オン・ファイア』

2018年 監督:サメフ・ゾアビ
製作国:ルクセンブルク / フランス / イスラエル / ベルギー
at ギンレイホール




イスラエルとパレスチナ。。
そしてこのタイトル。
でもコメディ。
テルアビブ・オン・ファイアは劇中のパレスチナの人気メロドラマのタイトル。

パレスチナ人青年のサラーム(カイス・ナシェフ)は、叔父がプロデューサーをしている人気ドラマにヘブライ語の指導として働き始める。
サラームはエルサレムに住んでいるので毎日イスラエルの検問所を通るのだが、この検問所のイスラエル軍司令官アッシ(ヤニブ・ビトン)に脚本家と間違われて興味を持たれる。
アッシの妻がドラマのファンなのでいいところを見せたいアッシはサラームにアイデアを押し付けるのだが、これがいい方向に転じてサラームは脚本家へと昇進して。。

サラームが長身痩せ型でなんか非常に冴えない顔をしている。
もともと自分のアイデアではないし脚本家の才能もなさそうで、アッシに助言を求める始末なんだけど、気づいたらめきめき頭角を表してくるところが面白い。

土地柄の社会問題関係もふんだんに織り込まれながら誰でも笑えるコメディに仕立て上げているから凄いよな。
劇中ドラマ自体はパレスチナ人の女スパイがイスラエルの将校に接近して暗殺するはずが恋してしまい、みたいなメロドラマ。
アッシは二人を民族の垣根を超えて結婚させろと言う。力を持った支配者側の論理。
パレスチナ側のスタッフ達は冗談じゃないと突っぱねる。
比較的若い世代のサラームはその板挟みで悩む。
その悩んだ末の結末も面白い。

フムスって料理はアラブ料理なんだね。
フムスを好むイスラエル将校。
制作しているメロドラマはイスラエルの人たちも見ていて人気だったりするし、そんな文化的交流もさらっと盛り込まれている。
歴史背景をもっとよく知った上で見るとさらに面白そうだとは思う。

映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

2019年 監督:ジョナサン・レヴィン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




記者のフレッド・フラスキー(セス・ローゲン)は自分の信念を貫いて失業。
そしてやさぐれているときに友人に連れて行かれたパーティで初恋の人と再会する。
しかしその人シャーロット・フィールド(シャーリーズ・セロン)はなんと国務長官。

逆シンデレラストーリーとでもいうのか。
冒頭からスリリングな展開でハイテンションに楽しめる。
下ネタも満載で、大統領選挙の演説でオ○ニーなる用語が飛び出したりとかなんでもありだよ、もう。
お付きの人たちのドライな肉体関係を見たフレッドが「おうぅ!気持ち悪い!」というのもひどく失礼だけど素直すぎて笑える。
変装してパーティではしゃいでドラッグ決めたりとか、もうとにかく自由すぎて心配にもなってくるけど、真面目すぎて無能な人よりよっぽどいい気もしてくる。

2020年6月20日土曜日

映画『イエスタデイ 』

2019年 監督:ダニー・ボイル
製作国:イギリス
at ギンレイホール




ある日突然ビートルズが存在しない世界になった!
っていう設定自体がめっちゃ面白い。
予告編見たときから楽しみで、実際本編もすごく面白かった。

売れないミュージシャンのジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)は幼馴染で親友のエリー(リリー・ジェームズ)にマネージャをしてもらいながら音楽活動を続けていた。
しかし限界を感じて夢を諦めかけたとき、世界で謎の停電が発生する。
そして暗闇の中車に轢かれるジャックwww
目が覚めると誰もビートルズを知らない世界だった。

ビートルズ愛が溢れに溢れている。
映画の中の人物のように初めて聴くみたいなスタンスで改めて聴くと、どれもこれも名曲すぎて新鮮に感動する。

ビートルズのいない世界でビートルズの曲を残す重要な役割を担うのがインド系でスターっぽくはない顔立ちのジャック、ってところが面白い。
劇中でもあなたのルックスが。。みたいなひどいことを散々言われるんだけど、ルックス関係なく曲の素晴らしさだけで売れていくっていう。

