2021年12月18日土曜日

映画『モロッコ、彼女たちの朝』

2019年 監督:マリヤム・トゥザニ
製作国:モロッコ / フランス / ベルギー
at ギンレイホール




夫を事故でなくしたアブラ(ルブナ・アザバル)は小さなパン屋を営んで娘ワルダと二人で細々と生活していた。
ある日お腹の大きい妊婦が仕事を探して訪ねてくるがそんな余裕も無いアブラが冷たくあしらって追い返すのだが。。

最初からいかにも善人ですっていうお人好しじゃないのね。
母娘の二人生活じゃ他人にかまっている暇もないのだろう。
しかしアブラはこの追い返した女性のことをずっと気にかけてそわそわしっぱなしっていうところがいい人すぎる。
やがて一緒に住むことになる妊婦サミラ(ニスリン・エラディ)によって生活に変化が訪れる。

女性に厳しそうなイスラム世界でのそれぞれの彼女たちの朝。
原題は『ADAM』。意味はネタばれ。

娘のワルダが幼いのに利発で可愛らしく明るい。
無表情な母親との対比でなおさら輝いてみえる。
いろいろ抱える大人の母親たちだけじゃどんよりするだけだしね。その辺のバランスがよかった。

映画『ベル・エポックでもう一度』

2019年 監督:ニコラ・ブドス
製作国:フランス
at ギンレイホール




ファニー・アルダン。。。この人妖艶な魅力はそのままで全然歳取らないな。
ダニエル・オートゥイユより年上かよ。70って。

元売れっ子イラストレーターで今は時代に取り残されたヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)。
妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)は自由奔放。時代に取り残された皮肉屋の夫にほとほと嫌気がさして不倫しいてる。
ついに妻に追い出されるヴィクトル。
やることもなく、ある日ヴィクトルは息子からプレゼントされた「映画の撮影セットを駆使して好きな時代の好きな役を演じることができるというサービス」に行ってみることに。。

年齢、時代、虚実を超えた恋愛コメディー。
ファニー・アルダン演じるマリアンヌが最初の方ただの嫌な女なんだけど夫を追い出しておいて速攻自分を責めたりとか情緒不安定で謎の人物。
自由奔放な直情型みたいなのにカウンセラーなんていう知的な仕事をしていたりもする。
まあ長年一緒にいるといろいろあるってことかな。
自分のことを誰よりも大事に思ってくれる人が一番大切ってことさ。

2021年12月4日土曜日

映画『イン・ザ・ハイツ』

2020年 監督:ジョン・M・チュウ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




マンハッタンの北部に位置する移民の街が舞台。
ストーリーは移民2世3世達の若者たちの夢と苦悩の物語。
差別とか生活環境の悪化とか。
まあミュージカル映画だしストーリーは結構どうでもいい。
最初のダンスシーンまでだいぶ引っ張られて、やっときたか、ってところでタイトルロゴどーんは上手い。
と思ったけど全般的に歌中心でダンスは少なめだった。

ダンスのジャンルは多岐に渡っていて面白い。
プールの水しぶき使ったダンスとかなかなか盛り上がる。
ただ、、全体的な話、カット割りが細かすぎてダンスをじっくり見たいのに次々に切り替わるからいらっとする。テンポはいいんだろうけど。

かき氷売りが原作/作詞・作曲/音楽/製作のリン=マニュエル・ミランダらしい。多才!

映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』

2018年 撮影:シドニー・ポラック
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




予告編見てもいまいちどういう映画かわからないのね。
しかもクライマックスっぽいアメイジング・グレイスの歌唱が予告編で一部聴けてしまうし。
で、本編見るとこれは、、ライブ映像だね。

1972年1月にロサンジェルスの教会で2日間に渡って行われたライブで、このライブのライブ・アルバム『AMAZING GRACE』は大ヒットしている。
そのアルバムのライブ映像が実はありました、ってことらしい。
アルバム聴き込んでいる人は歓喜なんじゃないだろうか。
私なんかは『ラヴ・ソングス~バラード・ベスト~』っていうベストアルバム持っているだけのほぼ初心者なんだけどなかなかおもしろかった。

アレサ・フランクリンの歌をすべての起点として、荘厳な熱量・熱狂で空間が満たされている。
宗教的な祈りにも似ている。
観客もサポートの聖歌隊も撮影スタッフも皆自由で、興奮して立上がる、叫ぶ、吠える、手を叩く、踊りだす、歩き回る、物投げる。
原始的な衝動と熱狂にあてられてこっちも映画館でおとなしく座っているのがもどかしくなってくる。

撮影を指揮しているのはなんとシドニー・ポラック。
画面にも映りまくっている。
このライブ映像がお蔵入りになった理由がなんかの技術トラブルらしいけどいまいち意味がわからず、なんらかの利権的なもんが絡んでいるんじゃないかと勝手に想像していたけどそんなことはなく
「カットの始めと終わりのカチンコがなかったために音と映像をシンクロさせることができないというトラブルに見舞われ」
らしい。
トラブルというかミスなんじゃねという気もする。。自由だ。

2021年11月21日日曜日

映画『ジェントルメン』

2019年 監督:ガイ・リッチー
製作国:イギリス / アメリカ
at ギンレイホール





マシュー・マコノヒーが登場からいきなり退場で、えっ!てなるけど一応ちゃんと物語の中心。
ロンドンのマリファナ王ミッキー(マシュー・マコノヒー)が引退して事業を売却しようとしているという噂が裏社会に流れる。
利権総額500億。
この一大イベントに表裏関係なくユダヤ人富豪やチャイニーズマフィアの野心家とか私立探偵とか格闘家とかゴシップ紙編集長とかチーマーとかロシアンマフィアとか様々な人物が様々な思惑で関わってきて壮大な駆け引きと運命のスリリングなお祭りが始まる。

ガイ・リッチーって名前だけは記憶していても過去作をすぐに思い出せないくらい記憶があせていた。
そうそう、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』の監督だよ。
ガイ・リッチーファンだったら「これこれ、これが見たかったんだよ」と言いそうなテンポのいいクライムコメディ。

コリン・ファレルも気づかなかったけど、あの私立探偵ヒュー・グラントだったのか!
大物ぶった小賢しい小物感とあの顔がやけに合う!
主役に近い準主役のレイ役の人も存在感抜群だったし誰だったんだろうと、調べてみるとチャーリー・ハナムって人。初めて見たかも。

映画『Mr.ノーバディ』

2021年 監督:イリヤ・ナイシュラー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




妻と子どもたちと暮らすごく平凡な男ハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク)。
路線バスで職場に通い火曜のゴミ当番はいつも出し遅れるような平々凡々な日々。
本当にどこにでもいる無個性で「誰でもない」男ハッチ。
ある日家に強盗が押し入るのだが、果敢に強盗に立ち向かう息子をよそに、ハッチは家族の安全を優先する。
戦わなかったことで周りからは散々な言われようで家族もぎくしゃく。
しかし愛する娘から「猫ちゃんのブレスレットがない」と言われ。。

久しぶりに頭空っぽで痛快に楽しめる映画を見た気がする。面白かった。
超人的な強さではあるけど結構普通にやられもするところがハラハラしてまた楽しい。
結構グロいのには顔をしかめつつも、ゆるいギャグとバイオレンスの絶妙なバランスとか、coolなかっこよさとださかっこよさっていうギャグと表裏一体な感じとか最高だね。
ユリアン(アレクセイ・セレブリャコフ)登場シーンの流れるような長回しもシビれる。

クリストファー・ロイドは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の時はまだ40代だったのか。。知らんかった

2021年11月6日土曜日

映画『騙し絵の牙』

2020年 監督:吉田大八
製作国:日本
at ギンレイホール




この予告編改めて見るとよくできているな。
物語上大したことないシーンや結構重要なシーンとかを予告のあらすじ紹介という目的の映像としてうまいこと切り貼りして当てはめている。
編集の力、すごい。
本編は本編でたぶん原作の力が強い面もあるだろうが結構面白かった。

キャストがうまいことはまっているよね。
はまりすぎて逆につまらなくなりそうなギリギリのライン。

松岡茉優はバラエティもこなす芸達者な部分がわりかし胡散臭さを帯びて少し興味が薄れていたけどこの人やっぱりいいな。画面が映えて明るくなる。

大泉洋は役者であまり見た記憶がない。
けどこのひょうひょうとした役柄はよくはまっているなぁ。切れ者に見えるし。
あ、なんか原作は大泉洋をイメージしてあてがきしたらしい。

うーん、気付いてしまったかも。
さっき胡散臭いって言葉使ったけど、キャストがはまっていると思ったのは胡散臭い役者しか出ていないからだ。
リリー・フランキー、小林聡美、大泉洋、中村倫也、斎藤工、坪倉由幸、國村隼、佐藤浩市,、佐野史郎、etc

