2009年12月30日水曜日

12月30日

ここ2ヶ月くらい仕事が忙しい。
祝日、日曜は仕事で出ているので土曜だけが休み。
土曜なんて夕方近くまで寝て洗濯掃除したらあっという間に終わりです。

今年は例年通り28日が仕事納めだったのだけど29日まで仕事をする。
で、今日から休み。

昼過ぎに起きて、まずはHDDレコーダーを整理しようと昨日録画した『紅白60年 名歌手たち・夢の対決』を見る。
そういえばと思って外に出て大家の八百屋が店をやっているか見に行ったら普通に営業していたのでコンビニ行って金を下ろしてから大家に家賃を払いに行く。
最近はバナナばかりだったけど数年ぶりにみかんをくれた。

みかんを家に置いた後、最近忙しくて1ヶ月以上行っていなかった駅近くの喫茶店に行って本を読む。
19時くらいに出てシダットでカレー食おうと思ったのだけどなんか人がいっぱいいたのでやめて帰る。

紅白60年をカット編集。
しながらこないだギンレイで見た映画を思い出しながら感想を書く。
21時くらいにシダットに行ってお気に入りのバターチキンを食う。
ナンは前から興味のあったガーリックナンにしてみる。
出てきたナンは表面に細かい気泡のようなものがびっしり浮き出てでこぼこしていてなんだろうとよく見たら、気泡じゃなくてガーリックチップを細かく砕いたものだった。
結構な量なので段々胃がにんににく焼けしてくる。

帰って紅白60年の続きを編集。
まさに夢の対決ばかりなのであまり削除するところが無く、3時間半が2時間40分くらいに。

そんなんで今日という日が終了。

2009年12月20日日曜日

映画『夏時間の庭』

2008年 監督:オリヴィエ・アサイヤス
at ギンレイホール


夏時間の庭 [DVD]

フランス映画。
オルセー美術館20周年企画として全面協力の下に製作されたらしい。

パリ郊外の緑豊かな自然の中でたくさんの子供達がはしゃいでいる。
緑の中には邸宅が一軒佇んでおり、その庭ではたくさんの人たちが集まってなにやらパーティーをしている。
家主の品のある細いばあさんの誕生日らしい。
とにかく人がいっぱいいて誰が誰だかさっぱり分からないのだけど、段々ばあさんとその3人の子供が話の中心だと分かってくる。

このばあさんの家にはたくさんの美術品があってしかも日常に使用されている。
ばあさんはこのたくさんのコレクションを守ってきたのだけど、子供達は既にこの家を巣立ってそれぞれの人生を歩んでいる。
ばあさんは子供達に負担をかけまいと、私が死んだらこの家と美術品を全て売却しろと長男に言い残す。
やがてばあさんが亡くなって3人の子供が集まってさあどうしようかって話。

落ち着いた展開で少し寝てしまった。
美術品は全て本物だったらしい。
ラストはちょっとびっくり。
可愛らしい少女だと思っていたらとんでもないあばずれで、なんてことしてくれてんだと思ったけどしっかりばあさんへの愛情を語ったりして複雑な余韻。

映画『湖のほとりで』

2007年 監督:アンドレア・モライヨーリ
at ギンレイホール


湖のほとりで [DVD]

イタリア映画。
田舎町を一人歩く小学校低学年くらいの少女。
の後からスーッと現れて横まで来て停車する軽トラック。
もうこれだけで事件です。
運転手と少女は知り合いらしく、少し喋った後少女は渋々車に乗り込む。
ああ、もう事件確定。
運転手のおっさんの家でおっさんは少女に太ったうさぎを見せたりして和やかに談笑。
しかし少女がトイレに発つと、半開きのドアから用を足す少女を横目で鋭く見つめるおっさんが!
場面は変わって少女の母親が泣きながら「娘がいない」と叫ぶシーンに。
事件が起こってしまった。
この村に越してきたばかりの刑事サンツィオが動き出す。
と、早々に少女を無事に確保。
あれっ。

しかし、このプチ事件をきっかけに湖のほとりで10代後半の少女が素っ裸の不自然な体勢で死んでいるのが発見される。
深く澄み切った湖のほとりに横たわる透き通るような肌の死体。
これこそ事件。

他殺、だが抵抗した後が無い=顔見知りの犯行だ
ってことで刑事サンツィオによる捜査が始まる。
聞き込み中心の捜査で得られる情報は殺された少女アンナの優しく愛に満ちた人柄ばかり。
村人皆から愛され、殺されるような要素が全く見られない。
一体誰が彼女を殺したのか、っていう犯人探しのサスペンスというよりか、次第に浮き上がってくるのはヒューマンドラマになっている。

サンツィオはベテラン刑事で勘は鋭いものの名刑事ってわけではない。
刑事という立場のせいなのかそれともそういう性格なのかわからないけど、怪しいと思われる人物に対する聞き込みは非常に高圧的な態度になっている。
しかも冤罪である人物を逮捕した上に厳しい取調べまでして、訴えられてもおかしくないくらい。
ただ、怒りを買おうがなんだろうが人のプライベートなところまで高圧的にずかずか突っ込んでいくスピードは優秀なのかもしれない。(その分迷走もするのだが)
少なくとも村人から話を聞きださないと(感情の対立がないと)、ヒューマンドラマにならないので紳士的にちんたら聞き込みしていたらなんも進みはしない。
サンツィオが相手を怒らしながら無粋に剥ぎ取って得た情報が捜査上結果的には全く無駄だった部分も多々あれど、ヒューマンドラマとしては必要な情報。

なかなか見ごたえあって面白かった。

2009年12月16日水曜日

こたつ

今年は暖かい。
今日は勤務先の人の送別会兼忘年会で軽く飲んでまずい飯を食って帰ってくる。
そしてこたつを出してこたつで寝る。

2009年11月22日日曜日

映画『ディア・ドクター』

2009年 監督:西川美和
at ギンレイホール


ディア・ドクター 【限定版】 初回限定生産 [DVD]

『ゆれる』の西川美和監督。
ちょっとかなり疲労していたので全然見る気がおきなかったのだけど、見始めたら最後まで楽しんだ127分。

過疎化の進む山あいの村で村人から絶大の信頼を得ている一人の町医者が失踪するところから物語が始まる。
そこから物語りは医師の失踪前と失踪後を交互に描いて進んでいく。
今思い返すとそんなにストーリーに起伏があったわけでもない気がするが、映像がなんか安心して見ていられる。

失踪する医師伊野治役にはこれが映画初主演となる笑福亭鶴瓶。
柔和な笑顔とその裏の真に迫ったむき出しの表情などかなりはまっている。
周りを固めるのも八千草薫や余貴美子、香川照之、松重豊、井川遥と豪華。
永遠の美少女八千草薫と鶴瓶がまるで夫婦かのように食卓についている姿など一体誰が予測しえようか。
井川遥は久しぶりに見たけどますます綺麗になった気がする。本当にこんな美人女医がいたら怖い。
あと、瑛太がTシャツとハーフパンツのラフな格好に白衣を羽織っていたのだけど、後姿だけみると白衣から裸の足だけ出ていて変質者みたいだった。

映画『ガマの油』

2008年 監督:役所広司
at ギンレイホール


ガマの油 プレミアム・エディション [DVD]

長いわ~
131分。
最初はいくらかテンポよかった気がするのだけど、中盤くらいからひどく疲労する。

株で大もうけするデイトレーダーの矢沢拓郎(役所広司)は大豪邸に暮らしている。
妻は矢沢輝美(小林聡美)。
息子は矢沢拓也(瑛太)。
『息子の部屋』みたいな展開。
ただしファンタジーに明るい。そこが疲れる。

ガマの油売りのシーンが2度ほど唐突に挿入され、このシーンは時代が4,50年遡っているみたいだけど、油売りの夫婦役が益岡徹と小林聡美になっている。
小林聡美は現代では役所広司の妻役だし、二役やっているから非常にややこしい。
このシーンに出てくる子供が実は矢沢拓郎であると最後の方でわかり、かつこの過去のガマの油売り夫婦がなぜか現代にやってきて現代の矢沢拓郎と共演するというファンタジー。
思えばファンタジー形式で自由なためにいたるところで異様な空間が存在していた。
映し出された渋谷の街は通り行く人々が皆あかぬけないというかださくて、現代でもないし10数年前でもないしどこの時代なんだろうと思っていたけど、あれもどこの時間軸にも属さない異世界だったのだろう。

それにしても結果的には大事な事実を隠され騙され続けていた光ちゃんはもっと悲しんでもっと怒っていいと思うのだが。

秋葉サブローというネーミングセンスやら熊との思い切った格闘とかは面白かったな。 

2009年11月15日日曜日

熊木杏里 Autumn Tour 2009 はなよりほかに 東京国際フォーラム

みしせはそてつ
なうたんいあさき
こすわきば
や ど

セットリストの内容と順番を記憶するために覚えた復活の呪文なんだけど、ライブが終わってからいたるところにセットリストが張り出されているのを見てがっくりくる。
セットリストの順番を記憶するためにそれなりの神経と集中力を使ったのに、こんなことならもっとライブに集中してればよかったぜ!
張り出されたセットリストをいろんな人が携帯のカメラで撮っていて、僕も一瞬撮ろうとしたのだけどもう記憶したしいいやと思って撮らず。


東京国際フォーラムでの熊木杏里のライブに行ってきた。

1. 未来写真
会場が暗くなって人が出てきたと思ったらいきなり歌が始まる。
newアルバムから「未来写真」。
この曲は数少ないアップテンポの曲なので、ライブ後半くらいで手拍子させられる曲なんじゃないかと思っていたけど、まさか1曲目に持ってくるとは思わなかった。
バンド構成はギター、ベース、キーボード、チェロ、ドラム。
伸びのある声とリズムで出だしから飛ばします。

2. あなたに逢いたい
続けて特徴的な音のイントロが始まると、なぜか一瞬郷愁が漂って頭が真っ白になる。
4年くらい前のアルバムの曲だからライブではもう聴けないと思っていたので青天の霹靂で真っ白になったわけだけど、意識が戻るとこの大好きな曲をライブで聴ける喜びに感動する。
最初から面食らうことばかり続いたけど歌はじっくり堪能した。

3. センチメンタル
newアルバムから「センチメンタル」。
さびの歌詞にセンチメンタルという言葉が入っていて、アルバムでこの曲を初めて聴いたとき凄く違和感があったのだけど何度も聴いていると慣れた。
センチメンタルにいい曲だ。

4. 花言葉
ここでやっと挨拶MC。
そしてnewアルバムから「花言葉」。
最後の方のハミングで「ウォウウォウ」と歌っていたけど「ウォウウォウ」がこれほど似合わない曲はないと思う・・・

5. それぞれ
3rdアルバム『風の中の行進』から。
アルバムとはまた違った歌い方。
言葉を区切って力強い、というか力が入りすぎていると言うか。
声量バリバリの圧倒させるような歌い方にこれからシフトしていったら嫌だな、と少し思う。

6. 天使
newアルバムから「天使」。
サビの最後に語るような低い声で「僕は君のもの」と歌うのだけど、これが凄いぞくっとする。
熊木杏里は裏声が特に好きなんだけど、低い声もまた魅力的で、しかもサビの最後にこんなに効果的なフレーズで使われるとガツンとやられる。

7. 春の風
4thアルバム『私は私をあとにして』から「春の風」。
もう2年前の曲になるのか。

8. 長い話
ここから伴奏はギター一本になる。
「私の10年間を」という話から何を歌うのかと思ったら曲は「長い話」で、これも僕はライブで初めて聴く。
噂によると21歳より先の続きを以前にライブで披露していたらしいので、まさか27歳までの続きを聴けるのかとちょっと期待する。

伴奏がギター一本になったことで声がいつもの柔らかさになる。
21歳のくだりまできて、どきどきしていたら何も変化なしに普通に曲が終わってMCになる。
「よく続きを歌ってくれと言われるんですけどね・・・」
といった話をしているところで上の階からいきなり
「前に続きをライブで歌っていたよね!」
みたいなでかい掛け声が響いてびびる。
今の時点で振り返ってその年齢のことを書いても嘘になるからもう駄目だというようなことを言っていた。
続きを知りたければ発表している曲を聴いてください。そこに全部詰まっている、と。
なるほど、じゃあ気が向いたら歌詞カードでも開いてみるか。何百回と聴いているのに未だに歌詞を聞き取っていない曲がいっぱいあるので。

9. Wow Wow
MCから、次は誰かの曲を歌おうとしているらしいというのは分かったけど誰の何の曲かは分からないまま聴き始めると小田和正の「Wow Wow」。
「花言葉」でのハミングはこの曲への伏線だったのか・・・

10. 誕生日
この曲を作ったきっかけの話から「誕生日」。

11. 一千一秒
ピアノ(キーボード)弾き語り。
かつ今回一番楽しみにしていた「一千一秒」。
この曲すごいいいんだわ。
「不思議な 不思議な この世界」
っていうくだりの不思議な高揚感がたまらなく泣きそうになる。

12. 雨が空から離れたら
ライブの中でピアノ弾き語りのコーナーを楽しみにしているのだけど、早々に切り上げてまたバンドになってしまう。
「雨が空から離れたら」。
知らなかったのだけどこの曲はちびまる子ちゃんの額に線が入っているように落ち込んでいる友達に向けて作った応援ソングだったらしい。

13. 最後の羅針盤
4thアルバム『私は私をあとにして』から「最後の羅針盤」。
ここらへんから非常に心地よい眠気に襲われる。

14. 今日という日の真ん中
新しいアルバムから。

15. こと
「こと」。
何度聴いてもやっぱり名曲だなぁ。
できれば弾き語りで聴きたかったけど。

16. Snow
新しいアルバムから。

17. 新しい私になって
タイトルをど忘れして終始悩む。

18. 君の名前
ここでやっと来た「君の名前」。
これもできれば弾き語りで聴きたかった。
何度も聞きすぎたせいか、前のライブで弾き語りで初めて聴いたときのような衝撃はなかったけど、それでもいい曲だ。

19. バイバイ
締めは「バイバイ」で。

En1. やっぱり
アンコールの拍手がまばらだった気がするのだけど、気のせいかな。
僕のいた1階の後ろの方の席ではアンコールの拍手がほとんど聞こえてこなかった。

今回のツアーは新しいアルバムのテーマが恋であることから恋の歌ばかり集めたということだけど、まだ「ひみつ」を歌っていない。
アンコールで来るかと思っていたら「やっぱり」だった。
この曲も好きだから別にいいが。

En2. どこまでも
最後にキーボードの前に座って弾き語りで未発表の「どこまでも」を歌う。
弾き語りで聴くとなんでも名曲に聞こえる。


全部で21曲か。
じっくり堪能できたかというと、最後の方は集中力が切れてしまった。
椅子に浅く腰掛けて腹が曲がり続けたので最後の方は腹筋が痛くなってきて。
映画見るときは後ろに座っている人を意識しないで済むようにいつも端っこか後ろの席に座って、疲れたら椅子に深く腰掛けて背筋伸ばしたりして調節するのだけど、今は後ろの席の人に気を使ってずっと浅く腰掛けていたから。
それと、前の席にずらずら座っていた関係者らしき男女の集団の中で、僕の左斜め前に座ったウェーブのかかったロン毛のあんちゃんが非常にうざくて気になってしょうがない。
何がうざいかってライブ中、首をありえないくらいかくかく動かすんだもん。
リズムを取っているとかじゃなくて、デフォルトは寝違えたかのように首を思いっきり右に傾け、そこからちょくちょく首の筋を伸ばすようにコキコキ左右にふったり、っていうのを終始繰り返す。
鶏以外でこんなに落ち着きのないやつは初めて見た。
気にしないようにしても頭頂部にかけているサングラスが動くたびにライトが反射して光るし。

席は運だな。

個人的には半分は弾き語りで歌って欲しいところだけど、大変なのかな。
バンドのメンバは皆上手いことは上手いのだけど、たまにバンドの一人一人と歌声が全ててんでばらばらに音を奏でているように聞こえるときがある。
座った席の音の反射具合とかも関係しているのだろうけど。
チェロの音も基本的にはいい雰囲気をかもし出しているものの、たまにギーっていう音が大きく耳に飛び込んできて引っ掻き回されたような気分になる。
エレキギターやキーボードなどと比べてチェロはそのままでもホールに音を響かせられるような異質の存在だし。

まあ、なんだかんだいっても満足はした。
新しいアルバム『はなよりほかに』をもっと聞き込んで次のライブに備えよう。

はなよりほかに(初回限定盤)
ひとヒナタ(初回限定盤)(DVD付)私は私をあとにして風の中の行進無から出た錆殺風景

2009年11月1日日曜日

11月INFO

★BS2 11月3日(火) 午前0:40~午前3:28(2日深夜)
甘い生活 1960年・イタリア/フランス

〔監督・脚本〕フェデリコ・フェリーニ

〔出演〕マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ、アヌーク・エーメ
BS2 11月4日(水) 午前0:40~午前2:29(3日深夜)
道 1954年・イタリア