ビートルズがいなかったら他のミュージシャンの曲もだいぶ変わってそうだよな。

そしてなによりエリーの可愛さ!
ぽちゃっとして健気でよく笑い可愛くて可愛い。
リリー・ジェームズの最高傑作になるだろう。

エド・シーランが本人役で出演している。
Hey Dude 。。。やってくれるぜ。

最高イメージ戦略会議だっけ、そんな大人数の会議のシーンは面白かった。
だいぶ皮肉をこめてユーモラスに描いているけどアメリカでは実際あんな感じの会議が開かれているのだろうな。

ロバート・カーライルがどっかに出ていたらしい、と調べてみたらジョンか。。気づかなかった。

2020年6月13日土曜日

映画『レディ・マエストロ』

2018年 監督:マリア・ペーテルス
製作国:オランダ
at ギンレイホール




女性指揮者のパイオニア、アントニア・ブリコの伝記。
ニューヨークに住むオランダ移民のウィリー(クリスタン・デ・ブラーン)は指揮者になる夢を持っている。
しかし音楽学校に通っているわけでもないしなんの伝手もない。
それに女性が指揮者になるなんてありえないし笑えるぜ、という時代。
そんな彼女の苦闘の日々と幸運と成り上がり?が描かれる。

139分あるのに飽きなかったものの、そんなには面白くなかったかな。

コンサートホールのスタッフであるのに、会場通路の先頭に椅子をおいて堂々とコンサートを聞こうとするその厚かましさで何こいつって思う。
主人公なのに印象最悪な出だし。
(ちなみにこの行為は最後の方でつながるっていうどうでもいい仕掛けもある)

一番の謎はいかにも裕福なぼんぼん顔したフランク(ベンジャミン・ウェインライト)の一体どこに惚れたのか。
フランクという男自体の魅力が薄いしウィリーとそんなに近しくもなかったのにいつの間にか恋仲になっている。
恋は突然に
ってやつか。
ロビン(スコット・ターナー・スコフィールド)の方が圧倒的にいい奴なのに、って観客は皆憤慨するでしょ。


以下ネタバレ

フランクの結婚話を聞いたときのウィリーの慌てぶりも謎。
音楽を取ったんじゃないのか?
なんでそこで錯乱する?
未練たらたらになるほどの男でもないし。

あと、エンドロールあたりで、世界の偉大な指揮者20人に女性指揮者はいないとか、なんとかかんとかに女性の指揮者はいないとか、つらつら挙げられていたけど、どういう意味?
今でも指揮者は男性が優遇されているってこと?それとも今の時代でも女性指揮者が少ないことから女性は指揮者に向いていないってこと??

2020年3月21日土曜日

映画『パリの恋人たち』

2018年 監督:ルイ・ガレル
製作国:フランス
at ギンレイホール




75分という短さ!潔い。
でも75分でもなんか長い。

主人公アベル(ルイ・ガレル)は同棲中のマリアンヌ(レティシア・カスタ)からひどい裏切りを受けて別れる。
ブチ切れてもいいのにアベルはなんか「へーそうなんだー、じゃあしょうがないね」みたいな淡白な反応。
数年後再会した二人はなんかいい感じになってそこにマリアンヌの夫(アベルの親友でもある)の妹で昔からアベルが好きだったエヴ(リリー=ローズ・デップ)が絡んでくる。

冒頭のアベルの反応が全てを表しているように、アベルって奴は主体がないというか、なんでも普通に受け入れ、怒らず、人の言うままに流され、っていう人物像で、欧米では珍しいタイプなんだろうな。
日本人から見ると別に普通なので、ちょっといらつきながら見るっていう程度だけど。

