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2020年7月18日土曜日

映画『家族を想うとき』

2019年 監督:ケン・ローチ
製作国:イギリス / フランス / ベルギー
at ギンレイホール




この予告編でもう名作だよね。
初めて予告編見たとき、なにやら家族が崩壊寸前な雰囲気の中「私の家族をナメないで」というセリフに泣きそうになる。
予告編はいつもメガネ外してみているから娘が言っていると勘違いしていたけど。娘はまだ小学生くらいで幼いのでそんなセリフ言わない(言う機会がない)。

予告編が素晴らしいと本編はつまらないときが多けど、これは本編ももっとよかった。
原題は『SORRY WE MISSED YOU』なのね。
宅配の不在票の常套句だけど、冒頭のタイトルバックでみたこのタイトルが登場人物一人一人にことあるごとに蘇ってきては泣けてくる。
絶対原題のほうがいいよ。

イギリスニューカッスル。
職を転々としたあと個人事業主のような自らの裁量と頑張りで売上を伸ばせるという宅配ドライバーの仕事につくリッキー(クリス・ヒッチェン)。
妻アビー(デビー・ハニーウッド)と共働きで、アビーは介護士をしている。
高校生の息子セブ(リス・ストーン)は少しグレがち。
娘のライザ(ケイティ・プロクター)は癒やし。
念願のマイホームを手に入れるべく、必死に配達を続けるリッキーだが、朝から夜中まで労働時間(14時間)があまりに過酷。
妻は妻でお客からの信頼も厚い優秀な介護士だが、ただでさえ過酷な労働時間なのにその優しさから休憩時間やプライベートまで削ったりする。
両親ともに過酷な長時間労働に出ていて、いい年した息子がグレるのもなんとなくわかる。
個人事業主みたいなもんのはずだったのに、そこに自由は無く一日でも仕事に穴を開けると多額のペナルティが取られる。
個人事業主なんて名ばかりで結局会社が負う責任を労働者に押し付けただけの低コスト搾取システムだった。
家族のためのマイホームに向けて頑張っていたはずなのに、家族はどんどん崩れていく。

介護士やっている妻アビーが本当天使かと思う。
おばちゃん顔なのに、あのふんわりした声やら優しい微笑みで最高の天使になる。
だから「私の家族をナメないで」とブチ切れるところとその直後のシーンは泣ける。
介護士が過酷な上薄給というのはどこの国も同じなのかな。

そして娘もまた天使なのね。
「ケンカしないで」って叫ぶ純粋な悲しみに泣ける。(泣いてばっかりだ)

セブ君はぶんなぐってやりたい時も何度もあるけど、家族に対する愛情はしっかり持っていたりする。
鍵が盗まれた展開は秀逸で、誰もが勘違いしたあとで真相がわかると感情が複雑にがらっと転換する。

セリフ忘れたけどこんな感じのやりとりもよかったな。
アビー「お母さんと目も合わせてくれないの?」
セブ「顔を向けられない」

2017年7月17日月曜日

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』

2016年 監督:ケン・ローチ
製作国:イギリス/フランス/ベルギー
at ギンレイホール




59歳の大工ダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は、心臓病を患い、医者から仕事を止められてしまう。
収入を得る術がなくなってしまったので、国から援助を受けようと手続きを開始するのだが、役人の型にはまった対応に次々に阻まれてなかなか申請が下りない。
そんなとき役場で出会ったのが二人の息子を育てるシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)。
彼女もまた国の支援を求めていたが、役人のすげない対応で追い返されていた。
ダニエルはケイティを放っておけずに手を差し伸べるが、ダニエル自身も救いが必要な人。
そんな二人は現実にどんどん追い詰められていく。

一度宣言した引退を撤回してまでケン・ローチが撮りたかったもの。
確かにこんな現実に接したら怒りも湧くよな。
かつてのゆりかごから墓場までの国が。

マウスのシーンは予告編じゃなくて本編で最初に見たかったな。
怒りの中にも優しさとユーモアを散りばめ、円熟したケン・ローチの手腕が堪能できる。
面白かったけど、パルム・ドール取るほどかなという気はした。

2013年9月25日水曜日

映画『天使の分け前』

2010年 監督:ケン・ローチ
製作国:イギリス/フランス/ベルギー/イタリア
at ギンレイホール




子供の頃から凶暴な性格のロビー(ポール・ブラニガン)は暴力事件により裁判所から300時間の社会奉仕活動を命じられる。
その社会奉仕活動の指導者であるハリー(ジョン・ヘンショウ)はスコッチ・ウイスキーの愛好家で、ロビーの息子誕生のお祝いに年代物のウィスキーを振舞ったことをきっかけにロビーの才能が目覚めていく。

予告編の紹介で『フル・モンティ』が引き合いに出されていたりするから、すかっとする成功譚なのかなと思ったら微妙に違う。
いや、すかっとする成功譚には違いはないけど、目覚めた才能はそんなに関係ないから。
クライムロードコンゲームムービーみたいな感じ。
はらはらどきどきほろっとしてかなり面白かった。

監督はケン・ローチ。
この人の何気ない日常に潜む温かいユーモアを捉える才能って凄いよな。
※僕が今まで映画見て一番爆笑して記憶に残っているのはケン・ローチの『ケス』のサッカーシーン

主役ロビー役のポール・ブラニガンは背も小さいし美男子でもないけど、演技が自然でひきつけられる。
これまで演技経験0だったのに主役に抜擢されたらしい。

2011年4月10日日曜日

映画『エリックを探して』

2009年 監督:ケン・ローチ
at ギンレイホール


エリックを探して [DVD]