〔監督・脚本〕フェデリコ・フェリーニ
★BS2 11月5日(木) 午前0:40~午前2:20(4日深夜)
女ともだち 1955年・イタリア

〔監督・脚本〕ミケランジェロ・アントニオーニ
★BS2 11月9日(月) 午後1:10~午後2:43
丹下左膳余話 百萬両の壺 1935年・日本

〔監督〕山中貞雄
★BS2 11月10日(火) 午後1:05~午後2:28
河内山宗俊 1936年・日本

〔監督・脚本〕山中貞雄
★BS2 11月11日(水) 午後1:05~午後2:32
人情紙風船 1937年・日本

〔監督〕山中貞雄
BS2 11月15日(日) 午前1:30~午前3:47(14日深夜)
百年恋歌 2005年・台湾

〔製作・監督〕ホウ・シャオシェン(侯孝賢)
BS2 11月17日(火) 午後9:00~午後10:59
博士の愛した数式 2005年・日本

〔監督・脚本〕小泉堯史

なんと、山中貞雄の現存する3作を放映するみたいです。

映画『京義線(キョンイセン)』

2007年 監督:パク・フンシク
BS2 録画


これはまた静かな映画だな。
ロードムービーかと思っていたけど旅部分は全体の2割程度くらいしかない。
何か人生に絶望したように生気のない男と女がそれぞれイムジンガン行きの京義線に乗り合わせる。
そこから話は1ヶ月前に遡り、二人が京義線に乗るまでの経緯が描かれる。

父子家庭で育ち、地下鉄の運転手として働くマンス(キム・ガンウ)。
不規則な勤務時間に疲れながらも真面目に勤めあげていた。
質素な暮らしと真面目さで、誠実を絵に描いたような青年。
運転席から見えるのはいつも変わらない地下鉄のトンネルの風景。
しかし月に1回、「泉」という雑誌の発売日にその雑誌と間食を差し入れてくれる女性がいて、マンスは彼女と会うのを楽しみにしていた。
会うといっても名前も知らないし、勤務中なので一言二言しか喋れないのだが。

誠実なマンスとは対照的なのがハンナ(ソン・テヨン)。
彼女は大学でドイツ文学の非常勤講師をしている。
ドイツ留学時代の先輩で今は同じ大学で教授をしている男と不倫関係にある。
良家のお嬢さんらしく、わがままな面もちらほら。
今の不倫関係と自分の将来に不安を感じている。

ストーリーとしてはマンスが気になってしょうがない。
誠実の塊のマンスに一体何があって京義線に乗ることになったのか。
変わり映えの無い地下鉄の勤務風景の一つ一つに緊張感が漂う。
そして人物の見た目的に気になってしょうがないのがハンナ。
ソン・テヨンという女優さんなんだけど、物凄く綺麗な人。
透明感のある顔にびっくりするくらいスレンダーなプロポーション。
綺麗な人といえばマンスに差し入れする女性も綺麗。含みのある微笑が可愛らしい。

ストーリーは大きな起伏もなく淡々と進むのだけど、冒頭の地下鉄の運転席から見たくねり曲がるトンネルの風景でもうこの映画が好きになる。
差し入れの女性は一体何だったのかとか不明な点は残るものの、何より映像だけでかなり魅了される。
ラストの光なんて温かくて力強くて泣きそうになる。

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こないだ見たベトナム映画『1735Km』とこれをロードムービー繋がりとしてDVDに焼こうしたんだけど何を間違えたか『1735Km』とまだ見ていない『My Son あふれる想い』を焼いてしまった。
『1735Km』とセットにしてロードムービーでもこんなに違うもんだよということを1枚のDVDで表す目論見だったのにぃ。
しょうがないから昔見た『モンゴリアン・ピンポン』とアジアフィルムフェスティバル繋がりとして焼くか。

2009年10月25日日曜日

映画『それでも恋するバルセロナ』

2008年 監督:ウディ・アレン
at ギンレイホール


それでも恋するバルセロナ [DVD]

アメリカ娘のヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)は親友で、二人仲良くバルセロナに遊びに来ている。
気の合う二人だが、二人の恋愛感は正反対で、ヴィッキーは慎重派で堅実を求め、クリスティーナは恋愛体質で積極的。
二人はバルセロナで色男の画家フアン(ハビエル・バルデム)に出会う。
出会う、というか二人いっぺんに口説かれる。
クリスティーナは興味津々だがヴィッキーはあからさまに警戒心を出す。
でもいろいろあって慎重派のヴィッキーの方がフアンと体の関係になる。
しかしそれも一夜限りで、ヴィッキーは婚約している平凡な彼氏のもとに戻り、クリスティーナは最初の興味どおりフアンと付き合うことになる。
フアンとクリスティーナは二人情熱的に暮らしていたがある日フアンの別れた元妻マリア(ペネロペ・クルス)が現れる。
3人による奇妙な同棲生活。
一方ヴィッキーはフアンが忘れられずにいて・・・

ふぅ、途中寝てしまった。
だらだらしないでナレーションで潔く展開を早めているところは悪くはないのだけど、字幕が多いんだよね。
なんか自転車のシーンでトリュフォー、恋愛論を戦わせるところでエリック・ロメールを思い出す。
でも舞台はスペインだし監督はウディ・アレン。
ウディ・アレンと言われなければウディ・アレンだと気づかないような作品。

スカーレット・ヨハンソンの金髪色白具合が妖精さんみたいです。
特にペネロペ・クルスが出てきた後は、ペネロペ+ハビエル・バルデムという濃いぃ二人にかこまれるわけだからヨハンソンだけが別世界の住人に見える。

ハビエル・バルデムはどこかで見たと思ったら『宮廷画家ゴヤは見た』の変態神父だ。

映画『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

2007年 監督:エミール・クストリッツァ
at ギンレイホール


冒頭からノー・スモーキング・オーケストラのあの音楽で、ああ、クストリッツァ。
クストリッツァの映画を見る場合、この騒々しさに乗れない場合は疲労を感じてしまうのだけど、乗れた場合は最高に楽しくなる。
この作品はというと、ちょっと疲れた。
ギャグの切れがいまいちのため。

山あいの田舎町で祖父と二人で暮らす少年ツァーネ(ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ)が、祖父から言いつけられた3つの依頼を果たすために都会に出てくる。
 1.牛を売ってそのお金で聖ニコラスのイコンを買う
 2.好きなお土産を買う
 3.花嫁を見つけて連れ帰る
ツァーネは都会の女性の美しさと色っぽさに目を奪われるのだけど、中でも通りすがりの女学生ヤスナ(マリヤ・ペトロニイェヴィッチ)に一目ぼれして猛アタックをかける。
娼婦やマフィアや殺し屋兄弟も絡んできてどたばた度は最高潮に。

戦争や政治は前面には押し出されていないのだけど、街はほぼ無法地帯で殺しは日常茶飯事となっている。
借金を返せない人はあっけなく銃殺されて棺桶に突っ込まれ、止めに手榴弾で火葬とか。
残酷なんだけど残酷に描かないのはいつもどおりで、銃撃戦なんていうのもノー・スモーキング・オーケストラの音楽に乗せて子供達が遊びで戦争ごっこしているような感じ。

それにしてもヒロインのマリヤ・ペトロニイェヴィッチが綺麗だな。
素人だったのにクストリッツァに見出されていきなりヒロインに大抜擢されたとのこと。
このヒロインだからこそ漫画のような救出劇も恋愛劇も楽しめる。

発明好きの祖父役には『ライフ・イズ・ミラクル』で郵便配達員役をやっていたアレクサンダル・ベルチェク。
スキンヘッド兄弟のでかい方はノー・スモーキング・オーケストラの一員でクストリッツァの息子でもあるストリボール・クストリッツァ。
他、ミキ・マノイロヴィッチやリリャナ・ブラゴイェヴィッチも出ている。

2009年10月24日土曜日

半分以上睡眠

朝の10時くらいだったかに家の呼び鈴がなったのでamazonで注文していたCDが届いたのかと思って布団から起き上がってちゃんと開くことのできないまぶたとぼさぼさの髪を交互にいじりながらドアを開けてみるとどう見ても配達員ではない男とその一歩後ろに女の人がいてキリスト教の冊子がどうとか申し訳無さそうに喋りだしたので思わず「ああ」とつぶやいてしまったついでに言っちゃえとそのまま「ごめんなさい、いいです」と続けるとあっさり引き下がってくれたのでドアを閉めてまた布団に入る。

その後目覚めてデジタル時計を目をこらして見ると16時40分に見える。
2,3年前は15時、16時まで寝ていたりしていたけど最近は昼くらいには起きていたのだけどなぁ。
終電帰りが続いてかなり寝不足だったらしい。

アパートの下のポストに行ってみるとメール便が突っ込まれていた。
水曜には発送完了メールが来ていたから木曜か金曜には届いていたんだな。

届いたCDはPerfumeの『トライアングル(初回限定盤) 』。
これ7月の発売だったんだね。随分間を空けてしまった。
初回限定版だけどマーケットプレイスで新品が3000円と安かった。
トライアングル(初回限定盤)

この注文と一緒に、というかこっちの予約が目的だったのだけど、2009/11/6発売の熊木杏里『はなよりほかに』の予約も完了。
まだまだ先だと思っていたけどあと少しだな。
そういえばNHKの「ワンダー×ワンダー」のエンディングに流れている「君の名前」はシングルとは別バージョンっぽい。アルバムではシングルと別バージョンが入ってくれると嬉しいな。
はなよりほかに(初回限定盤)

他に調べていたら2009/9/2に長谷川都が3,4年ぶりくらいに新しいアルバムを出している。
夜
買おうと思ったのだけど、Perfume買ったし暫くしたら熊木杏里のアルバムも届くし迷った末今回は見送る。
あれ、長谷川都いつの間にか結婚していたらしい。

2009年10月12日月曜日

10月INFO

BS2 10月13日(火) 午前0:45~午前2:12(12日深夜)
僕たちのキックオフ 2008年:イラク・クルディスタン

〔監督・脚本〕シャウキャット・アミン・コルキ
BS2 10月14日(水) 午前0:45~午前2:35(13日深夜)
Orzボーイズ! 2008年・台湾

〔監督・脚本〕ヤン・ヤーチェ(楊雅喆)
BS2 10月15日(木) 午前0:45~午前2:43(14日深夜)
ガレージ 2006年・インドネシア

〔監督〕アガン・セントーサ
★BS2 10月16日(金) 午前0:45~午前2:21(15日深夜)
雨の味 2006年・シンガポール

〔監督・脚本〕グロリア・チー
★BS2 10月18日(日) 午前1:05~午前2:59(17日深夜)
京義線(キョンイセン) 2007年・韓国

〔監督・脚本〕パク・フンシク
★BS2 10月19日(月) 午後9:00~午後10:55
My Son ~あふれる想い~ 2007年・韓国

〔監督・脚本〕チャン・ジン
★BS2 10月20日(火) 午前1:35~午前3:47(19日深夜)
ルパン 2004年・フランス

〔監督・脚本〕ジャン・ポール・サロメ

〔出演〕ロマン・デュリス
BS2 10月20日(火) 午後9:00~午後10:49
追憶の切符 2008年・中国

〔監督〕ジェイコブ・チャン(張之亮)
BS2 10月21日(水) 午後9:00~午後11:00
パンドラの箱 2008年・トルコ/フランス/ドイツ/ベルギー

〔監督・脚本〕イェシム・ウスタオウル
★BS2 10月29日(木) 午前0:40~午前2:27(28日深夜)
僕の大事なコレクション 2005年・アメリカ

〔監督・脚本〕リーブ・シュレイバー

〔出演〕イライジャ・ウッド

今月はNHKアジア・フィルム・フェスティバル特集が中心だな。
来月はフェリーニの『甘い生活』『道』、アントニオーニの『女ともだち』があるらしい。

2009年10月11日日曜日

映画『恋のエチュード』

1971年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


恋のエチュード〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選10〕 [DVD]

久しぶりに昔のフランス映画を見た気がする。
そのせいか手触りのある発色をするフィルムの生の感覚に一瞬どきっとする。
青白さが怖いのかなぁ。

トリュフォーとジャン=ピエール・レオのコンビの1971年作品。
ドワネルものではない。
マザコン気味のフランス青年クロード(ジャン=ピエール・レオ)の家に母親の友人の娘が訪れる。
この娘アン(キカ・マーカム)はイギリス人で、ロダンに心酔して彫刻家を目指している。
クロードとアンは交際を始めるのだが、アンは妹のミュリエル(ステイシー・テンデター)とクロードを引き合わせたいらしい。
ということで暇なクロードは姉妹が暮らすイギリスの田舎町にホームステイする。
母と姉妹の女だけの家に迷い込んだクロードは毎日姉妹と楽しく暮らすのであった。
深窓の令嬢といった感じの処女姉妹。
そうこうしているうちにクロードはミュリエルに求婚する。
しかしクロードの母親が猛反対。
結局クロードとミュリエルは1年間離れ離れに暮らし、1年経ってもまだ恋が続いているようなら結婚を認めようという話になる。
ミュリエルの恋心は離れたことで一層燃え上がる。
しかしクロードの方はさばさばしていて熱が冷めてしまう。いや、冷めたというか母親の圧力で冷めさせられたというか。
やがてアンが再びフランスに訪れる。ミュリエルと会うのは禁止されているが、アンと会うのは禁止されていない。
クロードとアンは友人づきあいを再開するのだが、次第に恋心が燃え上がって関係を持つ。

崖、海、花に美人姉妹。
桃源郷のような生活を経た後にやってくる苦悩と喜び。
喜びも悲しみも全てが悩ましいくらいに静かに輝いていて、132分もあるけどあっという間に過ぎてしまう。
ラストシーンの何気ない静寂も泣きそうになる。

いつも思うのだけど、ジャン=ピエール・レオは表情が薄いのか何考えてるか分からない怖さがあって、そこが魅力的でもあるのだけど、やっぱり彼が女にもてる役をやっているのはなんとなく違和感がある。
ただ、彼が淡々としていればしているだけ、そのコントラストで女優の表情や魅力がくっきりと輝きを増すのがまた面白い。
この作品に関しては3者がそれぞれ胸に熱い想いを秘めているのだけど、なかなか表出しないし、表出しても暫くすると引っ込んだりする。
3人とも何考えてるか分からないところがあるのだけど、クロードの揺らぎはどちらかというと刹那的に爆発する気まぐれの類で、一方姉妹の方は二人とも抑制による分からなさになる。
姉妹の抑制による感情の揺らぎやせつなさは微細な表現になるのだけど、クロード役のジャン=ピエール・レオが無職透明であればあるだけ彼を鏡として姉妹が輝くことになる。

2009年10月4日日曜日

映画『路上のソリスト』

2009年 監督:ジョー・ライト
at ギンレイホール


路上のソリスト [DVD]

キャサリン・キーナーはいくつになっても魅力的な女性だなぁ。

LAタイムズのコラムニスト、スティーヴ・ロペスの連載コラムが原作。
だから実話がベース。
スティーヴはある日路上でたった二本の弦のバイオリンで豊かなメロディーを奏でる浮浪者と出会う。
彼の名前はナサニエル・エアーズ。
彼が言うには名門ジュリアード音楽院に通っていたらしい。
スティーヴはジュリアード音楽院に問い合わせ、彼の言葉が事実であることを知ると彼の人生に深く興味を抱き始める。
初めは記事のネタだった。
しかし次第にスティーヴはナサニエルを救いたいと思い始め、彼の人生に深く関わっていく。

ナサニエルがどれだけの才能を持っていたのかってところがいまいち分からないのだけど、まあいいや。
話の中心はスティーヴとナサニエルのそれぞれの心の葛藤なので、埋もれていた才能が大舞台で開花するようなカタルシスは訪れない。
かといって二人の葛藤が描ききれているかと言われるとなんか淡白な気もする。
ただ、役者陣は皆素晴らしいまでの名演なので楽しめる。

映画『スラムドッグ$ミリオネア』

2008年 監督:ダニー・ボイル
at ギンレイホール


スラムドッグ$ミリオネア [DVD]

ミリオネアはあのクイズ$ミリオネア。
スラムドッグはスラムの犬。予告編だとスラムの負け犬と訳されている。
まともな教育を受けていないスラム出身の青年が番組史上最高額となる2000万ルピーの最終問題に挑戦しようとしていた。
彼はなぜ問題の答えを知りえたのか。
彼の生きてきた人生や番組に出演した理由が次第に明らかになっていく。

