2016年5月15日日曜日

『パリ3区の遺産相続人』

2014年 監督:イスラエル・ホロヴィッツ
製作国:アメリカ/イギリス/フランス
at ギンレイホール




文無しのニューヨーカーマティアス(ケヴィン・クライン)は、父の遺産でパリの高級アパルトマンを相続した。
早速うっぱらおうと有り金はたいてパリにやってきたマティアスは、アパルトマンの住人マティルド(マギー・スミス)という老婦人から「ヴィアジェ」というフランス独特の不動産売買制度について知らされる。
どうも相続したアパルトマンは「ヴィアジェ」での契約であり、遺産相続というか借金の相続(今のところは)だったらしい。

コメディっぽいのかと思っていたら意外とシリアスな人間ドラマだった。
主人公がろくでなしっぽく見えて実はそんな過去があったのか、とか、いつも優雅にかまえているマティルドが衝撃の事実を知ったときの崩れようとか、母親と仲のよさげなクロエ(クリスティン・スコット・トーマス)にそんな思いがあったのかとか。
もうまさしく「人間ドラマ」といった感じのストーリーを3人の名優と演出が重苦しくも軽々しくもない適度なバランスを作り上げていて、なかなか面白かった。

他、脇役で不動産屋役のドミニク・ピノンとか、いい感じのアクセントになっている。

2016年5月5日木曜日

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』

2015年 監督:サイモン・カーティス
製作国:アメリカ/イギリス
at ギンレイホール




いやぁ、面白かった。
クリムトの「黄金のアデーレ」にこんなドラマがあったんだね。
しかも弁護士を担当したのがシェーンベルクの孫とか。

ヘレン・ミレンのこの上品さは何だろう。嫌味のない品を持ったばあさんって稀有な存在だよな。
ライアン・レイノルズはこの映画で初めて見たけど、そんなに頭がよさそうに見えない。
フベルトゥス役の俳優がどこかで見たことあるのに思い出せずにいたけど、『グッバイ、レーニン!』『ベルリン、僕らの革命』等に出ていたダニエル・ブリュールだった。

映画『ミケランジェロ・プロジェクト』

2013年 監督:ジョージ・クルーニー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




なんか後半近くまで全然のれないんだよな。
何が起きているのか、何をやっているのかよく分からないというか。
シリアスなのかコメディーなのか、そのバランスが非常に悪いのも一因かな。

予告編を見た感じは何も考えずに楽しめそうだと思ったのだけど。
ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット等々、役者陣は豪華。

2016年4月17日日曜日

映画『マイ・ファニー・レディ』

2014年 監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




コールガールから人気の新進女優になったイザベラ・“イジー”・パターソン(イモージェン・プーツ)が、インタビューを受けながらその過去を紐解いていく。
なかなか笑える群像コメディ。
最後にはあの監督まで登場するし、最初から最後まで楽しかった。

主演のイモージェン・プーツってはじめてみたけど綺麗さと愛らしさを兼ねそろえて、いろんな映画で重宝しそうだな。
オーウェン・ウィルソンは変わらないな。

映画『夏をゆく人々』

2014年 監督:アリーチェ・ロルヴァケル
製作国:イタリア/スイス/ドイツ
at ギンレイホール




監督のアリーチェ・ロルヴァケルは1981年生まれの女性監督。
って知ってびっくりした。
長編2作目にしておそろしい名作を作ったものだ。

舞台はイタリアトスカーナ。人里離れた土地で昔ながらの方法で養蜂を営む家族の物語。
たぶん息子が欲しかったのだろうが、4人の娘と両親の6人家族。プラスよくわからない居候の女性ココを含めれば7人。
長女のジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は12歳ながら父親の右腕として働いている。
ある日村にテレビ番組「ふしぎの国」のテレビクルーがやってきて、居合わせたジェルソミーナは司会者ミリーのきらびやかさに心惹かれていく。
食品衛生の基準に満たない作業所は改築を迫られ、ミツバチは隣の畑の除草剤によって全滅に追い込まれるという状況の中、この番組が伝統に則った生活を営む家族のコンテストを開くときき、ジェルソミーナは出演を希望するが父親は断固反対する。