エヴが怖い。
このくりくりしたくっきり二重の大きな目とか白い肌とか細身の体がサイコパスを際立たせる。
えっ、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘なのか。

監督主演のルイ・ガレルはフィリップ・ガレルの息子。
右頬のほくろがずっと気になってしまった。

映画『真実 特別編集版』

2019年 監督:是枝裕和
製作国:日本 / フランス
at ギンレイホール




木々が風にそよぐ冒頭のシーンから是枝監督って感じで安心する。
日仏合作で舞台はフランス。
主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。
共演でジュリエット・ビノシュとイーサン・ホークが夫婦役!
あとリュディヴィーヌ・サニエも出ているたようで、必死に思いだしたら撮影シーンにいた中堅女優だな。老けた。

で、面白かったかというと少し微妙で結構うとうとしてしまった。
あるあるみたいな会話劇も字幕を目で追っているせいかあまり乗れず。
というか結構な映画知識が要求されていて知っていないと楽しめない部分も多々あるように感じる。
カトリーヌ・ドヌーヴが演じるファビエンヌが、実力のある女優は皆イニシャルの姓名が同じなのよ、ってことでグレタ・ガルボ、シモーヌ・シニョレとかあとアヌーク・エーメもそうねとか話しているときに誰かがブリジット・バルドーって言うとファビエンヌが鼻で笑う。
ブリジット・バルドーの演技的評価が一般的にどうなっているのか知らないしそれほど作品も見ていないから分からないが、なんとなくそのグラマラスな容姿だけで人気があったって位置づけなのかな、って想像する。
本当はよく分かっていないのにこの想像で知ったふうにして笑うという気持ち悪さ。
他にも気づかないだけで実はいろんな要素が散りばめられているのかもしれない。
サラに相当するような存在がカトリーヌ・ドヌーヴに実際にいたのかなぁとか。

2020年3月8日日曜日

映画『ガーンジー島の読書会の秘密』

2018年 監督:マイク・ニューウェル
製作国:フランス / イギリス
at ギンレイホール




124分あって、予告編見る感じだと90分くらいで十分そうな話だよなと思って憂鬱だったが、少しも飽きず、なかなか面白かった。

第二次大戦終結後のロンドンで、女性作家のジュリエット(リリー・ジェームズ)はガーンジー島の読書会のメンバー、ドーシー・アダムズ(ミキール・ハースマン)からの手紙を受け取る。
大戦中はドイツ占領下にあったガーンジー島で行われていた読書会やそのメンバーたちに惹かれたジュリエットは彼らに会いに行く。
メンバー達に会ったジュリエットだが、創始者のエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)だけなぜか会えない。
エリザベスがいない理由、いない理由を語れない理由とは何か。
その謎が少しずつ顕になるのと、読書会メンバー達の絆が見えてくるのと彼らとジュリエットの交流が深まっていくのが同時に進行していく。

謎といっても聞けば気軽に途中まで喋ってくれる。いい人たちだ。
なにか壮大な秘密があるとかではなくて、いきなり外からやってきた見知らぬ奴に話すにはなかなか突っ込んだ話だからってことみたい。

婚約者のシドニー・スターク(マシュー・グード)は悪いやつじゃないのにな。
ただし顔はなんか嫌な奴なのでこれでよかったのだろう。

それにしても主演のリリー・ジェームズが美しすぎる。
こんな作家いるかよと思いつつも、どの角度から見ても美しくチャーミングなりリーを見ているだけでも124分が足りないくらいだ。

外出禁止の夜中にドイツ軍に見つかった時は、あ、即撃ち殺される、って思ってしまった。(ホテル・ムンバイ脳から抜け出せていない)
即撃ち殺さないなんてドイツ軍優しいな。