監督はダニー・ボイルで舞台はインド。
音楽がいいんだわ。
子供達がスラムの街中を大人から逃げるために駆け抜けるシーンのリズム、何の楽器か分からなかったけど民族楽器の太鼓のリズムが体全体に響いてきて、それと子供達の躍動感とが合わさって涙が出てくる。

スラムの貧困、犯罪、宗教対立。
しかしまあよくこんな環境で過酷な子供時代を過ごしたのにジャマールは純真な青年に育ったもんだ。
そういえば映画館の最前列の席に父親と来た10歳くらいの女の子が座っていたけど、どんな気持ちでこの映画を見たのだろうか。
全体的には純愛を絡めたエンターテインメントに仕上がっているけど、描かれている内容は結構重い。

ラストはちょっとびっくりしたな。
大林の『時をかける少女』みたいな突然の思いがけない展開。
舞台はインドなんだから見たかったといえば見たかったし、その意外性に危うく泣きそうになる。

シネ通

今日、今月分のテレビ雑誌を買って番組表を見ていたら、テレビ東京で新番組として「シネ通!」とある。
ちょっと楽しみにして見てみると、司会のバナナマン設楽が言うには、シネマ通になろうということで「シネ通」らしい。
なんだ、シネマ通信が復活したのかと思ったら別番組か。

と思いきや海外レポートのレポーターでジェファソン・デイビスが!
7,8年ぶりに見た気がする。
さらには石川三千花の映画評もあるし、これはやっぱりほぼシネマ通信の復活。
嬉しいねぇ。

Wikipediaを見てみたら、2006年にも1年間復活していたらしい。知らなかった。

2009年10月3日土曜日

映画『真夏の夜の夢』

1959年 監督:イジー・トルンカ
BS2 録画


イジィ・トルンカ作品集 Vol.5 [DVD]

トルンカの後期の作品。
彩色、陰影、背景、人形の動き、全てが一層緻密になっている。
その緻密さが人間の物悲しさ儚さを伴った果てしない夢幻の世界を表出させている。

セリフはほとんど無くて、シンプルなナレーションと音楽、動きのみで展開するシェークスピアの真夏の夜の夢。
一度眠くなってきたら止まらなかったので昼寝してから再度見た。
映画館で見ていたら最後まで寝てしまって後悔したんだろうな。

それにしても神々しさとエロティシズムが両立したティターニアが美しい。

2009年9月23日水曜日

映画『重力ピエロ』

2009年 監督:森淳一
at ギンレイホール


重力ピエロ 特別版 [DVD]

前回予告編を見たときに父親役は声の感じから西村雅彦だと勘違いして、珍しいなと思っていたのだけど、西村雅彦じゃなくて小日向文世だった。
伊坂幸太郎の大ベストセラー重力ピエロの映画化。
ベストセラーだけあってかさすがにストーリーは面白い。
原作は読んでいない。
映画化にあたり登場人物が削られたりしているらしいのだけど、まあよくまとまっている。
サスペンスかと思いきや家族愛、兄弟愛の映画。

「春が二階から落ちてきた」
春というのは季節の春じゃなくて、弟の名前が春(岡田将生)。
兄は泉水(加瀬亮)。
父は正志(小日向文世)。
加瀬亮はもう30をとっくに過ぎているはずだが、大学院生役。
岡田将生は高校を卒業したばかりという設定だし実年齢も加瀬亮とは大分離れているけど、それほど違和感は無い。

泉水は院で遺伝子の研究をしている。
春は大学には行かずに街中に書かれたグラフィックアートを消す仕事をしている。
イケメンで芸術的才能もあるし聡明で身体能力も高い弟春といつも比較される兄の泉水という関係。
兄は弟にコンプレックスを感じて嫌っているわけでもなくて、かといってべたべたに仲のいい兄弟でもない。
ただ、兄が取ろうとする思い切った行動を見ると二人の間の深い絆が見えてくる。
弟の方も可愛らしいくらい兄を頼りにしているし。

彼ら兄弟が住む街で連続放火事件が発生する。
春は放火現場とグラフィックアートの奇妙な関係に気づき、兄とともに放火犯を捕まえようとする。
しかし放火犯を追ううちにある真実が浮かび上がってきて・・・

加瀬亮はあんまり意識したことなかったけど、見事に雰囲気を持っていていい役者だったんだな。
岡田将生も『ホノカアボーイ』とは違ってクールでいて子供っぽい目が役に合っていてなかなかいい。
小日向文世はいいんだけどなんかちょっと違和感。
この人はもっと悪な感じがするんだけど、にこにこ顔で個性的でおおらかな役を演じているからかな。
ヅラはギャグなのかどうか終始悩んだけど。
吉高由里子は初めて見たけど綺麗な人。
加瀬亮と目を合わせずに膝を少し曲げた中腰状態でちょろちょろ逃げる姿は役柄と女優吉高由里子といろんな意味で恐ろしい。

サーカスのピエロってなんか泣けるんだよな。
存在が悲しさと優しさと勇気と感動に満ち溢れていて。
重力ピエロというタイトルだけあってサーカースのピエロが出てくるんだけど、
「楽しそうに生きていれば重力なんか消してしまえるんだよ」
のあとに怖がってびくびくしていたピエロが空中ブランコに成功する流れは涙出そうになる。

映画『ホノカアボーイ』

2008年 監督:真田敦
at ギンレイホール


ホノカアボーイ [DVD]

ハワイ島の小さな村ホノカアにやってきた日本人青年レオ(岡田将生)。
この村にはのんびりとした時間が流れ、村人は皆個性的な人たちばかり。

・・・自分探しもの?
しかも風光明媚な田舎にやってきた青年とか個性豊かな住人とかって、むー、つまらない要素があまりにも多すぎる。
最近こういう設定ってよくあるよな。小林聡美の『めがね』とか。
90年代くらいからだろうか。
それより以前にもあんのかな。

期待度は恐ろしく低いまま見始め、結果としては全く予想を裏切らず。
にやりとも笑えないユーモアもさることながら、主人公のレオのあまりの無神経さはひどすぎる。
ただで飯を食わせてもらっておきながら何様ですか、まったく。
そりゃあ蒼井優も愛想尽かす。

倍賞千恵子の洋服がばあちゃんっぽくも若くもなく独特な服でかわいらしい。
といっても倍賞千恵子はあまり好きじゃないのだけど。
キッチンのシンプルで機能的に整然とした配置はおしゃれではあるがそういう要素も風光明媚な田舎に置かれた途端に気持ち悪くなる。

松坂慶子はやせたのかな。
よく見るとやっぱりでっぷりしているけど、ワンピースや髪型のせいか30代くらいに見えなくもなくて若々しい。

2009年9月21日月曜日

映画『ライフ・イズ・ミラクル』

2004年 監督:エミール・クストリッツァ
BS2 録画


ライフ・イズ・ミラクル [DVD]

録画時間が2時間半になっているし観ようかどうしようか迷ったのだけど、観ておいてよかった~。

セルビアとの国境に程近いボスニアの田舎町が舞台となる。
時代は1992年でボスニア・ヘルツェゴビナ紛争勃発の年。
田舎町の心優しいユーモラスの人々なんていう茶番劇は見たくもないのだけど、クストリッツァなので残酷さと隣り合わせの緊迫したユーモアに溢れている。

始めは群像劇で誰が主人公かもよく分からないのだけど、ルカを家長とした3人家族が中心なんだと分かる。
ルカは40台半ばくらいで鉄道技師としてこの街にやってきたセルビア人。
妻はオペラ歌手かなんなのかよくわからないけど、心の病を抱えているのか精神が少し不安定。
息子は二十歳くらいでプロサッカー選手を目指している。
家族愛に溢れたルカ一家の物語かと思いきや紛争勃発。
紛争勃発により狂おしいほどのラブロマンスに。
サスペンス的要素もあるし千変万化。

このラブロマンスが秀逸で、『トラウマ/鮮血の叫び』並の恋愛映画となっている。
その恋愛模様自体は10代かと思うくらい情熱的に激しい単純なものなんだけど、時代背景と年齢からくる捨てるものの大きさを考えるとそう単純な話ではない。
盲目的な情熱であることには変わりは無いのだけど、葛藤を突き破った先で爆発する生の根源的な力が神秘的に美しくエロティック。

中盤までろくに出演シーンもないヒロイン、ナターシャ・ソラックが綺麗。
20歳くらいなのかと思っていたらナターシャ・ソラックは当時28,9くらいだったみたい。
この人の笑顔とか泣き叫ぶ姿とか無邪気な嬌声とか、全てが美しくて愛しい。

2009年9月12日土曜日

映画『ミルク』

2008年 監督:ガス・ヴァン・サント
at ギンレイホール


ミルク [DVD]

ハーヴィー・ミルク。
1977年、カリフォルニア州サンフランシスコ市の市会議員となる。
それはつまりゲイを公表した人として合衆国で初の選挙で選ばれた公職者の誕生でもあった。
しかし議員になって1年にも満たない1978年、同僚議員により射殺される。
「タイム誌が選ぶ20世紀の100人の英雄」にも選出されたハーヴィー・ミルクを描いた作品。

ミルクを演じるのはショーン・ペン。
冒頭から地下鉄の階段でナンパした笑顔が幼い青年スコット(ジェームズ・フランコ)とディープキス。
二人は長い付き合いの恋人となる。
ミルクはサラリーマンの普通のおっさん姿から長髪のヒッピーになって立候補するにあたって再び小奇麗な姿になる。
一方スコットも天パー気味のぼわぼわ頭が幼い普通の青年姿からヒッピーになって、それから口ひげはそのままに短髪になるのだけど、これがなぜかフレディマーキュリーの雰囲気に似ている。そして驚くほどかっこいい。
ジェームズ・フランコというこんなイケメン俳優が今までどこに埋もれていたのだろうと思って経歴を見てみるとスパイダーマンシリーズで有名らしい。
『バレエ・カンパニー』とか何本か見たことのある作品もあるのだけど全然印象に残っていないな。
とにかく映画中盤以降のジェームズ・フランコの第三形態は男から見ても匂い立つような美男子でかっこいい。

最後に暗殺されるという結末が分かっていてもなかなか面白かった。
暗殺シーンの真に迫った恐怖の表情というかしぐさから、キャンドルライトの列にかけて結構泣ける。

他、全然気づかなかったのだけどでかい黒ぶち眼鏡かけたクリーヴ役の俳優は『イントゥ・ザ・ワイルド』のエミール・ハーシュだった。
後、ジャック役の人のたれ気味の赤ん坊のような瞳が絶対どこかで見たことあるはずだけど思い出せないと思っていると『天国の口、終りの楽園。』のディエゴ・ルナだった。

ゲイの人ってそういえば身の回りでは会ったことないな。
欧米に比べて日本では差別感情まではいかないものの偏見は確実にあるのだろうな。
江戸初期くらいまでは男色、衆道が盛んだったのに。
Wikipediaによると「近年の多くの英米の調査では人口の2-13%(50人に1人から8人に1人)の割合で同性愛者が存在しているという」らしい。

映画『フロスト×ニクソン』

2008年 監督:ロン・ハワード
at ギンレイホール


フロスト×ニクソン [DVD]

ニクソンがウォーターゲート事件で辞任した3年後、英国人TV司会者デビッド・フロストはニクソンとの単独インタビューに成功する。
後に「伝説のインタビュー」として語り継がれるこのインタビューにこぎつけるまでの双方の思惑や苦難などの舞台裏からインタビューまでを描く。
インタビュー自体は実際にあったのものだけど、舞台裏のエピソードなどは結構脚色されている模様。

ジャーナリストでもないただのお茶の間の人気司会者が挑むのは海千山千の巨人ニクソン。
国民はニクソンからの謝罪の言葉を求めている。
「君が闘っているのは、超一流の策士だ」

フランク・ランジェラが演じるニクソンは本当に揺らがない。
普通なら窮地に陥る追求も言葉巧みにかわし、すり替え、気づいたら逆に喝采を浴びている。
もう偉人のオーラすら見える。
そんな絶対に落ちないと思われたニクソンが陥落する瞬間は思いのほかあっけない。
放心したような顔のニクソンが映ると、なにか恐怖を伴った違和感を感じる。
昔のCGが「あ、なんかCG処理される」と絶対わかるくらい映像の質が変わるのに似て、実際ニクソンの顔のむくみがCG処理でふくれあがって怪物の顔に変形するか爆発するんじゃないかと思ってどきどきする。
SF映画じゃないのでもちろんそんな結果にはならないのだけど、この気持ち悪い恐怖は何だろうと見ていると、それまで巨大に見えていた風格が全て崩れ落ちて、生の男の顔がいきなり表出したから戸惑ったのではないかと思う。
フランク・ランジェラの演技なのか映像のマジックなのか。
全ての装飾を剥ぎ取った人間の生の顔なんて現実世界でも映画でもそうお目にかかれるもんではない。

ストーリーの方だけど、討論で少しずつ鉄壁の牙城が崩されていくのかと思っていただけに反省の念の全く見えないニクソンの心変わり模様が唐突な印象を受ける。
最終決戦日の前夜の電話がニクソンの本当の心のうちを表す伏線になっていたのだとしても、やっぱり唐突であっけないんだな。
白熱の心理的応酬の時間も短いので勝利の喜びはいまいちだけど、まあ全体的にはかなり面白かった。

2009年9月6日日曜日

映画『1735km』

2005年 監督:グエン・ギエム・ダン・トゥアン
BS2 録画


中国映画が見たかったのだけど、手持ちがなかったのでベトナム映画。
NHKアジアフィルムフェスティバルの2007年度上映作品。
初めに軽く映画の紹介VTRが流れたのだけど、ちょっと見るのを迷う。
1970年代っぽい色あいのフィルムで展開されるのは爽やかなロマンチックコメディらしい。
恋愛物は面白くないのだけど、さらに悪いことにはヒロインがあまり美人でない。
でもロードムービーでもあるらしいしってことで一応見てみる。

ハノイからホーチミンまでの列車の中で若い男女が出会う。
出会うといっても男キエンが女チャムアンに親しげな笑顔で話しかけるものの、チャムアンは一方的にキエンを敵視するのだけど。
トランクを荷台に上げようとしたチャムアンがよろけてキエンが支えてヒールで携帯がぐしっとなってチャムアンがぽかんと虚空を見つめてオープニングクレジット、っていう小気味のいい流れはよく言えばなかなかおしゃれ。

二人はひょんなことから、というか富裕層のキャリアウーマンのわがままなのせいなのか、馬鹿なんじゃないかと思うくらいいつも笑顔のキエンが本性を現して繰り出した超悪質な策略なのか分からないが、フエという駅に取り残されてしまう。
そこから二人の旅が始まる。
とりあえずチャムアンの叔父がいるニャチャンに向かうのだけど、持ち金は少ない。
すると、またもや笑顔の裏に隠れたキエンの裏の顔が現れて、無邪気なアイドルファンを騙して体よくバンに乗り込むことに成功するのだった。
と、そんな感じで誰とでも仲良くなれるキエンの性格と裏に隠れた悪の策略により二人の旅は続いていく。
それにしても軽トラの怪しいアンちゃんはいい味出してたな。ゾンビ?幽霊?殺人者?と見せかけて実は、っていうオチ。

出会い、離別、そしてお互いが惹かれあっているのに街では何度もすれ違い、そしていよいよ再会、っていう王道展開。
ただ、離別の後は再会のロマンチックコメディー要素をはらみつつも、お互い自分の生き方を見つめなおす旅が話の中心になる。
政略結婚反対、愛に、夢に生きよう、逃げてちゃ駄目だ、誠実に、着実に前に踏み出そう。
変わりゆくベトナムの街並みと廃れゆく伝統文化にもう一度目を向けなおしつつ、新しい生き方も推奨する。
変わるもの、変わらないもの、もっと視野を広げて世界を、人を見よう。
そしてそれらに気づかせてくれたのは全て愛だ。だから愛って素晴らしい。
っていう帰結。
キエンとチャムアンによる恋愛論から始まった「愛」というキーワードは、現代のベトナム文化に対するメッセージにまで拡がっていくのだけど、映像が弱いのか結局のところ一昔前のチープなトレンディドラマを見ているような印象。

最後の方は結構工夫されていて、全てがキエンの作り話、またはクリーニング屋の少女の作り話なんじゃないかと匂わせている。
なるほど、拙い恋愛論もご都合主義な展開も少女の作り話なら理解できるかも。

懸念していた美人でないチャムアンは最後の方には美しい人に見えてきたな。
そういえば作品が始まる前の紹介VTRで、来日した監督とチャムアン役のズーン・イエン・ゴックが映っていたのだけど、ズーン・イエン・ゴックはショートカットになっていた。
作品を見終わってからもう一度見てみると、メイクのせいか肌も綺麗だし、切れ上がり気味の目はアジアンビューティーに見えてくる。
モデル出身らしい。

