製作国:スペイン / フランス
丸の内ピカデリーDOLBY CINEMA
ネタバレになるから説明できない。衝撃。とにかく音が凄い。死ぬかと思った。あの音響は絶対映画館で見るべき。
等々会社の先輩に力説されて、あまり気乗りしていなかったけど見てきた。
気乗りしなかった理由は、音楽系の映画は大音量で見た後めっちゃ疲れるから。(トニー・ガトリフの映画が好きなんだけど音楽多めなのがつらい)
死にそうな音なら私は耐えられそうにない。
それと個人的に映画であまり音を重要視していない(特にBGM嫌い)ので音が凄いと言われてもあまり興味がわかず。。
なるほど、ちょっと勘違いしていた。
レイブパーティーの宗教的重低音のリズムで実際レイブパーティーに参加しているかのようなトリップ体験をする映画かと思っていた。(それならこの映画が凄いんじゃなくてレイブパーティーが凄いんじゃないかとも)
実際は、はっ!?って感じの予想外のストーリー展開と生と死の狭間の神聖さにガツンとやられる映画だった。
確かにネタバレ禁止だわ。でもストーリーを知っていても一発芸でなく2,3回は見れそう。
音嫌いといいつつせっかくなのでドルビーアトモスで見てきた。
砂漠でスピーカーを無造作に積み上げて並べるズリズリといった音が臨場感あふれる音で響いてくる。
ただ、どんだけ近づいてもそんなに大きな音しないでしょといったちぐはぐ感を感じるし、そもそもスクリーンは平面だし、なんか音が珍しくて気になってしまうしで、実際そこにいるかのような没入感とは程遠い感じはした。(すぐ気にならない気にしないようにしたけどそれではドルビーアトモスの意味が。。)
レイブの音は基本は重低音のリズムでそこに奇妙な音がのっかる感じ。
ディジュリドゥとかホーミーの音みたいなやつ。
宗教的であり少し不快感も。
そこはドルビーアトモスだからかなかなかの迫力だった。
シラートとはアラビア語で「道」。イスラムの終末論では地獄に架けられた橋のことで、それは髪の毛よりも細く剣よりも鋭いとされている。
渡れないじゃん。。
地獄とは、この世界。
内戦、レイバーの体の欠損、道路の白線、切り立った崖の道、シラートを連想させる要素はいたるところに散りばめられている。
結構宗教的な映画だと思う。
以下ネタバレあり
ルイスの変質の物語でもある。
レイブパーティーの中に全く溶け込んでいない異質な存在であるルイスとエステバンと犬。
体の欠損者も多く、レイバー達は地獄を経験してきた人たちで、レイブで踊り狂って祈りを捧げている。(サウンドシステムは荘厳な神殿のよう)
が、ルイス達にそれはない。
砂漠を疾走する普通車もまた異質。
享楽的でありながらどこか達観しているレイバー達に比べて、川を渡れず子供の前で悪態をつくルイスは都会の俗物といった感じ。
それが悲劇によって変容していく。
レイブの音楽のよさがわからない→踊るための音楽だから
という感じだったルイスがレイバー達と同じ地平に立ち、レイブパーティーを体験し始める。
この映画が凄いっていうのはここか!、ここで爆音でトリップするような異次元体験がいよいよ始まるのか、とどきどきしながら見ていると、「ぶちかませ」と共に予想外の方向からぶちかまされた。
レイブで祈りをささげることすら許されない。
そして原初の砂漠の風景は人為的な悪意に満ちた死の世界、地獄の橋の上に一気に切り替わる。
「なんで今まで無事だったんだ」
地獄を経験してきたレイバー達ですら今いる世界が常に地獄のようなものであることに気づいてはいなかった。
彼らはシラートの上にいることにやっと気づく。
思えば現地の羊飼い(神)に救いを求めたが逃げられたところからもうすでに彼らは神に見捨てられていた。
別に彼らが悪人というわけではない、普通の、いや普通よりも悲しみを背負っている人たちなのだが。
ルイスが驚くべき行動に出る。
なにやってんのこのおっさん、自暴自棄にも程があるでしょって思うが、普通に岩山にたどり着く。
予告編の最後見てよ。上半身でぷっとした体形がキュートな「神」がいるから。
神に見捨てられたのではなく神になったw
最後の水を回し飲みしているときルイスだけがいらないと言って飲まなかったのね。
ルイスが水を拒否したのは飲み口の部分めっちゃ臭そうだったからかなと思っていたけどそういうことか、もう超越していたからか!
もう少し遡ると、砂漠の砂嵐の中で倒れているところで一回死んでいるのかも。
レイブで踊り始めるまでいかなかったのもそうか。
「ルイスがレイバー達と同じ地平に立ち」どころかさらにその先行っていたルイス。
遺体をしれっと埋葬している離れ業も納得できる。
地雷原渡るときのピロリロリンみたいな不思議な効果音はよかった。
超越して神がかったルイスと、悲しみ恐怖の感情があふれ出すレイバー達の明らかに異質な物が混在しているような特殊な空間の中でこの音はさらにかき混ぜてくる。
ルイスが神になったと書いたけど、壊れた、ともいえる。
無心に、壊れないと先には進めないのかもしれない。
ビギって名前だったかな。右手が欠損しているの。「ルイス今行くよ」と感情を溢れさせ泣きそうな表情で歩いている姿とその結末が一番印象的なシーンだった。
ルイス役はスペインの大ベテラン俳優のセルジ・ロペスで、エステバンも子役。それ以外のレイバー達は素人俳優らしい。
その辺の俳優より自然で見やすくて魅力的だった。
全体的に現代の西部劇って感じもした。
荒野を走る馬の代わりに砂漠を疾走する車、どこからともなく現れるアパッチの恐怖は地雷に。
西部劇に似ているならそれはもう映画の王道だよね。
面白かった。

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