今回のギンレイ二作は危険を顧みずに人を助ける繋がりか。

映画『ホテル・ムンバイ』

2018年 監督:アンソニー・マラス
製作国:オーストラリア / アメリカ / インド
at ギンレイホール




インドムンバイの5つ星ホテルが舞台。
2008年に起きた実際起きたムンバイ同時多発テロ事件が元になっている。

めっちゃスリリング!
実話が基じゃなかったら最高のエンターテインメント作品だな。
ゾンビ映画とかトレマーズとかを思い出した。
命がけの鬼ごっこしているような。

人が視界に入ったら即撃ち殺すって、こんな悪役めったにいないでしょ。
そんな犯人達だけど、結構犯人側も詳細に描かれていたりもするところが面白い。
宗教、怖いな。

従業員がお客様は神様ですって言ったのも怖い。
これも一種の宗教だよね。
三波春夫はそういう意味で言ったんじゃないのに。
大体、ホテルの構造とかを知る人間として1人プラスサポートで2,3人残っていればいいんじゃないか。
無理に残ってもただ撃ち殺されるだけのために残ったみたいだ。

一点よくわからなかったのは、特殊部隊がやってくるの遅すぎじゃね。
1300km離れたニューデリーにいる、ってことだけど、東京から鹿児島より少し遠いくらいか。
アメリカから来たの?ってくらい遅い。

内部の情報を何故かリークするバカ客とか、犯人が聞いているかもしれないのにそれを報道してしまうメディアとか、これは実際の話なのかな?

サリー役のティルダ・コバン=ハーヴィーがセクシー。
こういう話なのにセクシー要素も加味するなんてやっぱりエンターテインメントだ。
ちょっと調べていたら、主演のデヴ・パテルと付き合っているらしい。まじか。

2020年2月23日日曜日

映画『第三夫人と髪飾り』

2018年 監督:アッシュ・メイフェア
製作国:ベトナム
at ギンレイホール




19世紀の北ベトナムで14歳のメイ(グエン・フオン・チャー・ミー)は第三夫人として富豪のもとに嫁ぐ。
っていう話。
こういうのって夫人同士の恐ろしい血みどろの戦いが描かれるのかと思ったけど、この風景には例え対比だとしても似合わない。
かといって能天気なだけじゃなくて、この時代の女性の扱い、存在意義、の息苦しさ(生き苦しさ)が主眼になっている。
でもそんな苦悩もこの風景の中では儚い美しさに昇華されるのだけど。
ストーリーというかこの誰が見てもうっとりする映像だけで何度でも見たくなる。

第一夫人は頼れる頬骨ねーさんハ(トラン・ヌー・イェン・ケー)。
第二夫人は魅力的なあごねーさんスアン(マイ・トゥー・フオン)。
で、第三婦人がケロちゃんメイ(グエン・フオン・チャー・ミー)。

冒頭やラストの方等でメイがじっと真正面を見つめる時の表情がすごくいい。
面白かった。


一本目で見た『あなたの名前を呼べたなら』との映像のギャップが凄すぎて一本目の印象が吹っ飛んだな。
インドの雑多な綺羅びやかさがもう少し強ければよかったけどほとんど無機的なマンション内だったし。

映画『あなたの名前を呼べたなら』

2018年 監督:ロヘナ・ゲラ
製作国:インド / フランス
at ギンレイホール




インドムンバイの高級マンションに住む御曹司のアシュヴィン(ヴィヴェーク・ゴーンバル)は住み込みの家政婦を雇っている。
その家政婦ラトナ(ティロタマ・ショーム)は貧しい村の出身で未亡人。村の風習で一生結婚できないらしい。
アシュヴィンは結婚間近だったがいろいろあって婚約破棄。
ラトナは妹の学費を稼ぎつつ自分はデザイナーになりたいという密かな夢を持っている。
気がききすぎるほどよく気が利くラトナ(この辺の描写はさりげなくて巧み)と、ラトナを使用人として差別しない優しいアシュヴィン。
この二人が、、、
ってストーリーの9割書いた気がする。