映画『犬部!』

2021年 監督:篠原哲雄
製作国:日本
at ギンレイホール




実在したサークル犬部の創設メンバたちのお話。
青森県十和田市の獣医学生、花井颯太(林遣都)は大の犬好き。
同じく犬好きの盟友柴崎涼介(中川大志)と、ボロアパートのご近所さんの猫派、佐備川よしみ(大原櫻子)と、真面目な後輩くん秋田智彦(浅香航大)を仲間に引き入れて犬部を設立する。
犬、猫たちの保護活動ね。
この学生時代から16年後、サークルメンバたちはそれぞれ動物たちと向き合ってきて。。

ノンフィクション小説やらコミカライズやらいろいろメディア展開しているらしい。
映画化に際してはベテランの篠原哲雄を起用するあたり結構本気。
安定して面白かった。

林遣都はデビュー作の『バッテリー』で見て以来、一時期消えかけていたような気がするけど気のせいか。順調にキャリア重ねて今や超売れっ子俳優だな。
犬への愛に溢れすぎて少し常軌を逸したところもある人物像とぶっきらぼうな台詞回しがよく合っている。
中川大志の役も犬愛に溢れているけど、中川大志の雰囲気からしてなんか本当にやばいやつに見えるときがある。。

安藤玉恵さんが癒やしだわ。

2021年10月23日土曜日

映画『ノマドランド』

2020年 監督:クロエ・ジャオ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




リーマンショックで住居を失ったことを機に、ファーン(フランシス・マクドーマンド)は車を住居とするノマド(遊牧民)になる。
デイブ(デヴィッド・ストラザーン)以外は実際のノマド達らしい。
ジェシカ・ブルーダーの世界的ベストセラー・ノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』が原作らしい。
ノンフィクションの映画化だからノンフィクションのフィクションでドキュメンタリーチックで、、え、どういうこっちゃ。

大自然と文明を行き来しながらノマド達との交流を通して一人のノマドとして強く前を向いて生きていくロードムービー。
この生き方が気ままなのか辛いのかはどっちもどっちだけど、家族や家を大事にする(美学にしている)当のアメリカ人達が一番驚きそうな生き方。
ノマド達の笑顔の裏に刻まれている人生の年輪が熱い。

フランシス・マクドーマンドはもう60超えているのね。確かに『ファーゴ』の時点でそれほど若くはなかったけど。

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』

2019年 監督:ロジャー・ミッシェル
製作国:アメリカ / イギリス
at ギンレイホール




海辺に住むポール(サム・ニール)とリリー(スーザン・サランドン)夫婦のもとに、週末、家族が集ってくる。
家族団らんとおもいきや、どうやらリリーは末期がんで、この週末に安楽死する計画らしい。
家族も当然知っていて、最後の別れのために集まった。
集まったのは長女ジェニファー(ケイト・ウィンスレット)と夫(レイン・ウィルソン)と二人の息子(アンソン・ブーン)。
そして次女のアナ(ミア・ワシコウスカ)と恋人のクリス(ベックス・テイラー=クラウス)。アナは母親の決断にあまり納得していない。
そして家族じゃないけどリリーの親友リズ(リンゼイ・ダンカン)もやってくる。

出演者8人、で舞台劇のよう。
登場人物達のキャラクターを簡潔に浸透させつつ家族が集まった理由や関係性を小出しに進めていく展開はほどよく飽きさせない。
「これだけは約束して!お母さんを悲しませるようなことだけは絶対しないで」っていう長女が次女に言ったセリフとか、いろいろ集約しているよな。
ただしこれで皆一気にジェニファーが嫌いになるだろうけど。

一応スーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットが初共演っていうのが売りらしい。
スーザン・サランドンは個人的にはそんなに気になる女優じゃないのと、ケイト・ウィンスレットは好きだけど上述の通り役柄が嫌だったので微妙で、そんなことよりもミア・ワシコウスカが全てをかっさらうくらい輝いていた気がした。
役どころとしてもいろいろ抱え込んでいるから一番難しいんじゃないだろうか。
あまりに自然に演じているからか、アナの悲しみや苦しみが一番刺さる。
そして泣きながら笑っている表情とか、愛しさにも溢れているから最強すぎる。

あと、家族でジェスチャーゲームやっているのは衝撃だったな。
ジェスチャーゲーム、、家族で!?ひぃーー。

2021年10月9日土曜日

映画『ミナリ』

2020年 監督:リー・アイザック・チョン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




韓国からアメリカに移住してきたジェイコブ一家。
誰も手をつけようとしなかった土地を購入して韓国野菜の栽培で一発当てようと目論む。
まあ、そんなにうまくはいかない。
いろいろあって妻モニカ(ハン・イェリ)の母親スンジャ(ユン・ヨジョン)が子どもたちの世話役としてアメリカにやってくる。

子どもたちに嫌われようが我関せずでぐいぐいいく逞しさが衝撃的で美しい。
栗を口で割ったやつを吐き出して手に乗せて「ほら食べな」とか愛おしい。
新天地で一人夢を追うジェイコブと乗り気でないモニカ。
ケンカが絶えない夫婦とそれを見る幼い子どもたちは次第に土地にも柔軟に馴染んでいく。
そんな家族の物語だけど祖母のスンジャが全部持っていくくらい印象強い。
八面六臂の活躍とはこのことよ。
家族の潤滑油でありコメディエンヌであり救済者であり破壊者でもある。
スンジャというか演じたユン・ヨジョンのための映画みたいな。

映画『ファーザー』

2020年 監督:フロリアン・ゼレール
製作国:イギリス / フランス
at ギンレイホール




81歳で一人暮らしをしているアンソニー(アンソニー・ホプキンス)のもとに娘アン(オリヴィア・コールマン)が訪れる。
恋人のいるパリに行くことにしたからもう面倒見ることができない、とかなんとか。
そんな冒頭の会話の中で既にアンソニーの認識のずれが垣間見えてくるのだが、そのずれはやがて混乱というのも生易しいほどの事態に。パニック。
認知症を認知症患者の視点で描いたっていう映画。

認知症を映画で扱うっていうのは難しいよね。
どうしても深刻な話になるのでエンタメになりにくいし、観客もわざわざ辛い話を見に映画館に足運ばないから。
ド正面から描くなら辛いけどなんかしら(胡散臭くない程度の)感動が待っているとかそんな感じになるんだろうか。
で、この映画はどうかというと、認知症の辛さを正面から扱いながらも本人視点を利用してミステリー映画みたいな脚本演出になっている。
認知症を扱いながらそれをミステリーっていうエンタメに仕上げるとかなかなかいい案に思える。
けどなんだろうね。あまり面白くないんだよな。
エンタメにも真面目にもどちらにも振り切れずにお互いが足を引っ張り合っている感じ。
だからアンソニー・ホプキンスが名演していても、特にラストなんか引き込まれそうなくらい良くはあったが、どうしてもどこか冷めた目で見てしまうんだよな。


是枝監督の映画だった気がするけど樹木希林の母親役が初期の認知症を患っていて、でもその状態がただの一つの状態でしかないとでも言うように本人も周りもありのままに捉えているところがよかったんだけど、検索して探しても出てこないから是枝映画じゃなかったかなぁ。

2021年9月25日土曜日

映画『くれなずめ』

2021年 監督:松居大悟
製作国:日本
at ギンレイホール




脚本ぶっ飛んでいる系のコメディドラマ。
コメディだけど生死を扱った話でもある。
心臓辺りからぶっ飛びすぎて置いてけぼり感や飽きがやってくるけど全体的には面白かった。

前田敦子のキレ芸いいな。
主演は成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹。
この6人組がいじめられっ子いじめっ子陰キャ陽キャ文化系体育会系、みたいな混じりそうのないキャラクターで構成されたグループで不思議。
めっちゃ仲いいし。
皆でバカやってくそ盛り上がっているところで城田優登場によって一気にシュンと現実に戻る姿とか生々しくて面白い。
若葉竜也が演じた明石なんか、見るからに不良で城田優側のはずなのにいじめられ側だというところが違和感、というか笑いどころなのかも。
30過ぎの役者達が高校生頑張っている姿とかもそうか。

映画『キネマの神様』

2021年 監督:山田洋次
製作国:日本
at ギンレイホール




このシーンは志村けんが演じていたらこんな感じかな、みたいに想像してしまう。
志村けんを連想させるようなものが意図的に入っているし、沢田研二自体結構意識して演技しているふうでもある。
そういう想像で楽しめる人とそうでない人に分かれそう。
私はなんか集中できなかった。

小林稔侍とか10数年ぶりに見た気がする。
テラシンって野田洋次郎だったんだな。というか朝ドラ『エール』の木枯もそうだったのか!気づかなかった。
永野芽郁かわいい。
友情出演みたいなちょい役含めで名のしれた役者が大量に出ていてちょっと食傷気味。

