2012年12月16日日曜日

映画『汽車はふたたび故郷へ』

2010年 監督:オタール・イオセリアーニ
製作国:フランス/グルジア/ロシア
at ギンレイホール




グルジアのオタール・イオセリアーニ監督の半自伝ドラマ。
映画監督の青年ニコラスは、検閲や規制に耐えかねて祖国グルジアを飛び出しフランスに亡命する。
これでやっと自分の撮りたい映画を撮れると思ったニコラスだったが。

一応ジャンルは「ドラマ/コメディ」になってるな。
予告編を見ると面白そうだったんだけど。
とにかく長いわ。126分。
劇中、青年が作る映画に対しておっさんが「映画は90分で収めなきゃ駄目だ」みたいなことを呟くシーンがあるけど、まさにそうだ。
グルジアを飛び出すまでいったい何時間かけるんだ。
(飛び出した後も飛び出す前といろんな意味で何も変わらないのだが)

セリフも少なくて読み取る集中力が必要なのに、なんかしらないけど早々に集中力も切れてあまり楽しめなかった。
なんだろう、長まわしもセリフが少ないのも好きな方なのに。
バランスがなんかおかしいからかな。
電車の車体がカーブに疎って蛇腹のように緩やかにうねる美しいシーン以外はそんなに印象的なシーンもないし、ストーリーがめちゃくちゃ面白いわけでもないし、それほど笑えるわけでもないし、役者はなんだかたどたどしいし、唐突に出てくる人魚は違和感ばりばりだし。
・・・って書いてみると、逆にもしかして凄いんじゃないかと思ってきた。
はちゃめちゃだったらB級映画になるけど、盛り上がりも盛り下がりもせず、ともすれば破綻してしまうような唐突なSF要素もなんか許せてしまう寛容なフラット感は絶妙なバランス感覚でこそなせる技なんじゃないか、と。
今度機会があったらもう一度見てみようかな。でもやっぱり長い。

そういえば熊の檻にすたすた入っていって手で魚をえさやりしているのはびびった。

2012年12月2日日曜日

映画『裏切りのサーカス』

2011年 監督:トーマス・アルフレッドソン
製作国:イギリス/フランス/ドイツ
at ギンレイホール




ジョン・ル・カレの1974年のスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。
東西冷戦時代のイギリスの、英国諜報部サーカスを舞台にした映画。

登場人物を把握するのに集中しようとしていたのに、最初の方ちょっと寝てしまった。
細かいところがよくわからなかったものの、なかなか面白かった。
登場人物達が皆渋い。
そして過酷な仕事ながらも皆人間臭い。
内容を全部理解しなくても、この映画がもつ雰囲気だけで十分楽しめると思う。
イリーナも美しいし。

映画『ドライヴ』

2011年 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ピンク色のタイトルからしてB級臭がぷんぷん漂うとおり、フィルムノワール風のB級映画だった。

自動車修理工場で働きながら映画のカースタントもやっている流れ者の男(ライアン・ゴズリング)は、その卓越したドライビングテクニックで夜は強盗の逃走の手助けをする仕事をしていた。
寡黙であまり人と接しない男だったが、同じマンションに住む母子と知り合い、ともに時間を過ごすようになる。
この母親(キャリー・マリガン)の夫は刑務所に服役していて、夫が服役したところから事件が動き出す。

お前ただのドライバーだろ?っていう先入観を持っているとびっくりする。
危険な人物だと思っていた男が実は小物(というかいい奴)で、その上にいる奴らこそ危険だ、と思ったらそいつらも小物で、さらに上に危険な大物が待っている。
悪の大物を相手取り、ただのドライバーなんかなすすべも無く消されるんじゃないかと思いきや、流れ者の男にとっては大物も小物も関係なく、皆くそみたいに格下の相手でしかなかった。

主演のライアン・ゴズリングが怖い。
顔がもう変質者っぽいのに、その上寡黙だったらもう近づいちゃ駄目だろう。
愛する者のすぐ傍で、倒れた敵の頭を狂ったように踏みつけて脳みそがぐちゃぐちゃに飛び出しても蹴り続ける狂気を見せつけられて引かない女はいない。
『きみに読む物語』では好青年だったのにねぇ。

ヒロインは『17歳の肖像』のキャリー・マリガン。

2012年11月18日日曜日

映画『オレンジと太陽』

2010年 監督:ジム・ローチ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




1986年イギリスのノッティンガムで、ソーシャルワーカーのマーガレット(エミリー・ワトソン)は、ある女性から母親探しを依頼される。
女性の話では、自分は4歳の頃他の子供たちと一緒にオーストラリアに連れてこられたと。
子供たちだけで渡航するなどありえないと不審がるマーガレットだったが、後日似たような境遇の話を別の人間から聞いたことで本格的に調査を始める。
調べていくと、オーストラリアへの強制児童移民は、イギリス、オーストラリアの両国が国家レベルで関与していた事件だった。