超高度成長を遂げたムンバイという大都会で生まれた男と昔ながらの風習がそのまま残る村出身の女。
っていう分かりやすい対比だけど、都会側も結構えっ?って感じはする。
日本で言えばタワーマンションの最上階に住んでいるおっさんが若い女性にメイド服着せて住み込みで働かせているようなもんでしょ。
ラトナはメイド服着ないけどさ。
金で雇った女性と一緒に住むっていうのが普通にありえるのはそこに差別があるから。
しょせん使用人は人として見られないから女性であっても手を出すわけがない。
とはいえインドといえばレイプがさかんなのでちょっと心配はしたけどアシュヴィンは紳士。

結局は都会の自由奔放な女より田舎出身の昔ながらの気が利いてよく世話してくれる女がいいよねって話だろうか。
そうじゃなくてラトナだから、という理由に行き着くには二人がどこでどう恋愛感情を育んだのか不明だった。

2つの部屋を壁を通り抜けてカメラが水平移動してアシュヴィン、ラトナをそれぞれ映し出すのはなんか懐かしい。

2020年2月11日火曜日

映画『幸福なラザロ』

2018年 監督:アリーチェ・ロルヴァケル
製作国:イタリア
at ギンレイホール




イタリアの小さな村。
若者のプロポーズのやり方とか、古き風習のいい感じの村。
農園主に収める量がどうのこうのとか話しているので彼らは皆小作人らしい。
裸電球を借り合ったりとか、比較的貧し目だけど幸せそうではある。
この村に皆に頼られているらしい青年ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)がいる。
いや、頼られているというかこき使われているだった。
「私は小作人を、小作人はラザロを搾取する」
当のラザロはこの状況をなんとも思わず、透き通った瞳のまま皆の幸せが自分の幸せかのように働き続ける。
そんな日々も侯爵夫人の息子タンクレディ(ルカ・チコヴァーニ)がやってきたところから転換点を迎える。
なんか携帯電話が出てくるし、実はこれ20世紀後半の話なのね。
この時代にこの昔ながらの村、っていうのはある理由があって。。

人形みたいなのが落ちていったけど崖下の草木がクッションになったとしてもこれ重症でしょ、ってところからパゾリーニかっていうくらい後半加速度的に寓話になっていく。

聖人。
アントニアが拝むところは泣きそうだ。
貧しいがそれなりに幸せだった村と、それが一瞬で崩壊して放り出された人々のそれぞれの未来。
両時代でなにも変わらないラザロ。

ガリヒョロのタンクレディの末路が一番悲惨だったんじゃないだろうか。あの体型。

『存在のない子供たち』でかなり満足してあまり期待していなかったけど、こちらもなかなか面白かった。
ギンレイの今回のプログラムはどちらも1960年前後くらいの香りがする。

ああ、アリーチェ・ロルヴァケルは『夏をゆく人々』の監督か。面白いわけだ。

映画『存在のない子供たち』

2018年 監督:ナディーン・ラバキー
製作国:レバノン / フランス
at ギンレイホール




レバノンで戸籍の無い12歳くらいの少年ゼイン(ゼイン・アル・ラフィーア)が両親を訴える。
僕を生んだ罪で。。

感動的に仕上げたエンタメ作品かと思ったらそこそこアート寄りで、途中から気を入れ直してみたけど、そんなことしなくても普通に楽しめる。
ストーリーも面白いので。

撮影が6ヶ月で収録テープは520時間になったそうだ。
そこから2時間だからよりすぐりのシーンが選ばれている。
遊具の中央に鎮座するでっかい女性像の服をゼインが開いて胸をはだけさせたりとかさ。
掃除中にそれを見たラヒル(ヨルダノス・シフェラウ)がくすりと笑ってその後の展開につながる。
そういえば急にゴキブリマンが出てきたときはその異質感にびっくりしたな。