『ブラス!』等々の最近のイギリス映画によくあるような田舎町のハッピーな成功譚ではない。
家父長制の家庭の中でテレビ番組や少年更生プログラムでやってきた少年等、外部から訪れる変化に敏感に反応して美しく揺れ動く、思春期のジェルソミーナの物語。
ジェルソミーナを溺愛しているが愛情表現の不器用な父親に触発されてか、とにかくジェルソミーナが愛しい。
ジェルソミーナの心の機微が暖かい陽光に照らされながら繊細に綴られていく。

導入からよくて、真っ暗闇に中に光が現れて、移動する光は二つになり四つになり、車のヘッドライトだと気づく頃にはなにごとかの事件の幕開けかと思う。
停車した車から降りてきた男たちは、「あんなところに家なんてあったか?」「昔からあるだろ」みたいな会話の後に家族が住む家の中にシーンが移る。
おもむろに起きだすジェルソミーナ。
しかし外の様子とはなんら関係なく、閉じた家の中では別の要素でにわかに騒がしくなる。

あと、ラストもまた秀逸なんだな。
あまり書けないけど、美しく儚い幻のような。。

司会者ミリーは誰だこのおばさんと思っていたらモニカ・ベルッチだったらしい。

2016年3月27日日曜日

映画『恋人たち』

2015年 監督:橋口亮輔
製作国:日本
at ギンレイホール




これは、名作すぎる。
特にある登場人物がうんこ座りでたばこふかしながら野ションして、たばこの火をおもむろに地面に持っていって消した「ジュッ」っていう音でこの映画は僕の中で殿堂入りした。

過去の傷を引きずったり、家庭に縛られて鬱屈していったり、と悩みをかかえながら毎日を生きる人たちの群像劇。
もう、なんというか日常的すぎるというか、リアルすぎるというか、そのリアルってやつがリアルっぽいどころか嫌悪感まで抱きそうなほどの真に迫ったリアルで、他の映画がすべて上辺を綺麗に取り繕った偽者にすら思えてくる。
予告編にもあるけど、常にいらいらして高圧的に当り散らす弁当屋のおかみとかさ。
このおかみは物語の最初の方にしか出てこないくせにここで一気に引き込むよね。
おかみだけじゃなくてそれをにこにこなだめる夫、そしておかみに理不尽にどなられる業者の男なんかもリアルすぎて怖い。
この業者の男藤田(光石研)は愚鈍そうな人物として登場したくせにかなりのアウトローだったりする。

主要な話の軸は主に二つで、一つは通り魔に妻を殺された男篠塚(篠原篤)を中心とした話。
橋梁点検をする職に付いているが、いまだに立ち直れずに日々を生きている。
生活は厳しく健康保険もろくに払えない。
医者の高圧的な一言「払いなさいよ」。こんな口の利き方する医者がいたらぶんなぐりそうになるよな。

もう一つは夫と姑の3人で暮らす主婦の高橋(成嶋瞳子)を中心とした話。
もう台所のごちゃっとした雰囲気(決して汚いわけじゃない)に嫌悪感を抱いてしまったが、そんなもんは序の口。
この高橋という役柄とそれを演じた成嶋瞳子がとにかく凄い。
いい具合の不細工加減からにじみ出る熟して朽ちかけはじめそうな体臭がこちらまで漂ってきそうだ。
(あれっ、ほめているつもりが恐ろしい悪口になっている気がする・・)
家庭的で夫に尽くし、小説や漫画を書くささやかな趣味を持ち、騙されやすく人のいい、乙女のような心を持った主婦。
にわとりを捕まえようと藤田と一緒にきゃっきゃきゃっきゃやっている様子とか、敬語の使いっぷりとか、凄まじいまでの攻撃力だ。

この二つの他には弁護士四ノ宮(池田良)を中心とした話もある。
この細身で情の薄そうな四ノ宮が、見た目どおりの嫌なやつなんだな。
こんな嫌な奴だけどこいつもまた偏見からくる理不尽に打ちのめされる。
生きるのはつらいね。

