2015年7月12日日曜日

映画『0.5ミリ』

2013年 監督:安藤桃子
製作国:日本
at ギンレイホール




明日から出張だし『百円の恋』は113分もあったのにこの『0.5ミリ』は196分もあるし、5時間近くも安藤サクラを見続けるってどうなんだろう、と思って今回ギンレイに行くのを躊躇していたけど、見てよかった。
196分は確かに長い。でもけずれそうなエピソードは無い。
予告編見たときは、おしかけヘルパーするじいさんが何人か入れ替わるみたいだから一人くらいけずって120分以内に収めろよと思ったけど、すべてのエピソードを経てこそのあのラストなので、196分、かなり首が痛くなって疲れたものの満足した。

主演安藤サクラ。
この子の演技しているのに演技していないように見える自然な感じが恐ろしい。才能という意味で。
茂(坂田利夫)に初めて話しかかるときの
「おじいちゃんなにやってるんですか~?」
からの一連の流れは、なにかこう暗くも明るくも無い女が無理に人懐こい声で話しかけているような、もしくはヘルパーとしての職業柄の事務的な声色というか、または生きるために切羽詰った決意を内包しているために声音が演技っぽくなっているというか、、とにかく安藤サクラ演じるサワという女がこの場面この状況この心情でしゃべったらこうなる、というのを安藤サクラはさらっと実践している。
単純に自然な人懐っこい声を出せないという素なのかもしれないけどさ。
調べてみると安藤サクラはどの映画でも演技が絶賛されているみたい。

あと、圧巻だったのは津川雅彦の長回し。
7,8分くらいの独白シーンで、不安で不穏な空気を漂わせながらの台詞回しには引き込まれる。

坂田利夫が出演している映画を見るのはこれが初めてだけど、何この人、ものすごい名役者じゃん。
特に哀愁漂うおっさんとか愛嬌のあるおっさん演じさせたら日本一だな。

安藤サクラの夫って柄本佑なんだね。
ということは、この映画、実際の家族が大いに関わっているんだな、
まず、監督の安藤桃子は安藤サクラの実姉でしょ。
で、佐々木健役の柄本明は安藤サクラの義理の父親。
浜田役の角替和枝は安藤サクラの義理の母親。
フードスタイリストとして参加している安藤和津は安藤サクラの母親。

その他出演者も書いておく。
織本順吉、木内みどり、井上竜夫、ベンガル、浅田美代子(この人も凄い女優だよな)、東出昌大(どこに出ているかわからなかったけどカラオケ店員だったっぽい)、土屋希望。
なかなか豪華。
しれっといれた土屋希望だけど、俺も誰か知らない。この映画がデビュー作で、他には出ていない模様。
そもそも男か女かわからなくて、調べてみたら女性っぽい。失礼しました。
それにしても、検索すると埼玉の高校の野球部員として紹介されていたり、つぶれる寸前のお菓子屋かなんかのブログにベテラン店員として紹介されていたりと謎が多い。
公式ページによるとこの子の父親と安藤桃子が知り合いという縁からスカウトされて出演したらしい。
もう女優はやらないのかな。

映画『百円の恋』

2014年 監督:武正晴
製作国:日本
at ギンレイホール




ニートっぽいけどニートじゃない家事手伝い女、一子(安藤サクラ)は、とあるきっかけで家を出て一人暮らしをはじめる。
仕事やら恋やらボクシングやら、と生まれてはじめての事を経験しながら成長していく物語。
って書くとたいして面白そうでもないけど、意外とかなり面白い。
ドラマティックな成功譚ではなくて地味な成長譚だけど、みなぎる社会の底辺感の中、静かに燃えるくじけない闘志が胸を打つ。
笑ったり怒ったり嫌な気分になったりHAPPYになったり、ひっきりなしに楽しませてもくれる。
それとなんといってもボクシングシーンが泣ける。

脚本は脚本賞“松田優作賞”の第1回グランプリになった作品らしい。
監督武正晴作は初めて見たけど結構好きなタイプかもしれない。
予告編にもあるこけるシーンとか、こういう地味なシーン好きだ。

2015年6月28日日曜日

映画『カフェ・ド・フロール』

2011年 監督:ジャン=マルク・ヴァレ
製作国:カナダ/フランス
at ギンレイホール




1969年と現代の二つの時代における、まったく関係のない家族の物語が交互に描かれる。
現代パートでは、DJのアントワーヌ(ケヴィン・パラン)が若い恋人ローズ(エヴリーヌ・ブロシュ)と、前妻との間にできた二人の娘とで楽しく暮らしている。
前妻とはソウルメイトというくらいお互い離れがたい存在だったが、若い子に走った、という単純な理由でなく、若さは関係なくてローズには前妻以上の運命を感じているかららしい。
過去パートでは、ダウン症の息子ローラン(マラン・ゲリエ)を一人で育てる美容師ジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)の物語が展開される。