主役のゼイン・アル・ラフィーアと、1歳くらいの乳幼児ヨナス役のボルワティフ・トレジャー・バンコレという二人の子役が、奇跡的な演技を常にキープしている。
ヨナスは演技じゃないけど、時折まじかと思うくらい絶妙な演技?を見せる。かわいいな。
この二人を始め、キャストは役とほとんど同じような境遇にいる素人さん達らしい。
驚きだけど、素人子役でこんないいシーン撮れるくらいだから大人の素人役者なんかはちょろいのかな。

かなり面白かった。

2020年2月2日日曜日

映画『風をつかまえた少年』

2019年 監督:キウェテル・イジョフォー
製作国:イギリス / マラウイ
at ギンレイホール




2001年アフリカのマラウイで大旱魃が起こる。
この危機を救ったのは学費が払えずに学校を追い出された14歳の少年だった。
という実話をもとにしたお話。

でかい風車を作るのになんで自転車が必要なのかとか、水はどこから引いてくるつもりなのかとか、よく分からないまま見ていたけど、教育映画としてはなかなかいいんじゃないだろうか。
中学生のときにレクリエーションかなにかで全校生徒で映画館に映画見に行った記憶があるけど、今ならこういう映画が選ばれるんだろう。

キウェテル・イジョフォーが監督やりながら主人公の父親役で出演している。
役柄的に街?からやってきたみたいな設定だったと思うけど、それにしても他の村人よりも黒さが足りなくて少し浮いている。
役柄的にも、目先の利益よりも先を見つめて誘いに乗らないような知識階級的立ち位置かと思っていたら、予告編にもあるような無学で粗暴(干ばつによる空腹でまともな精神状態でないとはいえ)な面も見せたりして、人物像がふわふわしていたなぁと思う。


以下たぶんネタばれ

風車作って水はどこから持ってくるのか?
遠くの川からひっぱるにはそんなに長いホースを確保していたようには見えないしパワーも足りない。足りないのは後自転車だけという話だから川ではないのだろう。
で、正解は、井戸だった。
井戸に水あんのかい!
手動で汲んでまくのはこんなに大変なんだよ、という描写が欲しいところ。
川もそんなに遠くないなら用水路作って水引いてもよさそう。材料が無いか。

インドの中学生が自転車に80ccエンジンを搭載して自転車オートバイを作った、っていう最近のニュースのほうがすげーと思った。(誰の役にたったわけでもないが)

2020年1月26日日曜日

映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

2018年 監督:ボー・バーナム
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




友達がいなく学校ではぼっちのケイラ(エルシー・フィッシャー)が中学卒業を前に自分を変えようと頑張る話。
人の輪に入れない少女を傍から眺める(応援する)ときの痛々しさがなんともいえない。
予告編見たとき、学校では無口だけどSNSではカリスマ的人気でそんなケイラが学校でもスターになっていくような話かと想像していたけど、SNS人気なんか毛ほども無く、現実でもネットでも孤独なケイラだった。
ドラマティックな夢物語じゃなくて等身大の少女(とそれを見守るシングルファザー)の悩みと喜びが描かれる。

音楽の音量がデカくて、音楽うるさい系映画かと思ったけど、エイデンの登場シーンのスローモーションと音楽によるださかっこよさはなかなか良かった。
しかもだよ、プールでの再登場シーンでまた同じ音楽がエイデンのテーマ音楽かのように流れるのね。
2回目はさすがに笑う。確信犯だよね。
ケイラのフィルターのかかった目で見たエイデンという意図があるのだろうな。
そういう意味でケイラのわずかな成長とともに3回目はなかった。

2020年1月12日日曜日

映画『新聞記者』

2019年 監督:藤井道人
製作国:日本
at ギンレイホール




「あなたはこの映画を信じられるか」
って予告編が言っているけど、なかなか信じがたいよね。
世の中には本人達は真面目に作っているのにいろいろおかしすぎてB級映画認定されるものもあるけど、これってどっちなんだ。
真面目に作ったのか、それとも真面目に見せかけたコメディ映画として作ったのか。