実話らしい。
1970年までの間にオーストラリアに渡った子供の数は13万人というから驚きだ。
公式ページによると
「撮影中の2009年にオーストラリア首相が、2010年にはイギリス首相が、<児童移民>の事実を認め正式に謝罪」しているらしい。

映画の方は、サスペンス風ではあるけど、どちらかというと人間ドラマになっている。
主人公が被害者じゃなくて、スタート地点は事件と全く関わり合いの無かったソーシャルワーカーっていうところが話をこれ見よがしに重くさせずに済ませている。

監督ジム・ローチ。
名前から想像できるようにケン・ローチの息子。

エミリー・ワトソンはおばさんになったなぁ。

映画『少年と自転車』

2011年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
at ギンレイホール




もうすぐ12歳になる少年シリル(トマス・ドレ)は、唯一の肉親である父親(ジェレミー・レニエ)により施設に預けられる。
シリルはいつか父親が迎えに来るはずだと信じているが、父親はもうシリルを捨てた気でいて、行方不明になる。
施設を抜け出し父親を探す途中でつながりのできた女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)に週末だけの里親を頼むことで、施設を抜け出さなくても父親探しをできるようになったシリルだが、見つけた父親は。。

愛情と居場所を求めてせわしなく自転車を漕ぐシリルと、いつのまにかこんな大きな少年に母性を発揮して恋人より大事になってしまうサマンサの姿が淡々と描かれる。
監督は『息子のまなざし』を撮ったダルデンヌ兄弟か。
確かにラストの方、ああ、この展開はやばい、と信じ込ませておいて、しれっとすかしていくやり方はこの兄弟っぽい。

話の題材はよくある話だけど、お互い切れやすい糸での繋がりを頼りに綱の上を歩いているような危うい関係性の緊張感がなかなか面白かった。

2012年11月4日日曜日

映画『屋根裏部屋のマリアたち』

2010年 監督:フィリップ・ル・ゲ
製作国:フランス
at ギンレイホール




1960年代のパリ。
証券会社を経営する資産家のジャン=ルイ(ファブリス・ルキーニ)の家には、先代から仕えるフランス人メイドがいたが、妻のシュザンヌ(サンドリーヌ・キベルラン)に反発して辞めてしまう。
新たにやってきたのは若く美しいスペイン人マリア(ナタリア・ベルベケ)。
ただの主人とメイドという関係だったが、アパルトマンの屋根裏で共同生活を営むマリアを含めたたくさんのメイド達の生活に、ジャン=ルイは次第に興味を抱いていく。
興味というかちょっと親切にしたらえらく喜ばれて神のように扱われて有頂天になったという感じ。

やがてジャン=ルイはマリアに恋するようになるのだが、ただのメイドを見る視線が劇的に変化する瞬間がある。
それはバスルームでシャワーをあびるマリアを偶然覗き見してしまう瞬間。
肉感的で抜群のプロポーションをしたマリアの後姿を覗き見て何も感じない男はいない。
理性ではメイドに対してそんな思いを抱いてはいけないと思いつつも、心は完全にこの瞬間にマリアに向いた。
男の恋愛なんてほとんどが性欲ありきだ。
特定の女性によって性欲を大きく刺激させられたら簡単に恋してしまう。
しかも覗き見ってところがまたいいよね。
いや、別に僕に覗き趣味があるわけじゃなくて、映画自体覗き見みたいなもんだから映画的だっていう。。

既婚者が別の女性に惹かれていくっていうのは大抵妻役が嫌な女だけど、妻のシュザンヌはそんなに嫌な人ではない。
えせブルジョワ風で高慢に見えるところもあるけど、1960年代っていう時代柄では性格の良し悪し以前に普通の価値観なのだろう。
純朴な少女のような心を持った田舎娘なのにねぇ。
ただ長いマッチ棒のような女性より肉感的な美女の方がいいよなぁってだけで捨てられたら可哀想でもある。

主演はファブリス・ルキーニ。
今、最も好きな俳優。
役にもぴったり。
この人は優しいのか冷たいのか、無表情なのか表情豊かなのか、変態なのか真人間なのかよくわからない不思議な魅力がある。
「冷たさと優しさを同時に湛えた読めないあの瞳に引き込まれていく」
っていう先日樹木希林について書いた言葉がそのまま当てはまりそうだ。
ということはファブリス・ルキーニはフランスの樹木希林と呼んでもいいかもしれない。
いや、役者としてはファブリス・ルキーニの方がすきだから樹木希林が日本のファブリス・ルキーニかな。

映画『ミッドナイト・イン・パリ』

2011年 監督:ウディ・アレン
製作国:スペイン/アメリカ
at ギンレイホール




ウディ・アレンの中で歴代最高のヒット作だったらしい。

脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者のイネズ(レイチェル・マクアダムス)とパリにやってくる。
パリに多大な憧れを抱いているギルは、ひょんなことから毎夜華の1920年代にタイムスリップできるようになる。
フィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリ、ガートルード・スタイン等々、伝説の人物と知り合いになり、そしてピカソの愛人アドリアナと惹かれあっていく。