この二つの時代の物語、まったく関係ないことはないだろうと接点を探してみても、過去パートのダウン症の子供ローランが現代パートのアントワーヌとイコールになりえないし(アントワーヌはダウン症でないし両親がいるし年齢も合わない)、住んでいる地域も違うしで、まったく接点が無い。
冒頭の空港のダウン症っぽい集団が、後々なんか絶対つながると思って記憶の隅にとどめていたけど、それもあまり関係なかった。
ストーリー上の唯一のつながりは、現代パートのアントワーヌの前妻キャロル(エレーヌ・フロラン)が過去パートのローランの夢をよく見ること。
まじでなんも繋がりないじゃん、という感じだけど、これが最後にばしっとつながる。
アントワーヌが若い恋人ローズを選んだ理由とか、前妻キャロルがいまだにアントワーヌを引きずっている想いとか、すべてがばしっと解決、というか決着する。
こんなの誰も予測できないよー。

あと、ダウン症の子供って生まれたときからわかるのだろうか。

映画『薄氷の殺人』

2014年 監督:ディアオ・イーナン
製作国:中国/香港
at ギンレイホール




ひんやりとした空気感の映像に差し込む電飾のほのかで刺激的な明かり。
人物や物のちょっとした動きが映像をひきしめ変化させ、飽きることなく永遠に魅了していく。
音の使い方も効果的で、いらだたしげに転がり続けるビンの音とか、趣味の悪い色合いの空間で静寂を突如突き破る無慈悲な銃声とか、もう映像に真っ向から対決するくらいの勢いで主張してくる音の使い方って本当大好き。
※ただ、雪を踏む音は個人的に苦手なのであまり聞きたい音では無い(きゅきゅっと気が引き締まるのでそれなりにアクセントにはなったけど)

めちゃくちゃ面白かったわ。
ストーリーも面白かったし。
「長いトンネルを抜けると雪国であった」シーンでは親切なおっちゃん、と思いきや自分のぼろいカブを置き土産に人のバイクを勝手に乗っていってしまうというギャグシーンなんかもある。
カブの持ち主調べればすぐばれそうな気もするけどそこは中国。
屋外スケート場で借りたスケート靴のままスケート場の外までしれっと滑り続けていってしまう自由な神経も中国。

配役は皆、ストーリーにも映像の雰囲気にもびっくりするくらいマッチしている。
主演のリャオ・ファンのちょっと駄目人間ぽいところも見える渋いかっこよさ。
グイ・ルンメイの影のある寡黙な美しさ。
クリーニング店店主役ワン・ジンチュンの善人でも悪人でもないごく一般的な「人間」っていういやらしさ。

調べてみたら主演女優のグイ・ルンメイは『藍色夏恋』(2002)の子だ。少し大人っぽくなったけど全然変わらん。


それにしてもすごい監督が出てきたもんだ。
まだ三作目で、しかも結構な寡作。
次回作はいつになるんだろう。

あと、タイトルは「白昼の花火」の方がよかったんじゃないかな。
ラストは圧巻で泣きそうになった。

2015年6月14日日曜日

映画『ANNIE/アニー』

2014年 監督:ウィル・グラック
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




舞台も見ていないしどんな話かも知らん。でもまったく見る気がしない。
『天才スピヴェット』も見たし帰ろうかと思ったけど一応見てみる。
中盤うとうとして、久しぶりにつらい、と思ったものの、最後の金かけてる感がすごいラストはまあ面白かった。

で、一番面白かったのはエンドロール。
上から赤い風船がたくさん降ってくるんだけど、エンドロールの字幕にぶつかるとぽーんと跳ね返ってくるくる落ちていくのね。
風船が何かにぶつかって落ちていく様を何パターンも取ってエンドロールの字幕にせっせと当てはめているのかと最初思ったけど、なにしろ数が尋常じゃない。
それにたまに風船じゃありえないスピードで落ちていくのも混じっていたりする。
とすると物理エンジンで字幕を障害物に見立てて風船を投下しているんだな。
ぶつかってくるくる反転する様が本当にすごいわー。

それともうひとつの見所はキャメロン・ディアス。
おでことか目じりとかめいいっぱいしわくちゃにして、口なんかひん曲がりまくりで、もうなにも失うものが無いかのような大仰な演技が素敵過ぎる。

ガキが嫌い。生意気なガキはもっと嫌い。だから芸達者な子役が嫌い。
だけどまあアニー役のクヮヴェンジャネ・ウォレスちゃんはそんなに嫌悪感なかった。

ミュージカルシーンはダンスがほとんど無い(映っていない?)ので面白くなかった。
歌だけで聴かせるなんてジュディ・ガーランドくらいしか認めないぜ。

2015年6月13日土曜日

映画『天才スピヴェット』

2013年 監督:ジャン=ピエール・ジュネ
製作国:フランス/カナダ
at ギンレイホール




予告編見て面白そうだと思っていたけど、冒頭の飛び出す絵本(たぶんCG)を見たときにあれっと思う。
最後までみた感想としては、ロードムービー要素もあるし、ブランコの少女との一瞬のみの出会いとかいいシーンもそれなりにあって、普通に面白かったと思う。
ただ、あまり自分には合わないなと思った。
面白いCGなら好きだけど、おしゃれ感を出すだけのような無駄なCGは邪魔以外の何者でもなく嫌いなため。
エンドロール見ていて初めて知ったが、監督はジャン=ピエール・ジュネだった。納得。