脚本ほとんど年齢不詳孫(前田旺志郎)作だよな。

2021年9月11日土曜日

映画『アンモナイトの目覚め』

2020年 監督:フランシス・リー
製作国:イギリス / オーストラリア / アメリカ
at ギンレイホール




イギリスの海辺の町ライムで母と暮らすメアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は、観光客用の化石を売って細々と生計を立てている。
そんなメアリーは実はすごい人で、わずか13歳で発見した化石(イクチオサウルス)は大英博物館に展示されているほど。
ある日化石コレクターが鬱気味の妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を連れてメアリーのもとに訪れる。
でなんだかんだでメアリーはシャーロットの面倒を見ることになる。

いやぁ、なんか凄かった。
土臭さと高貴さ、ごつさと華奢さ、栄光と現実、田舎と都会、鳥かごと自由、ツンとデレ。。
映像は抑制されて静謐なんだけど、何かが驚異的なバランスで収められているような感じ。
で、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンがすごくいい。
視線の動き一つで演技しているよな。
演技合戦とかいっちゃうと胡散臭いしそれだけの映画みたいになっちゃうから嫌だけど、この二人がこの映画の面白さを確実に底上げしているのは確か。

『燃ゆる女の肖像』とかさ、最近レズビアンものの名作が多いよな。

フランシス・リー監督は元俳優で40代過ぎて監督に転身してこれが長編二作目らしい。
すごい人が出てきたもんだ、というかもう有名なのか。

あとメアリー・アニング自体は実在の人物らしい。

映画『この世界に残されて』

2019年 監督:バルナバーシュ・トート
製作国:ハンガリー
at ギンレイホール




1948年のハンガリー。
一人で暮らすユダヤ人医師アルド(カーロイ・ハイデュク)は患者としてやってきた少女クララ(アビゲール・スーケ)と知り合う。
クララもまたユダヤ人で今は大叔母の家に住んでいる。
ホロコーストを生き延びた二人の絆の物語。

父娘のような恋人のようなそしてそのどれでもない関係だが、ホロコーストの傷跡と本当の家族の思い出がなにかもっと深いところで二人を結びつける。
この二人の関係がどう変わっていくか。
男女である、一方はいい大人である、一方は成長過程の少女である、そしてスタンリーソ連がハンガリーで権力を得ていく時代背景がある。

少女役のアビゲール・スーケがすごくいい。
きりっとした目が力強くて可愛くて切ない。
16歳にしては色っぽいと思ったら、1998年生まれらしいね。

以下ネタバレ

結構説明が省かれているから解釈が怪しいのだけど、
アルドとクララは男女としての感情をお互い持っていたという認識でいいんだよな。
アルドが再婚を決めたのは党員に目をつけられないようにするための偽装。
失恋したクララは恋人ができるとともにアルドに対する感情が父親に対するような愛情に戻っていった。
スターリン死去のくだりは、結婚する必要なかったとか、クララがアメリカに行ってしまうとか、時代に翻弄され続ける悔しさとか、なんかいろいろあるのだろう。

2021年9月1日水曜日

映画『旅立つ息子へ』

2020年 監督:ニル・ベルグマン
製作国:イスラエル / イタリア
at ギンレイホール




アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は田舎町で自閉症の息子ウリ(ノアム・インベル)と二人で暮らしている。
幸せな暮らしだが妻(別居中?)タマラはウリを施設に入れようとしている。
厄介払いとかではなくて(そもそも一緒に住んでいない)、ウリの将来を思ってのこと。
アハロンはウリを施設に入れるのに反対だが、彼には定収入が無い。(昔は結構有名なグラフィックデザイナーだったらしいが今は息子のために全てを捨てて田舎に越してきたらしい)
そこがネックになり渋々ウリを施設に連れていくことになる。
ってところからロードムービーの始まり。

親は子に子は親にどっぷり依存している関係だが、いつまでもそういう関係を続けることはできない。親が先にいなくなるし。
自閉症を扱いながらも親離れ子離れの物語でもある。

ウリがいくつくらいかよくわからなくて、20代っぽいけど30代っぽくもある。
役者は1998年生まれらしいので恐らく役どころも20代前半かな。

映画『サンドラの小さな家』

2020年 監督:フィリダ・ロイド
製作国:アイルランド / イギリス
at ギンレイホール




予告編見る限りタイトルも似ているダルデンヌ兄弟の『サンドラの週末』っぽい雰囲気ではある。
実際は週末よりもう少しエンターテインメント寄りでそれほど似ていなかった。
どっちも原題にサンドラって入ってないんだな。

幼い子どもとノリノリでダンスなんかしちゃって何を見せられてんだ的なとりあえず幸せそうな家族だね、ってところから夫が登場して一変、ブラック・ウィドウ!グシャァ!DV。
エンターテイメント的導入。
最悪のDV夫から幼い子ども二人を連れて逃げ出したサンドラ(クレア・ダン)は、ホテルで仮住まいしながら3人で住める家を探す。
しかし公営住宅はとんでもなく長い順番待ちで待っている間に破産しそう。
だから自分で家を建てることを決意する。すごい発想。

映画としては『サンドラの週末』の方が面白いけど、これはこれでエンターテインメントとしては普通に面白い。
エンターテインメントって言っている理由は演出がそうなっているっていうのと、生活困窮者の奮闘とか協力者の温かみとか社会制度の問題とか、描いているようで描いていない気がするんだよな。
バイト仲間やらろくに話したことのないママ友とか、協力者は簡単に集まるし、生活困窮者は主人公だけだし。
ボランティアの人たちいい人すぎるよね。
最初のおやっさんこそ無償で手伝うなんて絶対しない雰囲気で手強そうだったくせに、手伝うようになった理由はいまいちはっきりしない。多少繋がりのある人だったからとか、そこから事情を察知してDVに同情した?
DV問題だけは子供のPTSD含めて酷に描いている気もする。
けどいくら子供には暴力振るわないからっていっても、母親への暴力をそんなに気づかないもんか。
DV側の描写も父親を見て夫は妻に暴力をふるうもんだと覚えてしまったのね、ってそんな。。

2021年8月14日土曜日

映画『パーム・スプリングス』

2020年 監督:マックス・バーバコウ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




砂漠のリゾート地パーム・スプリングスで行われた結婚式にいた謎のアロハシャツ男ナイルズ(アンディ・サムバーグ)。
ダンス会場で参加者一人一人が次にどんな行動をするのかまるで熟知しているかのような動きで(ここのシーンの動きは秀逸)、新婦の姉サラ(クリスティン・ミリオティ)を笑わす。
謎の男ナイルズといい雰囲気になったサラはなんたかんだでナイルズが陥っているタイムループに巻き込まれる。

ドタバタコメディ。
B級映画、だよね、これ、

まずヒロインのサラがB級映画ですぐ死ぬモブとか精神病んでる系のワンポイント脇役とかヒロインいじめる役とか得意そうな、、とにかくヒロイン顔じゃ無い。
この子がヒロインだと気づいたときは軽い衝撃が走った。
いやーすごいわ。美人どころだとコメディに突っ切れないんだろうな。
ナイルズ演じたアンディ・サムバーグからして天パのがま口マッチョでイケメンじゃないからな。
バランス的に丁度いい。
なんか失礼なこと言いまくっている気がする。。

アンディ・サムバーグは制作もやっているんだな。
コメディ畑の人らしい。
納得のコメディ演技だった。

一応ラブコメディなのか。恋愛要素は(個人的には)無きに等しいんだけど、コメディとして抜群に面白かった。

J・K・シモンズもいかれた親父で出演している。

肉体は老いなくても記憶は残っているなら脳は成長しているんだよね。
脳だけ老化してとっとと死にそう。

映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

2019年 監督:ユーゴ・ジェラン
製作国:フランス / ベルギー
at ギンレイホール




冒頭、氷と雪に追われた廃墟のような街CGが美しい、と思っていたところにいきなりでかい効果音とともに主人公の顔のドアップ、はちょっとウェってなる。
なんの映画見ているんだっけと思うような疾走感あふれる掴みではあるけど。

高校時代に付き合ってそこから最愛の妻になってくれたのに、自身の成功とともに妻をないがしろにしてしまう男がパラレルワールドに迷い込んで悪戦苦闘する。っていう純愛コメディ。

パラレルワールドにいくまでの圧倒的なテンポのよさ。
その一瞬ですらオリヴィア(ジョセフィーヌ・ジャピ)に惚れるわ。
ジョセフィーヌ・ジャピって初めて見たけど、まあ綺麗。
気品がありつつ快活な笑顔は庶民的な親しみやすさもあるっていう素晴らしさ。
これからどんどん売れていきそう。

