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2011年1月13日木曜日

映画『サイコ』

1960年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


サイコ (1960) ― コレクターズ・エディション [DVD]

クレジットタイトルかっこいいな。
音楽といい、スタイリッシュさといい、ばらばらに切り刻まれているような不穏さといい。
ソウル・バス。ソウル市内バスの事ではない。タイトルデザイン:ソウル・バスとなっている。
この人はグラフィックデザイナーで、映画のタイトルデザインの第一人者として活躍し、映画に詳しい人なら当然知っている名前、っぽいな。
映画にタイトルデザインなんて分野があることすら知らなかったが、あの衝撃的にかっこいい『めまい』のタイトルデザインもソウル・バスだ。

『サイコ』は有名なシャワーシーンは部分的に見たことあるけど、全体的にどういう話かはそういえば知らない。
クレジットタイトル後のかったるい恋人同士の逢引きシーンやらマリオン(ジャネット・リー)がしでかす事件など、あのシャワーシーンに繋がる要素が全く無いから戸惑う。
まあそれはいいとして、この映画、そこらのホラー映画より恐ろしい。
巧みな演出で途切れることない通奏低音のように流れる緊迫感や不穏な空気が、ゆるやかにまたは突如に波打つから。
シャワーシーンもそうだし、人のよさそうな青年ノーマン(アンソニー・パーキンス)が母親の話で怒りを込めて身を乗り出す変化も怖い。
見るな!気付くな!で連続する緊迫感。

見る、こっそり見る、見られる、見ていないのに見た気になる、等々の印象的な視線の錯綜と、振り返る、舞い戻る等の180度の回転運動の組み合わせが怖さや面白さのポイントかな。
マリオンだけで見ても、デスクに腰掛けた成金男に間近で凝視され、早退して家にいるはずなのに路上で勤め先の社長に振り返り見られ、明らかに挙動不審に警官を見つめ、警官のくせに無表情で怪しい男のサングラスごしの視線は執拗なまでにマリオンを追いかけ、モーテルでは覗き穴からノーマンに見られ、惨殺な場面を一切見ていないのに恐怖とともに見た気になり、水を螺旋状に飲み込む排水溝の黒い穴は機能を停止して何も見ることができなくなった楕円の片目へと変換される。
180度の回転運動も様々な形で現れるのだが、その多くは死と連動している。
殺される奴は皆どこかに戻ろうとしていたし、階段を上るアーボガストは不安定で滑らかな飛躍をするカメラにより階段を下りるときが死の道行きとなり、簡単に予測は付くがそれでも恐ろしい回転して現れる母親の真実、殺人犯の回転するように切り替わる心の一方は死だし。

女優達の演技が少し微妙な気もし、ちょっと話しただけで全て分ったようなしたり顔で喋る男には何なんだよお前と突っ込みつつも、面白かった。

2006年1月28日土曜日

映画『間諜最後の日』

1936年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


間諜最後の日

第一次世界大戦中、敵国のスパイを探し出すためにスイスに派遣された3人の諜報部員。
作家でもあるアシェンデン(ジョン・ギールグッド)。
その助手として、将軍というあだ名の男(ピーター・ローレ)。
アシェンデンの妻という役で派遣されたエルサ(マデリーン・キャロル)。の3人。
エルサとアシェンデンは初めて会ったときからお互い一目ぼれといった雰囲気になるが、エルサにちょっかいを出すマーヴィン(ロバート・ヤング)という若い男も出てくる。
エルサはアシェンデンが好きといいながらマーヴィンに対してもまんざらでもない様子。
おっさんぽくて華のないジョン・ギールグッドより若いロバート・ヤングの方がいいだろう。
特に見せ場もなさそうなエルサとおっさんアシェンデンの主役二人だが、アシェンデンが死ぬことでマーヴィンとエルサの若い二人に主役が移行するのかと思いきやアシェンデンは死なない。
スリルと冒険を求めて諜報部員を志願したという頭の悪そうなエルサは諜報部員の仕事の残酷さを目の当たりにして落ち込むだけという頭の悪い女のままだった。
三十九夜にも出ていたエルサ役のマデリーン・キャロルの美しさにも惹かれるがそれよりも一番印象に残るのは女ったらしでコメディチックな役柄の将軍を演じた脇役のピーター・ローレなのね。
パーマをかけてメキシコ人を演じたとのことだが、この背の低くてピアスしたピーター・ローレがいい味を出す。
寂しげな表情なんか女性だったらきゅーんとしちゃいそうな。

