2017年5月7日日曜日

映画『ブルーに生まれついて』

2015年 監督:ロバート・バドロー
製作国:アメリカ/カナダ/イギリス
at ギンレイホール




チェット・ベイカーを扱った映画で、イーサン・ホークが演じている。
歌はイーサン・ホークが実際に歌っているらしい。
伝記なのかなと思ったけど、恋人役のジェーン(カーメン・イジョゴ)なる女性は実際にはいなかったらしいので、多くのフィクション部分と伝記部分が混在している模様。
男の哀愁を漂わせて、わがままな奴だけど弱くてどこか憎めない。
なかなか面白かった。

実際のチェット・ベイカーはもっと悪魔的な男らしい。
チェット・ベイカーの唯一の自伝本『終わりなき闇』は鬱になりそうなくらい面白いらしいので読んでみたいな。

映画『ジュリエッタ』

2016年 監督:ペドロ・アルモドバル
製作国:スペイン
at ギンレイホール




アルモドバルの母物ということで期待しすぎていた面もあるけど、なかなか面白かった。
手紙を受け取った時の想いで息の詰まりそうな演技には泣きそうになったし。

結構小道具を散りばめていて、後になってからああそれってそうなんだと気付くところがある。
引っ越し準備中に包んだ変なオブジェにはそういう複雑な思い出があったのかとか、若者が3on3やっているすぐ側のベンチに座ったときはそこに普通座るかよ!って思ったけどその場所は実は、みたいな。
あと入れ墨とかね。
話自体はシンプルに多くを語らず展開するから細かい部分でよくわからないところはあるけれど、小道具等の演出や映像が重層的で見応えはかなりある。

そういえば瞑想の合宿所にいたおばさんに凄い嫌悪感を持ったのは何なんだろう。
あの余裕のある泰然とした雰囲気が逃避に基づくからか、もしくはお前人様の子に何してんだよ何様だよという怒りか。

主人公の若い頃役の女優さんアドリアーナ・ウガルテが綺麗だった。

2017年4月23日日曜日

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

2016年 監督:スティーヴン・フリアーズ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




フローレンス・フォスター・ジェンキンスという実在の人物のお話。
富豪の彼女はソプラノ歌手になるのが夢でたまにリサイタルなどを開いて自慢の歌声を披露していた。
しかし彼女はとてつもなく音痴だった。
しかも自分で気づいていない。
そんな彼女を夫は献身的に支える。
新聞記者を買収したり。。

フローレンス役にメリル・ストリープ。
音痴も忠実に再現しているのだろうし、音痴であることは確実だけど、そんなに大爆笑するほどかな。

夫のシンクレア役にヒュー・グラント。
年齢違いすぎるだろうと思うが若い愛人(レベッカ・ファーガソン)を囲っているから実際の夫も離れているのかなぁ。
で、この愛人という存在が謎で、シンクレアはフローレンスに献身的だけど、この愛人がいるせいで彼の妻に対する想いがなんだか薄れてしまう。
そもそも音痴を気づかせないように根回しするのが献身的なのか?という疑問もある。
となると実は遺産目当て?と思わせながらも、どうやら本気で妻を愛しているようなんだよね。
愛人も大事にしているけど愛人と妻を天秤にかけるようなシーンで妻を選んでいたりもするし。
事実にもとづいてしょうがなく愛人を登場させたのかな。
いずれにしろ、愛人を登場させながらもシンクレアがフローレンスを心から大事にしていることを十分に描き、愛人がばれそうになるところはコメディにしつつも愛人の悲哀もちゃんと描いたりして、なかなか上手い脚本だなと思う。

映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

2016年 監督:リチャード・リンクレイター
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




舞台は1980年で、野球の強豪大学に野球推薦で入学するジェイク(ブレイク・ジェナー)が入寮してから大学が始まるまでの3日間のお話。
お話、というか、酒!ドラッグ!女!と少し野球、で押しまくる。
まだ大学生になる前の3日間で、多分自分も含めた多くの日本人の数十倍も人生を謳歌しているんじゃないだろうか、ってくらいハッスルしている。
彼らは野球エリートでイケイケだから、というわけじゃなくて、文化系の人たちまでハッスルしている。
この時代だからなのかアメリカだからなのか。
敬語がないからか自己主張が強いからか、すぐに昔からの友人かのように馴染むところも凄い。

それにしても寮生の面々が大学生に見えないくらい老けている。
役者は皆実際は30近いっぽいね。

過ぎ去りし青春の1ページを切り取った、これから先苦しいことやつらいことがたくさんあるかもしれないけど今だけは全力で楽しもうぜっていう懐かしくて能天気で楽しい映画。