フランソワ・シヴィルは髭がないと誰だかわからないくらい顔変わるな。
高校時代は別の俳優が演じているのかと思った。

友人のフェリックス(バンジャマン・ラヴェルネ)はコメディ脇役としても純愛ものとしても最高のキャラクターになっている。南葛もいけているし。

まあ面白かったんじゃないかと思うけど、ジョセフィーヌ・ジャピじゃなかったらそれほどでもない気もする。
パラレルワールドっていう異質設定が面白味でありながらも恋愛ものとしては足引っ張るのね。
恋愛映画の男がいて女がいてっていう関係性が同一人物で掛ける2になったらそれだけ薄まるし。
今の世界と元の正解がそれぞれちゃんとした世界だからそれぞれの世界でどきどき恋愛ハッピーエンドにならないと気がすまない。

2021年7月31日土曜日

映画『夏時間』

2019年 監督:ユン・ダンビ
製作国:韓国
at ギンレイホール




予告編で、車中の後部座席で船漕いで倒れそうな弟を隣の姉が自分の肩にそっと寄りかからせる、っていうシーン見てから絶対おもしろいだろうと思って結構楽しみにしていた。
本編は、つまらなくはないけど、途中眠気に襲われて少し寝てしまった。

夏休み、祖父の家、っていう空気感が瑞々しい。
そこに大人になりかけの少女の視点から見た、、恋人、なにやら事情のある大人達、無邪気で脳天気な弟、去っていった母親、生と死、っていうもろもろの感情が乗せられる。
いいことはいいんだけど、、なんかこういうの見るなら是枝ホームドラマのほうが数倍面白いんだよなぁ。

弟役の子はあまり演技経験ない子に自由にさせているんだなと思っていたのに、パク・スンジュン君っていって天才子役と評される子らしい。
まじかー、こまっしゃくれた子役の演技が大っ嫌いなのに普通に見てしまったぁ。

号泣シーンは初め面白い泣き方に戸惑うけど段々引き込まれていく。
なかなかの名シーン。
なぜそこまで号泣するかは不明。だが全てが溢れ出して止まらないんだろうな。なんとなく分かる。

映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』

2019年 監督:カロリーヌ・リンク
製作国:ドイツ
at ギンレイホール




絵本作家ジュディス・カーの自伝。
子供にとっては結構過酷な環境ではあるが、ドイツに残っていたユダヤ人より100倍幸せなんよね。

主演のリーヴァ・クリマロフスキがまあ達者だわ。
子役嫌いの私でも自然に見ることができた。
なんかしばらく学業に専念するらしいが将来が楽しみ。

映画自体は第一部完みたいな感じ。
まあ面白かった。

1923年生まれで生きていたら100歳近いしもうだいぶ前になくなっているんだろうなと思ったら2019年までご存命だったらしい。
この作品の完成前だったとのこと。

2021年7月17日土曜日

映画『世界で一番しあわせな食堂』

2019年 監督:ミカ・カウリスマキ
製作国:フィンランド / イギリス / 中国
at ギンレイホール




フィンランド北部の田舎町に中国人親子がやってくる。
彼は「フォントロン」を探しているらしい。
入った食堂で客に聞きまくるが誰も「フォントロン」を知らなくて途方にくれる。

「フォントロン」の謎が物語のキーになる雰囲気なのに中盤であっさり判明する。
判明後は中だるみしている気もしたけど、のんびりしていて全般的には面白かった。
4輪バイクは農作業用かと思ったらそうでもないのか。かっこいい。

釣り針のシーンは文化の違いに戸惑うか、もしくはシルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)に幻滅するシーンなのかと思ったが逆に3人の絆のシーンみたいだった。
これぞ文化の違い?
怪我させたのお前だろうが、と何回突っ込んだことか。
人災も天災みたいな感覚が世界一幸せな国である秘訣なのかも。


ミカ・カウリスマキは何本見たんだっけと思ったらまさかの1本。
ヴィルプラ役のヴェサ=マッティ・ロイリが出ているね。
この人公式ページによると「フィンランドで最も有名な俳優・歌手・パフォーマー」らしい。

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』

2020年 監督:ルーベン・アウヴェス
製作国:フランス
at ギンレイホール




予告編にもあるけど「完璧と普通の違いが分かる?」「数ミリよ」は名言だな。
子供の頃にミス・フランスに憧れていた少年が、大人になるまでに色々あって暗くなっていたところで昔の夢を思い出して再び夢を追い始める話。

ストーリーはいまいちよくわかなかったけど、ミスコンの舞台裏とかはまあ面白かった。
あと、主演のアレクサンドル・ヴェテールの美脚がすごい。
彼の美脚に勝てる女性は世界に100人もいないんじゃないかと思うくらい。
顔立ちもなんか不思議で、ごつごつして男っぽく見えもするし、小顔でエキゾチックな美人に見えたりもする。
めちゃくちゃ美人という程でもないが。

シェアハウスの同居人たちが個性的なのはいかにもって感じ。

以下ネタバレ


細かい設定とかストーリーがよくわからんのね。

アレックスが男だとわかったらさんざん無視していたのに手のひらクルーで急に仲間づらするのって何なの?
トランスジェンダーには寛容でいないといけない、いじめるなんてとんでもないみたいな空気感に流されているのを揶揄しているのだろうか。

ボクシングジムの人たちってアレックスを下に見てどちらかというといじめているような雰囲気があったけど、最後めっちゃ和気あいあいと応援していたよね。
普通に仲間だと思っていたならそれでいいけど、アレックスにレイプまがいのことして暴言吐いた同僚は普通に応援していちゃ駄目だよね。あの場にいたか記憶にないけど。

ラスト脱ぎだしたら普通カメラ止めるでしょ。
あとピンク乳首の綺麗な微乳にしか見えなかったのだけど、あれで男とすぐ分かる観客って一体なんなのか。

アレックスが結局性自認が女性なのかどうかよくわからない。クロスドレッサーでもなさそうだし。
でも幼馴染とその恋人の仲にショックを受けるような描写もあるからややこしい。
その辺は監督のインタビューみるとなんとなく意図がわかる。
型にはめた分類をしたがるのはよくないってことね。

2021年7月3日土曜日

映画『すばらしき世界』

2020年 監督:西川美和
製作国:
at ギンレイホール




人生の大半を刑務所で過ごし、今回は13年ぶりに出所した元やくざで殺人犯の三上正夫(役所広司)。
根は優しいのだが激昂しやすく、一度切れたら相手をぶちのめして動かなくなるまで止まらない。
そんな三上と三上を支える弁護士夫婦とか若手テレビマンとかスーパーの店主だとかの物語。
実在の人物がモデルらしく、原作は佐木隆三のノンフィクション小説『身分帳』。

周りの人がいい人たちすぎて泣けてくる。
元殺人犯でしかもしょっちゅうキレている人なんか怖くて近寄りたくない。
けど三上がまた人懐っこいいい笑顔するんだわ。ほっとけないというか。
狂気の凄みと優しさを同居させる役所広司の真骨頂。

庄司夫婦(梶芽衣子、橋爪功)がなにか名セリフ言っていたんだけど、思い出せない。
なにか人生の生き難さ、大人は我慢してとか逃げていいとか一人で全部背負えないとかそんな話。
三上にとっては半分納得して半分納得できない話。
ラストシーンのエピソードはちょっと主張がストレート過ぎるけどいい話いいシーンだった。

白竜の足のCGはよくできているような違和感あるような。

以下ネタばれ

あの職員ぶっとばしたいわ~。
彼なりの正義かもしれないが基本なにか根性がひん曲がっている。
その後のおばあちゃんに駆け寄る姿が仕事とはいえ、ギャップに戸惑うんだよな。
介護の現場はあまりに過酷だというし正常じゃいられないのかも。
それにしても前科者とか雇うっていう情報知っておきながら三上が前科者かもって思わないところがアホすぎてかわいい。
あと、いじめられる側に非というかマイナス点が少しでもあって、かつ皆がいじめていると、友達だったはずなのに急にどうでもよくなってしまう、みたいな日和見集団心理に何か心理学的な名前あるのかな。
いじめ、想像、真相、そして「似てますよね?」の緊張から緩和、そして「三上さんも持って帰る?」の笑顔から三上の涙、そしてラストって流れは感情の起伏が激しくてなかなかすごい。

映画『スパイの妻<劇場版>』

2020年 監督:黒沢清
製作国:日本
at ギンレイホール




この予告編さあ、なにこのチープなB級テレビドラマみたいな映画って思ったら黒沢清監督ってばーんって名前が出るからびっくりするよね。

本編見ると、冒頭の手前に樹の枝葉で奥に建物のショットがなんか安心感あったけど、以降は普通に予告編通りだった。
でも意外と面白かった。

セリフまわしはどんなに熱がこもっても常にどこか上滑りしているような変な感じ。
なにこれって思うけど、棒読みすぎず自然すぎない絶妙なバランスの上に成り立った演技に思えてきてだんだん癖になる。

余談:
そういえば黒沢清の映画ってだいたいこんな感じのセリフまわしだったっけ、というか黒沢映画って超久しぶりに見た気がする。
いや、久々というか『ニンゲン合格』とあとせいぜい1,2本くらしか見ていなかったかも。。
このブログ上では3本乗っているなぁ。覚えていない。。