まあ、いろいろ小ネタも散りばめられて、つまらなくはなかった。

2009年9月5日土曜日

映画『チェコの四季』

1947年 監督:イジー・トルンカ
BS2 録画


イジィ・トルンカ作品集 Vol.1 [DVD]

「謝肉祭」というパートから始まる。
冒頭の歌が少し中国風なので、なんか急激に中国映画が見たくなる。
楽しく外で歌い踊っている集団が段々ヒートアップしてきて、その時の荒れ狂うような怒涛のカット割りに思わず興奮してくるのだけど、突然馬車に乗った白いてるてる坊主のような生物が集団に迫ってきて集団を蹴散らして去っていく。
何が起きたのか、あの生物は何なのかさっぱり分からないが、一気に祭りの後の静寂の世界へ。
ぽけーっとしているとエンドクレジットが。
と思ったらエンドクレジットじゃなくてオープニングクレジットで、「春」というパートが始まる。

チェコの四季と銘打った作品だけど、トルンカの短編をつなぎ合わせた作品集なのだろうか。
と思ったらトルンカの長編第一作らしい。
謝肉祭の楽団もてるてる坊主みたいな奴もあとのパートでも出てくるし、一応つながりはあるみたい。
チェコの年中行事と四季の風物詩を描いた作品で、「謝肉祭」「春」「聖プロコップ伝説」「巡礼」「聖名祝日」「ベツレヘム」の6つのパートに分かれたオムニバス。
セリフは一切なくて歌と音楽のみ。

基本的にシリアスなんだけど、ギャグでやってるんじゃないかと思うくらい時折人形がコミカルになる。
ありえないくらい高速回転したり子供を振り回したあと投げ捨てたり。
「春」で蝶の仮面をした梟役の女性人形が、芸人が眼鏡をずらされたかのように仮面をずらした状態でしきりに怒っている姿は笑える。
右腕を激しく上下に振りながら怒る姿は可愛い。
しかもその後男女関係なく大乱闘が始まるのだけど、そこで場面が夕暮れに変わるとまだ乱闘は続いていたらしく、梟女性の髪がぐちゃぐちゃに乱れまくっている。
その姿はコミカルで残酷。
監督は監督の意思でやりたい放題に人形を動かせるのだけど、ユーモラスで愛らしい姿や時に冷たい残虐性などを見ているとトルンカがいかに人形達に愛情を注いでいるのかが分かる。

音楽に合わせたカット割や、盛り上がったあとの至極の静寂の美しさなど、なかなか楽しめる。
ただ、歌ばかりなので途中眠くなって寝てしまった。

2009年9月4日金曜日

9月INFO


BS2 9月4日(金) 午前0:40~午前2:58(3日深夜)

ゴスフォード・パーク 2001年・アメリカ
〔製作・原案・監督〕ロバート・アルトマン

BS2 9月9日(水) 午後9:00~午後10:56

恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ 1989年・アメリカ
〔監督・脚本〕スティーブ・クローブス
〔出演〕ミシェル・ファイファー、ジェフ・ブリッジス、ボー・ブリッジス

BS2 9月13日(日) 午前1:00~午前2:52(12日深夜)

アリスのレストラン 1969年・アメリカ
〔監督・脚本〕アーサー・ペン

BS2 9月14日(月) 午後9:00~午後10:37

イージー・ライダー 1969年・アメリカ
〔監督・脚本〕デニス・ホッパー

BS2 9月16日(水) 午前0:40~午前2:48(15日深夜)

いつか読書する日 2004年・日本
〔監督・原案〕緒方明
〔出演〕田中裕子、岸部一徳、仁科亜季子、渡辺美佐子、香川照之、上田耕一

BS2 9月16日(水) 午後9:00~午後10:55

革命児サパタ 1952年・アメリカ
〔監督〕エリア・カザン

BS2 9月18日(金) 午前0:55~午前2:55(17日深夜)

ゆれる 2006年・日本
〔監督・原案・脚本〕西川美和

BS2 9月20日(日) 午前1:00~午前2:36(19日深夜)

ストリングス ~愛と絆の旅路~ 2004年・デンマーク
〔監督〕アンデルス・ルノウ・クラルン、庵野秀明(ジャパン・バージョン)
カンヌ映画祭を始め、数々の映画祭で注目を浴びたデンマーク発のドール・ムービー

BS2 9月29日(火) 午後1:00~午後3:06

荒馬と女 1961年・アメリカ
〔監督〕ジョン・ヒューストン
〔出演〕クラーク・ゲーブル、マリリン・モンロー

BS2 9月30日(水) 午後1:00~午後2:30

ナイアガラ 1953年・アメリカ
〔監督〕ヘンリー・ハサウェイ
〔出演〕マリリン・モンロー


先月から次郎長三国志シリーズをずっとやっているっぽい。
ちなみに10月は内田叶夢板大菩薩峠三部作。
あとNHKアジア・フィルム・フェスティバルの作品が9月にBS hiで。BS2では10月。

2009年8月29日土曜日

映画『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』

2008年 監督:デヴィッド・フランケル
at ギンレイホール


マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと (特別編) [DVD]

犬を中心としたつまらない犬映画なのだと思っていたら、確かに犬が中心なんだけどどちらかというと家族映画になっている。

主演はオーウェン・ウィルソンとジェニファー・アニストン。
この二人が結婚するところから始まる。
共働きで子供を持つ心構えもできていなかったので子育ての予行演習みたいな感じで犬を飼うことにする。
やってきたラブラドール・レトリーバーの子犬、っていうのが世界一おバカな犬だった。
躾も何も一切受け付けない自由奔放な犬マーリーに振り回されながらも二人の、家族のそばにはいつもマーリーがいて、いつのまにかマーリーはかけがえの無い家族になっている。

主人公が着実にキャリアをステップアップさせていくのだけど、なんか羨ましい。
シンプルな一軒家から始まってプール付きの家、そして田舎の堅牢そうなでっかい豪邸へ。
その間、子供は3人に。
流産、妻の鬱等など様々な問題に直面しながらも夫婦、家族の絆を深めていく。
なんかアメリカの理想的な家族像が投影されているみたいだ。
原作は新聞のコラムニスト、ジョン・グローガンが書いたエッセイ。だから実話なんだね。

世話のやける犬だけど愛くるしいし笑わせてもくれるしで楽しい。
キャスリーン・ターナーにさかったりするし。
それにしてもキャスリーン・ターナーが・・・

映画『リリィ、はちみつ色の秘密』

2007年 監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
at ギンレイホール


リリィ、はちみつ色の秘密 (特別編) [DVD]

ダコタ・ファニングは子供なのか大人なのかおばさんなのかよく分からない雰囲気で不思議だな。

リリィ(ダコタ・ファニング)は幼少の頃に母と死別してから父親と二人で暮らしていた。
この父がなかなかの暴力野郎で、娘への愛と憎しみが混在している。
憎しみっていうのは妻が死ぬ前に自分を捨てようとしていたので妻を恨んでいるのだけどもういないので娘に矛先が向いてる感じ。
時代は1964年でまだ黒人差別が残っていた頃。
リリィは14歳の誕生日に黒人の使用人ロザリン(ジェニファー・ハドソン)と共に家出する。
で、なんだかんだで黒人3姉妹の養蜂家の家に逃げ込んではちみつをせっせと採取する。

黒人差別が引き起こした事件が連鎖的に最悪の悲劇につながるんだけど、原因の一端でもあるリリィの心境、立ち位置がいまいち分からない。
と思っていると実はちゃんと事態を正確に受け止めていて、泣きながら心情を吐露するシーンはいろんな思いが含まれていてぐっと来る。
耐えられなくて吐いていたのも悲しみと責任をその小さな体に一身に背負っていたから。
幼少の頃に背負った責任だけでもいっぱいいっぱいなのにこれ以上背負いきれるはずがない。
そんな思いを豊かな体と菩薩のように柔和な微笑みで受け止めてくれるオーガスト(クイーン・ラティファ)がまたいいよねぇ。

2009年8月25日火曜日

映画『チェコの古代伝説』

1952年 監督:イジー・トルンカ
BS2 録画


イジィ・トルンカ作品集 Vol.2 [DVD]

チェコの人形アニメ。
建国譚のようなものが始まるので、あれっと思ったけどよくよく考えれば「チェコの古代伝説」っていう作品なんだから当然か。
あんまり重厚な話を見せられても嫌だなと思っていたのだけど、そこはイジー・トルンカで緻密でダイナミックな描写で結局最後まで飽きずに観れる。

ストーリーはチェコの各伝承がオムニバスのような形式で語られていくのだけど、ナレーションと荘厳な歌曲が中心でセリフはほとんどない。
人物の名前も覚えられないので誰が誰だかよくわからない点も多いのだけど、一つ一つのエピソードがことのほか美しい。幻想的だったりプリミティブな生命力に溢れていたり。
特に光と影の使い方が凄くて、人形(衣服のなびきも含めて)の緻密な動きに光と影のコントラストや遷移が奥行きを与えるとそれはもう驚嘆すべき映像詩になる。
人形の表情なんて無表情なのに時折魂が宿っているかのように感情豊かでぞくっとする。

2009年8月21日金曜日

映画『バーン・アフター・リーディング』

2008年 監督:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
at ギンレイホール


バーン・アフター・リーディング [DVD]

一人の女が全身整形の費用を欲しがっていた。
それだけなんだけど、周りの人間は結果的に死んだり人生を破滅させたり。

ジョン・マルコヴィッチ
フランシス・マクドーマンド
ジョージ・クルーニー
ブラッド・ピット
ティルダ・スウィントン
の5大キャスト。

マルコヴィッチはCIA局員だったがアル中で解雇された役。このおっさんの切れっぷりはやっぱり怖いわぁ。
フランシス・マクドーマンドはフィットネスセンターの従業員で全身整形を望む女性役。
ジョージ・クルーニーはエロの塊役。
ブラッド・ピットは陽気な馬鹿役。
ティルダ・スウィントンはマルコヴィッチの妻役。

なかなか笑えるがいいやつが死んでしまうし後味はそれほどすっきりしない、かと思いきや最後のオチを観ると全てが笑って収束する(どうでもよくなる)ようなブラックコメディ。

映画『レイチェルの結婚』

21(金)~25(火)まで夏休みをとったので映画を見に行く。

2008年 監督:ジョナサン・デミ
at ギンレイホール


レイチェルの結婚 [DVD]

手持ちカメラで始まったなぁと思ったら終始手持ちカメラ。
レイチェルの結婚式二日前から結婚式当日までを追った家族ドラマ。
手持ちカメラでドキュメンタリータッチだけど、カメラを回す人物が登場人物から認識されているわけではないのでやっぱりカメラマンはそこにいるけど存在しない扱い。
ドキュメンタリータッチってなんだっけ。
カメラが登場人物と同じフィールド、同じ視点にいることでリアリティが増すのかな。
まあ、なんでもいいけど手持ちカメラがあまり好きでないので普通に撮ってほしかったな。
なかなか悲しい精神的葛藤を描いているのでどっしり見たかったってことで。

公式ページのプロダクションノートをさらっと読むと、リハーサルなしで役者もほとんど即興で演技をしていたらしい。
カメラマンのデクラン・クインもショットがあらかじめ決められていたわけではないので培った技術と後は直感で撮影していたらしい。
こう見ると凄いことをやっているように思える。
でもやっぱり終始手持ちカメラって・・

レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚だけど、主役はレイチェルの妹のキム(アン・ハサウェイ)。
キムは姉の結婚式二日前に麻薬更生施設から出てくる。
レイチェルの結婚の準備でたくさんの人が集まりお祝いムード一色のホームに戻ったキムは家族に温かく迎え入れられるのだが。

ドキュメンタリー風のせいか本当にどうでもいいシーンも多い。
両家族や友人が集まった夕食会で一人ずつ立って新郎新婦にお祝いの言葉を述べるのだけど、なんだこの気持ち悪い幸せ感に溢れた内輪ノリは。
内輪ノリ、そう、それだ、内輪ノリをことあるごとに見せられても何も面白くない。
それに一人混じっている東洋系の兄さんの顔が気になってしょうがない。
細い目でなぜかスキンヘッドでピンク縁のサングラスをシャツの襟首にぶら下げて、頻繁にカメラに映りこむ。
調べてみると中国系アメリカ人で本業は詩人らしい。

ああ、この映画ちょっときついなぁと思ってみていたのだけど、後半次第に明らかになるキムの過去や家族の葛藤が段々面白くなってくる。
自暴自棄になったキムが翌日にレイチェルの部屋の前に現れたとき、カメラはレイチェル側の視点でドアが開かれると、そこに震えた子犬のような弱弱しい表情のキムが現れる。
ここで泣きそうになってからというもの、その後キムが映るたびに泣きそうになって何度もこらえる。

前半少しも乗れなかったのだけど、最後まで観るとなかなか面白かった。
他、デブラ・ウィンガーも出ている。

2009年8月2日日曜日

映画『ホルテンさんのはじめての冒険』

2007年 監督:ベント・ハーメル
at ギンレイホール


ホルテンさんのはじめての冒険 [DVD]

ベテラン運転士のホルテン(ボード・オーヴェ)は定年退職を迎えようとしていた。
最後の勤務の日、前日のふとした事件により人生初の遅刻をして運転するはずの列車に乗り遅れてしまう。
ここから真面目一辺倒に一人で慎ましく暮らしてきたホルテンの人生に変化が訪れる。

途中で結構寝てしまった。
つまらなかったわけでもないのだけど、テンポがゆっくりなので一度眠くなったら止まりません。

飄々と無表情にパイプをぷかぷかふかすホルテンが愛らしいのだけど、犯罪すれすれ、いや、不法侵入や窃盗等完全に犯罪な行動を平気な顔してやるもんだからひやひやする。

途中寝てしまったとはいえ、ラストのホルテンの表情とカメラが切り替えした時に現れた女性を見た瞬間思わず泣きそうになる。

映画『英国王 給仕人に乾杯!』

2006年 監督:イジー・メンツェル
at ギンレイホール


英国王給仕人に乾杯! オリジナル・サウンドトラック

小国チェコの20世紀前半現代史。
主役のヤン(イヴァン・バルネフ)は小柄な男性。
欲望、快楽が時代にもまれながらストレートに描かれるのだけど、醜いというより愛らしい滑稽さで表現される。
悲劇や死も時代の必然として欲望、快楽と同じ土壌にあがって描かれるもんだから強烈なアイロニーになっている。
美女達が素っ裸で泳いでいたプールが時代が変わって戦争で腕や脚をなくした兵士達が素っ裸で泳ぐプールに変化したり。

百万長者を夢見るヤンは駅のソーセージ売りから始まり田舎のホテルの見習い給仕人、富豪たちのお忍び別荘ホテルのウェイター、そしてプラハの超一流ホテルで主任給仕人に上り詰める。
ほとんど運と成り行きなんだけど。
作品全体が人間の醜さや愛らしさや馬鹿らしさを達観した視点で見つめているのだから主役のヤンもどこか達観している。
達観しているというと少し語弊があるか。
急変するチェコの現代史をそんなものは関係ないとばかりに流されるまま思うままひょいひょい泳いでいく姿が人間を超越している、というかコミカル。

120分もあるけど結構面白かった。

最近の状況とか

7月は一回も書き込まなかったな。(7/20分の投稿を書いたのは8/2)
ってことでここのところの話をまとめて書いておこう。

6月末
会社の後輩がPS2のゲームを貸してくれた(代わりに俺はTHE 任侠というゲームを無理やり貸した)のだけど、ディスクの傷のせいか何度リセットボタン押しても一向にディスクを読み取らない。
元々俺のPS2はかなり調子が悪く、初めのディスク読み込みは4,5回リセット押してようやく読み込めて、かつプレイ中も時折ディスクが読み込めずに数十秒固まったりするような状態だったのだけど、借りたソフトは30分くらいトライしても最初のディスク読み込み自体が全然駄目だった。
だからせっかく借りたのに全くゲームを始められない。
PS2自体駄目になったのかと思って他のソフトを入れてみると1,2回リセットしただけで読み込めた。
ついでにそのままプレイ。
これが「真・女神転生III NOCTURNEマニアクス クロニクルエディション」っていう去年買ったRPGなんだけど、時間のある限りやり続けている。
やっぱりまとまった休みを取っているわけでもないのにRPGはやっちゃ駄目だな。

やり始めた6月末頃はまだ自社勤務でほぼ定時帰りの余裕生活だったのだけど、6/29に7月からまた武蔵小杉で作業することが決まって急に忙しくなる。
平日は忙しくてできないので土日に集中してプレイしていたのだけど、おかげでギンレイホールに一回行きそびれる。