2017年4月9日日曜日

映画『手紙は憶えている』

2015年 監督:アトム・エゴヤン
製作国:カナダ/ドイツ
at ギンレイホール




戦争を生き抜いた世代も高齢でどんどん少なくなっていくなぁ。
妻に先だ立たれたばかりの90歳の老人ゼヴ(クリストファー・プラマー)。
彼は老人ホームの友人とある計画を立てており、妻がなくなったらそれを決行する、と。
車椅子の友人はホームに残り、ゼヴは一人計画を遂行するべく旅立っていく。
二人はアウシュヴィッツの生き残りで、ともに家族を看守に殺された過去を持つ。
そしてその看守は身分を偽り逃亡し、今ものうのうと生きているという。
計画とは、その看守“ルディ・コランダー”を見つけ出し、復讐(殺害)すること。
しかしゼヴにはある問題があった。
認知症が進行しすぎて毎朝目覚めると記憶を失うということ。
友人はゼヴの過去と計画を記した手紙をゼヴに渡し、ゼヴは記憶をなくすたびに手紙からやるべきことを知る、というあぶなっかしい旅路。

まあまあ面白かったんじゃないかな。
こんなに記憶をなくすなら幸せな嘘の過去を騙して教えることもできるよなぁと思って見ていた。。。
最近なんかの予告編でラストが衝撃とかいうの見たなと思っていたけど、これだったか。

記憶をなくすたびに亡き妻の名を呼んで、生前はそんなに片時も離れずに一緒にいたのかよ、と突っ込みたくなる。

ブルーノ・ガンツを久しぶりに見たけど老化が加速しすぎじゃないだろうか。

映画『幸せなひとりぼっち』

2015年 監督:ハンネス・ホルム
製作国:スウェーデン
at ギンレイホール




結構面白かった。
愛する妻をなくして孤独に生きるオーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)は43年間働いた鉄道会社をクビになる。
妻を亡くした悲しみからいまだに立ち直れないオーヴェはいい機会だとでもいうように自殺に向けていそいそ準備を始めるのだが、隣に引っ越してきた移民の家族やらなんやらでことごとく自殺を阻まれる。
このオーヴェというじいさんはかなりのクセがあって、とにかく規律に厳しい。
規則を守らない住民にはようしゃない罵声を浴びせ、普通には関わり合いたくないかなり気難しい男。
ただ、たくましく生きる移民の女性にはそんことはお構いなし。
そして昔からの知り合いはオーヴェに優しいところや、時折回想の入る妻との思いでからも次第にオーヴェという気難しい人物の別の一面が見えてくる。

妻役のイーダ・エングヴォルが溌剌としていい感じ。
これは惚れるわと思う。
しかしまあソーニャとの思い出が若い頃だけというのも気になりはするけど、今でもそんなに思っているということからも二人の仲はうかがい知れる。
大分いい奥さんだよな。かなり男側の願望が入っていそう。


映画と関係ないけど、この回は席が大外れで、後ろの席の頭のおかしいおっさんが前の席、つまり俺の席を頻繁に蹴り、そして押してきた。
最近はこういう奴いなかったんだけど、たまに思い出したように現れるんだよな。

2017年3月26日日曜日

映画『エル・クラン』

2015年 監督:パブロ・トラペロ
製作国:アルゼンチン
at ギンレイホール




舞台は1980年代のアルゼンチン。
独裁政治が終結し、民主政治を取り戻しつつあった時代。

家長アルキメデス(ギレルモ・フランセーヤ)を中心に幸せで平和な生活を送っている(ように見える)プッチオ家。
子供もたくさんいて、特に長男アレハンドロ(ピーター・ランサーニ)は将来有望なラグビー選手。
しかし裕福で近所からも慕われるこの家族にはある秘密があった。
1983年にアルゼンチンで実際に起きた事件らしい。

緊迫の警察突入シーンにを冒頭に持ってきてからそんな状況と無縁な家族の光景を映したり、未来の不安から夢で未来の結末を見てしまったり、と、時間軸の入れ替えでなにこれっていう驚きを入れたりしてなかなか飽きさせない展開。
で、不思議で面白いのは、コメディ的な雰囲気とシリアスのバランスで、これはなんなんだろうっていう独特な空気が漂っている。
コメディといっても笑いがあるというよりかは主に音楽によるのかな、エンターテインメントのような感じ。
エンタメ要素が強すぎると茶化しているようになってしまうが、そこまではいかないのでその犯罪行為自体の残酷性は揺るがないし、彼らをヒーロー視しているようにもならない。
っていうバランス。

シリアス一辺倒ではなくエンターテインメントの雰囲気を加えると、ただ単純に面白いってだけじゃなくて、なんだかアルキメデスの見方も変わってくる。
アルキメデスは飽くまで冷酷な犯罪者であり憎むべき対象ではあるっていうのは確実だけど、エンタメ要素によってこの人物に少し愛着が出て来ると、憎しみに加えて少し憐れみも加わってくる。
無口で家長として偉ぶっているアルキメデス。
家族思いのアルキメデス。
息をするのと人を殺すのが同列なアルキメデス。。。
殺人に対するモラルの欠如って、アルキメデスが生きてきたアルゼンチンの時代により植え付けられたとすると、彼も被害者に思えてくる。
で、重要なのがバランス。
憎しみ7、憐れみ3くらい。この辺がちょうどいい。

