2021年10月9日土曜日

映画『ミナリ』

2020年 監督:リー・アイザック・チョン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




韓国からアメリカに移住してきたジェイコブ一家。
誰も手をつけようとしなかった土地を購入して韓国野菜の栽培で一発当てようと目論む。
まあ、そんなにうまくはいかない。
いろいろあって妻モニカ(ハン・イェリ)の母親スンジャ(ユン・ヨジョン)が子どもたちの世話役としてアメリカにやってくる。

子どもたちに嫌われようが我関せずでぐいぐいいく逞しさが衝撃的で美しい。
栗を口で割ったやつを吐き出して手に乗せて「ほら食べな」とか愛おしい。
新天地で一人夢を追うジェイコブと乗り気でないモニカ。
ケンカが絶えない夫婦とそれを見る幼い子どもたちは次第に土地にも柔軟に馴染んでいく。
そんな家族の物語だけど祖母のスンジャが全部持っていくくらい印象強い。
八面六臂の活躍とはこのことよ。
家族の潤滑油でありコメディエンヌであり救済者であり破壊者でもある。
スンジャというか演じたユン・ヨジョンのための映画みたいな。

映画『ファーザー』

2020年 監督:フロリアン・ゼレール
製作国:イギリス / フランス
at ギンレイホール




81歳で一人暮らしをしているアンソニー(アンソニー・ホプキンス)のもとに娘アン(オリヴィア・コールマン)が訪れる。
恋人のいるパリに行くことにしたからもう面倒見ることができない、とかなんとか。
そんな冒頭の会話の中で既にアンソニーの認識のずれが垣間見えてくるのだが、そのずれはやがて混乱というのも生易しいほどの事態に。パニック。
認知症を認知症患者の視点で描いたっていう映画。

認知症を映画で扱うっていうのは難しいよね。
どうしても深刻な話になるのでエンタメになりにくいし、観客もわざわざ辛い話を見に映画館に足運ばないから。
ド正面から描くなら辛いけどなんかしら(胡散臭くない程度の)感動が待っているとかそんな感じになるんだろうか。
で、この映画はどうかというと、認知症の辛さを正面から扱いながらも本人視点を利用してミステリー映画みたいな脚本演出になっている。
認知症を扱いながらそれをミステリーっていうエンタメに仕上げるとかなかなかいい案に思える。
けどなんだろうね。あまり面白くないんだよな。
エンタメにも真面目にもどちらにも振り切れずにお互いが足を引っ張り合っている感じ。
だからアンソニー・ホプキンスが名演していても、特にラストなんか引き込まれそうなくらい良くはあったが、どうしてもどこか冷めた目で見てしまうんだよな。


是枝監督の映画だった気がするけど樹木希林の母親役が初期の認知症を患っていて、でもその状態がただの一つの状態でしかないとでも言うように本人も周りもありのままに捉えているところがよかったんだけど、検索して探しても出てこないから是枝映画じゃなかったかなぁ。

2021年9月25日土曜日

映画『くれなずめ』

2021年 監督:松居大悟
製作国:日本
at ギンレイホール




脚本ぶっ飛んでいる系のコメディドラマ。
コメディだけど生死を扱った話でもある。
心臓辺りからぶっ飛びすぎて置いてけぼり感や飽きがやってくるけど全体的には面白かった。

前田敦子のキレ芸いいな。
主演は成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹。
この6人組がいじめられっ子いじめっ子陰キャ陽キャ文化系体育会系、みたいな混じりそうのないキャラクターで構成されたグループで不思議。
めっちゃ仲いいし。
皆でバカやってくそ盛り上がっているところで城田優登場によって一気にシュンと現実に戻る姿とか生々しくて面白い。
若葉竜也が演じた明石なんか、見るからに不良で城田優側のはずなのにいじめられ側だというところが違和感、というか笑いどころなのかも。
30過ぎの役者達が高校生頑張っている姿とかもそうか。

映画『キネマの神様』

2021年 監督:山田洋次
製作国:日本
at ギンレイホール




このシーンは志村けんが演じていたらこんな感じかな、みたいに想像してしまう。
志村けんを連想させるようなものが意図的に入っているし、沢田研二自体結構意識して演技しているふうでもある。
そういう想像で楽しめる人とそうでない人に分かれそう。
私はなんか集中できなかった。

小林稔侍とか10数年ぶりに見た気がする。
テラシンって野田洋次郎だったんだな。というか朝ドラ『エール』の木枯もそうだったのか!気づかなかった。
永野芽郁かわいい。
友情出演みたいなちょい役含めで名のしれた役者が大量に出ていてちょっと食傷気味。

