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2020年12月19日土曜日

映画『その手に触れるまで』

2019年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー / フランス
at ギンレイホール




この予告編、もう絶対面白い映画でしょって期待が高まる。
で、本編は期待通り面白かったのだが、なんというか潔すぎないか。
短いと思ったら84分しかなかったのか。
もっと見ていたかった。

というかこれ監督ダルデンヌ兄弟だった。
確かに。音楽もなく予定調和な盛り上げかたも一切ないのだが、淡々とした中に現れるドラマ性が秀逸だった。

ベルギーに暮らす13歳のアメッド(イディル・ベン・アディ)は最近までゲーム好きの少年だったらしいが、イスラム教の導師に感化されて過激よりのイスラム教にはまっていた。
公式ページによるとベルギーのブリュッセル西部のモレンベークは10万弱の人口の半分(地域によっては8割)がイスラム教徒らしい。
そして一部の過激派はパリ同時多発テロ等にも関与していて「ブリュッセルはヨーロッパにおけるテロリズムの交差点と化している」らしい。
善悪、敵味方、純潔不純。単純明快な二分は思春期に抱える漠然とした不安にがっちりはまったのだろうか。
少年の偏執的なまでの執念がすごい。

農場の女の子ルイーズ(ヴィクトリア・ブルック)がかわいい。
少しませた感じのたくましさがアメッドに与えた影響は大きかっただろうか。


以下ネタバレ
ラストは肩透かしっぽい感じで、まさかっと思ったらエンドロールに入る。
つまりどういうことだろう。
命の危機に際しては過激な思想もころっと覆る程度のことに過ぎなかったってこと?

2017年10月9日月曜日

映画『午後8時の訪問者』

2016年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー/フランス
at ギンレイホール




小さな診療所に勤める有能な若き女医ジェニー(アデル・エネル)。
ある日患者に入れ込みすぎるなと研修医にアドバイスしている最中に診療所の呼び鈴が鳴ったが、診療時間はとうに過ぎていたため出ようとした研修医を制する。
しかし後日その時呼び鈴を押した少女が殺害されたことを知る。
殺害された身元不明の少女は無縁墓地に埋葬されようとしている。
もしあの時出ていれば。
ジェニーは後悔し、贖罪のためにも殺害された少女の身元を調べ始める。

冒頭はまた手持ちカメラ系かと思って少しうんざりしたけど、これものすごく面白かった。
監督はダルデンヌ兄弟だったんだね。
エンドロールでようやく気づいたけど、音楽が一切なく、そのせいか程よい緊張感が継続してなかなか濃密な時間だった。
サスペンスというか、ジェニーの医師としての自覚の成長やフランスの移民社会の実情を浮き上がらせる社会派人間ドキュメンタリという感じ。
謎の解明はあまりに偶然が重なりすぎているからね(真相は意外ではあるけど)。
主演のアデル・エネルが好演していて引き込まれる。しかも美人。

待合室から診察室に行くまでのあの階段って邪魔じゃねと思ったけど、ラスト見るとああ、映画としては必要だったんだなと思う。

2015年11月29日日曜日

映画『サンドラの週末』

2014年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
at ギンレイホール




工場労働者のサンドラ(マリオン・コティヤール)は夫と共働きで二人の子供を育てている。
サンドラはうつ病で休職中だったが、完治したので復帰しようとした矢先、会社から解雇されてしまう。
サンドラを解雇しないと社員にボーナスが支給できないという。
解雇を撤回するには次の月曜の社員による投票で同僚16人のうち過半数がボーナスをあきらめサンドラの復職に投票する必要がある。
今解雇されてしまうと生活が成り立たなくなってしまうサンドラは週末に同僚一人一人を訪ねて説得を試みる。

いきなり解雇通知するのもひどいが、解雇かボーナスを諦めるか社員に選ばせるのもひどい。
解雇されたくないからボーナスを諦めてくれ、って同僚とどこまで親密なのか知らないが、親密の度合いに関係なくきつい説得だよね。
ましてやうつ病の病み上がりの人にやらせることじゃない。
実際サンドラは何度も心が折れかけている。
それでも夫の支えや、中にはうれしいことを言ってくれる同僚もいたりして、なんとか進んでいく。
何度も足を滑らせながら渡っていく危うい綱渡りを見ているようだ。

一人一人の説得がそれぞれワンカットになっているみたいで、かつドキュメンタリー風の映像が生々しい緊張感を湛えている。
結構好きだと思ったらこの監督さん『息子のまなざし』とか『少年と自転車』の人だな。覚えておこう。

2012年11月18日日曜日

映画『少年と自転車』

2011年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
at ギンレイホール




もうすぐ12歳になる少年シリル(トマス・ドレ)は、唯一の肉親である父親(ジェレミー・レニエ)により施設に預けられる。
シリルはいつか父親が迎えに来るはずだと信じているが、父親はもうシリルを捨てた気でいて、行方不明になる。
施設を抜け出し父親を探す途中でつながりのできた女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)に週末だけの里親を頼むことで、施設を抜け出さなくても父親探しをできるようになったシリルだが、見つけた父親は。。

愛情と居場所を求めてせわしなく自転車を漕ぐシリルと、いつのまにかこんな大きな少年に母性を発揮して恋人より大事になってしまうサマンサの姿が淡々と描かれる。
監督は『息子のまなざし』を撮ったダルデンヌ兄弟か。
確かにラストの方、ああ、この展開はやばい、と信じ込ませておいて、しれっとすかしていくやり方はこの兄弟っぽい。

話の題材はよくある話だけど、お互い切れやすい糸での繋がりを頼りに綱の上を歩いているような危うい関係性の緊張感がなかなか面白かった。

2004年6月26日土曜日

映画『息子のまなざし』

2002年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ
at ギンレイホール




職業訓練校で木工クラスを担当するオリヴィエ。生徒は四人(だったかな?)。
アットホーム、というわけではない。オリヴィエは生徒に怒鳴りつけるか命令するかってだけ。
生徒の方は無口で厳しい先生であるオリヴィエを嫌っているかといえば別に嫌いでも好きでもない模様。というか生徒達ってなんもセリフがなかった気がする。
くら~めの雰囲気。オリヴィエもなんか変質的で怪しい感じ。

この訓練所に新たに生徒が一人やってくる。彼は木工クラスを希望するがオリヴィエはもう生徒の数が多いからうちでは取れないと断る。
でもその後のオリヴィエの行動が怪しい。窓から覗き見したり、いつもは行かないところで昼飯を取ろうとしたり。
やっぱり変質者?
オリヴィエはなぜか一度断ったこの新入生を木工クラスに受けいれる事にする。
もしや少年愛か。
いやいや、ストーリーが進むにつれ、オリヴィエがなぜこの少年に興味を持つのかという理由が明らかにされる。次第にというか唐突に明らかにされる。
この映画はなんでも重要なことは唐突なのである。

セリフが異様に少ない。そして音楽が一切ない。カメラは全て手持ちカメラで、登場人物の動きを偏執的に追い続けていく。
後半、オリヴィエがいつ少年に事実を告白するかと期待しながら座席の充実野菜に手をのばした一瞬でさらっと告白してしまったオリヴィエを見て、唐突な緊張と供に手に持った充実野菜もそのままに画面に食い入るのであった。
結構じんわりする映画で面白い。僕はうるさいのが嫌いだから下手に音楽があるより全くないほうが素晴らしく清々する。