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2007年5月13日日曜日

映画『プレイタイム』

1967年 監督:ジャック・タチ
BS2 録画


プレイタイム ( 新世紀修復版 )

これは眼鏡かけないと駄目だ。
基本的に全てロングショットのため、細部が見えないとギャグがわからず何が起こっているのかさっぱりわからなかったりする。
椅子の背もたれが手の形だなんて見えなかったから、なんで客の背中に手形が付いてるのか分からなかった。等など。
この映画はとにかく細部にわたり面白いものが詰まりに詰まったおもちゃ箱のような映画なのでピンボケの視点で見るなんて論外。
また、一回見ただけじゃ全て楽しみきれない。
フレームのいたるところで様々なものが動く。様々な人物が交錯してそして様々なものが映りこむ。
全てがさりげない。
眼鏡をかけなくては。だけど眼鏡がない・・・

ユロ氏のシリーズなんだけど、ユロは半分くらいしか出演しない。
しかもよりいっそうストーリーが無くなっている。
出演者の数は膨大なんだけど特に主役らしい人物がいないのね。
あまりに個性的なキャラクタというか、もう個人ではない記号が並列にごった返す。
ユロ氏に似た偽者が何人も闊歩するし。

舞台を大きく分けると前半は近代的オフィスビルで、後半は高級レストランとなる。
ユロはパリの大会社になんの用があるのか知らないがやってくる。(一応就職の面接らしい)
やってきたはいいが当の相手とすれ違ってばかりで一向に話が進まない。
そうこうしているうちに何もしないままオフィスビルから立ち去っているのであった。
冒頭の空港のシーンからそうだけど、ユロは会うべき人、会うべき瞬間に徹底して会えない。
そのくせ会わなくてもいいような奴には徹底的に会う。
だから本人の意図する道には全く進めないのに、意図しない寄り道だけは天才的に膨大な時間を費やす。
寄り道で全てが成り立つのだからストーリーもくそもない。
一行で言えば
ギャグにつつまれたモダンでハイセンスな盤上で進みも下がりもせずに永遠とも思えるほど自由に動き回る個性的な記号の群集がロングショットで滑稽にシュールにスケッチされていく。
といった感じか。

あの近代的なパリの街並みは巨大なセットらしい。そこまでやるか。
当時仏映画史上最大の制作費が投じられた70ミリの超大作だけど興行的には大失敗。
タチは多額の借金を負う。

2007年4月28日土曜日

映画『ぼくの伯父さん』

1958年 監督:ジャック・タチ
BS2 録画


ぼくの伯父さん

超モダンな家からでっぷり肥えた小おやじが出てくる。
その佇まいや動きが外国の漫画のキャラクタとしてそのまま出てきそうで笑える。
この新築で自慢のモダン邸宅に住むのはプラスチック会社社長のアルペル一家。
同じく肥えた妻はそれが最高の生甲斐であるかのように甲斐甲斐しく家族の世話をし、自慢の邸宅の手入れを怠らない。
そして一人息子のジェラールはどこか無機質なこのモダン邸宅が気に入らない。
金持ちの息子でありながらジェラールは下町の悪がきどもとつるんでいたずらばかりする毎日。
洋服着せられた飼い犬もまた、こっそり家を抜け出しては近所の野良犬と一緒に残飯をあさったりして戯れるのだった。
ジェラールには伯父さんのユロ氏がいる。
ジェラールは両親よりもこの無職で気ままなユロが大好きだった。

最初の方誰も喋らないから無声映画風に最後までいくのかと思ったら、台詞がないわけではない。でもほとんど無いに等しいけど。
トーキー時代の無声喜劇映画といった感じ。
まるで四コマ漫画のようなフリとオチが繰り返される。
誇張しすぎない適度な擬音は見ていて楽しいし、流れる音楽は軽快だし、ギャグや構成に何気なく風刺がきいていたり、何より色使いや建造物、物の配置や動きのデフォルメ具合等々全てハイセンス。
あの超モダンな邸宅のセンスは一体どうよ。
悪趣味でありながら魚のオブジェの噴水や目玉のようになる丸窓がかもしだす愛嬌。
全くもって無駄に蛇行する門から玄関までの道。
庭に敷き詰められる小石はブロックごとに白や青やピンクに緑と色分けされて実に鮮やか。
こんな悪趣味かつ素敵なセンスの邸宅がフル活用されてギャグが展開するんだからそりゃ面白いさ。
建物で言えばユロの住むアパートも凄い。
一体何回増築したのかというくらいのつぎはぎ。
屋上のユロの部屋に行くまで建物間や手前と奥をいったりきたり。
のんびりしてるなぁ。つぎはぎだらけのくせに最高にかっこいい。

図式として新し物好きの上流階級と昔ながらの下町庶民階級の二つがあるのだけど、別にどちらがどうとか言ってる訳ではない。
二つの異質なものは同じフィールド上に並べられ、それぞれの生活の中からギャグが紡ぎだされていく。
どちらも楽しいじゃない。
ジャック・タチの視点は大らかっていうかスケールがでかいっていうか。

それにしても隣家のおばさんは凄いな。ファッションもさることながら、なによりよくこんな凄い女優を見つけたなっていう。