脚本ほとんど年齢不詳孫(前田旺志郎)作だよな。

2021年9月11日土曜日

映画『アンモナイトの目覚め』

2020年 監督:フランシス・リー
製作国:イギリス / オーストラリア / アメリカ
at ギンレイホール




イギリスの海辺の町ライムで母と暮らすメアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は、観光客用の化石を売って細々と生計を立てている。
そんなメアリーは実はすごい人で、わずか13歳で発見した化石(イクチオサウルス)は大英博物館に展示されているほど。
ある日化石コレクターが鬱気味の妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)を連れてメアリーのもとに訪れる。
でなんだかんだでメアリーはシャーロットの面倒を見ることになる。

いやぁ、なんか凄かった。
土臭さと高貴さ、ごつさと華奢さ、栄光と現実、田舎と都会、鳥かごと自由、ツンとデレ。。
映像は抑制されて静謐なんだけど、何かが驚異的なバランスで収められているような感じ。
で、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンがすごくいい。
視線の動き一つで演技しているよな。
演技合戦とかいっちゃうと胡散臭いしそれだけの映画みたいになっちゃうから嫌だけど、この二人がこの映画の面白さを確実に底上げしているのは確か。

『燃ゆる女の肖像』とかさ、最近レズビアンものの名作が多いよな。

フランシス・リー監督は元俳優で40代過ぎて監督に転身してこれが長編二作目らしい。
すごい人が出てきたもんだ、というかもう有名なのか。

あとメアリー・アニング自体は実在の人物らしい。

映画『この世界に残されて』

2019年 監督:バルナバーシュ・トート
製作国:ハンガリー
at ギンレイホール




1948年のハンガリー。
一人で暮らすユダヤ人医師アルド(カーロイ・ハイデュク)は患者としてやってきた少女クララ(アビゲール・スーケ)と知り合う。
クララもまたユダヤ人で今は大叔母の家に住んでいる。
ホロコーストを生き延びた二人の絆の物語。

父娘のような恋人のようなそしてそのどれでもない関係だが、ホロコーストの傷跡と本当の家族の思い出がなにかもっと深いところで二人を結びつける。
この二人の関係がどう変わっていくか。
男女である、一方はいい大人である、一方は成長過程の少女である、そしてスタンリーソ連がハンガリーで権力を得ていく時代背景がある。

少女役のアビゲール・スーケがすごくいい。
きりっとした目が力強くて可愛くて切ない。
16歳にしては色っぽいと思ったら、1998年生まれらしいね。

以下ネタバレ

結構説明が省かれているから解釈が怪しいのだけど、
アルドとクララは男女としての感情をお互い持っていたという認識でいいんだよな。
アルドが再婚を決めたのは党員に目をつけられないようにするための偽装。
失恋したクララは恋人ができるとともにアルドに対する感情が父親に対するような愛情に戻っていった。
スターリン死去のくだりは、結婚する必要なかったとか、クララがアメリカに行ってしまうとか、時代に翻弄され続ける悔しさとか、なんかいろいろあるのだろう。

2021年9月1日水曜日

映画『旅立つ息子へ』

2020年 監督:ニル・ベルグマン
製作国:イスラエル / イタリア
at ギンレイホール




アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は田舎町で自閉症の息子ウリ(ノアム・インベル)と二人で暮らしている。
幸せな暮らしだが妻(別居中?)タマラはウリを施設に入れようとしている。
厄介払いとかではなくて(そもそも一緒に住んでいない)、ウリの将来を思ってのこと。
アハロンはウリを施設に入れるのに反対だが、彼には定収入が無い。(昔は結構有名なグラフィックデザイナーだったらしいが今は息子のために全てを捨てて田舎に越してきたらしい)
そこがネックになり渋々ウリを施設に連れていくことになる。
ってところからロードムービーの始まり。

親は子に子は親にどっぷり依存している関係だが、いつまでもそういう関係を続けることはできない。親が先にいなくなるし。
自閉症を扱いながらも親離れ子離れの物語でもある。

ウリがいくつくらいかよくわからなくて、20代っぽいけど30代っぽくもある。
役者は1998年生まれらしいので恐らく役どころも20代前半かな。

映画『サンドラの小さな家』

2020年 監督:フィリダ・ロイド
製作国:アイルランド / イギリス
at ギンレイホール




予告編見る限りタイトルも似ているダルデンヌ兄弟の『サンドラの週末』っぽい雰囲気ではある。
実際は週末よりもう少しエンターテインメント寄りでそれほど似ていなかった。
どっちも原題にサンドラって入ってないんだな。

幼い子どもとノリノリでダンスなんかしちゃって何を見せられてんだ的なとりあえず幸せそうな家族だね、ってところから夫が登場して一変、ブラック・ウィドウ!グシャァ!DV。
エンターテイメント的導入。
最悪のDV夫から幼い子ども二人を連れて逃げ出したサンドラ(クレア・ダン)は、ホテルで仮住まいしながら3人で住める家を探す。
しかし公営住宅はとんでもなく長い順番待ちで待っている間に破産しそう。
だから自分で家を建てることを決意する。すごい発想。