ゲームはまだクリアしていない。

最近なんだか眠くてしょうがない。
ちょっと寝転がっていると気づいたら寝ている。
こないだなんかゲームしている途中で寝ていたらしく、深夜に暑くて起きたらゲームの画面が戦闘途中になっていた。戦闘中に寝たらしい。
一週間の半分くらいは硬いフローリングの上で寝ている気がする。


熊木杏里のブログを見ていると、どうやら11月に新しいアルバムが出るらしい。
1年に1回ペースをこれからもずっと続けてほしいところ。
そういえばPerfumeの新しいアルバムはまだ買っていない。


勤務先の人がNHKの密着ドキュメンタリーかなにかで若手演歌歌手が3人集まってなんかやっているのを見たらしく、3人の中でひとりだけ明らかにおっさんがいるのにおばさんたちがキャーキャー言っていたという話をしていた。
こないだ何ヶ月か前のNHK歌謡コンサートを見たとき、「イケメン3」が復活して出ていたなと思って、もしかして「イケメン3」ですか?と聞くと「そう、それ!」と。
元々NHK歌謡コンサートだけのスペシャルユニットだったはずだけど、大好評につき復活とか小田切アナが言っていたから、人気が出て他の番組にも出ているのかなぁ。
北川大介(38)竹島宏(30)山内恵介(26)の3人。
ドキュメンタリーでは3人がなんかの番組のオープニングを歌っていたらしく、いいとも青年隊かよ、って突っ込んでいた。
北川大介は後の二人からは「兄貴」と呼ばれているっぽい。
ちなみに昔田川寿美のコンサートで知らないおばさんから似ても似つかない山内恵介と見間違えられたことがある。


HDDレコーダーがこないだ残容量0になっていた。
毎週自動録画されている演歌番組が見ないまま3か月分くらい溜まっている。

2009年7月20日月曜日

映画『そして、私たちは愛に帰る』

2007年 監督:ファティ・アキン
at ギンレイホール


ドイツとトルコを舞台に3組の親子が運命に導かれるまま出会いと別れを経験する。
と書くと都合よくこの広い世界でお互い胡散臭く出会ったりすれ違ったりするんでしょう?と思うけど、まあ実際都合よく出会うのだけど、そんな都合よさなんてどうでもよくなるくらい悲しくて温かいストーリー。

冒頭少ししてから「イェテルの死」という章が始まる。
字幕で「イェテルの死」と出たところでイェテルって誰だよと思うのだけど、程なくイェテル登場。
娼婦のイェテルはがたいのいい二人の男に「おまえもイスラムだろ、今すぐ娼婦をやめろ」と脅されている。
死の影がなくはない。
しかしこの男たちはイェテルの死には関係なく、イェテルの死はイェテルという温かい人物像が見えてきたところで思いがけない形で訪れる。
なんて簡単であっけないんだ。
ここでまずアリとネジャットという一組の父と息子の運命がずれる。

続いて「ロッテの死」という章が始まる。
母イェテルの死を知らずにトルコで政治活動に身を投じていたアイテンが中心の章なんだけど、程なくロッテ登場。
死の影など全く見えないのに、ロッテもまた唐突にあっけなく。

飛行機から搬出されるイェテルの棺桶。そして搬入されるロッテの棺桶っていう図は悲しいはずなのに少し滑稽でもある。
死と笑いと日常がいっしょくたになっていて面白い。
人は簡単に死ぬ。死ぬんだけどその死は残された人々が自分の足でしっかり踏みしめながら人生を歩むきっかけとなる。
生と死とそこから派生する運命と人生のサイクルが高い位置から静かに俯瞰されていて、大仰な人生賛歌映画とは違って、ああ、なんか素敵だなぁと自然に思えるような映画。

ロッテの母親を演じたおばさんは只者じゃない気品さを漂わせていて、誰なんだろうと思っていたのだけど、ハンナ・シグラという有名な女優さんらしい。
ファスビンダーのミューズで、ヴィム・ヴェンダースやゴダール(『パッション』)の作品にも出ているらしい。知らなかった・・

映画『チェンジリング』

2008年 監督:クリント・イーストウッド
at ギンレイホール


チェンジリング [DVD]

142分あるんだけど間延びもせず最後までテンション高く観ることができる。
化粧が濃くて口紅が別の生き物かのように気持ち悪く真っ赤なこの主演女優はいったい誰だろうと思っていたらアンジェリーナ・ジョリー。

舞台は1928年のロサンゼルス。
女手一つで9歳の息子を育てるクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)。
ある休日、息子を家に残して出勤したクリスティンは帰宅後、息子がどこにもいないことに気づいて取り乱す。
突然消えた息子。
5ヵ月後、息子はロス市警によって発見される。
腐敗しきって信頼が地に落ちているロス市警はこの手柄を絶好のプロパガンダとして、たくさんの報道陣の前で感動の親子対面を大仰に演出した。
いよいよ親子対面。
しかし現れた子供は自分の息子とは似ても似つかない全くの別人だった。
「子供の成長は早い」などとJ・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)に言いくるめられたクリスティンは、渋々この見知らぬ子供を家に連れ帰る。
無力なクリスティンとロス市警との戦いが始まる。

いやー、しっかし面白いなぁ。
長い映画は疲れるから嫌いなんだけど、魅力的な役者や展開でぐいぐい引き込んでいく。
それぞれがそれぞれの思惑で動くのだけど、クリスティンだけがシンプルにただ息子を見つけ出すことだけを目的としている。
そのシンプルで根源的な母の強い願いは、大人から子供まで、権力を持った傲慢から無邪気な夢まで、様々な人間の思惑で阻まれる。
特にジョーンズ警部が凄い。
映画史上最も憎らしい人物なんじゃないかと思うくらい憎たらしい。

そういえば精神病棟の下りは、どこまで当時の実体にそぐうのかは知らないけど、夢野久作の『ドグラマグラ』における「キチガイ地獄外道祭文」のような病院地獄そのもだったので恐ろしい。

2009年6月21日日曜日

キャンドルナイト

大学のゼミの先生が定年退職するらしく、退職祝賀会があったので行って来る。
13時から15時半。
前半煙草吸いに20分くらい逃げたとはいえあまりに短いのでほとんど飲めなかったし飯も十分に食えず。

終わってからBOOK OFF寄ったりしてゆっくり六本木に向かう。
16時半くらいには着いたかな。
熊木杏里のミニライブが行われる東京ミッドタウンに直行してうろちょろする。
会場と思われる場所には柵に沿って10数人が既に場所取りしている。
この人たちは開始の19時20分までの3時間ここに立っているつもりだろうか。凄い人たちだ。

東京ミッドタウン内をふらふら歩いて雑貨屋入ったり芝生広場で煙草吸ったりパン屋で高いパン買って食ったりで2時間ばかり時間を潰す。
祝賀会でずっと立っていたから足が痛いんだよね。
もう帰りたいと思いつつもせっかく来たしあと一時間なので会場のキャノピー・スクエアに向かう。
人数多いと入場規制するとか書いてあったから心配したけどまだまだ大丈夫そう。
ただ、一時間も立って待っていられないので近くのベンチに腰掛けて澁澤龍彥の本を読んで待って、19時10分くらいになってから人だかりに突入して適当な位置で待つ。

時間になって熊木杏里が登場したのだけど、前の人たちの頭で全く見えない。
まあ歌が聴ければいいか。

  1. 新しい私になって

  2. 君の名前

  3. 祈り

  4. ふるさと

  5. ぼくらのあり方


の5曲。
楽器編成はキーボードとチェロだけだけど、メンバは「SPRING TOUR 2009 ~花詞~」の人達で豪華。

1曲目で僕の後ろのカップルがでかい声で騒いでいてうるさかったのだけど、気づいたらいなくなっていたのでよかった。
なんせ2曲目は最近毎日何度も聴いて楽しみしていた『君の名前』だったので。
力強いファルセットで畳み掛けるサビの波が大音量で体全体を駆け巡って放心する。
ああ、力尽きた。

5曲目の『ぼくらのあり方』は映画の主題歌で劇場でのみ限定発売していた曲だったかな。
もうライブ以外で聴くことはなさそうだけどどんな曲だったか忘れてしまった。
そういえば『ふるさと』を歌う前のMCで、こないだのツアーでも何度もしていた言い回しをしていたな。「ふるさとを・・・思い浮かべながら聴いてください」と。

歌い終わってから20時のライトダウンまでTOKYO FMのアナウンサーと熊木杏里でトークがある。
アナウンサーが雨の音を心配していたけど歌声とマッチして、というようなことを言っていて、確かにライブ中も今も大雨だなぁと思っていたのだけど、屋根の外に出てみれば大雨じゃなくて霧雨。
水の音は近くの噴水の音だった。

君の名前

2009年6月18日木曜日

君の名前

君の名前

NHKの「ワンダー×ワンダー」の主題歌にもなっている熊木杏里の『君の名前』。
公式ページでサビの一部だけ聞けてちょこちょこ聞いていたのだけど、サビだけじゃ満足できない。
いつ発売するんだろうと思っているとこのページの右側にあるニュースで新曲発売とある。
いよいよ発売日決まったかと思って見てみると、発売日が決まったんじゃなくてもう発売してんじゃん。

で、今日さっそく買いに行く。
ちょっと飲みに行く約束があったので0時過ぎに帰ってからふらふらしながら聞いてみる。
目が覚めるね。
サビで多用している高音が心地よくせつない。
youtube

全3曲をリピートで聴いていると顕著に分かるけど、3曲目「つばさ」の最初と最後にあるhaっていうハミングと1曲目の「君の名前」の最初のhnっていうハミングがリズムも音程も物凄い似ている。
自分で自分の曲をパクったのかmyブームなのか。

2009年6月14日日曜日

映画『わが教え子、ヒトラー』

2007年 監督:ダニー・レヴィ
at ギンレイホール


わが教え子、ヒトラー デラックス版 [DVD]

予告編見たときは『ディファイアンス』より絶対こっちの方が面白いはず、と思っていたのだけど、そんなに面白くなかったな。
もっと盛り上がりそうな題材なのに人物像や感情があやふやなまま最後まで行ってしまう。
ラストの爆弾の爆発なんてタイミングもなにもかも最悪にしょぼすぎてぽけーっとしてしまう。
無常観ってことでしょぼかったのかなぁ。

第二次大戦末期の劣勢に陥ったドイツ。
宣伝大臣ゲッベルスは新年にベルリンでパレード及びヒトラーによる演説を行い、それをプロパガンダ映画として撮影してドイツ中で上映する計画を立てる。
しかし当のヒトラーは完全に自信を失ってかつての威厳は見る影もなくなっていた。
そこでゲッベルスはわずか5日間でヒトラーを復活させる奇策として、スピーチ指導に世界的俳優アドルフ・グリュンバウム教授を起用することにする。
グリュンバウムはユダヤ人。
「総統が忌み嫌うことで力が湧くのです」
強制収容所から移送されたグリュンバウムは家族との再会を条件に、この世で一番憎いヒトラーのスピーチ指導を引き受ける。

ヒトラーを人間的に描いたブラックユーモアに溢れる本作はドイツにおいてかなりセンセーショナルだったらしい。
配給はアルバトロス。
B級だけじゃなくて『善き人のためのソナタ』とか名作もちょろちょろ配給するので期待度は高かったものの・・・
監督のダニー・レヴィはユダヤ人で、「私はナチス、ヒトラーを許しているわけではない」とインタビューで答えているけど、どう見てもヒトラーがお茶目で可哀想すぎる。
演説中に起こった信頼できる友グリュンバウムの予定外の反乱に、真下のグリュンバウムを慌ただしく見るヒトラーのなんと可哀想なことか。(このヒトラーを真下から映すアングルは結構いい)
世界で最も憎い人物であり友でもあるヒトラーに対するグリュンバウム(とその家族)の複雑な感情がいまいち描ききれないまま終わっちゃうから、ただヒトラーの人としての孤独な悲しさしか見えてこない。

笑ったのはヒトラーがグリュンバウムのちょっと意地悪な演技指導で四つんばいになって犬の真似をさせられるシーンがあるのだけど、四つんばいのヒトラーの背後から欲情した愛犬のブロンディが覆いかぶさっていたところ。
ヒトラーにそこまでやらすか。
(確かブロンディはメスだったと思ったけどそんなことはまあいいや)

主演は『善き人のためのソナタ』のウルリッヒ・ミューエ。
胃がんで亡くなったため本作が遺作となる。
ヒトラー役にはミュージシャンでありドイツの有名なコメディアンでもあるヘルゲ・シュナイダー。
ヘルゲ・シュナイダーっていう人は凄い人らしい。参考

映画『ディファイアンス』

2008年 監督:エドワード・ズウィック
at ギンレイホール


ディファイアンス プレミアム・エディション [DVD]

1941年、第二次世界大戦下、ナチスドイツは数え切れないユダヤ人を虐殺していった。
そしてここに、もう一人のシンドラーがいた。

という予告編のナレーションから、これみよがしな戦争感動大作って感じでつまらなそうだなと思っていたのだけど、意外や面白い。
ラストの方のズシュの出来すぎなくらいかっこいい見せ場には泣きそうになったし。

舞台はベラルーシ。
ナチスのユダヤ人狩りから逃れたズシュ・ビエルスキ(リーヴ・シュレイバー)、アザエル・ビエルスキ(ジェイミー・ベル)、アーロン・ビエルスキ(ジョージ・マッケイ)の3人は森の中へと逃げ込む。
やがて長兄のトゥヴィア・ビエルスキ(ダニエル・クレイグ)も合流。
初めズシュが主人公でかつズシュだけユダヤ人で無いのだと思っていたや。
いつの間にか主役が冴えないおっさんのトゥヴィアに変わって行き、同時にズシュもユダヤ人でかつトゥヴィアと兄弟だと中盤でようやく気づく。
ああ、じゃあ最初の4人は4兄弟ってことか。
トゥヴィア役のダニエル・クレイグとズシュ役のリーヴ・シュレイバーは民族が全然違うと思うくらい似ていないからな。

初めの4人がいつのまにか100人くらいに増えて、極寒の森の中で密かな自衛コミュニティを築いていく。
最終的には1200人もの数になっていたらしい。
これほどの数のユダヤ人を救ったヒーロービエルスキ兄弟。
綺麗な面だけ取って神格化されるかといえばそこは事実に基づきかつ娯楽的に残虐な面も映し出す。
復讐でばしばしナチスの協力者とか殺すからね。
コミュニティの住人が一人のドイツ兵をよってたかってなぶり殺すのを疲れきった表情で黙って見ていたり。
じいさんからミルクを略奪したり・・・
でもやっぱりヒーローなんだよな。
特においしいところをかっさらうズシュはさすがです。

困難を極める食料確保、コミュニティ内の反乱、兄弟の確執、厳しいなんてもんじゃない冬、ロマンス、ナチスとの戦闘、等々で136分という長さも苦も無く見れる。
どこまで事実に基づいているか知らないけど、良質のエンターテインメントにもなっているから面白い。

ビエルスキ兄弟の相手役がまた綺麗。
ミア・ワシコウスカが色白の美少女でアレクサ・ダヴァロスが意思の強そうな顔した美人。
なんだけど我らがヒーロー、ズシュの相手だけ年いってるよな。イーベン・ヤイレ。
三男のアザエルが追っ手を待ち構えるときのミア・ワシコウスカの泣き顔がかわいい。
せっかく死線をくぐりぬけたのになぁ。

ダニエル・クレイグは6代目ジェームズ・ボンドをやっているらしい。

三沢光晴

iGoogle開いたらGoogle急上昇ワードの1位が三沢光晴、2位がノア。
テレビ放送もとっくに打ち切られたのになんだろうと検索してみたら衝撃の三沢光晴死亡ニュース。

GHCタッグの三沢、潮崎vsバイソン、齊藤での事故らしい。
バックドロップで頭部を強打。
受身の上手くない若手選手ならともかく三沢が・・・
Noahの試合は頭から落とす技を普通に使う選手がいっぱいいるから慣れちゃっていたけどやっぱりかなり危険な技だったんだな。

やばい、言葉にならない・・・
ご冥福をお祈りします。

2009年6月13日土曜日

インド料理シダット

最近よく行く店がある。
矢口渡にあるインド料理シダット。
1年位前だかに気づいたらぽつんとオープンしていた。
前に矢口渡駅を利用して通勤していた頃は会社帰りに毎日店の前を通っていたのだけど、中をのぞくといつもがらがら。
そういえばオープンして暫く経った頃に店員が駅前でチラシを配ったりしていたな。