エリック・ビショップ(スティーヴ・エヴェッツ)はバツ2で二番目の妻の連れ子二人と一緒に暮らしている。
この義理の息子二人には舐められっぱなしのつまりは冴えないオヤジだ。
一番目の妻との間にも娘が一人いて、大学生らしき娘には赤ん坊がいる。
この赤ん坊の子守の都合で一番目の妻と数十年ぶりに会うことになるのだが、彼は未だに一番目の妻に想いを寄せており、数十年たっても変わらぬ素敵な元妻を遠くから認めたエリックはそのまま会わずに逃げ出し、パニック状態のまま交通事故に合う。
たいした怪我でもなかったが、精神的な落ち込みようが半端じゃなかった。
そんな時彼が最も尊敬するサッカーのスーパースター、エリック・カントナが突如現れる。
「すべては美しいパスから始まる」
カントナが、そしてエリック・ビショップの多くの仲間達が、さりげなく彼の人生を後押ししていく。

ケン・ローチって今まで二本(『ケス』『麦の穂をゆらす風』)しか見ていないのでよく知らないのだけど、『ケス』のサッカーシーンで大爆笑したのを鮮明に覚えている。
日常の風景の中に潜むユーモアが時折破壊的に面白い。
そしてそういった日常に突如割り込んでくる異物、例えば紛争とかエリック・カントナとか。
異物が日常を侵食してきても、遠い世界の話でなくそれが日常のようにリアルな体験として感じられるのは描き方が上手いのだろう。
『エリックを探して』はほのぼのとしたコメディで、深刻な題材の多いケン・ローチには珍しい作品らしい。
じゃあ重い話が無い分、日常のユーモアが終始爆発して腹がよじれちゃうんじゃね?と思いきや、爆笑できるシーンもない上、その質感のある日常の風景がたまに長ったらしく感じてしまった。
でも、まあ爆笑はしなくても全体的に楽しくて面白かった。

2007年3月24日土曜日

映画『麦の穂をゆらす風』

2006年 監督:ケン・ローチ
at ギンレイホール


麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション

中学の頃地理の先生がイギリスの正式名称知ってるか?と言って
「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」だと教えてくれた。(現在ではグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国と言うらしい)
へぇーと思って覚えたもんだけど、「北部アイルランド」っていうなぜに北部だけ?というところは全く気にもせず。

ケン・ローチの作品。
1920年のアイルランド、医師になろうとしているデミアン(キリアン・マーフィ)はロンドンに旅立とうとしている。
別れのためにペギー一家を訪れた時、突如銃を持ったブラック・アンド・タンズ(イギリス人の武装警察隊)が現れる。
壁に並ばせ一人一人名を名乗らせる。
ここで17歳のミホール君が英語名じゃなくアイルランド名をかたくなに名乗った上に殴られると殴り返したりしてタンズの怒りを買い、そのまま殺されてしまう。
武器を取ってイギリスと戦う決意を仲間達がする中、イギリス軍の強大さにかなうわけないとデミアンは旅立とうとする。
しかし駅で出くわした光景を見てロンドン行きをやめ、デミアンも戦うことを決意した。
若者達のリーダーで兄のテディ(ポードリック・ディレーニー)を中心にゲリラ活動を続けていくのだが、戦いは常に運命の悲劇を伴い。
不条理で強大な弾圧に対して戦っても戦わなくても悲劇が待っているという絶望が若者達の等身大の姿で描かれていく。
一つの選択、一つの行動、一つのすれ違い、なんでもないような些細な事のようでいながら、一つ一つが大きなうねりとなって襲ってくる。簡単に飲み込まれていくこのあまりに無力な人の想いを一体いくつ積み重ねれば悲劇がやむのか、アイルランドの湿った空気が幻想的に重く立ち込める。

主演が『プルートで朝食を』で女装していたキリアン・マーフィ。
なんだけど、実は顔が最後までよく覚えられずにところどころ誰が誰だかさっぱり分からず。もみあげの剃り残しを判別材料にしたのが悪かったのか。

2004年9月15日水曜日

映画『ケス』

1969年 監督:ケン・ローチ
BS2 録画


ラストに起こった悲劇には大きな悲しみと怒りが湧いたのだけど、母親の「たかが鳥でしょ!」という言葉によって完全に孤独になった少年の現在と未来を思い、先ほどまで溢れていた感情はそのまま生を見つめる冷徹な視線に変容する。
これが"リアル"ってものなんだな。

60年代後半のヨークシャー地方の炭坑町が舞台で、そこに住む少年ビリーが主人公。
乱暴な兄とほとんど家にいない母親、学校には聖職者気取りの横柄な教師達。
悲惨さをドラマチックなストーリーで大仰に表現しているわけでもなく、芸術家気取りで淡々と日常を描いているわけでもなく、ただ、そこに生きている人々の"人間らしさ"が少ない表現ながら確実にリアルに描かれる。
これは本当凄い。かつ最高に面白い。
校長に伝言を伝えに行っただけの小さな少年が他の悪童(?)達と一緒になぜか理不尽にも体罰を受けてしまう。小さな少年の潤んだ目が痛い。この理不尽さに遭った少年の感情は後にビリーの口から「あの子落ち込んでいたよ」と語られる事で見事に補足される。
物語の展開の仕方、そしてちょっとしたシーンやセリフにさりげなく織り交ぜられたものが、作中人物の人間味や感情を巧みにつないで見せる。
余分を削ぎ語り過ぎないのだが、常に劇的という不思議な作品。

上手くもないのに大のサッカーファンである体育教師は面白かったな。残酷で横柄な奴なんだけど。
サッカーの授業中に見せた横柄さは本当笑える。ドリブル中に前のめりにずっこけた後、それを生徒のせいにしてPKにしてしまったり、PKで失敗したらお前動いたからもう一度だといって再びPKやったり。
こけた所が一番爆笑した。