ラストのアレハンドロはどうやって撮影したんだろうな。
マットにバフンして合成かな。

映画『人間の値打ち』

2013年 監督:パオロ・ヴィルズィ
製作国:イタリア/フランス
at ギンレイホール




夜の車道で自転車で帰宅中の男性が車にひき逃げされるところから始まる。
このひき逃げ事件の前後が3人の登場人物の視点で描かれる。
不動産業を営み、上流階級に憧れるディーノ・オッソラ(ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ)。
資産家の妻で昔舞台女優もやっていたカルラ・ベルナスキ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)。
ディーノの娘でカルラの息子と付き合っている風なセレーナ・オッソラ(マティルデ・ジョリ)。

ひき逃げされた男も含めて登場人物が交錯する中、視点を転換しながら情報が小出しにされていく。
なかなか面白いサスペンスドラマ。

ディーノが冒頭から人の話を聞かない自分勝手なお調子者という雰囲気を醸し出していたけど、実際その小物ぶりが笑っちゃうくらいに面白い。
よくこんなぴったりな役者見つけてきたな。ってこの人『永遠と一日』に出演しているみたいだし結構有名なのかなぁ。

カルラ役にヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
この人『アスファルト』でもそうだったけど、何か物憂い表情させたら世界一だよな。

2017年3月12日日曜日

映画『ハドソン川の奇跡』

2016年 監督:クリント・イーストウッド
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




いきなり街中に飛行機が墜落して大炎上してんだけどなにこれ、っていう始まりから、事故の回想と夢と現在を効果的に入れ替えながらスリリングに展開していく。

初め、墜落後に機長がなぜか生きていてテレビではハドソン川に不時着のニュースが流れているしで、これは機長は未来予知の能力があって墜落を回避したのだな、などとSF脳で納得していたけど、いたって現実的なお話だったのだと大分経ってから気づいた。
なにせ実話だからね。(というのもエンドロールで知った)

離陸後まもなくバードストライクで両エンジン停止。再点火を試みるも反応せず。
管制官からは空港に引き返せとかどこそこの空港に行けとか指示が出るが、ベテラン機長はこの高度ではどこにも行けないと判断し、ハドソン川への不時着に踏み切る。
そんな無謀な試みは成功しないと思われたが、見事に成功し乗客は全員無事生還した。
機長は一躍英雄となる。
っていうだけなら映画はすぐ終わってしまう。
問題はこの英雄に嫌疑がかけられるということ。
ハドソン川への不時着は本当に正しい判断だったのか?乗客を無用な危険に晒したのではないか?
見た目も派手な生還劇を随所に挿入しながらサスペンス風の人間ドラマが展開され、しかも最後には痛快なラストまで用意されているこの構成は本当よくできている。

最近緒川怜の『霧のソレア』っていう偏執的に描写が細かい航空機パニック小説を読み終えたばかりなので余計面白かったな。

主演トム・ハンクス。
副機長にアーロン・エッカート。不自然なくらいむきむきだった。


これ書いている前日にビックカメラふらふらして4Kテレビの前に来たとき、この映画が流れていたんだよね。
映画館ではトム・ハンクスの肌ツヤのいい若々しさに驚いたけど、4Kテレビの映像を間近で見ると結構あれだった。。4K恐ろしい。

映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』

2015年 監督:マイケル・グランデージ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




読んだことないけどアメリカの作家トーマス・ウルフと、彼を見出した名編集者のマックス・パーキンズの物語。

雨降るニューヨークに傘もささずに立って印象的に足を踏み鳴らす男と小気味良い校正の赤鉛筆の音。そしてモノクロからカラーへ。
これから始まる壮大な物語への期待をふくらませる(ような)冒頭の演出に、なんか嫌な予感がしたものの、まあ普通には面白かった。

娘だらけで息子がいないパーキンズとトーマス・ウルフの親子のような絆とか、膨大な量の文章を商業ラインに乗せるために編集(削除)していく作業の苛烈さや対立とか、愛人の倒錯した愛憎とか、トーマス・ウルフの奇人ぶりとか、なんかいろいろ要素があるけど、編集作業の内幕がメインなのかな。
人間ドラマ部分は少し唐突というか駆け足気味だし。

パーキンズ役にコリン・ファース。
トーマス・ウルフはジュード・ロウ。
愛人のバーンスタインはニコール・キッドマン。ジュード・ロウよりずっと年上じゃね?と思ったけど、実際バーンスタインはトーマス・ウルフの18歳上だったらしい。
F・スコット・フィッツジェラルドにガイ・ピアース。
アーネスト・ヘミングウェイにドミニク・ウェスト。