東出君は黒沢清と相性よさそうだな。

演出は昔の日本映画見ているかのよう。
バストショットの切り返しは真正面向いているけど小津っぽいし、後はなんだ、何も出てこないがなんとなくの雰囲気で。

以下少しネタばれ

自分の危機的状況もよく理解していないし、フィルム見れば納得してもらえると信じ切った上でのどや顔「御覧ください」は名シーンだった。

2021年6月19日土曜日

映画『私は確信する』

2018年 監督:アントワーヌ・ランボー
製作国:フランス / ベルギー
at ギンレイホール




実際の事件らしいね。
裁判物。
妻の殺害容疑で逮捕された大学教授ジャック・ヴィギエ(ローラン・リュカ)は一審無罪。
検察控訴で二審が始まるところからスタート。
主役はヴィギエじゃなくて、ヴィギエの娘が家庭教師をしている子供の母親ノラ(マリナ・フォイス)。
ジャックの無罪を確信しているノラは有能弁護士デュポン=モレッティ(オリヴィエ・グルメ)に担当を依頼したり、膨大な通話記録を整理したりと八面六臂の活躍をする。
というか暴走していく。。

各人物の背景やら心境の変化の理由とか、通話記録って何だよ(何でそんなのあってかつ警察が検証してないんだよ)とか、細かいところはよくわからないのだが、まあ展開はスリリングで面白かったんじゃないかと思う。

昔ジェットリーの映画見てフランス警察の腐敗っぷりの描き方がやばすぎて国際問題になるんじゃないかと危惧したけど、その後様々な映画でことあるごとにフランス警察のクソさが描かれているのを見て、実際クソなんだろうといつの頃からか思うようになっていた。
だから知ってた。

映画『聖なる犯罪者』

2019年 監督:ヤン・コマサ
製作国:ポーランド / フランス
at ギンレイホール




熱い。面白い。

少年院から仮釈放で出てきたダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)は田舎町の製材所へ就職する。
はずだったが、なんやかんやでその村の教会の司祭になる。
少年院の頃から司祭に憧れていたが犯罪歴があると司祭にはなれないので、もちろんなりすまし。
司祭の資格も無いから知識も乏しいけどそこはなんだかうまいこと切り抜けていく。
というか正統と型破りさがいい塩梅で、次第に村民の信頼も得るようになっていく。

360度どっから見ても悪人面で司祭なんて最も似合わないのに次第にしっくりくる不思議。
ダニエルはちょっとやんちゃが過ぎて少年院に入ったけど根っからの悪人というわけではなさそう(人殺しているが)。
そういう人物像がだんだん見えてくるのと、いつバレるかというスリルと、村で最近起きた痛ましい事故の真相(ミステリー)とか、いろんな要素が絡まってくる。
村にありがちな村八分的な嫌がらせやら村でくすぶる若者たちの鬱憤だとか、村八分された未亡人の怒りだとか、いつもへらへらした少年院仲間の悩みとか、事故の真相の一端を知って抱え込んでいるマルタ(エリーザ・リチェムブル)とか、基本的には負の感情が渦巻いているのね。
そこにさらに負の塊のようなダニエルが司祭として救いになっている図式が奇妙で面白い。
負だけど負過ぎず、逆にそれが熱い。

2021年6月5日土曜日

映画『チャンシルさんには福が多いね』

2019年 監督:キム・チョヒ
製作国:韓国
at ギンレイホール




なんというか昔懐かしい感じの映画。
オープニングタイトルのござっぽい布地にキャストが表示されるのが小津っぽいと思ったら主人公が大の小津ファン。
いや、懐かしいのはそこじゃなくて、レスリー・チャンが出てくるのね。
もちろん偽物で幽霊で似てすらいないけど。
ランニングシャツのこの下着っぽい姿は確かにレスリー・チャンは(というかあの時代の香港映画の出演者は)しょっちゅうこんな格好していた気がする。懐かしい。
こういうゆるいコメディドラマも香港ノワールの影に隠れて2000年前後くらいの香港映画でよくなかったっけ。
まあどっちにしろ恐らく小津を目指していたのだろうけど。

つまらなくはないけどさして面白くもなかった。

40前後の美人でもないおばさんを主人公に据えて、ゆるいコメディ撮ろうという気概、というか実際映画を作ってしまえるという香港映画界は懐が深いなぁ。

告白して走って逃げるところは可愛らしかった。

公式ページで公開されている
この辺のshort shortとかmusic video見て面白そうだと思ったら本編も見たほうがいい。
逆に苦手に思ったら見ないほうがいい。
私はmusic video少し見てなんか苦手だった。

監督のキム・チョヒはホン・サンスの映画のプロデューサーやっていた人らしい。

映画『ハッピー・オールド・イヤー』

2019年 監督:ナワポン・タムロンラタナリット
製作国:タイ
at ギンレイホール




断捨離のススメみたいな話かと思いきや、意外と複雑で凝った人間ドラマで面白い。
あっという間にゴミ袋が量産されて捨てればおしまいってところまでいったときは、もうそのまま映画が終わるのかと思った。
ジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は捨てるのを一旦中止して人からの借り物はせめて返却しようと思い直す。
物を捨てるということはその物にまつわる記憶と決着をつけること。
それにしても借りてたものが多すぎないかww
しかも捨てようとしていたし。
コントラバスの持ち主にはなにやら恨まれているし、元恋人には自分勝手にひどい仕打ちしているしで、ジーンという人物像がだんだん見えてくるのが面白い。

元恋人エム(サニー・スワンメーターノン)とエムの今の彼女ミー(サリカー・サートシンスパー)とジーンの3者の関係が面白い。
もっといろいろどろどろしていいはずなのに。
その辺は最後のほうでああ、やっぱりって感じでなんか感心した。
なんだかんだでミーはいい子だなぁ。
エムの不気味に張り付いた微笑がずっと怖かったけどそれも最後まで見るとなかなか面白い。
エムはイケメンっぽいけどなんとなく違和感ある顔立ちしているから微笑が怖いのよ。
エムを演じたサニー・スワンメーターノンは公式ページに「1981年5月18日生まれ。タイとシンガポールとフランスのミックス」って書いてあるな。

ジーンの友達で坊主頭が只者じゃない雰囲気のピンク役のパッチャー・キットチャイジャルーンは写真家らしい。

主演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の子だったんだな。

2021年5月22日土曜日

映画『燃ゆる女の肖像』

2019年 監督:セリーヌ・シアマ
製作国:フランス
at ギンレイホール




舞台は18世紀フランスのブルターニュの孤島。
伯爵夫人は娘エロイーズ(アデル・エネル)の縁談用の肖像画を画家に描かせたかったが、結婚を望まぬエロイーズは拒み続けていた。
そこにやってきた画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)。
画家であることを隠し、散歩仲間としてエロイーズに近づき、密かに肖像画を仕上げていく。

なんかびっくりするくらい面白かった。
恋愛映画の最高傑作で映画としても名作。

我が強そうだけど凛とした美しさのマリアンヌと、美しく気高く聡明だけど幼い可愛らしさも垣間見えるエロイーズ。
この二人のショットだけで4時間はいけるよな。
暖炉の前で三角座りしているマリアンヌの体のラインなんか芸術的すぎる。

祭りのシーンが一番不思議で面白かった。
燃えているのに全く動じないエロイーズの異様な美しさとその後のコメディのような倒れ込みまでが、一種の洗練された様式美のようだった。

伯爵夫人を演じたヴァレリア・ゴリノがなんか貧相な感じだったけど、それも二人を際立たせる要素になっている。
別れのシーンのなぜ私にハグするの?と戸惑う感じがうまい。
というかもう存在自体がただのだしだよな。

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』

2018年 監督:アレクシス・ミシャリク
製作国:フランス
at ギンレイホール




『シラノ・ド・ベルジュラック』の誕生秘話、初演舞台の裏側を描いたコメディー。
なんかこれが事実なら全てが奇跡よね。
失敗する要素しか見当たらないのにさ。
なかなかおもしろくはあったが少し長い。
それにびっくりするくらい何も書きたいことがない。。

コスタン役の人は最初冴えないおっさんにしか見えなくて人気俳優役とは思えなかったけど、なんかだんだんと貫禄みたいなものを感じてしっくりきた。
オリヴィエ・グルメ。
この人は『息子のまなざし』の人か。

2021年5月8日土曜日

映画『37セカンズ』

2019年 監督:HIKARI
製作国:日本 / アメリカ
at ギンレイホール




この予告編見て泣いて、本編見たときは泣かなくて、今再度予告編見たらまた泣いた。
本編がつまらなかったとかではなくて、むしろ予想以上に面白かった。

身体に障害をかかえる23歳の貴田ユマ(佳山明)は車いす生活をしている。
家には流れるように世話してくれる母親が一人いる。
ユマ自身は世話されるだけではなくて、友達の漫画家のアシスタントとして働いている。
アシスタントというか実は、、
過保護すぎる気もする母親と、自分の現状に抗いたくなったユマは一歩先へと踏み出していく。