まず、内閣情報調査室の青みがかったありえないくらい薄暗いフロア見たとき笑いそうになった。
国のため、と不正を働く本拠地がこの描写って、ギャグでしょ。違うの?どっちなの?
この薄暗い部屋で職員達がせっせとtwitterでコメント拡散して情報操作しようとしているのも笑える。さすが悪の組織。
あと、松坂桃李とW主演のシム・ウンギョンは一応帰国子女の設定で日本語がたどたどしいということになっているけど、演技力があるせいか逆にそのたどたどしい日本語が大根役者以上の棒読みに聞こえる。
これも何度かギャグなんだろうかと悩んだ。
田中哲司のノリノリの悪役も、ちょっと笑わせようとして悪ノリしてるんじゃないかと思ったけど、どうなんだろう。
さらにはストーリーも大分実際の事件に即した話も出てきて本格的ながら、主題となる事件のあまりに現実離れした話にはギャグかと思う。
あと松坂演じる杉原の妻(本田翼)があまりに夫への理解がありすぎる。
夫は頑張っているんだから帰りが遅くてもしょうがないよね。頑張っているんだから破水して助けを求めて電話しても出なくてもしょうがないよね。出産に立ち会えなくてもしょうがないよね。
。。。昭和か!

これらを本当にこれでいいと真面目に作ったのか、俄に信じがたいながら、数年後にはB級映画扱いされていることは間違いなさそうだ。
というのが見たあとの感想だけど、公式ページ見ると松江哲明とか是枝裕和までもがコメント寄せている。。。
あとネットで検索するとストーリー的に賛否両論あるみたいだけど絶賛する人は怖いくらい絶賛している。

どうせフィクションでエンタメにするなら杉原とシム・ウンギョン演じる吉岡を不倫関係にして、よくできた妻を発狂させるくらいのことをしてくれないと人間味を感じないんだよね。
登場人物がどいつもこいつもステレオタイプで薄っぺらくてギャグかと思ったよ。
あとエンドロールで西田尚美って出て、どこに出ていたのかと思ったら神崎の奥さんが西田尚美だった。
西田尚美ですら脇役の無名女優と勘違いさせるなんて、恐るべし。

映画『よこがお』

2019年 監督:深田晃司
製作国:日本
at ギンレイホール




冒頭の美容室のドアを開ける音が大きいのに始まり、結構音をよく拾う。
そういう映画は好きなはずだけど、見終わってみるとあまり音についての印象が薄いなぁ。

訪問看護師として優秀な白川市子(筒井真理子)は信頼も篤く、訪問先の大石家では長女の基子(市川実日子)に勉強を教えてあげるほどだった。
しかしある日、大石家の次女で眉毛が凛々しい次女のサキ(小川未祐)の誘拐事件が発生し、そこから全てが崩れ始める。

今検索していてそうだったんだと気づいたけど、市子と美容師(池松壮亮)とのシーンは時間軸では未来のシーンだったんだね。
なんか市子の住んでる部屋が変だなとは思っていたんだ。

ジャージ姿の市川実日子がかわいい。
役どころが中学生みたいな恋愛でかわいい。
市子が見ているとも知らずに横断歩道でせっせと物を拾い集めている横顔の生きている感じが美しい。
で、そういえば結構前から活躍しているし今いくつくらいなんだっけと調べたらもう41歳か。
妹役の子の母親でもいい年齢なのに姉役でも全く違和感無かった。

筒井真理子はなんかおっとりした中で鬼気迫るものがある。
ヌードも攻めるよなぁ。

池松壮亮って昔から苦手でその原因やきっかけも思い出せないのだが、この映画では役柄によく合っていた。
ぼそぼそ喋って何考えているかよくわからなくて退廃的な雰囲気が。

深田晃司監督は『淵に立つ』の人か。