殺人のスリルの見せ方や、同時にからめる諜報部員という冷酷な仕事に対する疑問の見せ方等上手いのだけど、やりきれなさの翌日には幸せの絶頂にいるという気持ちの切り替えはちょっぱやだな。
中盤と最後の後味は悪いがどう展開するのかというスリルに溢れて面白い。
なにしろ登場人物の皆が何か裏がありそうだし。
結構冷酷な将軍が辞職しようとするアシェンデンを殺すのではないかとかエルサが実は頭悪いふりしているだけなのではとか。

2005年10月11日火曜日

映画『サボタージュ』

1936年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


サボタージュ

小気味の良いサスペンスと勝手に思って見始めたのだが悲劇色が強い。

何者かによって行われた発電所での破壊工作により突如停電になる夜のロンドン。
家の明かりや街灯だけでなく車のライトまで律儀に消灯。
停電で上映不可になった映画館では金返せのシュプレヒコール。
映画館の受付で対応するは小柄で可愛い女性(シルヴィア・シドニー)。
映画館の隣の八百屋で働くテッド(ジョン・ローダー)は小柄な女性に好意を持っている様子。
しかし小柄女性は映画館支配人バーロック(オスカー・ホモルカ)の妻。
人妻じゃあテッドもおいそれと手出しできないわな。
夫人も夫のバーロックを心から信頼しているし。
しかし停電事件の犯人はバーロック。
そんで八百屋のテッドは実はバーロックを探るために潜入捜査を実行中の刑事。

冒頭は何やら破壊工作のサスペンスと男女のロマンスで楽しそうな展開を期待するが・・・
驚くほどの緊張感を見せてくれるシーンなど面白いのだがちょっと後味はすっきりしない展開。

2005年7月18日月曜日

映画『逃走迷路』

1942年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


逃走迷路 (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】

あの自由の女神でのシーンが有名な一作。
無実の罪を着せられた主人公が警察の手をかいくぐりながら真犯人を探して途中美人令嬢と出会って主人公の逃走に巻き込まれた美人は男を凶悪犯だと信じながらも次第に男の人柄と無実を知っていき気付いたらラブラブになってついでに真犯人も捕まえてハッピーエンドというヒッチコックの十八番ストーリー。

ラブロマンスが結構いける。
パーティ会場で敵の本拠地でもある屋敷の中、袋の鼠状態で他の客にまぎれて主演二人がダンスをするシーン、逃げ出す方法を考えなきゃいけないのに二人はキスするんですね。
そんな状況じゃないのに。
ラストにロバート・カミングスを救い上げようと手を差し伸べるプリシラ・レインの表情もいいし。プリシラ・レイン泣いてるし。
ってなんか別にラブロマンスに力が入っている作品では決してないんだろうけど。
ヒッチコックの映画は全体的に妙にエロティックで。

主人公の親友が炎に飲まれるシーンが凄い。
圧倒的火力に圧されて消火器を持った人型が後方へと無情にこてっと倒れた瞬間あっという間に炎が鬼のような表情で猛り狂って全てを包み込んでいってしまう。
炎に包まれる人間を変に合成などせずに人形(たぶん)を使っているのが良くて、自由に動けない人形ができる数少ない動きである「倒れる」という単純な行為が、見事なまでに炎の脅威と逃げるそぶりを見せる間もなく消火活動をする体制のまま倒れて消えてしまうあっという間の出来事という悲しさを感じさせてくれる。