予告編にもあるけど「そんなことあるわけないじゃん」っていうセリフ回しは映画史上に残るよなぁ。

演じた佳山明は実際に障害をかかえる子でオーディションで選ばれたらしい。
最初の方にある二人のフルヌードの必要性が初めいまいち分からなかったけど、これはありのままをすべて出す本気度の現れであったのかもしれない。
それに風呂に入るまでの流れるような二人の作業が非常に美しくもあった。

最後の方すごいよな。
母の愛には弱いので泣きそうだったけど、女優さんが人ってそんなに涙出るのってくらい涙ぼろぼろ流しているのが圧巻すぎて、こちらが泣いている場合じゃなかった。感心してしまって。

無名俳優で構成されているかと思ったら結構いろんな人が出ている。
大東駿介とか渡辺真起子とか板谷由夏とか。
尾美としのりは最初誰だかわからなかった。
母親役の神野三鈴も出演作見ると結構あるから有名なのかな。『このマンガがすごい!』の10話で見たことがあるっぽい。

あと小麦色の肌で現地に嫌に馴染んでいた子は無名の子かと思ったら結構活躍していそうな感じだった。芋生悠って子。

映画『朝が来る』

2020年 監督:河瀬直美
製作国:日本
at ギンレイホール




養子縁組をした夫婦と、養子に出した母親の物語。
途中何度か「長いなぁ」と我に返りつつ、主人公が切り替わったときにはまだ長く続くのか、なんて思ったりもしたが、全体的にはまあ楽しめたと思う。
139分。
端折るとことは端折ってもう少しコンパクトであってほしかった気もする。

出演している女優さんが皆素晴らしいのね。
永作博美って今まであまり意識していなかったけど、表情の細かい機微に吸い込まれる。

あと浅田美代子。
まさに役そのもののオーラをまとっていて、なにこの雰囲気の凄さは。
もう大女優の域だよ、この人。
バラエティとかでのぽんこつぶりとのギャップがすごい。

そして蒔田彩珠。
この子見たことあると思って、鑑賞中ずっと記憶を探っていて、女王の教室に出ていた子(福田麻由子)に似ているけど年が違うし。。
帰って調べたら『ゴーイング マイ ホーム』から始まり是枝作品の常連みたいね。
この子はだいぶ不思議な印象の子で、可愛いのか可愛くないのかよくわからないくらいに七変化する。
次の朝ドラ(おかえりモネ)にも出るみたいで楽しみ。

2021年4月24日土曜日

映画『声優夫婦の甘くない生活』

2019年 監督:エフゲニー・ルーマン
製作国:イスラエル
at ギンレイホール




1990年、ソ連からイスラエルに移住してきたヴィクトル(ヴラディミール・フリードマン)とラヤ(マリア・ベルキン)の声優夫婦は、さっそく仕事を探すが、イスラエルに声優の仕事がなかった。。
二人の甘くない生活始まる。
ほっこりコメディでなかなか面白かった。

声優っていうのはアニメとかじゃなくて外国映画の吹き替えがメインね。
ヴィクトルは特にフェリーニを崇拝している。
ってところから邦題がついているんだけどなかなか洒落ている。
ヴィクトル役のヴラディミール・フリードマンがそもそも甘くない顔をしているしな。
マフィアか、と思うくらいの凄みをきかせながらコメディしているから笑える。
ラヤの恋する乙女の表情もかわいい。

映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

2019年 監督:グレゴリー・マーニュ
製作国:フランス
at ギンレイホール




かつての天才が再起するまでの成功譚、みたいなよくある話で最後はすっきり爽快なのかと思ったら、微妙に違っていて、なかなか愛おしい感じの秀作だった。
予告編がそういうありきたりな話に興味を誘導しているのも悪いよな。
「崖っぷち状態の二人は奇跡の調合を生み出せるのか」
って、まあ物語の方向性としては予告編も別に間違ってはいないんだけど。

ディオールで香水を作っていた天才調香師のアンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)は、業界を追われたかなんかで香水作りから手を引いて今では匂いに関する仕事を細々とこなしている。
一方専属運転手レンタルみたいな仕事をしているギヨーム(グレゴリー・モンテル)は娘の親権争い中だが失業寸前。
そんな二人が出会って喧嘩して気遣って協力してほっこりする話。

アンヌ役のエマニュエル・ドゥヴォスがへの字型の口でなんか気難しそうな雰囲気がよく合っている。
それにしてもこの人40代くらいかと思ったら50後半だ。
若いな。ホテルのジョークも半ば本気かと思ったけど本当にジョークだったのか。

ギヨームの会社の社長が常に食事していてたまにくちゃくちゃ気持ち悪かった。

娘役のゼリー・リクソンが溌剌として可愛らしい。
将来有望そう。
公式ページにある「幼いころから母親のサーカス学校でコメディとダンスを学び」っていうのも気になる。


以下ネタバレ


それまで十分楽しかったから気づかなかったけど、だいぶ経ってから、あれ、まだスタートラインにも立っていなくないかと気づく。
で、ようやく動き始めたかと思ったら終わり。
俺達の冒険はこれからだ!
みたいな。
とはいえ、最後は希望と自信にあふれていて後味はけっこうすっきりしているから不思議。
なかなか面白いというか珍しいストーリー展開だよなと思った。

2021年4月10日土曜日

映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』

2019年 監督:ロネ・シェルフィグ
製作国:デンマーク / カナダ / スウェーデン / フランス / ドイツ / イギリス / アメリカ
at ギンレイホール




ニューヨークに住む、またはニューヨークにやってきた人たちがそれぞれ抱える苦悩と、そんな人々の優しさの物語。
製作国の数すごいな。

最初に登場人物がいっぱい出てきてわけわからないが、一応メインはクララ(ゾーイ・カザン)なのかな。
警官である夫が長男にDVしていたことに気づいて、幼い子ども二人を連れてニューヨークに逃げてきた。
といってもカードも使えないし金もないので、盗むしかない。
この辺の悲壮感がクララを演じたゾーイ・カザンの薄幸そうな顔立ちとよく合っている。
それにしてもカザンって。。と思ったらエリア・カザンの孫だった。じゃあ裕福?

ロシア料理店の店長だか店員だかが親切で、困っている人々に次々に手を差し伸べてなにやら心温まるストーリーでも展開されるのかと思っていたけど、ロシア料理店ってそんなに関わってこない。
確かに各登場人物とロシア料理店にはなにかしら縁があるけど、ただそれだけ。
予告編の作りもストーリー捻じ曲げている気がするし、原題は『THE KINDNESS OF STRANGERS』だし、なんかそんなに偉い人が邦題付けたのだろうか。

一番親切なのはアリス(アンドレア・ライズボロー)だよな。
激務の救急病棟の看護婦でありながら、浮浪者への炊き出しやら赦しの会なるセラピー開いたりとか、3人いるのかと思うくらいの働きぶり。
ロシア料理店のマーク(タハール・ラヒム)なんかクララが美人じゃなかったら近づきもしなかったでしょ。
(そう、ちょっとびっくりしたけどクララは一応美人という設定なんだよね)

弁護士のジョン・ピーター(ジェイ・バルシェル)は一応優秀なのかな。
犯罪者を無罪にするくらい優秀だけど、どこかで彼は負け続きみたいなこと誰かが言っていたから混乱する。ただのジョークだったのか?
DV旦那がいい具合に墓穴ほってくれたけど、あれがなかったらどうなっていたんだろう。

個人的にはジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が一番良かった。
心根が優しいよね。雇いたくはないけど。

ロシア料理店のオーナーでビル・ナイが出ている。

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

2019年 監督:ムニア・メドゥール
製作国:フランス / アルジェリア / ベルギー / カタール
at ギンレイホール




今予告編を見返すと本当泣きそう。
1990年代のアルジェリアで、寮ぐらしの大学生ネジュマ(リナ・クードリ)はファッションデザイナーになることを夢見ていた。
夜に寮をこっそり抜け出してナイトクラブのトイレで自作の服を販売したりしている。
自由に青春を謳歌している感じだが、のっけから検問の緊張感がやばい。
イスラム原理主義の台頭で、女性はヒジャブを付けていないと身に危険が及ぶほどの情勢になっていた。

これがアメリカ映画とかだったら、偏見やら権力の圧力やらでくじけそうな女主人公が苦難を乗り越えて最後は痛快に決める、みたいな展開になるんだろうな。
圧倒的な暴力・銃の脅威の前ではあまりに無力だ。あと宗教の妄信的な力ね。

嬉しさ楽しさの絶頂が一気に反転するとき、怒りと絶望のあとに虚無感が訪れる。
床に頬をつけた友達の表情が忘れられない。

女性が生きづらい世の中というとつい最近見た『82年生まれ、キム・ジヨン』を思い出す。
けど、なんだろう、生きづらいというかたかだか嫌味言われる程度じゃん、って思ってしまうのでパピチャ見る場合は先に82年生まれを見ておいたほうがいいかもしれない。