ウディ・アレンの映画の登場人物というと、夢見がちで駄々っ子のような幼児性、孤独に対する尋常じゃない恐怖心を振り払うかのようにどもりながらまくし立てる言葉、等が思い浮かぶけど、そういうキャラクターが一番合う土地はやっぱりニューヨークなんだなと思う。
他の土地だとせせこましさだけが浮かび上がってくるような印象がある。

ストーリーは単純明快で面白かった。
過去に憧れても、その過去はさらに過去に憧れている。
現代には現代のよさがあるんだから、過去を見るのもいいけどもっと現代も見ようよ、っていう。

主演はウェス・アンダーソン作品や『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』でお馴染みのオーウェン・ウィルソン。
ギルの婚約者役イネズは、アラーキーが「魅惑のレイチェル・マクアダムス、抱きたい。」と言ったレイチェル・マクアダムス。
大人になったな。あれっ、同い年だった。
アドリアナ役は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のマリオン・コティヤール。
他、キャシー・ベイツやエイドリアン・ブロディも出ている。
エイドリアン・ブロディは口髭がついていたからか全然気づかなかった。

2012年10月26日金曜日

映画『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』

2011年 監督:蔵方政俊
製作国:日本
at ギンレイホール




定年間近の鉄道運転士は、定年後に苦労をかけた妻を労わりながらのんびり過ごそうと思っていたが、妻は結婚したときから思い続けていた看護士としての職場復帰を密かに実行に移していた。
思いはすれ違って「出て行け」と言って妻は出て行き、離婚へのRAILWAYSを突っ走る。

テレビドラマだったら面白そうだな。

タイトルはなんでこんなにひどいんだろう。
鉄道物語とでもしといたほうがまだましなくらいだ。

女優小池栄子は好きなんだけど、この役が宮崎あおいだったらもっとよかったなぁと想像したりする。
余貴美子さんのやつれた雰囲気は役にはまっていていい。
『真田風雲録』の根津甚八役だった米倉斉加年がちょろっと出ている。

あんまり感想も無いな。
ストーリーは最後の方一瞬えっ?と戸惑うようなしゃれた仕掛けがある。

映画『わが母の記』

2011年 監督:原田眞人
製作国:日本
at ギンレイホール




井上靖の自伝的小説の映画化。
認知症で記憶が混沌としてく母親と、幼い頃母親に一度捨てられたというわだかまりを今でも抱えるベストセラー作家の長男。
そして作家の兄弟、作家の子供たち。
母親と作家を中心に据えた家族の物語。

樹木希林の母親役というと、寺内貫太郎一家とか、あまり面白くなかった東京タワーなんちゃらを思い出すけど、東京タワーよりか大分面白かった。
愛らしくどこかこ憎たらしい感じもするおばあちゃん役をやらせたら樹木希林は最高だ。
冷たさと優しさを同時に湛えた読めないあの瞳に引き込まれていく。

認知症自体はそれほど重い雰囲気で描かれてはいなくて、むしろさらっとした描き方は笑いを誘うことまであるけど、それが逆に残酷だ。
母親に使用人と間違えられたら泣いちゃうよ。

10数年にわたる物語、って知らなかったから、宮崎あおいがセーラー服姿の中学生役で登場したときはびびった。
びびったけど次第に違和感も薄れていくからまたびびる。

次女役の菊池亜希子は初めて見たけど柔和な顔した可愛らしい人だな。
ファッションモデルか。

2012年10月7日日曜日

映画『ファミリー・ツリー』

2011年 監督:アレクサンダー・ペイン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ユーモアまじえつつ淡々と進んで、最後は爽やかだけど、内容は結構残酷だよな。
オアフ島に住むマット・キング(ジョージ・クルーニー)はカメハメハ大王の子孫で、先祖が残した広大な土地を所有して働かなくても食っていけるのだが弁護士をしている。
ある日妻のエリザベスがボート事故で昏睡状態に陥ってしまう。
今まであまり家族を顧みなかったマットは、反抗的な次女の面倒を見つつ、全寮制の高校に通う長女を家に呼び戻す。
こっから家族再生のほんわか物語が始まるわけではない。
長女の口から聞かされたのは、妻が浮気をしていたという事実。

妻は昏睡状態だから何の弁解もできないのね。
家族をほったらかしにしていたマットにも責任の一端はあるはずだけど、一方的に悪者になってしまった妻の死んだように眠っている生気の無い顔がとても残酷だ。
残酷といえば浮気相手の貞淑な妻にとっても残酷な仕打ちだよなぁ。

なにより家族の絆を大事にし、幸せな家族像が国家の基盤とすらなっていながら、どこよりも家族が崩壊している国アメリカのホームドラマ。

おもっ苦しくならないのはユーモアもそうだけど、舞台がハワイってところもあるんだろうな。

マットの従兄弟役の男がジェフ・ブリッジスの雰囲気に似ているなと思ったらボー・ブリッジス、お兄さんだった。
初めて見た。似てる。