今年に入ってから日曜の夜に初めて食べにいった。
かなりおいしい。
空いてるくせに蒲田にあるシャングリーラと大して変わりないレベル。
むしろシャングリーラより好みかも。辛くないしナンは甘すぎないし。
タンドリーチキンのセットで1400円だか1600円だった気がする。
そこそこ高め。
カレー2種とナンとサラダとタンドリーチキンとドリンクでかなり腹いっぱい。

それから一ヶ月に二、三回程度の頻度で土日のどっちかの夜に通っている。
セットは量が多いし高いのでいつもカレーとナンだけ頼むのだけど、毎回「ドリンクはいかがですか?」「ドリンクはいいです」というやり取りをしている。
そして今日行ったときも同様のやりとりを。
ただ、いつもこのやりとりを含んだ注文後に出てくるお冷が出てこないなと思っているうちにカレーが運ばれてくる。
まあ、喉渇いてきたらお冷貰おうと思って食い始めると、店員がお冷と冷たいチャイを運んでくる。
あ、どうもみたいに会釈してそのままカレーを食べ続けようとしてふと、いや、チャイ頼んでないし、と思って慌てて「ああ、すいません。僕これ頼んでないです」と言うと、「サービスです」とにこやかな笑顔で店員が答える。

このサービスは何のサービスだったんだろう。
お冷を出し忘れたお詫び?
今日は僕意外にも6,7人の家族づれがいてにぎやかだったので、暇なときに来てくれた客としてもてなしてくれたわけでもなさそうだし。
よく行くといっても一ヶ月に二、三回じゃ僕の顔も覚えてないだろう。
いや、まてよ、よくよく考えると僕以外に一人で来ている客を見たことが無いかも。
他の客は家族連れとかカップルとかなので。
意外と覚えられていてたまに来てくれるからとサービスしてくれたのかな。
また近いうちにいこっと。

ちなみに前に行ったときに貰った店のチラシによれば、石川台店というのもあるらしい。
夜は人少ないけどランチは行列できたりして儲かってるのかなぁ。
もしくは僕みたいなカレーとナンの最小構成で注文する奴なんかいなくて、他の人はセットやドリンクやおつまみをばんばん注文して客単価が高いから儲かってるのかな。
ん、そういえば今日いた家族づれは1万いくらか払っていたぞ。
次行ったときは見得はってドリンクも頼んでみるか。

2009年6月9日火曜日

映画『太陽はひとりぼっち』

1962年 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
BS2 録画


太陽はひとりぼっち [DVD]

昔、人に勧められてからも結局一本も観ていなかったアントニオーニ。
これは少なからず衝撃です。特に最初20分とラスト。
ああ、なんで今まで一本も観なかったんだろう。

黒背景のオープニングクレジットで流れる明るいポップス。
と思ったら音楽はフェードアウトして現代音楽風の少し不穏な音楽に差し変わる。
オープニングの音楽を途中で変えるってなんかただ事じゃないと思って観ていると、室内シーンが始まる。
アパートの一室にいる男女二人。
フランシスコ・ラバルとモニカ・ヴィッティ。
二人とも最初何も喋らない。
モニカ・ヴィッティという女優を初めて見たのだのだけど、物凄い美人。
どんな表情をしてもどんな角度から撮っても美人。
そのモニカ・ヴィッティの顔、しなやかな腕、細く均整の取れた陶器のような脚がこれでもかと映し出されていく。
ふらふら室内を歩き回るモニカ・ヴィッティは鏡、窓ガラス、磨かれた床に自分の姿を焼き付けていく。

この室内シーンは20分くらい続く。
男女が別れ話をしているらしい。
緩やかなのにあまりに濃縮した時間。
ちょっと高級な部屋だけど、これみよがしに芸術的な家具や配置をしているわけでもなく、なんてことない一室なんだけど。
椅子に座ったフランシスコ・ラバルのネクタイが一瞬ぴらっとめくれて、超能力?と思うと別の角度からのシーンで首振り扇風機が傍にあることが分かる。
この扇風機が一個でなく何個も部屋の中にあって回っている。
無機的な扇風機自体とそれが送り出す風によって、けだるさと動きが加わる。
閉じられていたカーテンは開かれ、付けられていた電気は消され、カメラの動きや角度で刻々と部屋の様相は変化していく。
セリフは少ないのに、反射とコントラストの強い光と影と音と風と活発に位置を変えるカット割で驚くほど刺激的な20分。

この最初のシーンだけでもうノックアウトされた感じだな。
物語の方は、リカルド(フランシスコ・ラバル)と別れたヴィットリア(モニカ・ヴィッティ)が、母が足しげく通う証券取引所で働くピエロ(アラン・ドロン)と出合って付き合いだすというもの。
細かく書けばいろいろあるのだけど、主軸はそれだけで124分だ。

モニカ・ヴィッティ演じるヴィットリアは知的で感受性が豊かな女性。
何かをやっている途中でも気になる風景を見つけたら全てを忘れて引き込まれてしまう。
まるで写真家が撮影のベストポジションを探すように立ち位置を変えながら一心に見つめる。カメラも持っていないのに。
ヴィットリアにとってこの世界は喜びに満ち溢れているんじゃないかと思えばそうではない。
今の金と物資至上主義の社会は自分の理想と乖離しているし、自分自身の感情すら理想と現実で乖離している。
新しい恋人のピエロは自分の嫌いなマネーゲームの戦場で働く男だし、何よりピエロはあまりに冷たい男で本来嫌いなはずなのにどうしようもなく「愛している」。
元恋人リカルドと別れようと思った理由だって「分からない」のだ。
これだけ知的なのに自分の感情がまるっきり分からない。
こんなに孤独な事はない。
気に入った風景や絵画や静止物を見つめるときは無心な喜びに満ち溢れるけど、人と接するときは笑っていてもどこか乾いている。
時折アンニュイな視線をあのきりっとして知性に溢れた美しい顔でやられるとそれだけでまいっちゃうよなぁ。

孤独という事で考えると『太陽はひとりぼっち』というたぶん『太陽がいっぱい』から取ったであろう安易な邦題もなかなか素敵に思えてくる。
原題は『L' ECLISSE』。英題だと『THE ECLIPSE』。
Eclipseとは日食、蝕を意味する。
となるとまた小難しくなってくるので「太陽はひとりぼっち」の方がまだ分かりやすい。
ちなみにeclipseといって思い浮かべるのは昔は武満徹の琵琶と尺八の室内楽曲だったけど、最近では仕事でよく使う統合開発環境になっちゃたな。

前半はちょろっとしか出ないもう一人の主人公ピエロを演じるのはアラン・ドロン。
ピエロという役柄はこれもまたヴィットリアと違う意味でひとりぼっちなのね。
現代的ひとりぼっち。
この正反対の二人の関係が面白いんだけど、なにより二人とも美系で、ラストの方で二人が頬寄せ合って同時にカメラ目線になるところなんか反則です。
ピエロ単独の名シーンといえば、酔っ払いに車を盗まれたときに走り去ろうとする自分の車の前に飛び出した後、少しもスピードを緩めない車に慌てて飛びのくシーン。
避け方が面白いこともあるのだけど、一歩間違えれば大事故なのにスタントマンを使っておらず、しかもかなりぎりぎりのタイミングで避けてるから凄い。

そしてラスト。
最近はラストで衝撃を受けることはほとんどなくなったけど、さすがにこれは衝撃だった。
音楽とともに既に流れたシーンや二人が不在の同一ショットなどがつなぎ合わされながらの映像になり、なんだこれと思ったら、ああ朝から夜の時間の経過を現していたのかと衝撃を受けたあとに・・・

2007年5月に録画

2009年6月7日日曜日

映画『PARIS(パリ)』

2008年 監督:セドリック・クラピッシュ
at ギンレイホール


PARIS-パリ- (通常版) [DVD]

オープニングクレジットが音楽に乗せて始まったと思ったらすぐ終了して作品の途中のような静かなシーンが始まる、と思ったらまた音楽が再開してオープニングクレジットが流れる、と思ったら・・・の繰り返し。
※作品の途中のようなシーンというのは後で気づくが実際作品の途中のシーンがこのオープニングで挿入されていた。
疾走途中に息を止めると突如静かな日常に移行し、呼吸を再開すると再び疾走するような不思議なオープニング。
動と静っていうのが生と死で、常に隣り合わせで裏表ってこと?それにしてもこんな表現方法は初めて見た。

セドリック・クラピッシュは『スパニッシュ・アパートメント』しか見ていないのだけど、後半のジェットコースターのような驚異のスピード感に衝撃を受け、この作品もノリのいい作品なのかなと思っていたけど、意外や静かな群像劇。

元ムーラン・ルージュのダンサー、ピエール(ロマン・デュリス)は心臓病を患ってしまう。
助かるためには心臓移植しかないのだけど、その手術も成功率は4割程度。
間近に迫った死に直面しながらドナーが現れるのを待つ日々。
ピエールの姉のエリーズ(ジュリエット・ビノシュ)はソーシャルワーカーで3人の子供を育てるシングルマザー。
弟ピエールから病気のことを聞き、案じたエリーズはピエールのマンションで子供たちと一緒に同居を始める。
ピエールが毎日すること、自宅のマンションのベランダからパリの街並みを見下ろし、行きかう人々の人生を想像して楽しむこと。

登場人物はいっぱいいる。
歴史学者のロラン(ファブリス・ルキーニ)は大学の講義で世にも美しい生徒を見かける。
初老に差し掛かろうかという年齢で大学生に恋したロランは匿名の賛美メールを彼女に送信し続ける。
ロランの弟で建築家のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は偏屈な兄ロランから羨望の意で「お前は普通だ!」と言われ、悪夢まで見てしまう。この悪夢が笑える。

市場で働くジャン(アルベール・デュポンテル)とカロリーヌは元夫婦だが離婚している。
ピエールの姉のエリーズとジャンはお互い気になっているみたいなんだけど、ジャンは心のどこかでまだ元妻のカロリーヌのことを想っている。

カメルーンに住むブノワは、パリで清掃員として働く兄夫婦を頼りにパリに行く決意をする。
水泳指導員で働いていたときに知り合ったパリにいるというマルジョレーヌ(オドレ・マルネ)という女性と再会する期待を持って。

ピエールが通うパン屋の店主(カリン・ヴィアール)はいつも店員の悪口ばかり言っている。
まあ嫌な感じのおばさんです。

主要な人物はそんな感じかな。パン屋は主要じゃないか。

ピエールに死が迫っていることから、なんとなく他の登場人物の上にも死を覆いかぶせて見てしまう。
ああ、なんかこんなシーン映してるのおかしいなと思ったら予想通り一人死に、続けてこいつも電話なんかしちゃってなんか危なそうと思ったら残念なことになり、ピエールも子供たちを躍らせているシーンでソファに座ったまま静かに逝っちゃいそうだと思ったらそこはスルーされ、続くシーンでもああ、まずいと思ったらそこもスルーでしかも死んだと思っていたあいつが生きているという衝撃を意識外の死角からさらっと挿入するところに衝撃を受ける。
生きているって素敵だね、っていうのを声を大にして言うだけじゃなくて、同時にこういう絶妙な演出の裏切りとつながりでさらっと表現もしてしまうところがセドリック・クラピッシュ恐るべし。
ということで一番のお気に入りはブノワが絵葉書の写真と風景を見比べているシーン。

『モンテーニュ通りのカフェ』が心温まるハッピーな群像劇だとしたら、これは心温まりかつどこか空虚で切なく、そして人生や人や街がどうしようもなく愛しくなってくる群像劇かな。


僕のお気に入りの俳優ロマン・デュリスは坊主頭に髭面でかなり怪しい。
外出着のコートは凄くスタイリッシュでかっこいいのだけど、マフィアとも違う危険な怪しさが漂う。
パーティの時の部屋着はVネックで胸毛が出ていてかなり怪しかったな。

ジュリエット・ビノシュはなんであんなに美しいのかね。
もう結構な年だし、元々美形というわけでもないのだけど、美しいんだよな。
ぼさぼさな髪が可愛らしくもある。

ファブリス・ルキーニは変質者っぽいところがいいよな。
踊れるファブリス・ルキーニ。

ついさっき見た映画にも出ていて忘れもしないアルベール・デュポンテル。
こっちの方が新しい作品なのに髪が増えた気がする。

ファッションモデル役のオドレ・マルネは絶対どこかで見たことあると思って調べていたのだけど、女優というか90年代後半にトップモデルだった人らしい。
モデルは興味ないから見たことあるわけないのだけど、映画では『ぼくの大切なともだち』に出ていたらしい。
それで印象に残っているのかな。
もしくは全然違う女優と見間違えているだけなのか。

映画『モンテーニュ通りのカフェ』

2006年 監督:ダニエル・トンプソン
at ギンレイホール


ギンレイホールに行こうとしてJRの駅まで歩いていったところで眼鏡を忘れたことに気づく。
げげっ、どうしよう、このまま行っちゃうか。でも二本も最前列で見たくないし。
ってことで歩いて20分の道のりを引き返す。
今日はすごく暑くて体がだるい。
マックで腹ごしらえするつもりで早めに出発していたから、家に着いた頃にはすぐ出発すれば上映には間に合いそうな時間だったのだけど、なんか気力がなくなって一本ずらして見に行くことにする。
余った時間で昨日見た映画の感想書いて出発。


モンテーニュ通りのカフェ [DVD]

パリ8区、モンテーニュ通りにある由緒あるカフェ。
田舎から出てきた金髪ベリーショートのジェシカ(セシル・ドゥ・フランス)は運良くこのカフェで働くことになる。
パリきっての豪奢な地区にあるカフェには日々様々な人が訪れる。
有名ピアニストだけど形式ばったコンサートに疑問を感じて悩むジャン=フランソワ・ルフォール(アルベール・デュポンテル)。
人生の全てをささげて収集した美術品コレクションを全てオークションに出品することを決意した資産家ジャック・グランベール(クロード・ブラッスール)。
舞台の初日を控えて稽古中だが脚本も何もかも不満だらけの女優カトリーヌ・ヴェルセン(ヴァレリー・ルメルシェ)。
オランピア劇場の管理人で退職の日が迫ったクローディ(ダニ)。
全ての人が17日の「本番」に向けてせわしなく人生の歯車を回転させていた。

見始め、結構ぼーっとしていたので「アランドロンもやってくる」とか「トリュフォーの作品に出たことあるか?」などの台詞を聞くたびに、あれっ、これってジェシカの祖母の昔話という設定なんだっけ?と迷ったりもするけど、いや、そもそも普通に皆携帯電話使ってるじゃん、設定はやっぱり現代だよな、と認識しなおしたり。
群像劇はどうも苦手で集中力に欠ける。
でもまあそんなに退屈はしなかったけど。

ジェシカが太陽のように明るく(実は暗い過去があるのだけど)、その屈託のない笑顔で誰とでもすぐ打ち解けてしまう。
パリの街で悩みを抱える人々の間隙を自由に歩き回り、その笑顔で人々の心の中にすーっと入り込む以外何もしていないのに、気づいたら彼女と関わった人は皆ハッピーエンドになっている。
パリに迷い込んだ天使(人間でない)のような存在になりそうなんだけど、さらっと暗い過去を告白させたり、泊まるところがなくて小雨振る中パリの街並みを見下ろしている寂しい表情を映したり、カフェの店主に不満をぶつけたりと、ジェシカという人物に人間性も付与される。
その付与の仕方が慎ましいから人間と人間外の中間をさまよう形になって結構好き。

ピアニストを演じたアルベール・デュポンテルが毛むくじゃらのマッチョな腕でピアノ弾いている。全然ピアニストに見えない・・・
アルベール・デュポンテルはあの濃い眉毛をどっかで見たことあると思ったら『地上5センチの恋心』に出ていた人だ。

映画監督役で去年亡くなったシドニー・ポラックが出ている。
ジェシカの祖母役で上品で闊達なばあちゃんを演じたシュザンヌ・フロンも撮影後に逝去している。

2009年6月6日土曜日

映画『監獄ロック』

1957年 監督:リチャード・ソープ
BS2 録画


監獄ロック 没後30周年メモリアル・エディション [DVD]

エルヴィス・プレスリーを主演に据えた安易な作品かと思いきや、意外と面白い。
エルヴィスの演技が上手いかどうかは置いといて、あの顔は役者としてかなり魅力的だよなぁ。
いまいち人物像がつかみにくいところが。
実態はロック界のスーパースターなんだけど、この若い頃の顔をみていると、ただのいいとこの甘えん坊の坊ちゃんみたいにしか見えない。
でも時にワイルドな荒々しさもあり、ナイーブな寂しげな視線を送ったりもする。
びっくりするのは後半に行くにしたがってどんどん無色透明な存在になっていく。
脚本としてエルヴィスの演じた役柄が後半何考えてんだか分からなくなるのだけど、その混沌をエルヴィスのあの表情で受け止めると、エルヴィス自身が完全に透き通って無になっていくような錯覚を起こす。
空(くう)を虚ろに見つめるエルヴィスの表情なんてそら恐ろしい。何考えてるのだかさっぱり分からない恐怖。