脇役でいえば黒田大輔演じるその名も黒田大輔が印象深い。
「あなたともっと話したいと思うよ」
隻腕という役柄。

保険課の職員を演じた山中崇も嫌な感じ。
そういえばこの職員が出てくるシーンで
「それじゃああなたの胸先三寸で決まるということですか?」
「そうです」
みたいな篠塚とのやりとりがあって、篠塚って一応学が無い設定だから胸先三寸っていう誤用を使っているのかと思いながらもそもそも学が無いのであればこの言葉すら知らないんじゃないかとも思うし、そういうさじ加減がなんか絶妙だなと思う。

篠塚の会社の後輩も強烈だった。
「っすよ」という敬語の使い方をするけどちゃらい系じゃない短髪の小男で、いかにもお調子ものといった感じ。
こういう後輩苦手だわ~。

映画『あん』

2015年 監督:河瀬直美
製作国:日本
at ギンレイホール




ハンセン病が題材になっているものの、これでもかと前面に押し出しているわけでもないので、すんなり見ることができる。
映像の陰影が美しくてなかなか見とれる。桜は綺麗だなぁ。
「ドラ焼きいかがですかぁー!」
樹木希林と永瀬正敏が安定した存在感を見せる。
脇役には市原悦子や水野美紀、浅田美代子等。
そして物語上も重要なつなぎとなるワカナ役に内田伽羅。
オールバックにしている少女って大抵自分の顔がかわいいと勘違いしている奴だと小学生の頃に悟ったんだけど、この子ならオールバックも許せる。
きりっとした潔い整った顔立ちはオールバックで十二分に映える。
樹木希林の孫らしい。
モックンに似たんだね。

河瀬直美ってなんだかんだで『萌の朱雀』以降一本も見ていなかったな。

2016年3月20日日曜日

映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』

2014年 監督:セオドア・メルフィ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ひねくれもののオヤジといじめられっ子の交流を描いたハートウォーミングコメディ。
と書くとくそつまらなさそうだけど、まあ普通に面白かった。
主演ビル・マーレイだしね。
あの女性がナオミ・ワッツだったんだと今知った。

映画『エール!』

2014年 監督:エリック・ラルティゴ
製作国:フランス
at ギンレイホール




田舎町で酪農を営むベリエ家は、長女のポーラ(ルアンヌ・エメラ)を除いて全員耳が聞こえない。
家族内なら手話で事足りるが、手話のできない人たちと話すときにはポーラは大活躍する。
そんなポーラは実は歌の才能があってパリの音楽学校のオーディションを勧められるが、家族を置いていけない葛藤に苦しむ。

なんか凄い面白かった。
他愛の無いストーリーなのに時にどぎつく時に笑え、そしてほっこりする。
で、なにより主演のルアンヌ・エメラが可愛すぎる。
顔の造形自体はそんなでもないんだけど役柄もあってかとにかくかわいい。
生命力にあふれた野性味の強い顔と優しい愛情の深さ。
そして赤いミニスカートから伸びた昔のアニメのような大根足!
ルアンヌ・エメラはフランスの歌のオーディション番組で歌手デビュー後、本作が映画デビューらしい。

2016年3月6日日曜日

映画『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』

2014年 監督:ヴィム・ヴェンダース,ジュリアーノ・リベイロ・サルガド
製作国:フランス/ブラジル/イタリア
at ギンレイホール




こっちはこっちで凄いドキュメンタリーだな。
セバスチャン・サルガドっていう人物と彼が追ってきた世界が圧倒的に訴えてくる。
写真がとにかく訴えてくる。
しかもセバスチャン・サルガド本人の解説つきで紹介されるのはかなり贅沢な事なんじゃないだろうか。
映像表現はどちらかというと控えめにして写真をメインに据えている印象だけど、彼が見てきたもの、彼が考えてきたこと、彼の人生が濃厚に詰まった映画になっている。
ある人物を取り上げて半生を映画化、とかってよくあるけど、生きていて過去の写真や映像があるならドキュメンタリーが一番いいよな。