そしてラスト。
音楽が一切無いので息を詰めて見てしまう。
自由の女神の親指と人差し指の間にぶら下がってしまった犯人を助けるべく躊躇無く犯人のところまで降りていった主人公を見て初めてこの主人公がかっこよく見える。
俺だったら見殺しにする。怖いもん。あんな高いところ。

2005年3月15日火曜日

映画『三十九夜』

1935年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


三十九夜

カナダからロンドンにやってきたハネー(ロバート・ドーナット)が一人の女性と関わったことで国防の危機を救うべく動き出す。
首謀者についてのわずかな情報しかない上に殺人犯として警察にまで追われるから難航を極めるのだけど、そこはまあ上手いこと(二転三転しながらも)面白く展開していく。

人物にしろ小道具にしろ全てが何気なく後に繋がっていく。
ハネーを殺人犯として追っていた警察までもが思いがけず役に立ったり。
当然ロマンスもあり。
かなり面白い。

ハネーが逃げ込んだ農家の夫婦が使用する寝室が窓を中心に全体的に変に歪んでいて、その空間は農家の夫の心の歪みの空間になっている。
(妻はまっすぐだから妻の視点からだと窓は正常な形の窓になる)
妻がハネーと浮気をするんじゃないかと勘繰る夫は寝室からこっそり抜け出す妻を寝たふりしてやり過ごす。
妻から見えない位置で目をぎょろっとさせて妻の行動を伺う夫の視線が歪みとして部屋全体を覆い尽くしているのね。
人物の視線をこんな方法で表すって何気なくやっているけど凄いよな。

2005年2月27日日曜日

映画『バルカン超特急』

1938年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


バルカン超特急 (トールケース)

一人の老女が走る列車から忽然と姿を消した。
老女と知り合いになった若く美しく美脚のアイリス(マーガレット・ロックウッド)は消えた老女を探し始める。
しかし聞く人聞く人皆口をそろえてそんな女性はいなかったと言う。

サスペンスアクションロマンスコメディー。娯楽要素が全て詰まった傑作。
ちゃんと列車が走っているかのように車内にさりげなく影を過ぎらせているんだけど、ちゃんと窓の位置まで考慮されているのね。

2004年6月6日日曜日

映画『ハリーの災難』

1955年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


ハリーの災難

決して殺人が日常的に起こっているとは思えない田舎の村で殺人事件発生。
大事件だ。森の中で男の死体が仰向けに横たわっている。
なのになんでしょう、死体や犯人と思われる人物を前にしての村人達のこのほのぼの感は。
死体であるハリーは登場した時から死体で、つまり最初っから少しも動いているところが映されなかった人物のため、人間じゃなくただの人形みたいに思えてくる。
でもやっぱり人形なんかじゃなくれっきとした人間の死体のわけです。ほのぼのっつったって適当にはやり過ごせない訳です。
死体をほったらかしたり埋めたり掘り返したり埋めたり掘り返したりほったらかしたり・・・ってやっぱ適当か。
しかし一つの死体をめぐって四人の村人がそれぞれの思いで苦悩するわけです。自分が殺したんじゃないかとか本当は私が殺したのにとか夫が殺されてしまったとか・・・いや、苦悩なんかほとんどしないか。
まあ、コメディーありスリルあり希望あり温もりあり、でかなり面白い。

紅葉につつまれた森があまりに美しい。もちろんシャーリー・マクレーンも。

2004年2月17日火曜日

映画『めまい』

1958年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


めまい (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】

映画って始まるとまず役者名やらプロデューサー、監督名などが出るじゃん。
黒い画面に白い文字で表れたり、導入シーンと共に文字が出たり。
タイトルクレジットって言うのかな。
『鮫肌男と桃尻女』のタイトルクレジットは最初っからぐいぐいいかしてたし、『秋日和』はちょっとした工夫でオーソドックスなくせに素晴らしいタイトルクレジットだったし、『燃えつきた納屋』は凍えそうなどきどきするタイトルクレジットだったし・・・
だけど、この『めまい』のタイトルクレジットときたらもう群を抜いて素晴らしすぎる。
むなしくなるからどんなタイトルクレジットか書かないけれど、タイトルクレジットから震えた映画なんて鈴木清順の『殺しの烙印』以来だと思う。