映画としては『サンドラの週末』の方が面白いけど、これはこれでエンターテインメントとしては普通に面白い。
エンターテインメントって言っている理由は演出がそうなっているっていうのと、生活困窮者の奮闘とか協力者の温かみとか社会制度の問題とか、描いているようで描いていない気がするんだよな。
バイト仲間やらろくに話したことのないママ友とか、協力者は簡単に集まるし、生活困窮者は主人公だけだし。
ボランティアの人たちいい人すぎるよね。
最初のおやっさんこそ無償で手伝うなんて絶対しない雰囲気で手強そうだったくせに、手伝うようになった理由はいまいちはっきりしない。多少繋がりのある人だったからとか、そこから事情を察知してDVに同情した?
DV問題だけは子供のPTSD含めて酷に描いている気もする。
けどいくら子供には暴力振るわないからっていっても、母親への暴力をそんなに気づかないもんか。
DV側の描写も父親を見て夫は妻に暴力をふるうもんだと覚えてしまったのね、ってそんな。。

2021年8月14日土曜日

映画『パーム・スプリングス』

2020年 監督:マックス・バーバコウ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




砂漠のリゾート地パーム・スプリングスで行われた結婚式にいた謎のアロハシャツ男ナイルズ(アンディ・サムバーグ)。
ダンス会場で参加者一人一人が次にどんな行動をするのかまるで熟知しているかのような動きで(ここのシーンの動きは秀逸)、新婦の姉サラ(クリスティン・ミリオティ)を笑わす。
謎の男ナイルズといい雰囲気になったサラはなんたかんだでナイルズが陥っているタイムループに巻き込まれる。

ドタバタコメディ。
B級映画、だよね、これ、

まずヒロインのサラがB級映画ですぐ死ぬモブとか精神病んでる系のワンポイント脇役とかヒロインいじめる役とか得意そうな、、とにかくヒロイン顔じゃ無い。
この子がヒロインだと気づいたときは軽い衝撃が走った。
いやーすごいわ。美人どころだとコメディに突っ切れないんだろうな。
ナイルズ演じたアンディ・サムバーグからして天パのがま口マッチョでイケメンじゃないからな。
バランス的に丁度いい。
なんか失礼なこと言いまくっている気がする。。

アンディ・サムバーグは制作もやっているんだな。
コメディ畑の人らしい。
納得のコメディ演技だった。

一応ラブコメディなのか。恋愛要素は(個人的には)無きに等しいんだけど、コメディとして抜群に面白かった。

J・K・シモンズもいかれた親父で出演している。

肉体は老いなくても記憶は残っているなら脳は成長しているんだよね。
脳だけ老化してとっとと死にそう。

映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

2019年 監督:ユーゴ・ジェラン
製作国:フランス / ベルギー
at ギンレイホール




冒頭、氷と雪に追われた廃墟のような街CGが美しい、と思っていたところにいきなりでかい効果音とともに主人公の顔のドアップ、はちょっとウェってなる。
なんの映画見ているんだっけと思うような疾走感あふれる掴みではあるけど。

高校時代に付き合ってそこから最愛の妻になってくれたのに、自身の成功とともに妻をないがしろにしてしまう男がパラレルワールドに迷い込んで悪戦苦闘する。っていう純愛コメディ。

パラレルワールドにいくまでの圧倒的なテンポのよさ。
その一瞬ですらオリヴィア(ジョセフィーヌ・ジャピ)に惚れるわ。
ジョセフィーヌ・ジャピって初めて見たけど、まあ綺麗。
気品がありつつ快活な笑顔は庶民的な親しみやすさもあるっていう素晴らしさ。
これからどんどん売れていきそう。

フランソワ・シヴィルは髭がないと誰だかわからないくらい顔変わるな。
高校時代は別の俳優が演じているのかと思った。

友人のフェリックス(バンジャマン・ラヴェルネ)はコメディ脇役としても純愛ものとしても最高のキャラクターになっている。南葛もいけているし。

まあ面白かったんじゃないかと思うけど、ジョセフィーヌ・ジャピじゃなかったらそれほどでもない気もする。
パラレルワールドっていう異質設定が面白味でありながらも恋愛ものとしては足引っ張るのね。
恋愛映画の男がいて女がいてっていう関係性が同一人物で掛ける2になったらそれだけ薄まるし。
今の世界と元の正解がそれぞれちゃんとした世界だからそれぞれの世界でどきどき恋愛ハッピーエンドにならないと気がすまない。