2021年3月27日土曜日

映画『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』

2020年 監督:ニーシャ・ガナトラ
製作国:アメリカ / イギリス
at ギンレイホール




伝説の歌姫だけど10年もアルバムを出していないグレース(トレイシー・エリス・ロス)、の付き人みたいなことをしているマギー(ダコタ・ジョンソン)が主人公。
マギーは音楽プロデューサーになることを夢見ている。

予告編見る限りでは全然面白そうじゃないんだよね。
自我が強くてプライド高いよくいる一般人のサクセスストーリーみたいな。
いざ見てみると、この生意気なところががっつり鼻っ柱折られたりとか、スタンドプレーでチャンスを掴んでも、その強引さにより迷惑を被った人がいることをちゃんと諭されたりとか、意外と真面目。

最後の展開は笑っちゃうけど映画だしまあ許せる。楽しいし。
ネタばらしがあっさりと衝撃の中間みたいな感じで中途半端だったので、もう少しどちらかに振り切れてほしかった気はする。

で、この映画で一番言いたいのは、主演のダコタ・ジョンソンがとにかく可愛い。
ダコタ・ジョンソンの魅力にノックアウトされるための映画。
ダコタ・ジョンソンって初めて見たのでよく知らなかったけど、メラニー・グリフィスの娘なんだね。アントニオ・バンデラスは義理の父。

あと、トレイシー・エリス・ロスはダイアナ・ロスの娘。

あと、予告編からも何故か存在が抹消気味のデヴィッド役ケルヴィン・ハリソン・Jrは『WAVES/ウェイブス』のタイラー君。っていうのに全く気づかなかった。。

映画『メイキング・オブ・モータウン』

2019年 監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー
製作国:アメリカ / イギリス
at ギンレイホール




音楽レーベルモータウンの創設者ベリー・ゴーディと盟友のスモーキー・ロビンソンのインタビューを中心に、かつての所属歌手やらスタッフのインタビューとともにモータウンの歴史が語られる。
音楽ファンもそれ以外も楽しめる。
ベリー・ゴーディとスモーキーがわいわいきゃっきゃしながら語る昔話が楽しい。
顔写真とイラストを駆使した再現もなんかおしゃれな雑誌を読んでいるみたいでスタイリッシュ。
稀有なリーダーがいて、人が集まる、才能が集まる。
たくさんの人の出入りと関わりには様々なドラマがあって、そこには当然いいことだけじゃなくて嫌なことや悪いこともたくさんあったんだろうとは思うが、なによりこの自由さと人と人の感情の熱量がすごいよなと思う。

2021年3月13日土曜日

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

2019年 監督:キム・ドヨン
製作国:韓国
at ギンレイホール




いやー、びっくりだわ。主演のジヨン役チョン・ユミは20代くらいかと思っていたら、83年1月生まれでほぼ82年生まれ。 チョン・ユミの美しさ可憐さを礼賛する映画だと思った。 原作は日本でも大ヒットした小説。 幼少期にどんなトラウマを植え付けられているのかと思ったけど、いたって普通。 というかお母さんが物分かりいいし愛情に溢れているしで最高の母親なんだけど。 夫もとりたてて嫌なヤツじゃないし。 この普通の女性が姑や女性蔑視が未だに根強い韓国社会や育児にもまれて壊れていくというのがミソなのか。 姉ウニョン役のコン・ミンチョンがかっこよくて惚れる。 お友達ヘス役のイ・ボンリョンが絶対なにかで見たことあるんだけど思い出せない。 この印象に残りやすくてだんだんキュートに見えてくる顔立ちは唯一無二だよな。

映画『フェアウェル 』

2019年 監督:ルル・ワン
製作国:アメリカ / 中国
at ギンレイホール




ニューヨークで家族で暮らすビリー(オークワフィナ)は、中国に住む大好きな祖母ナイナイ(チャオ・シュウチェン)が余命幾ばくもないことを知る。
家族はナイナイに末期がんであることを伝えないことに決め、ビリーのいとこの結婚式をでっち上げて家族が集まる口実を作る。

全米で大ヒットしたらしい。
ストーリーはまあ、それほど面白いわけじゃないけど、なんか面白かった。
歩いているシーンや走っているシーンがとにかくいいのね。
色とりどりの傘で歩くシーンとか、写真撮影からゆるりと抜け出して街なかを疾走するビリーとか、マフィアの行進みたいなスローモーションとか。

ビリーが可愛くないけど可愛らしい。
ゴールデングローブ賞とかとっているみたいね。
演技がうまいようにはあまり感じなかったけど、雰囲気があって魅力的な女優さんではある。

ビリーもだけどいとこ君はさらに中国語ができない設定のためほとんど喋らず、それがなんか馬鹿っぽくも見せているんだけど、その設定も結婚式で新郎新婦が一緒に歌う竹田の子守歌に全て集約されている気がする。笑うわ、あれ。

はっはっ、っていう健康法は寂しい感じで見ていたのにめっちゃ効果あるとか誰も予想できない。

2021年2月27日土曜日

映画『マーティン・エデン』

2019年 監督:ピエトロ・マルチェッロ
製作国:イタリア / フランス / ドイツ
at ギンレイホール




アメリカのジャック・ロンドンの自伝的小説が原作。
舞台はイタリアに置き換えられているらしい。
労働者階級の青年エデン(ルカ・マリネッリ)が上流階級の娘エレナ(ジェシカ・クレッシー)と出会い、恋して、作家を目指して、っていうとメロドラマっぽく思えるけど、一人の男の苦悩と葛藤と憧れと恋の話。

時折古い映像が差し込まれて、単体でなかなか面白い映像なのだが、姉と弟のダンスシーンが実はエデンと姉の幼少時代だったと知ったとき、もしかしたらあの古い謎の映像は皆エデンの思い出のシーンを表していたのだろうか、と思ったらもう一回見てみたくなった。
古い映像はそういう加工しているのかと思ったけど、公式ページみると本物の記録映像らしいね。

なかなか見応えあって古い名作映画見ているような感じでもあり、面白かった。

映画『博士と狂人』

2018年 監督:P・B・シェムラン
製作国:イギリス / アイルランド / フランス / アイスランド
at ギンレイホール




初版発行まで70年、世界最高峰と言われるオックスフォード英語大辞典(OED)の誕生秘話、を描いたベストセラーノンフィクションの映画化。
貧しい出自で学士号も持っていないが語学に堪能なマレー(メル・ギブソン)と、殺人犯で精神病棟に収容されているマイナー(ショーン・ペン)との交流、を軸にして被害者の妻イライザ・メレット(ナタリー・ドーマー)やその間に立つ看守のマンシー(エディ・マーサン)とか、マレーをよく思っていない偉い人たちとか、まあいろいろ絡んできて124分もあるしそこそこのボリューム。
でも飽きずに面白かった。

マレー役がメル・ギブソンってエンドロールでやっと気づいたわ。
原作の映画化に真っ先に名乗りを上げて自分で監督しようとしたくらいの熱量だったらしい。

イライザ役のナタリー・ドーマーがはじめはなんか若すぎないかと思ったが時折老けて見えるし年齢不詳だった。
1982年生まれか。

以下少しネタばれ


マイナーが狂ったきっかけみたいなものは結局なんだったんだろう。
狂ったといえば院長も有能そうに見えて途中から狂っているよね。

マレーもその能力的にだいぶ狂っていると言える。
けど、あまり能力的に活躍する部分も無いし、まともな人格すぎて平凡に見える。
もう少し破綻していればマイナーとの絆の深さにも説得力があるけど「事実に基づく」だからしょうがないのかな。
唯一異色な「学士号がない」という点は単に貧しかったからってだけでしょ。普通じゃん。

2021年2月13日土曜日

映画『パラサイト 半地下の家族』

2019年 監督:ポン・ジュノ
製作国:韓国
at ギンレイホール




半地下に住む貧しい家族。
父キム・ギテク(ソン・ガンホ)。無職。
母キム・チュンスク(チャン・ヘジン)。元ハンマー投げ選手。
長男キム・ギウ(チェ・ウシク)。兵役やらなんやらはさみつつ大学に落ち続ける浪人生。
長女キム・ギジョン(パク・ソダム)。いろんなスキルが高く美大希望だが予備校にも通えず。
家族全員で内職して小銭をかせぐ日々。
ある日ギウの友人がギウに家庭教師のアルバイトを紹介するところから事態が変化していく。

万引き家族みたいなのを想像していたけど全然違った。
コメディーサスペンス。

上流階級の家族と下層民。
下層民がいくら上流のふりをしても染み付いた下層の生活臭は消えない。
上流対下流が下流対下流になって最終的には上流対下流に落ち着いて下流は上流を目指すって話。
小綺麗な格好していた元家政婦が大雨の日にやってきたときのみすぼらしさよ。
下層民はどこまでいっても下層民だった。