高所恐怖症の男スコティ(ジェームズ・スチュワート)が主人公。
ヒロインにキム・ノヴァクとバーバラ・ベル・ゲデス。

ヒッチコックは観客の感情を動かすのが上手い。
ヒッチコックの映画を見ていて沸き起こる感情は、楽しい、とか悲しい、と簡単に説明できそうでいて、とてもじゃないがこの感情を説明なんかできないと思いたくなる。
この映画には様々な感情が渦を巻いている。(くるくるカールしている)
様々と言っても主に感じる感情は"やるせなさ"。
怒りを伴ったやるせなさだったり、幸せになりたいのにその幸せには危険が伴ってしまうというやるせなさ、あと一歩を上手く踏み出せないやるせなさ、等々。
物語が展開するにつれやるせなさのニュアンスが微妙に、時に大胆に変化し、各登場人物の感情が複雑に絡み合いながら渦を巻く。
そしてヒッチコックの魔法で登場人物の感情が自分に乗り移る。
映画を見ている自分の中の感情が映画の中のぐるぐる回る渦に襲われる。
この時の感覚は不思議としか言いようがなく、映画でしか体験し得ない感動だと思う。

面白いのはラストで、映画の中のやるせない渦に唐突にストンと大きな石を落としている。
最後に一発観客と登場人物に対してのやるせなさのプレゼントで終わる、ということ。
少し呆けるが、ラストの余韻に浸るというより探り出せない意識の深部に渦が落ちた感じ。

この映画、結構ラストがどこか分からない。
あれ?終わり?と思うとまだ続きがあって…という連続で、つまりラストかな?と思った時点で自分の中で疑問と余韻に浸るモードに入りかけたところで、まだあんのかい!という具合にかき回される。

まあ、一言で言えばこの映画、面白い。

2004年2月3日火曜日

映画『泥棒成金』

1954年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


泥棒成金 スペシャル・コレクターズ・エディション

うん、ふつーに面白かった。

一番面白かったのはケイリー・グラントがバスに乗っているシーン。
後部座席に座ったケイリー・グラントが右に座るおばちゃんとの間に置かれた鳥かごに視線を落とし、次に正面を向いてじっとカメラ目線。そして左を向くとそこには仏頂面したヒッチコックが座っている。
この時のね、ケイリー・グラントの首の、不自然なロボットの様な動きと無表情さがサンダーバードの人形みたいで凄い・・・&笑える。

あとグレイス・ケリーの気品に目が犯されたら、社会復帰できなくなるかのーせーあり。
車上でのケイリー・グラントとのキスシーンは、でこの生え際まで美しい。

2004年1月20日火曜日

映画『疑惑の影』

1942年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2


疑惑の影

BS2で予告を見て面白そうだと思った『疑惑の影』。
アメリカの極一般的な家庭。そこで育った少女チャーリーは長年会わなかった若い叔父が家にやってきたことに歓喜する。
しかし、次第にニュースでやっている寡婦殺しの犯人がこの叔父ではないかという疑念にとらわれ始める。
果たして叔父は本当に殺人犯なのか?
っていうような紹介と、いくつか興味を引くシーンとで構成された予告編。

叔父は本当に犯人なのかなぁってわくわくするが、予告編で物語の2/3を見てしまったのではないかとも思って不安になりながら見始める。
いやぁ、取り越し苦労。抜群に面白い。
このしっかり踏みつけて進むテンポ、飽きない安定感、緊張感。
そしてなんともやるせない不思議な感情を呼び起こす。親の、姉妹の、親族の、人間の愛の映画。