そういえばちょうどジェームズ・ディーンの時代あたりに作られた作品だな。
すねたような表情とか影響受けてるのかな。

ストーリーでも書いとくか。
威勢が良く気が短い労働青年のヴィンス(エルヴィス・プレスリー)は酒場での喧嘩の末、相手を殴り殺してしまい監獄入り。
監獄では古参囚人と同房になるのだけど、この囚人ハンク(ミッキー・ショーネシー)が元カントリー歌手だったことで、ヴィンスは彼にギターの手ほどきを受ける。
ギターの腕はたいしたことないけどハンクはヴィンスの歌声とルックスに目を付け、出所後にお互い組んで音楽活動することを約束する。分け前は半々で。
先に出所したヴィンスは一人でつらつら活動して何度も挫折しながらも、知り合ったペギー(ジュディ・タイラー)とともに会社を興してレコードを発表。そして大スターへ。
ようやくハンクも出所してくるのだけどその頃にはヴィンスはもう大スターであり、かつなんだか変わったのか変わってないんだかよく分からない性格になっていた。

「ケチな戦略が効くと思うの?」「戦略じゃない 俺の中の野獣さ」
で決定付いたはずのヴィンスとペギーの恋人関係もよく分からないんだよな。
すれ違いからお互い意地悪しているうちに疎遠になり、ヴィンスは新たな彼女作って楽しくやりだすからもうペギーはどうでもよくなったのかと思いきや、なぜかまだペギーを思っていて。

これ、録画したのは2005年の6月だな。
HDDレコーダーの残容量が少なくなったときに何度か削除候補に挙がっていたのだけど、とりあえずまあまあ面白かったので消さなくてよかったよかった。

2009年5月31日日曜日

6月INFO


BS2 6月4日(木) 午前0:55~午前3:19(3日深夜)

未来世紀ブラジル 1985年・アメリカ
〔監督・脚本〕テリー・ギリアム

BS2 6月5日(金) 午前0:40~午前3:15(4日深夜)

ライフ・イズ・ミラクル 2004年・フランス/セルビア・モンテネグロ
エミール・クストリッツァ

BS2 6月7日(日) 午前1:00~午前2:55(6日深夜)

タクシードライバー 1976年・アメリカ
〔監督〕マーティン・スコセッシ

BS2 6月9日(火) 午前0:40~午前2:07(8日深夜)

宇宙水爆戦 1955年・アメリカ
〔監督〕ジョセフ・ニューマン

BS2 6月9日(火) 午後1:00~午後2:46

真昼の死闘 1969年・アメリカ
〔監督〕ドン・シーゲル
〔出演〕クリント・イーストウッド、シャーリー・マクレーン

BS2 6月10日(水) 午後9:00~午後10:56

レッド・サン 1971年・フランス/イタリア/スペイン
〔監督〕テレンス・ヤング
〔出演〕チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン、三船敏郎

BS2 6月12日(金) 午後2:45~午後4:09

チェコの古代伝説 1952年・チェコスロバキア
〔監督・脚本〕イジー・トルンカ

BS2 6月12日(金) 午後4:10~午後5:34

チェコの四季 1947年・チェコスロバキア
〔監督・原案・脚本〕イジー・トルンカ

BS2 6月25日(木) 午後2:45~午後4:01

真夏の夜の夢 1959年・チェコスロバキア
〔監督・脚本〕イジー・トルンカ

BS2 6月26日(金) 午前0:40~午前2:14(25日深夜)

埋もれ木 2005年・日本
〔製作・監督・脚本〕小栗康平

BS2 6月26日(金) 午後1:00~午後2:43

まぼろしの市街戦 1967年・フランス
〔製作・監督・脚本〕フィリップ・ド・ブロカ

BS2 6月29日(月) 午後1:00~午後3:22

郵便配達は二度ベルを鳴らす 1942年・イタリア
〔監督・脚本〕ルキノ・ヴィスコンティ



5月29日のトルンカ二作、すっかり録画し忘れた。
今月のは絶対逃さん。

ぽつんとエミール・クストリッツァが一本あります。珍しい。
『レッド・サン』はこういう映画があることすら知らなかったのだけど、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン、三船敏郎というキャストがしびれる。
『まぼろしの市街戦』、フィリップ・ド・ブロカ。

休日

なんだろう。最近全然何もやる気が起きない。
休日に出かけないのはいつもどおりなんだけど、家でやりたいことは腐るほどあって暇することは今までなかったのに、最近は全く何もやる気がおきずに文字通りぼーっとしている。

今日はとりあえず気力をふりしぼって髪を切ってくる。
5ヶ月ぶりに切ってすっきり。
帰りにBOOKOFFによって何気なくCDを見ていたらアル・クーパーの「赤心の歌」が状態も特に悪くないのに950円で売っていたのでしめしめと思って購入。
いつも1000円以上で置いてあるのしか見たことなかったからな。
家帰って開封してまたびっくり。ディスクは傷一つないしジャケットも指紋はおろか一切汚れていない。
いい買い物した、というか新品でも1600円だけど。

2009年5月24日日曜日

映画『バンク・ジョブ』

2008年 監督:ロジャー・ドナルドソン
at ギンレイホール


バンク・ジョブ デラックス版 [DVD]

オープニングクレジットでT.Rexの「Get It On」が流れる。
きっと楽しくてノリのいい映画なのだろう。
ただ、一つ前に見た映画で結構疲れたのでいまいち気分が乗らないなあ、と思っていたのだけどそんなのは最初の2分ほどの間だけで、以降はノンストップで最後まで楽しめる。

1971年、中古車の販売店を営むテリー・レザー(ジェイソン・ステイサム)の元には毎日借金取りがやってくる。
テリーは幼馴染のマルティーヌ(サフロン・バロウズ)から銀行強盗の計画を持ちかけられる。
こそ泥のテリーは銀行強盗のような大きな仕事はしたことがない。
躊躇しつつも話に乗ったテリーは仲間を招集し、計画の実行に動き始める。
かくして彼らは銀行の貸金庫から数百万ポンドの金を盗み出すことに成功するのだが、盗み出したものの中には英国最大のタブーに触れた写真を始め、様々な犯罪、スキャンダルの証拠品が含まれていた。
マフィア、警察、MI-5(イギリス情報局保安部)と素人強盗集団との危険な駆け引きが始まる。

実話に基づくらしい。
それにしても脚本が面白いな。
冒頭からヤバ目の借金取りが登場して続けて謎の美女マルティーヌが登場し、成功すると分かっている強盗シーンも様々な要素で盛り上げてくれたり。

テリー・レザーを演じたジェイソン・ステイサムが渋い。
あのしゃがれた声がいいな。
元々禿げ気味だったような気もする髪の毛がさらに進行しているのだけどそこもまた渋い。
渋いからこそ頭のきれて武闘派でもあり愛妻家でもある役柄がぴったりはまる。

ちなみにちょろっとミック・ジャガーが出ている。
ミック・ジャガーが出ていると知って見ればすぐ気づくが、知らない場合は全然気づかないかも。
知らなかったので個性派脇役かと思っていたよ。ミック・ジャガーと言われればミック・ジャガーにしか見えない。

映画『その土曜日、7時58分』

2007年 監督:シドニー・ルメット
at ギンレイホール


その土曜日、7時58分 コレクターズ・エディション [DVD]

エンドクレジット見て初めて知ったのだけど、監督はシドニー・ルメット。
まだ健在だったのか。
そういう意味だと冒頭いきなり始まるどぎつい性描写はまだばりばり映画撮れますよっていう健在アピール?
というかこのシーンはどこの時間軸だったんだろう。

綺麗な妻を持ち経済的にも安定していそうな兄アンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)。
バツイチで慰謝料もろくに払えない駄目男の弟ハンク(イーサン・ホーク)。
兄はとある事情で金が必要になり、弟のハンクに強盗の計画を持ち出す。
基本的に保険会社以外は誰も傷つかない強盗。
知りすぎるほど知った宝石店での強盗は失敗のしようがない。
・・・はずだったのだけど失敗。

一つの大きな失敗から次々に浮かび上がって繋がっていく負の連鎖。
もう死にたい、っていうのはこういう状況のことを言うんだな。
もう死にたい、のだけど死んだ後に明るみになるだろう事実に翻弄される残された人々の事や、とんでもないことをしたという後悔の念や、そして事の顛末が気になって死ぬに死ねない。
単に生きることに絶望したのとは違うにっちもさっちもいかない絶望。
兄も弟もそれぞれがとことん追い詰められていくからね。
もう喜劇。

上映時間は117分ある。
長い。
強盗当日を中心としてその前後を、兄、弟、父とそれぞれの視点で時間軸を交錯させて話は展開する。
これがいろんな意味で結構野暮ったい。
時間軸や視点が切り替わるときの演出とかテンポとか。
演出の野暮ったさは嫌いじゃないけど、テンポの面はどうにかして欲しい。
とことん追い詰められた弟のその後が気になるところで兄だか父だかの視点に切り替わったりしたらがくっとするじゃん。

兄アンディにフィリップ・シーモア・ホフマン。
この人の金髪が白髪に見えてかなりの年配者に見えるけど弟役のイーサン・ホークと3つしか違わない。
演技の幅が広いのか前半から後半への印象の変化とかでっぷりと落ち着いた貫禄の裏にある弱さや葛藤とか、すんなり入ってくるから凄い。

弟役のイーサン・ホークはエンドクレジットまで全然気づかなかった。
見ているときはどこかの冴えないおっさん俳優だろうと思っていたのだけど。

父役には名優アルバート・フィニー。

2009年5月16日土曜日

映画『HAZAN』

2003年 監督:五十嵐匠
BS2 録画


HAZAN [DVD]

日本の近代陶芸の開拓者、板谷波山の伝記。
冒頭の榎木孝明とその教え子が窯の炎を見つめるシーンや、宿での南果歩の縦にリズムを取った変な舞とか見て、見るのやめようかと思ったけど段々面白くなってくる。

美術学校を卒業して故郷で教師をやっていた板谷(榎木孝明)は、授業で陶芸の指導をしたことをきっかけにして陶芸家になることを決意する。31歳。
結婚もしているし小さい子供が3人もいるのに。
東京の田端に質素な工房を構えて、長い貧困生活が始まる。

家族よりも陶芸にしか目がいっていない波山を見て、妻のまる(南果歩)が何度も絶望の表情をする。
それでも波山を献身的に支え、子供を守り、そして極貧なのにさらに子供をこしらえる。えっ。
盲目に陶芸の道に突き進む波山も、生活のために夫の作業を手伝う妻も、どちらも狂気に近い。
特に妻が凄い。
家族の生活がかかってるからね。何が何でも成功してもらわないと困る。
だから妻のなりふり構わぬ狂気が一番美しい。
1000円!!ぶぅへーん!

波山は器形にこだわったため、自分で轆轤を回さずに轆轤師を雇っていた。
最初の轆轤師の深海三次郎を演じたのが柳ユーレイ。
たけし軍団の人たち(出身含む)は揃いも揃っていい役者が多いのだけど、中でも柳ユーレイは飛びぬけて面白い役者だな。
この捉えどころの無い存在感は他には思いつかない。
髭が渋い。
ちなみに今は改名して柳憂怜らしい。

2009年5月10日日曜日

虫十二日目



見えにくいですが画面右少し上にある黒っぽいものが例のあれです。
位置的に部屋の真ん中あたり。
いつも窓のカーテン付近にしかいなかったのに、ここまで進入しているのを見たのは初めて。
やつらは天井からぼとっと落ちてくるとかいうし、のんびりはしていられない。
とはいっても変に刺激したことで部屋の真ん中に落ちて隅に逃げられても困る。
とりあえずカーテンを開け、窓を開け、今日洗濯してベランダに干していた洗濯物を取り込む。
取り込めないのはなぜだろうな人なので洗濯したその日に取り込んだのは何年ぶりだろう。

戻ってもう一度見ると、あれ、また数cm部屋の中まで入ってきている。
急がなきゃ。
半分に切ったペットボトルに棒をガムテープで貼り付けて少し刺激してみる。
つつくのは危険なので奴のそばでペットボトルを天井にごりごり摺って威嚇する。
ぴくりともしない。
何度か振り回していると突然光の速さで20cm程窓の方へ移動する。
これはいけると思ってさらにぶんぶん威嚇すると



ここまで来た。
右上の影です。
さてどうするか。
外に出すにはカーテンが邪魔だなと思って、持ち上げて左にぐいっと引っ張ってみる。
でもその状態で止められそうなものがないので片手がふさがってしまう。
まあしょうがない。
で、ここからどうしよう。
こんな隅にいられるとペットボトルを近づけづらい。
何か投げつけてみるか。
いや、そうだうちわ忘れてた。
パタパタ煽いでみる。
ほんの少し移動した。
どうしよう。
このまま真下に逃げられるとまた収納ボックス等のごちゃごちゃした隙間に逃げられてしまう。
やっぱり捕まえるのがベストかなと思って駄目もとでペットボトルをゆっくり近づける。
なかなか逃げないなと思っているうちにペットボトルの口が壁に付き、カツンという音の後に蜘蛛がペットボトル内をすごいスピードでかさかさ一周する音がする。
あ、捕まえた。
でも蜘蛛はペットボトルの口に覆われた壁にへばりついているので、口をふさげない。
腕を伸ばしてペットボトルを力強く押し付けるという結構無理な体勢をしていたのだけど、どうしようもなくなってそのまま暫く固まる。
ペットボトルを動かすと足を挟んでしまいそうな気がする。
迷っているとペットボトルの中に移動してくれたので、左手でつかんでいたカーテンを離してそばに置いてあったうちわを取って素早くペットボトルの口をふさぐ。
ゆっくり壁からペットボトルを離してみる。
おお、動いてる。
そのままゆっくりうちわを上にして床に置く。

やったー。
毎日夢にまで見た捕獲。
ペットボトルを覗くと、観念してゆったり動く蜘蛛の腹が見える。
外に行って放すかベランダから放るか。
いや、まずは記念に写真撮ろう。
カメラを取ってペットボトルの傍にしゃがむと、ペットボトルの向こう側の床に蜘蛛がいてカーテンの裏にかさかさ逃げていくのが見える。
えっ・・・



空のペットボトル・・・
俺はなんて阿呆なんだ。写真なんかどうでもいいじゃないか。未だかつてない成功を成し遂げたのに全てをパーにしてしまった。
うちわなんて軽いんだからあのくらいの大きさの蜘蛛なら逃げられるとなんで考えなかったのか。
そもそもうちわを下にして置けばよかったのに。

後悔の念しか出てこなかったのだけど、どこかから夢を諦めないでという声が聞こえて、もう少し頑張ってみることにする。
たぶんカーテンの裏側にひっついているか、カーテンに隠れた壁に潜んでいるはず。
カーテンを恐る恐るつかんでゆっくりベランダの外に投げ出してみる。
壁が顕わになるが、いない。
カーテンにもいなさそう。
じゃあまた壁と収納ボックスのわずかな隙間に入っていっちゃったんだなと思って顔を上げると、うわっ、いた。壁に。
ベランダ側に投げ出されたカーテンを内側に引っ張って邪魔にならないようにする。



どうするかペットボトルを近づけて捕獲するのはもう無理そう。
今、蜘蛛が前でも後ろでも右でもなく、左だけに逃げるようにできないものか。
蜘蛛の右手からつつくと左に逃げるとは限らないし。
頭をフル回転させてアイデアを練っていると、ちょこちょこ蜘蛛が動く。
クーラーのリモコンの開いたカバーの裏に隠れる。
見ていると、さらにそこから上に移動しようと動き出すので慌ててペットボトルで進行方向をふさぐと、一瞬スピードを上げてペットボトルに向かってきたもののすぐ反転して真下に逃げていく。
まだなんとか見える位置の壁に引っ付いていてくれているけど隙間に逃げ込まれそうで危険な位置。


※写真は後撮りだからいないけど、壁が直角になっている部分にいた。

収納ボックス側面のへこみによる隙間。ここにいつも逃げられる。
なんかで塞げないかと蜘蛛を刺激しないように気をつけてゆっくりと薄い雑誌を突っ込んでみたりしてみるが嵌らない。
諦めて再びペットボトルによる捕獲を試みる。
収納ボックス側から近づけていくと、少し近づけただけでフローリング上を窓沿いに走り出す。
おお、反対側はテレビがあってこっちは何十倍もやっかいなごちゃごちゃゾーン。
テレビ側から蜘蛛に向かってペットボトルで襲うと一瞬止まった後に右折して段差を上ってあっという間にベランダに出る。
ベランダに置いてあるビーチサンダルの上を這って暗がりに逃げていく。
窓を閉める。

ぃやったーーーーーー!