公式ページ見ていたら、なんかこれ3D映画だったらしいね。
3Dで見ていたらあのCGも違って見えたのかもしれない。まあ3Dで映画を見たことは一度もないし今後も見ることはないと思うが。

母親役の人がすごく懐かしい感じがするのに思い出せなくて、誰だろうと思っていたらヘレナ・ボナム=カーターだった。久しぶりに見た。

2015年5月17日日曜日

映画『ゴーン・ガール』

2014年 監督:デヴィッド・フィンチャー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




中盤で一度ネタばれのようにあっさりと真相が分かるけど、
安心してください、そこからもさらに面白さが続きます。

デヴィッド・フィンチャーっぽいテンポのいい最高のジェットコースタームービーになっている。
サスペンスなのかコメディなのかホラーなのか・・話が進むたびに映画の表情が変わるのが面白い。
世界中で大ヒットした小説が原作らしい。原作者が脚本書いてるね。

主演はベン・アフレック。
失踪妻役にロザムンド・パイク。

映画『トラッシュ! -この街が輝く日まで-』

2014年 監督:スティーヴン・ダルドリー
製作国:イギリス/ブラジル
at ギンレイホール




大人向けサスペンスでありジュブナイルでもある。なかなか面白かった。
予告編見て悲しい結末を予感していて、それとなく最初から心構えして見てしまった。

途中までどこの国だか分からずアジアのどこかかと思って見ていたらブラジルだった。
ブラジルこえーなー。

神父役にマーティン・シーン。
ルーニー・マーラが美人。
悪徳刑事役にあまり悪そうに見えないイケメン、セルトン・メロ。

2015年5月7日木曜日

映画『イーダ』

2013年 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
製作国:ポーランド
at ギンレイホール




スクリーン幅はスタンダード・サイズで映像はモノクロ。
ただの懐古趣味だったら嫌だなと思ったけど、映画、って感じの映画でかなり面白かった。
余白の多い構図は静謐さで満たされて、映像を見ているだけで堪能できる。
少し重めの時代背景の中、寡黙な主人公イーダ(アガタ・チュシェブホフスカ)の清廉な美しさが映える。
過去にとらわれ続ける叔母の悲痛さも静謐な映像に合っている。

最後の方であるクラシック音楽がかかったとき、あ、これなんだったっけと記憶をたどるためにちょっとスクリーンから意識がそれていたら、衝撃のシーンが展開されて、ああ、もっと集中して見ていればよかったと後悔した。
まあその後もこういうシーンって何度か他の映画でみたことあるなぁ、『わたしが・棄てた・女』はちょっと違うし、なんだっけ、とまた意識がそれるんだけど。
ちなみに今調べたら音楽はモーツァルトの交響曲第41番だった。

映画『100歳の華麗なる冒険』

2013年 監督:フェリックス・ハーングレン
製作国:スウェーデン
at ギンレイホール




爆笑とまではいかないけど(ブラックユーモアだし)、なんか久しぶりに笑えて楽しい映画を見た気がする。

100歳の誕生日に老人ホームから抜け出したアラン(ロバート・グスタフソン)の気ままなロードムービー。
気ままっていっても周りで人がばんばん死ぬけどね。

爆弾遊びが大好きだったアラン少年は問屋のおやじかなんかを誤って爆殺してしまう。
ふっとんだ首がボンネットに落ちてきたりと、シリアスな残酷さとコミカルさが表裏一体のなんともいえないシーンの後、少しも悪びれないアラン少年が映し出される。
悪びれないどころか死んだ男を間抜け扱いしているし。
ここでアラン、そしてこの映画の死生観を観客は理解する。
死なんてただそこで終わるってだけのこと。そして死の原因が自分にあろうがそれは死んだ奴の運が悪かったってだけの話。というか間抜け。みたいな。
だからその後の数々の死もあっという間に感覚が麻痺してすんなり受け入れてしまう。

ただ、アランのように行動原理が"無欲な衝動的欲求"で成り行きまかせのような生き方は命がいくつあっても足りないけど、そこはまあフィクションなのでなんだかんだで100歳まで生きている。
"無欲な衝動的欲求"といっているのは自分でも何言ってるかよくわからないが、アランは物欲、自己顕示欲とかそういう社会的欲求にびっくりするくらい興味を示さないから。
じゃあ何があるかというと、派手な破壊欲求。
しかも本人が意図していなくても、天然なのか阿呆なのか、成り行きでいろんな人の人生を破壊していくから生粋のデストロイヤーだ。
この破壊欲が殺人衝動にならなくてよかったもんだ。死に無頓着な分かなり危ないし。
まあ間接的に十数万人殺しているけどね。
そういえばアランは青年期に、こんなやつの子孫を残しちゃいけない、と医者により子供が埋めないように手術(去勢?)されているが、これって性欲もなくなるのかな。
手術しなくても薄そうな気もするが。

主演のロバート・グスタフソンは実際は50歳くらいで老けメイクしていたらしい。