長女役のパク・ソダムがThe韓国という顔立ちでなんかくせになる可愛さ。
あと社長夫人(チョ・ヨジョン)のぽんこつぶりが能天気で可愛らしいのだが、ふくらはぎが異様にたくましいから強そうだった。

映画『薬の神じゃない!』

2018年 監督:ウェン・ムーイエ
製作国:中国
at ギンレイホール




2014年に中国で実際に起きた事件がもとになっているそうだ。
かなり社会問題的側面が強い話なのに、一級のエンターテインメントになっていてすごく面白かった。
白血病患者のためとかじゃなくて金儲けのためというのが根底にあるから偽善くさくないところから始まる。
主人公とその仲間達が義賊みたいなヒーローに見えてかっこいい(演出もかっこいい)のだが、それだけじゃなくて、別れ葛藤後悔とそれぞれの背景での人間ドラマも充実していて面白い。
主人公の別人みたいな変化が見ごたえがある。

最初の方で義弟に殴りかかられそうになって窓際で体こわばらせてしゅんとしている表情がかわいい。

2021年1月30日土曜日

映画『mid90s ミッドナインティーズ』

2018年 監督:ジョナ・ヒル
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




90年代なかば。
ロザンゼルスに住む13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)は若い母(キャサリン・ウォーターストン)と兄イアン(ルーカス・ヘッジズ)の3人暮らし。
スティーヴィーはしょっちゅう兄から暴力を受けている。
っていうだけでも普通の家庭ではないけど、そんなのはまだましな普通の家庭っぽい。
スケートボードショップにたむろする不良達の自由さ強さに憧れを抱いたスティーヴィーは彼らに近づき、そしてスケートボードに熱中していく。

かなり面白かった。
ジョナ・ヒルの初監督作品で、ジョナ・ヒルの自伝的要素もあるらしい。

人種も貧富もてんでばらばらな不良達が面白い。
悩みあがき不安不満のはけ口を探している彼らの仲間意識は強い。
リーダー格のレイ(ナケル・スミス)がかっこいいのよ。
彼らは皆プロのスケートボーダーらしい。
主演のサニー・スリッチも。
サニー・スリッチ君の顔がくしゃってなる心からの笑顔はすごいよな。俳優として今後も活躍していきそう。
フォースグレード(ライダー・マクラフリン)が頭悪いキャラなのに動画編集能力が異様に高いってところに感動する。

両方のポケットからおもむろに飲み物を取り出すルーカス・ヘッジズの仕草がかっこいい。
ルーカス・ヘッジズは端役なのに存在感出てきたな。

映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

2019年 監督:オリヴィア・ワイルド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




生徒会長のモリー(ビーニー・フェルドスタイン)は高校生活を勉強に捧げてきて、イェール大学への入学を勝ち取る。
が、遊んでいるばかりでどちらかというと見下し気味だったクラスメイト達が皆名門大学に進学することが分かると途端に焦りだす。
勉強しかしてこなかった!!
まだ間に合う。クラスメイトが開催している卒業パーティに乗り込んで失った3年間を一気に取り戻そうぜ。
と、親友のエイミー(ケイトリン・デヴァー)を誘って呼ばれてもいない卒業パーティに行こうとするが場所がわからない。。。

冴えない子達がっていうこういう青春ものって時代とともによく作られて面白いんだけど、なんかな、おっさんになったためかテンション高すぎて疲れた。
面白くはあるけど、いまいち乗れないまま終わった感じ。

モリーがあんんまり魅力的じゃないんだよな。自分でも性格ブスと自称するくらいだし。
親友のエイミーが癒やし。
エイミーの両親がまたいい人達そうでかわいそう。あんなに準備しているのに。
いい人達といえば、カースト上位の人たちがなんかみんないいヤツなのね。
そりゃトイレで悪口くらいは言うけど悪質ないじめとかまでは絶対しない。
どちらかというとモリーが一番イヤなやつかもww
そんなモリーが今までちゃんと見てこなかった(見下していた?)クラスメイト達と向き合うようになって変わっていく成長譚とも言える。

いけてるグループに中華系の子がいて、こういうアジア系でもイケてるグループに入れるんだなぁと思った。
ニコ・ヒラガ。スケートボーダーとして活躍していて、父親が日本人らしい。
ライアン役のヴィクトリア・ルエスガもスケートボーダーらしいし、なに繋がりなんだろう。

あと、最初大学かと思ったくらい年齢層が高く見える。
ジャレッド(スカイラー・ギソンド)なんかアホな教師がいるなと思ったし。
スカイラー・ギソンドは1995年生まれか。
えっ、というか主演二人含めてみな20代半ばじゃん。。

ビーニー・フェルドスタインってなんか見たことあると思ったら『レディ・バード』でシアーシャ・ローナンの親友役やっていた子か。

2021年1月16日土曜日

映画『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』

2017年 監督:マウロ・リマ
製作国:ブラジル
at ギンレイホール




冒頭から初老の男のコンサートシーンで惹き込まれる。
が、もしかしてこれって紆余曲折を経て復活したクライマックスに相当するシーンをいきなり見せられてるんじゃないか。
と思ったが杞憂だった。
まさに不屈。
というか不運すぎないか。
自業自得な面も多少はあるけど。

「20世紀最も偉大なバッハの奏者」と言われたピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの実話をもとにした映画。
まだご健在。

カーネギーホールのデビューのときに役者が変わって一気に老けたのは面白かった。
20歳という設定だったらしい。

娼館に泊まり込むみたいなだいぶプライベートによったシーンとかっているの?と思ったけどジョアンを語る上ですごく重要な点だったwww

2021年1月2日土曜日

映画『ファヒム パリが見た奇跡』

2019年 監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
製作国:フランス
at ギンレイホール




ファヒム(アサド・アーメッド)は8歳で父とともにバングラディシュからフランスに亡命する。
父親が反体制運動をしていて、かつファヒムはチェスの大会で優勝するほどの有名人だったのでファヒムが誘拐されそうになったりして危険だったから。
フランスでは難民センターに身を寄せながら、チェスクラブにもなんとか入り込む。
クラブの先生シルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)はなかなか癖のある人。
あ、なんかあと1行書いたらもうほとんどストーリー全部になってしまう。。

移民問題とチェスの成り上がり譚をからめたエンターテイメント。
浮浪者みたいな生活になったりもするし全然チェスの勉強しているように見えないけど、それで優勝できちゃうなんてチェスって簡単だなと思ってしまった。
というか実話に基づくのか。
公式ページに乗っている実際のファヒム君が子役にすごい似ている。(逆か)
https://fahim-movie.com/about.php
テント村みたいなところでの生活は創作部分らしいので、実際はやっぱり毎日何時間もチェスの勉強していたんだろうな。

で、何が面白かというとチェスクラブの生徒たちの個性が面白すぎるのね。
最初ただの冴えない(というか嫌がらせでもしてきそうな)モブ達かと思ったら、めっちゃいい奴ら。
ひょろひょろで貧相な顔した少年、ふとっちょの少年、少しアジア系の少年、フクロウみたいな顔した少年、前髪切りすぎたぱっつんメガネ少女。
フクロウ少年の表情の豊かさが笑える。
そしてなによりメガネ少女が愛くるしすぎて泣きそうだ。
もうこの子が主役みたいなもんだよ。
女優名がわからないのだけど、数年後とんでもない美人女優として有名になっていそうだ。

映画『ハニーボーイ』

2019年 監督:アルマ・ハレル
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




人気俳優のオーティス(ルーカス・ヘッジズ)君はアルコール依存症。
飲みすぎて事故って更生施設に送られてPTSDかもしれないと言われる。
過去の思い出をノートに書けと言われて思い出すのは父との思い出。
父ジェームズ(シャイア・ラブーフ)は男手一つで息子のオーティス(ノア・ジュープ)君を育てている、のではなくて実際はオーティス君に養われている。
オーティス君は人気子役でジェームズはマネージャーっぽいことを一応はしているけど。
アルコール依存症ですぐキレてどうしようもない親父だけどオーティス君はそれでも父親を愛している。
オーティス君とジェームズの葛藤がメインのドラマ。

脚本がシャイア・ラブーフで、シャイア・ラブーフの自伝的なお話らしい。
面白くはあったけど、なんだろう、会話劇が難しすぎないか。
観ているこっちが1分後には会話の内容忘れているくらいだから、本人もそんなに覚えてはいないはずで、当時の断片的な印象や感情から創作しているのだろうが、12歳の子供との会話にしてはやっぱり難しすぎるよな。

さておき、ピエロって人間が生み出したキャラクターの最高傑作だよなぁ。
滑稽優しさ哀愁恐怖のすべてが詰まっている。
ジェームズのピエロ姿にはちょっと感動した。