5月INFO


BS2 5月13日(水) 午前0:40~午前3:28(12日深夜)

甘い生活 1960年・イタリア/フランス
〔監督・脚本〕フェデリコ・フェリーニ

BS2 5月17日(日) 午前1:00~午前2:35(16日深夜)

萌の朱雀 1997年・日本
〔監督・脚本〕河瀨直美

BS2 5月21日(木) 午前0:40~午前2:16(20日深夜)

桜桃の味 1997年・イラン
〔製作・監督・脚本〕アッバス・キアロスタミ

BS2 5月28日(木) 午後1:00~午後2:31

ロバと王女 デジタルニューマスター版
〔監督・脚本〕ジャック・ドゥミ

BS2 5月28日(木) 午後2:35~午後3:51

真夏の夜の夢 1959年・チェコスロバキア
〔監督・脚本〕イジー・トルンカ

BS2 5月29日(金) 午後2:40~午後3:59

バヤヤ 1950年・チェコスロバキア
〔監督・脚本〕イジー・トルンカ

BS2 5月29日(金) 午後4:00~午後5:14

皇帝の鶯 1948年・チェコスロバキア
〔監督・脚本〕イジー・トルンカ



イジー・トルンカ特集だね。
昔BS2で偶然トルンカの作品(「手」だったかな)を見て以来、いつかやらないかとチェックしていたはずだから、放映は10年ぶりくらいじゃないかな。
6月も続きます。
本当は5月に全部やるみたいだったけど国会中継で潰れて放送日が6月にずれ込んだっぽい。

2009年5月9日土曜日

熊木杏里 SPRING TOUR 2009 〜花詞〜

2009/05/09(土)、熊木杏里のライブに行ってきた。

最近タイガーフェイクファにはまっていて、3日前にはPerfumeのライブDVD見てPerfume熱も再燃して、ってことでここ3,4年で初めて暫く熊木杏里から遠ざかる。
とはいえ、熊木杏里のライブ。
次第にテンションが上がってくる。

眼鏡を会社に忘れてきたので、早めに出て会社に寄る。
後輩が一人で仕事していた。
くっちゃべってから吉野家で腹ごしらえして出発。
18時半開場、19時開演で、18時半頃に新大久保駅に着く予定だったのに、18時40分頃に到着。
東京グローブ座。
どっちにいけばよいかわからず適当に歩き出すと喫煙所があったので一服。
ついでにモバイルGoogleマップで場所を確認。
なんか線路沿いに行けばいいっぽいので歩き出すと全然着かない。
ハローワークを目印にもう一回調べると、北に行かなきゃいけないのに逆の南方向に歩いていたらしい。
まずい、18時50分。
とりあえず線路の高架をくぐって反対側に行ってから北に向かおうとしたのだけど、反対側に出てから右折するポイントを見失って大分西まで行ってしまう。
変に地図とか見ない方がいいもんだな。
慌てて右折して北に向かったけど、中央線に阻まれ西へ西へ追いやられつつ、大久保駅前を通ってようやく新大久保駅に戻ってくる。
滅茶苦茶走って19時2分頃に到着。

まだ始まってない模様。
1階の前から7列目の席。
19時5分頃に開場が暗くなって開演。
走ったことでまだ息を切らして体が暑い。

楽器構成はギター、キーボード、ドラム、ベース。
膝上ワンピースに黄土色のブーツで熊木杏里が登場。
前の席の人の頭で体半分しか見えない。

(以下、曲単位で感想だけど、MCの挿入箇所や内容などかなり記憶が曖昧な上、要約なので激しく間違っているかも。セットリストはどっかから拾ってきた)

1. ヒトツ/フタツ

初めて聞く曲。
熊木杏里の曲をいつもあまり大きな音量では聞かないのだけど、大音量でも優しく染み入ってくる声質は変わらない。
曲もいいしなあ。
今調べてみるとシングル「私をたどる物語」のカップリング曲らしい。
アルバムしか持っていないので知らなかった。

2. 一等星

まだ息を切らしていたのと、1曲目であの歌声の海に包まれて感慨にふけっていたので前奏聞いていても全然気づかなかったのだけど、ずっとライブで聴きたいと思っていた「一等星」だった。
これは感動するなぁ。
曲中何度か全身がざわっとする。
一等星 熊木杏里 歌詞情報 - goo 音楽

ドラムの人が女性で、服がきらきら光っているのでスパンコールのドレスを着ているのかと思ったらきらきら光っているのはスカーフだった。

3. 風の記憶

挨拶MCの後「風の記憶」。

4. 誕生日

この曲のサビだったっけな。声にエコーがかかっているみたいに聞こえたのは。
後のMCでのバンド紹介で、ドラムの人がドラム&コーラスと紹介されていてそこで気づいたのだけど、エコーじゃなくてコーラスだったんだな。

そういえば最近の熊木杏里は左手が不規則にあんまりゆらゆら動かなくなってどちらかというと歌詞の表現的な動きをするようになった気がする。

5. 花言葉

MCで、2008年は私にとって分岐点だったと言う。
何かあったのかと思ったら、友人が結婚した、と。
「小さい頃はお互い気持ちを素直に言えるのだが、大人になるにつれて言えなくなるもの。
結婚したその友達の事を想ってその友達のために書いた歌。
結婚式では歌えなかったけど・・・」
っていうようなことを言うので「七月の友達」かなと思っていたら「花言葉」という曲。
4/8に発売したシングルのカップリング曲だから、歌えなかったっていうのは結婚式の時は作られていなかったから、ってことかな。
初めて聞く曲。

曲についてのエピソードを聞いた後だと曲の聞き方も変わる。
歌詞の意味をとりながら聞いてみる。
歌詞がかなりシンプルで分かりやすい。
「七月の友達」でも思ったけど、この友達ってなんて幸せな子なんだろう。
結婚で幸せいっぱいな上、熊木杏里に曲を贈ってもらえるなんて。

この「花言葉」や例えば「やっぱり」とか聞くと分かるけど、熊木杏里って人は一見冷めている風な印象があるけど、相当情愛が深い人なんだな、と思う。
恋人でも友人でも家族でも。
花言葉 熊木杏里 歌詞情報 - goo 音楽

6. いつのまにか少女は

MCで「今日ここに来てくれている人の中には、ライブに何度も来てくれている人もいれば今日はじめての人もいる。そんないろんな人がここに集まっている事が不思議な感じがする」
というような事の後、初めての人のために自己紹介が始まる。
17歳で初めて曲を作ったけどそれは父と作ったとか、当時タレントスクールに通っていて深夜番組で番宣を作ろーみたいな企画でテレビ出演していたとか、正直話のつながりがよく分からなくてかなり勘違いして捉えている気もするけどどれも初めて聞く話。
「嗚呼!バラ色の珍生!!」の前にもテレビに出ていたのか。

そして当時父がよく聞いていた井上陽水の中で特に感銘を受けて曲を作り始めるきっかけになったという「いつのまにか少女は」って曲をギターの弾き語りで。

この曲いいな。無知で知らなかったのだけど1973年のシングル「夢の中へ」のカップリング曲だったらしい。
歌詞は他人視点から始まるけど娘を持つ親視点のようでもあって、なんかどうとでも取れる。
熊木杏里の歌詞も大体そうだよな。「こと」なんて好きだと言っている割に未だに歌詞よくわかってないし。

7. my present

ギター弾き語りは早々に引き上げて次はキーボードの弾き語り。
アルバム「ひとヒナタ」製作中に何かもう一曲作りたいと思って作った曲だそうだ。
作ったときに限りなく近い状態で歌ってくれる、と。
「大切に想う人を・・・思い浮かべながら・・聞いてください」
このライブの最初からそうだったのだけどMCの言葉が句ごとに途切れ途切れ。
途切れ具合が曲ごとに段々拍車がかかってきているようにも思う。

どちらかというとノリのいい曲なんだけど、キーボード(途中からギターも入ったっけ)でしっとり聞かせてくれる。
もともと歌が上手いのだけど、やっぱり弾き語りで歌うとさらに上手くなっている気がする。
伴奏の音が少なくて声が素のまま浮き立つからかな。

8. 君の名前

確か今度出る新曲。
こちらも続けて弾き語りで。
誰にでも、物にだって皆名前が付いている。
好きな人の名前は名前それ自体すら好きになってしまう。
というような感じのMCの後で
「大好きな人を・・・」
大事な人をって言ったんだっけな、ちょっと忘れちゃったんだけど、この沈黙の後に続く言葉を期待して待つと、他に思い浮かばなかったのか先ほどと同じ
「思い浮かべながら聞いてください」
で、歌いだす。

なんか知らないけど物凄い熱唱。
魅力的な裏声を存分に生かした曲で、聞き込んでからライブで聴きたかったな。間違いなく泣けるはず。
歌唱がすごかったのでぼーっとしちゃって歌詞は全然意味取って聞いてなかった。

ん、この曲からかな。チェロの五十嵐あさかさんって方がゲストとして紹介されてバンドに参加したのは。

9. ふるさと

弾き語りは「君の名前」で終了。
舞台真ん中に戻ってMCに入るはずが、なかなか入らずに放心したように立ちすくんでいる。
目がうるんで涙を飲み込んでいる。
おお、絶対最近なにかあったな。

途切れ途切れのMCが始まる。
自分の故郷の話をしていたと思ったら、「シンプルな歌詞なのに一字一句に全てが詰まっている」となにやら自分の曲の歌詞を絶賛しているっぽくて、なんだろうとMCを聞いていると、人の曲を歌おうとしているらしいと気づく。
作詞した人は同郷らしい。
そして曲名も言わずに歌いだすとそれは童謡「ふるさと」。
ああ、故郷って言葉は何度も言っていたので曲名の意味での「ふるさと」とどこかで言っていたのだろう。

10. 君

熊木杏里は全然テレビを見ないそうだ。
世界のなべあつの3の付く数字と3の倍数で阿呆になるギャグの誕生秘話をたまたま知ったと言って教えてくれる。
まだ流暢じゃないけどMCも復活してくる。
※名古屋のレポート書いた人のブログ見て「朝日の誓い」を歌ったと思っていたけど「君」という曲だったらしい。

ここらへんから音を聞くか歌詞を聞くか迷ってあれこれ考え出してしまう。
歌詞聞いていると思いにふけったり考えたりしてせっかくのライブの歌声が聴けなくなるし、声を優先すると歌詞の意味が入ってこなくなる。
ああ、生まれ変わったら器用な人間になりたい。

悪いことに左隣の席の太目のおっさんの肩が僕の肩と触れ合っているのも気になってしょうがなくなってくる。
別に僕は肘掛に腕を乗せているわけでもなく、こじんまりと座っているだけなのになんで肩が触れるのさ。
この人はたまに望遠鏡を取り出して覗いているのだけど、取り出すときと双眼鏡を妙に姿勢よく覗いているときに肘が僕の肩にがつんと当たるのも集中力を途切れさす。

11. こと

「自分は素直に想いを伝えられない駄目な奴で」といったMCの後「こと」。
集中力が最悪な状態だったけど、一番好きな曲。
最近衝撃のPV見て、あれっ、と思ったものの、やっぱりいい曲だわ。
好きなくせに歌詞はやっぱり未だによく分かってないのだけど。
歌詞を部分部分で聞いていたら
打ち明けてくれた話にぼくは
どれだけ君を見つけられたんだろう?
過去が心に居すわりながら
どれだけ君をひとりにしたかな

で彼女は過去に何かあって彼氏はそれを無意識に気にしているのかな、とか、それとも彼女は何か重い病気にかかったのかな、とか、
どんなことも ぼくには今しかないことで彼氏の方が病にかかっているのかなとか、おお、やべー混乱してきた。
ので無心に音と各フレーズで飛び込んでくる詩の響きだけ聞くことにする。

僕の席からは体の上半身しか見えないのだけど、人 転ばす力はいらないと 君は足をあげるで熊木杏里が足上げるかなと思って体ずらして見ていたけど上げなかったな。

12. 新しい私になって

ふられちゃったあれです、っていうMCの後「新しい私になって」。

13. やっぱり

「やっぱり」。
最近やっとこの曲の歌詞の意味を取りながら聞いて、なんていい歌なんだろうと思ってライブで聴くことを期待していた曲。
ステージのバックが照明効果できらきら青い星がまたたいて、どうなっているのか分からないけど何か遠近感が狂って本当に背後に宇宙が拡がっているような錯覚に陥る。
これは目が痛い。

「やっぱり」は恋の歌なんだけど、傷つきやすい繊細な心で感じる不安や希望をシンプルな言葉なのに微細に表現していく。
細かな心の襞まではっきり捉えているところが凄い。
でも、健気で献身的な女性像でもあるから一部の女性からはもしかしたら嫌われるかもな。
なんか聞いていると切なくなってくる。
やっぱり 熊木杏里 歌詞情報 - goo 音楽

14. 春隣

ここだっけな、これから後半戦だと言ったのは。
もう既に結構な曲数を聞いた気がして、前回のライブはまだまだ聞きたいのにあっけなく終わっちゃたためにそろそろ終わりかと心の準備をしていたところだったので、かなり嬉しい。
ほぼアカペラに近い状態から歌いだす「春隣」。

15. モウイチド

確かここあたりでメンバー紹介。
おお、前半と打って変わって流暢に言葉をしゃべるMC。
ここまで全ての曲を観客はしっとりと聴いていた。
手拍子は一切なしで。
そういう流れができていたから。
だってMCでの言葉の区切りによる長い沈黙とか「花言葉」で泣きそうになっている熊木杏里とか、ワーって盛り上がるような要素が全くなかったのだし。

でも、ここにきて「春隣」で温めた後の明るいメンバー紹介という自然な流れができたので、これはあれが来るなと思ったらやっぱり来た。「モウイチド」。
※どうしよう、こんな書き方してメンバー紹介別の場所だったら・・・
解き放たれたバンドメンバーの全開の演奏、かつ負けじと声を張り上げる歌声。
手拍子もたたきやすい。

このライブの最初からそうだったんだけど、ドラムの女性の方が演奏中8割方、楽しそうなにこにこの笑顔なのね。
これは特技だよな。

16. 雨が空から離れたら

手拍子は続いてこの曲にも。
でもちょっと叩きづらい。
ので僕は途中からやめちゃった。
声を張り上げ気味なためか少し声が荒れていた。

17. 水に恋をする

最後の曲らしい。
MCで私のテーマソングです、と。
「水に恋する」。

En1. バイバイ

初めて聴く。
まだ未発表の曲って言ってたな。

En2. 桜見る季節

桜の季節は過ぎたけど、って言うから「春隣」?って思うけどさっき歌ったしな、と思っていると「桜見る季節」。
マキシシングル「雨が空から離れたら」のカップリングらしい。

熊木杏里が大好きですと言いながらアルバムしか買っていないので知らない曲だらけという事実にショックを受けつつもまだ聞いた事無い曲がたくさんあるという事実に歓喜もする。
シングル集めようっと。
シングルなんてそういえば中古で買った今井美樹の「Peace of my wish」と店頭ライブで買った田川寿美の「花になれ」と最近買ったタイガーフェイクファの3枚しか持ってないな。


ああ、終わってしまった。
バンドメンバーと手をつないでお辞儀したときには熊木杏里の目は潤み、放心したような表情で観客席の中空を見つめていた。
この時の表情があまりに透き通って限りない愛情に満ちていたのではっとする。
あなたは弥勒菩薩ですか。
想いが体中に満ち溢れるとその表情は無心に透き通っていくのだな。
バンドメンバーが去った後も一人名残惜しそうにこちらに振り向きお辞儀をしていた。


ああ、忘れてた。どこかの曲の合間のMCでクリーニング屋のおばちゃんと世間話をする自分は大人だみたいな話からツアーパンフレットの紹介があったな。
退出する長い列に並んでホールを出ると、スタッフがツアーパンフレット残り少しですと言っている。
国際フォーラムの時はパンフレットだかCDだか知らないが物凄い行列ができていたけど、最後の方でホールを出たためか誰も並んでいなかった。
一人女性が興味ありげに近づいて購入しているのを横目で見ながらちらっと値段見ると1000円。
どうしようか。800円とかだと面倒だけど1000円っていうきっぱり感が気に入って購入。

外に出て人のいないところまで行って煙草を吸ってぼーっとしていると、グローブ座を携帯でパシャパシャやっている人がたくさんいた。
きっとブログとかなんかにアップするのでしょう。
そういう方達が書いたレポート読んで記憶がよみがえったら手直ししよっと。

また秋にライブがあるらしい。
平日だろうがなんだろうが行く。

ひとヒナタ(初回限定盤)(DVD付)私は私をあとにして風の中の行進無から出た錆殺風景